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ナンバーワン企業であるにも関わらず、タイや日本などの外部環境の急な変化を読み切れていない。その体質を、臨機応変にどう変えていこうとしているのか。組織力や迅速性をどのように改善していくのか、説明願いたい。
変化のスピードが非常に速くなっているということだと思う。例えば食品事業でも、日本で成功事例を作った後に新興国に移転していくというスピード感覚ではなくなってきている。タイのコーヒー飲料マーケットで起きた変化は先進国とほとんど時間差なく起きている。アウトホームへの進展は、従来のスピードではないということだろう。
このような変化に対する対応力として一番大きいのは、人材の強化だと思う。働きがい向上における項目の中で、適材適所とキャリア開発が非常に大きなテーマである。これが出遅れたり、齟齬があると働きがいは向上しないということになる。 2017年10月に行ったグループ全体のエンゲージメントサーベイの結果において、79%の従業員が、当社の成長に対して自信があると回答してくれていることが分かっているが、世界のエクセレントカンパニーと比較すると、79%はまだ平均的なレベルだと思っており、少し差がある。従って、この部分をしっかりと伸ばせるような適材適所のキャリア開発を行い、ベースを高めていく以外にないのではないかと思っている。
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3つの課題事業について。北米冷凍食品、タイ、日本のコーヒーを課題事業として前回に続き社長は言っているが、FY18はどのように立て直していこうとしているのか。そしてFY19はかなり良くなるという話だが、その確度を伺いたい。
北米の冷凍食品、タイの「Birdy®」、そして日本のコーヒーという3事業については、FY18は17-19中計の目標を大きく下げている。従ってこれは、売上目標を確実にやるとともに、課題解決に集中的に取り組むという意思の表れだと考えていただきたい。FY18はこの3つの課題事業を含め、全体で事業利益1,030億円という目標を確実にやる。そしてFY19に向けて、それぞれの戦略を着実に跳ね上げられる1年にしたい。
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株式市場においては、タイと日本のコーヒー事業は、構造的に逆風で厳しいのではないかという見方があり、株価はその懸念を映しているのだと思う。FY18タイの缶コーヒーの売上は横ばいと言われても、FY17は2桁減の状況であるため、本当なのかという違和感はどうしてもある。FY18タイ全体の売上も1桁台前半増という話だが、FY17はマイナスという状況の中、本当に当社の見立ては正しいのか。かなり楽観的ではないかという見方もある。詳しく説明いただき、その不安感をこの場で払拭してもらいたい。
FY18は、タイのコーヒー事業は前年並み、タイ全体で+3%という目標設定とした。コーヒー事業については、単月で全てを語れるわけではなく、またFY17の4月は3月の販売強化の反動もあり厳しい数字であったという点もあるが、FY18の4月においては金額・数量ともに伸長している。現時点での第1四半期の見通しは、数量ベースで前年並みをキープできるのではないかと思っている。
一方、あまりにも缶コーヒーの状況が厳しく、FY17全く注目を浴びなかった風味調味料あるいはメニュー調味料を中心とする既存分野については、順調に伸長している。従って、Five Starsのヒット国であるタイにおいて、FY18は対前年+3%のトップライン拡大を自信を持って達成できると、この場で申し上げておきた い。
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タイのコーヒー事業について、FY17中間決算時も、計画通りで非常に自信があるということであったが、結果このような状況になってしまっている。例えばシェアが上がっている等、よりかみ砕いて再度説明をいただき、勇気を与えてほしい。
物品税や砂糖税の導入等があり、飲料市場全体が厳しい状況にあるのがタイの実情である。ただ、4月単月ではあるが好調な実績であり、第1四半期の見通しについてはほぼ確たる動向ではないかと思う。FY17中間決算時には物品税は導入されていたものの、値上げ直後であった為、その影響を正確には見通せなかった。
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タイにおいて、缶コーヒーあるいは調味料の競合状況はどうなっているか。まだかなり厳しいというのが大方の見方である。
