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FY19の事業利益率は9.4%で、FY16の予想値から1%改善する計画になっているが、具体的にどの事業が牽引するイメージなのか。
まず、課題事業である動物栄養事業についてはスペシャリティ化を推進し、事業利益をスペシャリティのみによって稼ぐ構造に変えたいと考えており、コモディティからの収益は計画に織り込んでいない。
次に、FY19のセグメント毎の事業利益の増し分であるが、日本食品の増し分の内、冷凍食品とコーヒー類が各々3割強、おいしさソリューションが2割、家庭用調味料・加工食品が1割程度を占める計画。コーヒー類の利益には商標権買い取りに伴う当該ロイヤルティの支出削減効果も織り込んでいる。海外食品は増し分の内、調味料・加工食品が7割強、冷凍食品が2割、残りを加工用うま味調味料と甘味料が占める計画。ライフサポートは増し分の内、動物栄養が6割、化成品はゼロ(=利益横這い)、その他で4割を占める計画。ヘルスケアは増し分の内、アミノ酸が4割、残りをその他で占める計画。 -
今後のM&Aはどのような案件を対象として考えているのか。
事業としてのM&Aの対象領域は、「海外食品」「おいしさソリューション」「先端バイオ医療周辺」の3つである。「海外食品」についてはこれまで新興国中心に伸長してきたので、今後は欧州の基盤を強化することが優先課題。また、Five Starsについては事業のポートフォリオを拡大すべく、オーガニック主体の投資に加え、大きな規模ではないがM&Aを行っていきたい。「おいしさソリューション」については、ポートフォリオを盤石にする為に補完的なM&Aを検討する。「先端バイオ医療周辺」については、中・高分子CDMOや培地関連への成長投資を検討する。
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17-19中期計画での利益の上振れ要素と下振れ要素は何か。
上振れ要素としてはグローバルバリューチェーンの再構築。特に、日本の再構築については関連費用をある程度計画に織り込んでいるが、その成果はFY20以降の発現になるかも知れないので本計画に織り込んでいない。前倒しで成果が発現する場合は上振れ要素となろう。また、為替前提を保守的に見ているので上振れ要素になるかも知れない。
下振れ要素としては新興国の経済成長鈍化リスク。14-16中計ではFive Starsの年平均成長率は9.3%であったが、これが17-19中計期間には7%に鈍化すると仮定すると、利益に対し59億円ぐらいのマイナスインパクトを与える可能性がある。但し、日常的な基礎調味料は経済成長の変動の影響を受け難い性格があると同時に、当社の食品事業は調味料の売上構成比が高いので、変動影響は加工食品・嗜好飲料に限られ、マイナスインパクトは25~30億円程度に半減すると推察。
尚、原燃料価格の前提については足許のトレンドに沿って設定している。当然、変動するので、定期的に影響をアップデートしていく。 -
海外食品のメニュー用調味料については既に売上構成の4割近くを占めているが、今後どのようにして更なる2桁成長を図っていくのか。具体的にどの国にその余地があるのか。
売上の4割近くを占めているのは風味調味料全体であり、メニュー調味料はまだそれ程の構成比にはなっていない。過去数年、毎年20%に近い伸長をしており、今後も引き続き成長が見込める。それぞれの国の人気メニューが簡便に作れ、圧倒的においしいことがその要因。主たる展開国はインドネシア、タイ、ベトナム、ブラジル。また新興国では昨年、パキスタンで新たにメニュー調味料を投入したが、消費者からの評判が好く安定的に売れている。
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冷凍食品事業の先進国および新興国での可能性を教えてもらいたい。
北米では味の素ウィンザー社の基盤構築を進めており、FY17以降、確実に売上伸長を図って行く。欧州では既にギョーザでアジア系のフードサービスと30億円ぐらいの取引があるが、付加価値品として高価格帯で販売出来るメインストリーム/リテールで販売してもらうべくワーク中。新興国ではまだ平均的なGDPは高くなくインフラも整っていないが、チェーンストアでのフードサービスを中心とした展開。何れの地域でも、スペシャリティ戦略を描き進めており、今後も伸長させていく。
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動物栄養事業におけるコモディティの生産資産のスペシャリティへの転換は不退転でやっていくのか。またスペシャリティ由来の利益は、17-19中計期間中には利益が殆ど出ないのにFY20に急に50億円出る計画になっているのは何故か。
コモディティの生産資産のスペシャリティへの転換は17-19中計期間中にしっかりやっていく。スペシャリティ化については17-19中計期間中は、「AjiPro-L®」の拡売を中心にスペシャリティの拡大を図って行くが、一定の時間が掛かることをリスクとして計画に織り込んでいる。FY20にはその成果が大きく発現する計画となっている。
