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ウィンザー・クオリティ・ホールディングス社(以下、ウィンザー社)の過去3年間の業績がほぼ横ばいになっている理由。市場の成長率と比較するとシェアを落としていたと推察するが、その要因を教えて欲しい。
2012年(2012年1月~12月)については、1つの工場で火災が発生し、供給力が一時的に落ちてしまったことが要因。2013年(2013年1月~12月)は大手外食向け顧客との取引を取りやめたことが主要因。ウィンザー社の営業利益の内、留め型商品の多い外食向けの営業利益率が低く、利益率向上の為に取引を取りやめたことはポジティブだと思っている。取引の取りやめは売上高にはマイナスに効いているものの、営業利益への影響はない。
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今後のブランドマネジメントについての考え方を教えて欲しい。ウィンザー社の商品と既存の当社商品はアジア食を中心に重複している商品群があるが、どの様に線引きをして今後の事業を運営していくのか。
ウィンザー社の「TAIPEI」、「Ling Ling」ブランドはアジア食に分類されているが、当社は中華だと認識している。一方当社商品は日本食であり、同じギョーザにしても全く違う商品で、当社のギョーザは「日本式ギョーザ」と言われている。同様に焼きそばも中華と捉えることも出来るが、当社が扱っているのは「日本式焼きそば」である。この様に、日本食を広めていく際には当社ブランドを使用する。ブランド戦略については、今後線引きを明確にしながら取り組んでいく。アジア食と日本食は異なるというのが当社の認識で、ラーメンも日本食だと思っている。(アメリカには日本食と中華を混同してしまう人も多いと思うが、当社とウィンザー社の商品がカニバリを起こす可能性はないか、との問いに)当社は「Tokyo」という名前を打ち出している等、商品として明確に異なっている。アメリカにおいて、日本食と中華を混同してしまう人は着実に減ってきており、カニバリは起こらないだろう。
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2020年までに市場シェアを50%まで高めるための具体的な方法。どの様な強みを活かしていくのか。
シェア拡大の方法の1つは現在当社がポートランドで生産している商品を全米に広げていくこと。これは当社にとって大きなバックアップになろう。もう1つは当社の生産技術、調味技術、品質向上技術を導入して既存のウィンザー社商品をより良くしていく。これらの取組みにより、シェアの拡大が可能である。日本食・アジア食として明確にセグメント化された領域では十分トップになれると思っている。
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営業利益率の考え方。本件を受けて2015年度、2016年度、2020年度は其々どの程度になるか。営業利益率が本件により向上するとすれば、その要因はコストシナジーなのか製品ミックスの改善なのか教えて欲しい。
当社の既存の北米冷凍食品事業の営業利益率は10%程度であり、これは更に高めていきたいと思う。将来的にはウィンザー社事業も含めた全体での営業利益率10%を目指したい。現在のウィンザー社の営業利益率は日本の当社の冷凍食品事業と同水準であり、目標の半分程度。その理由ははっきりしており、ウィンザー社商品の内、アジア食は当社既存事業と同程度の営業利益率であるものの、外食用の留め型品等一部商品の利益率が低い為、今後は商品ポートフォリオの整理が必要。この取り組みにより、営業利益率は大きく改善出来る。もう1つは生産効率であり、ウィンザー社の工場には当社の生産技術を活かした効率性改善の余地が大きい。当社技術の導入により、より良い形になることが分かっている。これらの取組みにより、2015年は売上高が少し減少する見通しであるが、その後は上記取組みを行うことで、営業利益率10%に向けて徐々に改善していく計画であり、その確度は高い。
(2015年の売上高が減少するというのは主に外食向けという理解で好いか。また、営業利益率は2015年度から上がっていくのか、との問いに)2015年に外食向け留め型品の減少というのは、あくまで商品ポートフォリオ見直しの概念を示したものである。営業利益率改善の取組みは2015年から開始するため、当該年の半分くらいは改善に寄与し、2016年にはかなりの改善が出来ると思っている。 -
2014年~2020年の7年間で、年率どの程度のイメージで売上高を成長させるのか。既存事業のオーガニック成長と、シナジーによる成長を分けて教えて頂きたい。