調味料の競合状況が厳しいという認識はないが、缶コーヒー市場については、FY17前半、現地のエナジードリンク会社が安い価格で製品を出し一定のシェアを獲得し、われわれが一定のシェアを失ったということは、過去にはない大きな出来事であったと思っている。
失ったシェアをどう回復していくのかという点について、安い価格で出すということは一切想定していない。製品の抜本的改定と、現時点で最も大きい買い場であるロードサイドの店舗をしっかりフォローすることが肝要ではないかと考えている。
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タイにおける、FY17下期のかなり厳しい値下げ競争は、どのような状況になっているか。緩和しているのか、もしくは、同業他社が値上げに追随しているなど、将来の見通しも含め環境の変化があるか。
物品税導入後、当社は1缶当たり13バーツから15バーツに値上げ実施、グローバル大手企業も同様に13バーツから15バーツに値上げをした。引き続きこの2社における市場の寡占状況は変わらず、競争環境の劇的な変化はないだろう。
また、現地エナジードリンク会社の利益構造は相当厳しいだろう。値上げ前の10バーツと値上げ後の12バーツの2つの価格帯が市場に存在しているが、プロモーションそのものは大幅に後退しており、一時ほどの店頭でのたたき合いはなくなっている。
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タイについては、事業環境は底を脱し、少し元に戻り始めているという認識で好いか。
競争環境についてはYes。現在、缶コーヒーのみならず、タイにおける缶飲料のマーケットについては、全体として厳しい状況に置かれていることは間違いないと思う。缶コーヒーのマーケットは伸びずに横ばいと見ている。また、FY17に失ったシェアは価格を下げてまで取り戻さないというFY18の予算である。
しかし、タイに40万店あるロードサイドの店舗のフィールドシェアは非常に大きく、活動としてはここを徹底的に使いロイヤルユーザーへのプレゼンスを保っていく。価格で離れるユーザーはFY17に離れただろう。
その上で、製品の品質上の課題があり抜本的な改善が必要だと思っている。ロイヤルユーザーにさらに満足していただき、失ったシェアを取り返すためには、当社と競合との間で縮まった品質の差を広げることが重要と考えており、FY19に必ずやると申し上げたい。
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タイの缶コーヒー市場は伸びていないということだが、当社のタイにおけるコーヒー事業はもう伸びないという前提なのか。FY18のコーヒー事業は減益であり、改善はないということか。
タイの缶コーヒーについては、FY18は金額ベースで伸びない計画。ただし、原料豆の共同購買を味の素AGF社(以下、AGF社)と行い、コストダウンについては取り組んでいく。トップラインが伸びないため、過去のように利益2桁成長というわけにはいかないが、改善を図る。
FY18の予算は調味料と缶コーヒー以外の加工食品で+3%に持ち上げるという計画で組んでいる。缶コーヒー事業については、FY18は足場固めであり、FY19は勝負すると受け止めていただきたい。 RTD(Ready to drink)全体の市場を考えた時、アウトホームにもしっかり取り組まなければならない。アウトホームについては、今AGF社と、開発だけではなく販売のノウハウも含めて構築中。
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タイのコーヒー事業について、ロードサイドにおける需要拡大に当社の商機もあると思うが、その分を入れても、FY17に失った穴は埋められないという理解で好いか。当社のタイにおけるコーヒー事業の一番の核は、過去も今後も缶コーヒーであるという理解で好いか。
缶コーヒーの失地回復は、FY18はできないかもしれないと受け止めていただきたい。タイにおける経済情勢は全体的に良くなく、やはり安いほうが良いという消費者もいる。ただロイヤルユーザーも多くいるので、その需要を掘り起こす活動をFY18にやり、横ばいの計画。今後どのくらいチャレンジできるかというのは、製品の品質をどれぐらい向上できるか、またアウトホームビジネスの基盤を1年間でどういう形にできるかにかかっているとご理解いただきたい。
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FY19は、課題事業の解決とオーガニック成長で約130億円の増益という計画だが、その内訳を教えていただきたい。課題事業解決の比率が大きいように感じるが、どうか。
