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14-16中期経営計画(以下、本中計)で掲げた各種KPIの内、最も注力する指標は何か。
時価総額1兆円については、少しでも早く達成したい。ROE、営業利益額、営業利益率についても、他の全ての指標に影響してくるので、特に大事な指標と捉えている。
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ROEや営業利益率の様な重要KPIに関し、計画と実績が乖離した際の対処法をどの様に考えているのか。11-13中期経営計画(以下、前中計)と本中計でコミットメントが異なっているか。
前中計では、医薬と飼料用アミノ酸等のコモディティバルク事業以外は概ね当社の意図通りになっている。本中計においては、海外コンシューマーフーズの継続伸長と国内食品の安定成長を目指しており、この点は大きく変わっていない。前中計と比べて変わったのは飼料用アミノ酸等のバルク事業の目標設定の仕方である。価格上昇は大きく見込んでおらず、コストダウンによる増益効果を主体としている。本中計目標値はミニマムで設定しており、当社の手が届く範囲で努力することを基本にしている。
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利益計画の未達や為替等の外部要因でROE9%の目標が達成出来ない場合、総還元係数50%という目標も変わる可能性があるか。
総還元係数は50%が最低限で、必ずしも50%に拘っているわけではない。それ以上、という意思を込めて「50%~」と記載している。総還元係数の数値が目標の50%と乖離する可能性があるとすれば、本中計に織り込んでいないM&Aが実現した様な場合であろう。
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キャッシュフローの具体的な使途および、その中で成長投資に使用するキャッシュの水準イメージを教えて欲しい。
キャッシュフローは基本的には成長投資に使用する。特に海外で業容拡大するための事業提携やJV化等、成長に向けた資金と捉えている。その為の投資は行うが、JVを組む様な投資は大きな規模にはならず、技術導入の場合も巨額のキャッシュを使うという訳ではない。設備投資計画1,800億円の内、半分が維持投資であるが、それ以外は海外を中心とした食品事業の割合が多い。
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本中計で計画している1,800億円の設備投資の事業別の内訳を教えて欲しい。
約1,000億円が食品、約500億円がバイオ・ファイン、あとは事業共通の部分とIT投資である。
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OPEN NEW SKYという新たな概念を導入した背景を教えて欲しい。
OPEN NEW SKYというのは5Starsの売上高を2-3倍に拡大させるための発想を拡げるということであり、本中計から新たに導入した概念である。この概念を実現することで、海外コンシューマーフーズ事業を拡大する際のモデルを変えたいと思っている。「味の素」の浸透から入り風味調味料、メニュー調味料と商品ポートフォリオを拡大していく従来の戦略だけでは、日本やタイの様な事業構造にはならない。日本におけるスープやマヨネーズの事業はCPC社との合弁で始めた事業で、元々持っていなかった技術を獲得した。そして現在、外部から得たその様な技術が海外でも大きく業績へ貢献している。今後も合弁や提携という方法も念頭に置きながら発想を幅広く持ち、チャレンジを続けることが大事。
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バルク事業のコストダウンに関し、低資源利用発酵技術等の効果で前中計期間の実績50億円というのは、どの様な内容で発現したのか。
低資源利用発酵技術には様々な技術が含まれている。主原料や副原料を削減する技術では原料の投入量そのものを削減出来る。ただし、案件ごとの利益貢献額については非開示。エネルギー削減技術は、現在使用している石油や天然ガスをバガス等のバイオエネルギーに替えていくことであり、タイやブラジル等の複数の工場で実際に取り組んでいる。非可食原料についても、現在使用していない原料を使用することを目指しており、これら様々な取り組みによりコスト競争力を強化していく。
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本中計の低資源利用発酵技術の導入計画は、コーン市況が変動しても達成可能か。
本中計において、コーン価格については足元の市況を前提とはしておらず計画通りに効果が発現すると捉えている。前提価格等の詳細については非開示。
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本中計では国内食品で売上高年率平均3.9%成長、営業利益も伸ばすという計画になっているが、どのように達成するのか、販売単価や数量ベースでの伸び率のイメージを教えて欲しい。