既存のウィンザー社事業については、2015年には一時的に売上高が減少するが、2020年までは平均して4-5%程度売上高が成長する見通し。一方既存の当社事業は今後毎年7%程度成長する見通しで、併せると平均5-6%成長すると見込んでいる。それにシナジー効果がどの程度プラスになるかは詳細には計算していないが、販売チャネルの拡大もあり、2-3%のシナジー効果は発揮しなければいけないと思っている。
但し、既存の当社事業の拡大見通し7%というのは、過去からの成長率を加味しながらミニマムに見込んだ場合の率である。これから先については、シナジー効果も併せながら更なる成長を見込んでいる。 -
ウィンザー社は非上場なので資産状況が分からないが、本件によるリスクはないと考えて好いか。また、ウィンザー社の経営陣は優秀だと聞いているが、従業員の質等の労働力の面でのリスクもないと考えて好いか。
ウィンザー社の財務情報は原則非開示だが、会計監査は受けている。また、格付けも取っており、元々ある程度の統制が取れているという印象。本件契約の前には当然会計、税務、法務等各分野の専門家によるデューディリジェンスを行っており、重大なリスクはないと認識している。ただしウィンザー社は全米に7工場を有しており、また過去からM&Aを繰り返して多角化してきたという歴史があるため、無形資産をかなり有している。本件によるのれんも発生するため、クロージング後の監査でPPA(Purchase Price Allocation)をしっかりと進めていく。
労働の質については当社の専門家がチェックしており、ウィンザー社の質はしっかりしている。当社が見る限り労働の質に問題はない。 -
本件による2015年度業績へのインパクト。のれん償却費も加味した連結ベースでは、業績に対してどの様影響があるのか。
クロージング後の監査で無形資産の時価評価やのれん代およびその償却期間の確定を行うため、現時点で確定的にはコメント出来ない。ある想定の中で業績影響を見積もっているが、のれん償却を加味してもプラスに寄与すると思っている。詳細については2015年度業績予想に織り込んでいく。
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ウィンザー社の既存事業における売上高のBtoB比率とBtoC比率を教えて欲しい。
当社の既存の北米冷凍食品については、約30%がBtoB、約70%がBtoCである。ウィンザー社については、BtoBとBtoCが約半々の比率である。
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今後のキャッシュの使い方。M&Aおよび株主還元の方針について整理頂きたい。
14-16中計で掲げた総還元係数50%を目途とする目標や配当性向30%の目標が本件によって変わることはない。今後のM&Aについても基本方針は変わらない。当初から掲げているグローバル食品カンパニーになるために必要な案件を検討していく。フレーバーを含めたR&Dの領域についても興味があり、引き続き検討していく。
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当社のM&A後の買収企業の企業価値を上げるという力量について、過去にトラックレコードが無くよく分からない。むしろ、前回アモイ・フーズ社を約300億円で買収した後は減損を出し、結果何も残らなかった印象。過去の失敗をふまえ、本件について今後どのようにマネジメントしていくのか。
当社が現在考えていることを実現するために、戦略を立ててM&Aを実行している。紹介された案件をどうするかという判断で行ってはいない。短期間で判断するのではなく、1年以上かけ計画を練り、買収対象も明確にして動いている。それに加え、アモイ・フーズ社買収時の反省の一つとして、経営陣のマネジメントが非常に重要だと考えている。2013年3月に株式取得を発表したアルテア・テクノロジーズ社の案件については、経営陣に関しては当社が最初から関与し、必要な形にしてきたことで現在非常に上手くいっている。経営陣をしっかり評価することが重要。また、リテンションをしっかりすることも重要。アモイ・フーズ社の場合は、当時社長一人がコントロールしていた会社で、買収以降はその社長が関与していなかった。今は買収企業の経営陣への目の行き届き方がしっかりしてきており、これまでの買収とは大きく違っている。
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ウィンザー社は営業利益率が低く、今後商品ポートフォリオの改善、留め型の外食事業比率を下げる方針だが、それ以外に効率面で改善できる取り組みはあるか。従業員の数が多く一人当たりの生産性も低いので、コスト改革に取り組んでいくのか。