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ヘルスケアセグメントではFY19に大きな利益の伸長を計画しているが、その背景は何か。
伸長するのは先端バイオと医・健食アミノ酸。先端バイオでは強力な特許を持っている核酸医薬の受託製造が既に成長ドライバーとなっており市場も伸長している。また、ADC(抗体・薬物複合体)事業が商業ベースに乗ってくるのはFY17後半からFY18だが、顧客の問い合わせが増加しており、確実に2桁伸長が見込める事である。医・健食アミノ酸についてはバイオビジネスが伸長していることから、トレーサビリティを伴った多くの成長因子等も含めたアミノ酸素材をワンストップショップで供給出来ることが当社の強みになっていること、またアミノ酸の栄養についてサイエンスデータをベースにし、配合力を持ったブランドネーム化した素材を幾つも持っており、これをBtoBの形で食品業界に幅広く提供し、2桁成長しているという事である。
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日本の冷凍食品技術の優位性はどこにあるのか。実際に新興国で冷凍食品事業を展開している事例はあるのか。
コスト競争力、好い物を作る技術、品質管理の3つが優れていると考える。新興国での展開としては、中国でチェーンレストラン向けに現地生産のデザートが5億円程度売れており、またタイでもギョーザが一定程度の販売規模になっている。
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プレゼンテーション資料(P.9)で従来掲げていた時価総額目標については既に達成したので、17-19中計の目標から外したと考えるが、ブランド価値へフォーカスした理由は何か。事業利益が非連続案件を織り込んでも1.6倍程度(927億円→1,500億円)の見通しにも関わらず、ブランド価値が2.3倍程度(650mUSD→1,500mUSD)に上がることを想定しているが、株式マーケットに先駆けて社会的価値が上がるのか。理由を教えて欲しい。
財務・非財務の活動をサステナブルに行う場合、その指標は時価総額ではなく、ブランド価値という結論に行き着いた。 当社のFY15のインターブランド社評価は650mUSDで上位のクラスとは桁が違う。利益規模の大きい企業だからブランド価値が高い訳ではなく、スペシャリティで価値訴求に取り組んでいる企業の評価が高い。コーポレートブランド価値への投資は、アカデミックに取り組んでいたUMAMIの有用性訴求のみならず、更なる活動強化の為であり、17-19中計期間中に費用増を見込む67億円の多くを占める。それによりブランド価値は2.3倍程度まで上がるのはないかと考える。但し、売上・利益ほど、精緻に紐づけされている訳ではない。
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構造改革のキーポイントは何か。1つは動物栄養のコモディティ生産のアウトソースだと思うが、今後何が必要で何を残そうとしているのか、その視点を教えて欲しい。 また、日本食品の利益率が思うように上がらない中、1%増を見込むが、工場の最先端化やコーポレート機能統合計画の中、コストダウンを通じて、効率化余地をどれくらいでみているのか。
動物栄養のコモディティは全部をやめる訳ではない。自社生産量を大幅に削減してアウトソースし、余剰能力でスペシャリティを生産出来る様に必要なものを残す。スペシャリティ化へ転換する為の土台は残す。2つ目はプレゼンテーション資料(P.6)の創造価値ストーリーの通り、先端バイオ・ファイン技術はMSG・核酸の競争力に繋がり、またアミノエンス基礎研究から繋がっている。コアコンピタンスは切り分けられない。人財と知財はしっかり内部留保する。
(生産のアウトソースをしても、従来通り、知見や先端技術は当社内に置いておけると言う理解でよいか、の問いに対して)知財=R&Dの成果物とすれば、当社内に残していく。
国内の構造改革はFY20以降もサステナブルという観点でテーマに入っている。その為の投資額を入れ込んでいる。加えて、ICT・デジタルトランスフォーメーションによる省人化・効率化のシミュレーションまでは出来ていない。走りながら考えていく。国内は雇用の問題がある。効率化が出来るのはFY20以降になろう。グローバルについては、低資源利用発酵技術によるコストダウン+αで織り込んでいる。 -
動物栄養のコモディティについて、外部にアウトソースをする場合、売上はどこに計上されるのか。連結上、ゼロのまま取り込まれるのか。自社生産を大幅削減した場合、売上、コスト、利益がPL上どの様な見え方になるのか。PLの未来像がわかるように説明願いたい。スペシャリティの事業利益が倍倍計画になっているが、マージンはどういう水準になるのか。増益源泉はボリュームなのかプライスなのか。マージンがどう伸長していくのか、イメージを教えて欲しい。