北米冷凍食品のFY18の計画は、FY17よりは上回っているものの、FY16、FY15の数字には遥かに及んでいない。これをFY19にはV字回復させるということであり、最低でも過去最高のレベルまで戻していきたいと思う。日本のコーヒー事業についてもパーソナル市場に非常に強みがあり、FY18の成長目標では足りないと考えており、今基盤を固めているところである。それにタイのV字回復が加わることになる。FY19の130億円増益については、これらの課題解決でできるのではないかと思っている。 -
北米冷凍食品のV字回復に対して、どのような前提条件で社長は自信を持っているのか。
FY17については、製品の梃入れを行い、スペシャリティ化ができ、アジアン製品については目標どおりの2桁成長を実現。これにより、北米の冷凍食品が伸びないといわれていたことに対して、抜本的な品質改善を行い、おいしさの提案をもう一度すればチャンスがあると証明できたと思っている。従って、製品のスペシャリティ化については効果を生むと信じている。
ただ残念ながら、アペタイザーとメキシカンは、FY17は供給不安があり、そこまで着手しきれなかった。抜本的な品質改善を行うと、生産現場にとってはハードルが上がることになるが、これを生産拠点の再編とともに実施する難しさがある。
FY18は+11%の売上成長を計画している。製品のスペシャリティ化によりトップラインを拡大する。北米において、当社の冷凍食品に対する期待値を上げることであるため、まず実施しなければならない。また地盤固めのため利益は上がらないが、生産の再編を行う。そしてFY19に利益率も付随して向上できるようにするという計画。
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FY18、北米冷凍食品の11%増収について、カテゴリー別にどのような内訳か。また、生産の再編による固定費削減が期待できるのであれば、解説願いたい。
前提としてFY17を振り返ると、アジアンの構成比が約44%あり、売上は2桁伸長。アペタイザーとメキシカンは前年並みで、イタリアンはマイナス。リテールとフードサービスに分けると、リテールの構成比は65%であり、売上は+5%伸長した。コスト面は、工場の生産面の問題もあるが、それ以上に原燃料、運送距離の規制が影響し厳しかった。
FY18は売上+11%を目標とする中で、アジアンは+15%程度を狙っていきたい。アペタイザーとメキシカンは、需要は明確にある中でFY17は当社が供給できない状況があったので、この5月以降生産が安定化すれば、+10%に近い数字が期待できるのではないかと思っている。
コストについては、ジョプリンとサンディエゴ工場の生産の安定化を図る。原燃料価格の上昇については、価格対応をどうしていくかということを検討していかなければならないと思っている。
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当社の飲料事業について、中期的な当社戦略を教えてほしい。今後いろいろな国で、コーヒー事業だけで果たして当社の飲料事業が伸長できるのかということが根本的な懸念点である。
コーヒーの事業について、日本における課題はAGF社が主体となり解決、タイにおいては、現地法人に対してAGF社も積極的に、特にFY18は今まで以上に人材も投入し抜本的解決強化に向け協力する計画。
ただ、グローバルでコーヒー市場全体は伸びていくが、インホームにおいては相当な低価格化が進んでいる。それに対抗し得る国や、付加価値型製品の市場性がある国では、インホームにおいても現地と進めていく考えだが、それよりも、中期的にはアウトホーム需要が中国や東南アジアで伸長すると見ており、今後様々な実験をしながら開拓していく。
飲料事業全体では、日本の抹茶や各種フレーバーティーがAGF社のフレーバー技術を含めた強みでもある。この分野における3 in 1、2 in 1については、当社が展開している国でビジネスチャンスがあると考えており、FY18も含めて随時発売していく計画。一例が、FY18/4月からベトナムで、「Birdy®」ブランドで発売していた3 in 1の品質改定を行い、「Blendy®」ブランドとして現地の嗜好に合わせラインナップ強化を図った。
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タイについて、調味料や飲料ではなく、加工食品がマイナス傾向にあると思う。それについて現状の説明と今後の戦略についてもお伺いしたい。
タイの加工食品については、即席麺と3in1タイプの粉末飲料が大部分を占める。