ウィンザー社の工場は当社の工場の操業率・良品率基準に比べてかなり劣っているため、短期的な取り組みとして直していく。また今後、ウィンザー社の工場7つと、当社の工場1つの合計8つの工場を持つことになるが、商品ポートフォリオの改善を踏まえ、生産の再配置をどのようにするか緊急性を高く持って取り組んでいく。売上高のシナジーについて当社は、BtoBビジネスが弱く、今後どの様に売っていくかが重要。8工場となり全米に商品配荷した際、アジア食の中でも日本食をどれだけ大きく出来るかが勝負になってくる。あまり大きな影響は無いが、味の素ノースアメリカ社とウィンザー社の一般管理費の統合効果は現段階の2016年度目標に組み込まれていないため、今後プラスに効いてくるだろう。
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伊藤社長のプレゼンテーションの中で「今後営業利益率10%を目指していく」とあったが、2020年度の北米での冷凍食品売上高目標1,000億円に対して目指していくということか。
2020年度では無くもっと早い段階で、営業利益率10%近辺を狙えると思っている。
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ウィンザー社の売上高の内BtoB比率が半分ある中で、売上高が成長していく部分と減少していく部分のトータルバランスを考えた際、そこまで力強く売上高を成長させることが出来るのか。不採算部分がどれだけあって、収益性の高い部分がどれだけ成長していくと、トータルの売上高が成長するか。
BtoBも営業利益は出る。また現在のウィンザー社は、BtoCの中でもアジア食の営業利益率が高い構成となっている。当社の日本食の営業利益率と合わせてこの3つを、どの様にしていくか擦り合わせる時間が2015年度まで必要だろう。アメリカのBtoB市場、BtoCの内のアジア食市場は伸長している。その中で、3つのポートフォリオをどのように変えていくかが重要となる。
(「BtoBは営業利益が出る」とのことだが、ウィンザー社の中で儲からない商品は無いのか、との問いに)BtoBは一つでない。ブランドを付けたBtoBと、留め型対応をするBtoBがある。留め型対応をするBtoBの中でも利益率が低いものは止めていきたい。BtoBを全て止めるという考えではない。
(ブランドを付けたBtoBと留め型対応するBtoBの営業利益に占める比率はどの程度か、との問いに)非開示。北米の冷凍食品会社の営業利益率は、当社の認識ではどの会社も10%以上あると思う。冷凍食品の集約化が進んできている中で、欧州も含めて営業利益率が上がっている。但し、ドライ商品と比べると3分の2程度。食品全体としては低い方と思われるかもしれない -
当社の2014年度売上高見通し約135億円に対して、営業利益率約10%というのは、北米の冷凍食品事業において驚異的な数字だと考える。その理由は、アジア食・日本食というニッチな市場だから高い営業利益率が得られているのか。もしくはR&D等の機能の費用を親会社に計上していることにより、現地の営業利益率が高く見えているのか。また、アメリカのアジア食の冷凍食品市場シェア第2位の競合ですら2,400億円規模の売上高に対して営業利益率は12%となっている。売上規模と営業利益率が連動しているのかどうかか分からないが、2016年度計画の冷凍食品事業海外売上高約900億円の規模で、営業利益率約10%を出すことは規模のロジックからして可能なのか。
一つ目の理由として、北米における当社の日本式ギョーザの販売単価は、競合商品に比べて1.2倍近く高く、また北米にある日本人向けスーパーマーケットでは、1.8倍近い販売単価で売れていることが要因である。二つ目として、当社の冷凍食品事業は得意先を1社ずつスクラッチから開拓していった経緯があり、得意先1社に対する売上高の大きさが高い営業利益率に影響していることが要因である。今後、この仕組みをどの様にしてウィンザー社に横展開していくかかが、2016年度約900億円の売上高を目指す上での勝負の鍵となる。
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加工用うま味調味料事業については、現在BtoBからBtoCにシフトしていっているが、本件により内製品消化率が上がると思う。今後のBtoB、BtoC比率イメージはどのようになるか。
確かに加工用うまみ調味料事業についてはリテール化を促進していくが、ウィンザー社の約700億円分にあたる商品のレシピ等については、どの様に美味しさに貢献していくかこれから検討していくため、まだ試算していない。
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当社はウィンザー社に、加工用うま味調味料を販売していなかったのか。
ほとんど売っていない。
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アメリカの小売の中で、1$ショップや通信販売が伸長し、小売り企業が苦戦をしているようだが、構造変化の中での冷凍食品事業のチャンスとリスクをどの様に考えているか。