国内食品の中には調味料・加工食品事業と冷凍食品事業があり、伸び率は冷凍食品の方が大きい。過去3年間でも、冷凍食品市場は重量ベースで伸びている日本でも数少ない成長領域。伸びている理由は、従来であれば購入が減少してくる50代や60代の消費者がその年代層になっても買い続けていること。コンビニエンスストアの消費者層の変化と同じような現象が起きており、生活のパターンが従来とは変わってきているので、今後は販売数量が更に伸びる見通し。より良い商品を作ることでこれからは単価も上がっていく。冷凍食品の伸びに加え、調味料・加工食品の売上はこの2、3年で発売した付加価値型の新商品(「鍋キューブ®」「Cook Do® 香味ペースト」等)の貢献を見込む。これらはスペシャリティ商品なので、価格が大きくは変動しない。従って、ある売上規模に達すれば、大きく利益貢献する計画である。さらに外食・加工向けでも、営業利益率が平均よりも高い機能性素材をこれまでの3年間でかなり伸ばしており、その分も織り込んでいる。一方、次の成長を見据えた新商品開発のための投資も同時に行うので、全体としてお示しした成長率になっている。
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2020年度までにタイの売上高を2倍にするとのことだが、既に商品ポートフォリオがかなり充実している中、今後どの様に売上高を拡大させるのか。
確かにタイは50年以上の年月をかけて育ててきた国なので、売上高を2倍にするのは簡単なことではないだろう。「味の素」から進出して徐々に風味調味料、メニュー調味料へと商品領域を拡げる当社の基本戦略を全て実行し、更に飲料の様な新たな領域にも進出して現在に至っている。しかしそれ以外にも、日本やタイ以外の国で行っている事業にもチャンスのある領域がある。今は調味料の中でもうま味調味料と風味調味料が事業の柱となっているが、今後中間層の拡大が見込めるアセアンではメニュー調味料が大きく伸びるだろう。更にOPEN NEW SKYの考えを実行し、非連続成長投資でも事業領域を拡大していく。
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前中計期間中タイやインドネシアで行った設備投資のリターンは得られているか。今後重点的に投資する領域はどこか。
タイではアユタヤ工場の投資額が大きいが、この結果が出るのはまだ先になる。タイではそれ以外の投資も行っており、これらはほぼ予定通りの成果が出ている。今後は低資源利用発酵技術等コストダウンに向けた投資、また海外コンシューマーフーズの拡大に向けた投資を行っていきたい。
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飼料用アミノ酸事業において、コモディティ市場である程度のプレゼンスを確保するためには一定のシェアは必要ではないか。シェアに対する考えを教えて欲しい。
コモディティ市場で一定のシェアを確保することは大事で、例えば価格を先導出来る等市場での最低限のプレゼンスの確保は必要だと考えているが、目的はシェアの確保そのものではなく、市場に対する影響力を持つことと考えている。当社は世界に4つの生産拠点を持っているが、夫々拠点のある国・地域ではトップシェアかそれに匹敵する影響力を保持し続けたい。また供給力の確保については、単なるボリュームやシェア確保のためだけの増産はしない。新技術導入によるコストダウンの実現/競争力強化につながる増産を図る。また、外部連携も大事で、当社の品質基準を遵守可能なパートナーとの提携、OEM等も活用していくことで市場でのプレゼンスを確保していきたい。
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当社は過去から目標に掲げながらなかなか営業利益800-900億円水準を達成出来ていないが、この「スペシャリティ」の貢献で達成出来るのか。特に飼料用アミノ酸の営業利益に占めるスペシャリティ比率が2012年度には10%未満にも関わらず、2016年度には40%になるという具体的なイメージを教えて欲しい。
2013年10月に増産を発表した乳牛用リジン「AjiPro®-L」の事業が本格化する目途が立っている。現在の生産能力は1,500トンだが、販売には確かな手応えがあり、既に5,000トンの増産を決めた。2016年には10,000トン以上まで拡大する計画。この商品は競合に真似されない独創的な技術が使用されており、今後更に拡大させていく。2016年度のスペシャリティの営業利益計画の大半は「AjiPro®-L」であるがその確度もかなり高い。他にも、水産用途やある特定の地域・顧客向けに販売している商品もあり、拡大させていく。これら複数のスペシャリティの貢献により、2016年度に30億円の営業利益を達成することは充分に可能である。
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「AjiPro®-L」等のスペシャリティの市場規模はどの程度か。
「AjiPro®-L」はユーザー(農家)と商品投与効果を評価・検証しながら開発・販売を進めている。商品自体の性能改善も計画しており、既存のアミノ酸製品の様に重量ベースでの市場規模を示すのは必ずしも適切ではない。北米には現在約1,000万頭の乳牛がいるが、現在販売しているのはまだごく僅かであり、潜在需要はかなり大きいと考えている。
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飼料用アミノ酸事業に占める2012年度のスペシャリティの営業利益は全体の構成比の7%程度とのことだが、この商品別内訳を教えて欲しい。
「AjiPro®-L」とその他の商品だが、個別の内訳は非開示。
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スペシャリティは2013年度も引き続き利益を出していて、市況の影響は受けにくいという理解で好いか。
その通りである。