粉末飲料については、タイ国内の売上は前年プラスアルファ。ミャンマーへの輸出分についてはFY17もチャット安が続き、現地生産品との競争力という観点で弱かった部分があり、その影響でタイ全体で前年割れとなっている。
また、即席麺については、マーケットそのものが対前年で微減となる中、販売競争におけるプロモーションという点であまり対抗しなかったことにより売上をやや落とした。一方、即席麺の中でも伸びているのはカップ麺。カップ麺については品質強化と、コンビニエンスストア店頭での露出を強めることによりしっかりと伸ばしている。ただ、袋麺の減少までは補いきれなかったということ。
今後は、カップ麺市場でシェアを上げていくことに加え、タイからASEAN域内への輸出事業の展開もFY18初めから開始。もともと欧州、中国へ輸出をしているが、インドネシアとカンボジアへ拡大。規模はまだ小さいが、即席麺のみならず、加工食品の展開地域を増やしていくという試みを今後強めていきたいと考えている。
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海外調味料・加工食品全般について伺いたい。タイのタピオカのコストアップについて、想定以上の値上がりによってFY17下期に35億円程度影響したとの事だが、FY18には価格転嫁するのか。また、FY17はタイの缶コーヒー事業に注目が集まったが、Five Stars各国の調味料事業はどうなっているのか。何か直面している課題があれば教えて欲しい。
発酵原燃料影響についてはFY17中間期に見通しを修正し、15億円程度のプラスに寄与すると想定していたものが、結果として35億円のマイナス影響になった。主原料である穀物の相場価格は季節によって大きく変わり、タイのタピオカで言うと収穫期が11月ごろであるので、例年通り収穫期後に当たる第3四半期から第4四半期にかけて相場価格が下がると見ていたところ、下がらなかった。その見通しができなかったところが大きな課題であり、この部分はFY17には対応できなかった。
FY18にコストダウン等で打ち返す57億円の中には、その様な状況を踏まえた上で、複数の国で値上げ検討も含んでいる。また、FY18/11月の収穫期まで現在の高価格が継続するかも知れないというリスクが、82億円と57億円の差である。この差額については、残念ながら現在カバー出来ていない。そういう距離感であると思ってもらいたい。
また、調味料は当社のNo.1領域だと思っているので、価格転嫁やコストで目標達成は可能だと思っている。業績予想として1,030億円を掲げているが、現在カバー出来ていない82億円と57億円のギャップについて、事業環境を見て追加の値上げ対応等も含めて出来るだけ埋めていきたい。
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日本食品の業務用事業について、業界データを見ると調味料・加工食品、冷凍食品共厳しいようだが、FY18は回復可能と考えていいのか教えてほしい。
FY17の日本の家庭用商品と業務用の中食については堅調で、予想どおりの数字になっている。にも関わらず、事業利益で予想と実績に26億円の乖離が出たのは、コーヒー事業と冷凍食品が未達だった事に加え、国内のベーカリー事業も影響している。主に冷凍のパン生地を供給しているが、大手顧客への供給において先方の調達政策の変更があったことによる。
また、FY17には、FY16の期中に株式を売却したギャバン社の業績も影響している。ギャバン社は主に業務用の会社であるので、この部分が短期的な要素としては入っている。
ベーカリーについては、大手顧客の調達政策の変更に伴い生まれた生産余力を使って、当該顧客以外へのビジネスを広げつつある。これについては、取り戻しつつあると思ってもらえれば好い。調味料・加工食品の業務用については、FY18には堅調に推移するとお考え頂いて構わない。
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タイの調味料事業について従前は売上高に応じた利益成長という基本戦略だったが、FY17からはもう一段利益率の改善もしたいというお話を伺っていた。これに対する進捗はどうか。また、FY18は着実に利益率を上げることができるのか。調味料事業の見通しを教えてほしい。
トップラインの成長については、着実に伸ばすことができると思っている。利益については、現在高値が続いているタピオカの高騰はタイやインドネシア、ベトナムといったASEANの法人に広く影響する。従って、FY18の業績予想においてはコストダウン等で57億円は打ち返す目途が立っているものの、原料価格の上昇影響である82億円との乖離については現状詰め切れていないということはぜひご理解いただきたい。