動物栄養の業績は販売量および販売単価の増減でボラタイルだった。自社生産を大幅削減すると、従来の供給量を賄えなくなる。その手立てがOEM。自社生産の場合はある程度の生産量が必要で固定費負担をしているが、OEMの場合はその必要はなく、量をコントロールできる。今後も売上は市況の上下で影響を受けるが、事業利益が固定費負担まで食い込んでマイナスになる事は解消出来る。リジン、スレオニン、トリプトファンはコモディティ化した。今後、FY20を考えると、バリンもコモディティ化のリスクが想定される為、バリンの価格を高めに設定する事はしていない。他のスペシャリティ事業は、トップライン成長と利益成長がパラレルで伸びていく。また、スペシャリティ転換への原資は必要で織り込んでいる。
スペシャリティの事業利益の倍倍計画については、バリン以外のスペシャリティ売上で見込んでいる。
(時間が経つとコモディティ化するリスクはあると思う。コモディティの売上はボラティリティがあっても残し、利益はニュートラルにして残すとのことだが、将来、競合によりコモディティ化した場合、ボラティリティを減らすようなポートフォリオで回すという考えか、との問いに)17-19中計では、FY20以降のテーマとして、ICTを活用した診断型ソリューションビジネスに取り組み、シフトしていく。第二弾、第三弾の高機能配合品だけで十分という訳ではなく、個体として価値の高い乳牛や豚を対象としたソリューションビジネス、これがスペシャリティの方向性と考えている。スペシャリティの基盤がしっかりしていけば、その時点でコモディティが必要かどうかという判断も出来る。 -
ブランド価値とキャッシュフローについて。年率ブランド価値が30%増、株価が20%伸長に見える。時価総額から当社の自己資本を差し引き、それが無形固定資産=当社のブランド価値とした場合、企業のバリューを毎年上げていく考えだと思うが、一方で、営業CFは事業利益ほど増えない理由は何か。減価償却費が3年間で少なくなるとみているのか。投資額は増えていると思うがどうか。売上や利益に必ずしもブランド価値が紐づいている訳ではないという説明だったが、キャッシュフローと企業価値の拡大をどう関連付けているのか。
14-16中計では、ブラジルの日清味の素アリメントス社株式売却等の特殊要因を除けば3年間で約3,300億円。それに対して17-19中計では200億円の増加を見込む。営業CFの伸びが小さいのは、構造改革費用があり、事業利益の下で発生するためである。
(特別損失を含むということか、との問いに対して)トップラインが伸びる計画なので運転資金も増える設計。足元を見て単純に伸ばしている。14-16中計同様、改善の余地はあり、運転資金の増え方は保守的に見ている。
(日本基準でいうところの特別損失の様な構造改革を織り込んでいるという理解でよいか、の問いに対して)2つの要素がある。1つ目はご指摘の通り。リスクとして動物栄養と国内の生産のところで、各40億円の原資を見込んでいる。どちらも発生すれば最大で約80億円が該当する。どこに計上されるかは、やってみないとわからない。2つ目は在庫水準を現状通り置いているが、そこには改善の余地がある。 -
海外食品について、新興国の都市型対応という事で冷凍食品等の加工食品やメニュー用調味料の売上高を伸ばしていくとの事だが、現在の事業の柱である調味料に比べるとそれらの利益率は低いと認識している。その場合、17-19中計期間はトップライン成長に伴い一時的に利益率が希薄化するという事か。それとも調味料の利益率改善でその希薄化影響を打消し、事業全体の利益率は維持出来ると考えて好いのか。
ご指摘の通り、現在調味料は15%以上の利益率であり、加工食品はそれより低い為バランスを取っていく必要がある。しかし一方で食品市場の成長や今後の海外の都市化を考えると、今からポートフォリオを拡大しておく必要がある。例えば北米の冷凍食品事業は成長市場ではあるが、その中のアジアン・エスニック市場でNo.1を取れば10%程度の利益率が期待出来る。調味料程ではないが、事業全体を希薄化する利益率の水準ではないと思っている。しかしこれがセカンド、サードのポジションになると利益率も下がってしまう。その為、現在北米の冷凍食品はアジアン・エスニック市場で圧倒的No.1になるべく構造強化を図っている。メニュー用調味料についても、まだまだ成長可能性があるので、注力してトップライン成長させたい。
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動物栄養のコモディティの生産を大幅に削減するという事は、現在の生産能力を加味すると減損等の一時的な費用が計上される見通しか。その場合、その費用はプレゼンテーション資料(P.19)に掲載のスペシャリティへの転換原資40億円に含まれているのか。
当社は世界4拠点に大きな生産設備を持っており、過去かなりの減損を行ってきた。17-19中計においてはスペシャリティへの転換原資として40億円を織り込んだとお考え頂きたい。総論的で申し訳ないが、詳細をコメントしてしまうと検討エリアが想定出来てしまい、事業への影響も懸念される為ご容赦頂きたい。