北米の冷凍食品市場は約4兆円ある。日本と比べて桁違いに冷凍食品の消費が多い。買い物の習慣も異なり、一般的に日本とは異なりアメリカは2、3日に1回という頻度で買い物をしており、生活者への冷凍食品の入り込み方は、日本の比にならないだろう。一方で、買われ方についてはインターネットが進んでいることはあるが、食品についてはまだそこまで激しくは変化していないと思う。当社が取り組もうしている日本食やアジア食ついては、ある意味でスペシャリティであり高く売れる商品。感度の高い生活者から先行して買われはじめている。当社商品は健康で質が高いが、残念ながら北米の冷凍食品市場自体は、あまり質が高いと思われていないが、当社はアジア食、日本食分野で質が高く味覚レベルも非常に良いという分野を作っていこうとしている段階で、約135億円の売上高となっている。このような分野はインターネットで購入する様な分野とは異なっており、今後も伸びていくだろう。
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ウィンザー社が有している「Jose Ole®」といったメキシカン領域の今後の事業方針について教えて欲しい。ウィンザー社の商品はアメリカのメキシコ食冷凍食品市場のシェア2位で営業利益率も高いとのことだが、このビジネスは今後の冷凍食品事業の中でどの様に位置づけられているのか
ウィンザー社の中でメキシカン商品はアジア食に次ぐ高い営業利益率であるが、まだ満足のいく水準ではない。当社の生産技術を導入することで改善していき、1,500億円規模で市場自体がまだ成長しているメキシカンの市場において、当社も成長していきたい。
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欧州もアメリカ同様にギョーザの市場が成長しているが、欧州でも今後冷凍食品事業におけるM&Aはあるのか。
現在の当社の欧州冷凍食品事業はギョーザを中心にタイからの輸出や、ポーランドでOEMによるギョーザの製造を始めた段階であり、チャンスを窺っている段階。メインストリームで販売出来る事業構造を作っていきたいと考えており、必要なトップレベルの人材の獲得等にも取り組んでいる。今後どの様にリテール領域でスーパーマーケットに販売出来るか考えている。
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本件によるシナジーが発生する時期について、2015年度から全米で当社商品を販売しトップライン成長効果が出るのか。あるいは生産体制の再編等により、トップライン成長は2016年度頃から出てくるものなのか。
生産のシナジーについては徐々に初年度から発現させる予定だが、日本食の販売シナジーについては、現在既に当社ポートランド工場の稼働率が満杯のため、すぐに全米に販売するというのは難しく、準備に1年から1年半程かかると考えれば2016年度以降になろう。
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2016年度の海外冷凍食品の売上高計画は900億円とのことだが、その時の営業利益率はどれくらいになるか。
出来れば満足のいく10%程の営業利益率に向かっていきたいと考えているが、今後シナジー効果の発生時間の関係で、1~2%は低くなるかも知れない。
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本件を受け、総還元係数50%を目処とする株主還元方針に変化はないとの事だが、買収金額約800億円が発生する2014年度に自己株式を取得する可能性はかなり低いと考えてよいか。
14-16中計で掲げた通り、配当性向30%を目標とし、総還元係数50%を目途とする方針に変化はない。自己株式の取得については2014年度の業績等を見ながら判断していく。
自己株式の取得を気前よく実施しても大丈夫なのか、との問いに)まず2014年度の業績を見て、検討していく。配当性向目標が30%、総還元係数が50%を目途としているので、自己株式の取得は20%程度になると思うが、単年度で必ず実施するとは言っていない。あくまで3年間での目標である。よって、2014年度によっては業績を勘案しながら判断する。 -
今後はウィンザー社の主力商品であるアジア食を伸ばしていくことが重要となるが、ウィンザー社の冷凍食品全体の内、アジア食の占める割合と、過去3~5年間の売上高成長率はどれくらいだったのか。
ウィンザー社の売上高に占めるアジア食比率は約30%であり、その内BtoCは半分の約15%となる。その他のイタリアンやメキシカンで約70%。アジア食の売上高は過去3~5年間で約5%成長しており、メキシカンは微増、イタリアン若干下がっている。