ただし、この価格高騰にはかなりスポット的な要素が入っていると推測している。その為、原燃料価格の高騰に対し、どこまで手を打てば好いのかを推し量りながら戦略を考えている。極端な例だが、今のタピオカの相場価格が続くようだと、全部砂糖に変えてしまったほうが好い。ただし、その様な一時的な話ではなく、将来にわたって安定的に原燃料を確保する必要があるので、現在状況を見極めているところである。現時点では利益目標を引き下げる判断をした。
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日本で成功したビジネスモデルを海外に展開するという件に関し、昨今ビジネスを取り巻く環境のスピード感が変わってきたという話があったが、これに対応して経営の組織体制を変える必要はないのか。それとも現時点の延長線上で対応できるのか。先日、グローバル大手企業がスターバックス社の商標を非常に大きな金額で買収した。この様に世界ではビジネスのスピード感がどんどん上がり、思い切った事業ポートフォリオの入れ替えが必要になる事もあると思う。その点、当社を見るとスピード感が足りているのか疑問に思うところもある。今後の経営戦略についてもう一段聞かせてほしい。
事業環境変化のスピード感については、仰る通りである。具体的には、人々の生活が都市型に変化し、それに加えて消費のアウトホーム化やEコマースによる購入というかたちで、買い方・消費のされ方が大きく変わってきたという事である。AGF社の戦略の1つとしてEコマースの強化を掲げているが、それ以外の事業でも試みている。日本だけではなく、例えばインドネシアやタイでも取り組んでおり、Five Starsの中でEコマースへのトライを始めている。これらのトライの結果を見て、今後の強化すべき方向性を見定めたい。
その方向性は大きく3つある。1つは日本のダイレクトマーケティングのように自前でやること。2つ目は、既に出来上がっているプラットフォームを活用する事。3つ目は、これから出てくる新興企業と組み、一緒に仕組みを構築する事。現状、自前でやっているのは日本だけだが、残りの2つの可能性はFive Starsの中でビジネスを始めている。越境Eコマースについては主に日本から中国に向かって調味料・加工食品を売る仕事を始めている。
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タピオカ価格が上がっている理由を教えてほしい。今後価格が下がった場合、FY18には82億円のコストアップで見ている分が反転して82億円の利益として歩留まるという理解で好いか。
現在の価格が継続すると巨額のコストアップになるので、その場合には値上げや原料の代替を行って対応する。価格が上がっている要因だが、FY17下期に急騰するまでは非常に安い状態が続いていた。その結果、タイのタピオカ農家が作地面積を縮小して調整せざるを得ない状況になったことだと思う。ただし、この調整が続くと農家自体もやめなければならなくなるので、その様な状況にまではならないと見ている。
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海外調味料に関し、ドライセイボリーのシェアがグローバルで23%という話があったが、このシェアが近年どう様に推移してきたのか。グローバル大手企業に加え、当然各国の現地メーカーがいるが、競争環境がどうなってきているのか教えてほしい。
調味料については大きく3つの領域に分けて事業を展開している。1つ目はうま味調味料、2つ目は風味調味料、3つ目はメニュー用調味料である。ただ、これらを全世界同様に事業展開しているわけではなく、競合環境も家庭での使用実態も、各国の食文化によって大きく違う。その為、グローバルにおける調味料のマーケットとシェアを計算する事そのものについては、それぞれの強い地域、弱い地域も歴史的にある事まで見ていく必要がある。
うま味調味料については、家庭で使用しているのはアジアの人々しかおらず、マーケットそのものもアジアと南米、アフリカの一部地域があるぐらいで、ここについては味の素ブランドが圧倒的シェアを占めている。今後も大きな成長は望めないが、+4%程度の成長は望めるのではないかと思っている。
2番目の風味調味料については、われわれの主戦場はやはり東南アジアと日本、および南米である。残念ながら欧米では巨大なグローバルメーカーがシェアを持っていて、当社が今から入っていくのは難しい。われわれが進出している国については、基本的には50%を超える圧倒的なナンバーワンのシェアを誇っており、市場拡大にも貢献していると思っている。