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17-19中計期間における海外食品の利益成長はRising Starsが牽引する計画になっているが、どの様に実現するのか。過去の実績から、当社の収益性改善のスピード感は早いとは言えないが、本当に達成出来るのか。
2016年秋に南アフリカのプロマシドール社の持分33.3%を取得しており、その後の新たな事業展開も構想している。また、トルコにおいても従来50%の持分だったキュクレ社だけでなく2017年度からはオルゲン社も連結対象となる。これらの案件は2016年度と2019年度では前提が異なっており、利益の純増に繋がる。それに加え、北米における冷凍食品事業の収益性改善による増益も見込んでいる。17-19中計期間のRising Starsの利益は伸び率こそ大きいが、絶対額としてはまだまだ小さいので、掲げた目標については十分に達成可能である。
補足として、トルコにおいては既存のキュクレ社と新たに取得したオルゲン社を統合して連結しようと考えている。ナイジェリアについても過去1-2年事業環境の変化に苦しんできたが、ようやく出口が見えてきた。今後は1年以内を目途にプロマシドール社と統合していく。これら2つの要素で、Rising Starsの利益規模が大きくなる計画。 -
過去の計画では着手出来なかったが、17-19中計において初めてメスを入れて改革を行おうとしている事はあるか。コモディティのスペシャリティ化以外で、西井社長だからこそ取り組めるポイントがあれば教えて欲しい。
17-19中計最大のポイントはASV(Ajinomoto Group Shared Value)と言う考え方をコアにし、味の素グループの活動のベクトルをはっきりさせた事である。当社事業は食品とアミノサイエンスの2つが柱になっているが、その中にも複数の事業が存在し、これまでは各事業が各々の事業最適を考えていた。ASVと言うのは求心力そのもので、当社が事業を通じてどの様な社会課題に貢献していくのかと言う考え方をまとめ上げている。この様な考え方は、これまでの当社の事業計画にはなかった。ASVを通じて解決すべき社会課題を明らかにする事で、その着地点としてコーポレートブランド価値の向上という目標を設定する事が出来た。
これまでも味の素グループ約33,000人の中には非財務領域で大きく貢献してきた従業員はいるが、事業を通じて財務目標の達成に貢献してきた従業員とはベクトルが異なっていた。事業の寄せ集めが会社ではなく、当社の全ての活動がASVの価値創造ストーリーに繋がっているという事を明確に示せた事が重要である。この価値創造ストーリーは社外のステークホルダーの方々と考え方を共有する為のものであると同時に、社内の全従業員とも考え方を共有する手段である。当社の成長の為には従業員の成長が必須であり、グローバル食品Top10クラスの働き方のイメージを共有する事でモチベーションを高め、好いサイクルを回していきたいと思っている。財務目標・非財務目標のバランスが取れた中で両者の関係性を意識しながらグループ全員が活動していく。その方向性を示したのは今回が初めて。その評価軸としてコーポレートブランド価値の向上を掲げたが、日本におけるブランド価値だけが上がっても目指す水準には届かない。世界中でコーポレート価値の向上を目指さなければならないが、現状当社は出来ていない。
その為、ASV価値創造ストーリーにグループ33,000人が一環となって取組み、目標達成を目指していきたい。 -
コーポレートブランド価値の定量目標をどの様に高めるのか。インターブランド社はどの様な軸で評価していて、当社はブランド価値というものをどの様に考えているのか。
インターブランド社によるコーポレートブランド価値の算定についての詳細は開示されていないが、評価項目は分かっている。1つ目は財務パフォーマンス。2つ目は生活者やビジネスパーソン、ステークホルダーによるブランド認知や好感度等。3つ目は、財務パフォーマンスを向上させる際にコーポレートブランドがどの程度貢献しているかと言う点。大きくこの3項目で、その下にサブカテゴリーが多数あってスコアリングされる。例えば時価総額も財務パフォーマンスの一要素にはなろうが、それだけではブランド価値は上がらず、消費者やビジネスパーソンからの評価が上がる事も必要である。そういう意味では、当社はまだまだポテンシャルが高いと思っている。これまでは商品を通じたブランド訴求に留まっており、ESG活動等の企業そのものの価値も合わせて訴求出来れば当社のコーポレートブランド価値を高める事は可能だろう。特にアミノサイエンスの分野には大きな可能性があると思っている。
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BtoC事業であれば事業を通じたコーポレートブランド価値向上はイメージし易いが、当社のアミノ酸事業の様なBtoB事業では当社のブランド価値向上には繋がり難いのではないか。
現状評価の高いグローバル企業を見てみると、必ずしもBtoC事業中心の企業ばかりではなく、BtoB事業中心の会社も評価されている。