3つ目のメニュー用調味料については、現在200億円を超える規模になり、かつ2桁成長を過去数年ずっと続けている。伸び率自体は徐々に縮小していくと思うが、2桁の成長は確実に継続できると思う。それぞれの国に合ったメニューは、日本、タイ、ブラジル、インドネシア、ベトナムと違うので、日本にある当社の独自技術(P-MAP)を駆使して各国の人々の好みに合った味を作っている。その結果としてトップシェアを獲得しており、おいしさ・品質についてもNo.1の評価を頂いていると思っている。
グローバルのドライセイボリーのシェアについては、過去数年間、毎年約1%ずつシェアを上げてきている。ただし、これには、メニュー用調味料は含まれておらず、うま味調味料と風味調味料のシェアである。この中にはローカル競合もいれば、グローバル大手企業も入っており、その中で1%ずつ伸ばしてきているというのが今の状態である。現在掲げている目標を達成出来れば、FY18も1%程度は伸ばせると思う。グローバルで見た場合の販売国数としては、当社よりグローバル大手企業の方が多いが、各国のシェアは当社の方が高いので達成は可能である。
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日本のコーヒー事業に関し、FY18は売上を反転させて5%増収を目指すということであるが、伸びている業務用の構成比は約25%とまだ小さく、スティックコーヒーが拡大しているといってもまだ規模は小さいと思っている。FY18にはリキッドコーヒーのパーソナル対応もするということもあるが、これは既に飲料メーカーが激しく競争している分野である。本当にAGF社の売上を反転できるのか。
確かに、AGF社がFY18に売上高を5%成長させる事は簡単ではない。FY17に落とした売上高が約70億円で、その大半が家庭用のインスタントコーヒー、リキッドコーヒー、ギフトであり、これらは全て家庭用の事業である。
一方、日本のコーヒー市場は47%がアウトホームで構成されており、現在市場成長しているのもアウトホームである。当社は業務用の構成比が25%しかないという点からすると、簡単な目標ではない。5年前まではアウトホームの構成比が10%以下であったが、大手CVSのカウンターコーヒーが入って25%まで来たというのが現状。市場と同様に当社もアウトホームへの売上高を着実に伸ばしており、オフィス用途や給茶機向けを中心に過去2年程度2桁成長をしている事から、FY18も継続して成長できると思っている。ただし、短期的には、売上高を落とした家庭用を回復させなければならない。
インスタントコーヒー市場は過去5年間、毎年1~2%縮小をしていたが、FY17は7~8%と急速に市場がシュリンクした。FY18/4月を見てもこの状況は変わっていないので、この傾向は継続すると見た方が好いだろう。そう考えると、ここで失地回復するのは難しく、市場の伸び程度を目指す事が現実的だろう。
リキッドコーヒーについては非常に価格競争が厳しい市場で、当社は利益率も意識して価格対応をしなかった。今後も基本的には方針を変える気はない。また、その様な状況において製品ラインナップを強化し、2018年2月にブラックコーヒーの品種を増やしたが、それらが3・4月と大変良い調子で販売出来ており、ここについては一定の割合で前年を超えられると思っている。
ギフト事業についても、お歳暮商戦および拡大する通年ギフト需要に向けてラインナップを強化する事で、失地回復を図っていく。そして、成長戦略の要であるスティックに全社を挙げて注力する。過去5年程度、構造強化のために価格戦略をあまり取らなかったが、市場がシュリンクしたり、厳しいカテゴリーについては価格競争になっている。FY18は今までどおりの価値訴求に加え、適度な価格戦略を取らないと5%成長には届かないだろう。臨機応変に上記戦略を実行しながら5%成長を達成させたい。
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財務戦略に関し、フリーキャッシュフローの見通しも開示されているが、今後、非支配持分株式の買い取りの可能性もあるという事で、いつになったらフリーキャッシュフローの水準が上がっていくのか。また、可能であれば非支配持分株式の買い取り価格の規模感についてもご教示頂きたい。
事業利益という観点では、FY17・18は17-19中計目標に照らして少し遅れていることは否めないが、キャッシュフローという観点からすると、事業利益の向上以外にもキャッシュコンバージョンサイクルの改善等もあり、営業キャッシュフローとしては目標のレベルまで来ていて、FY18以降も継続して目標達成を目指していく。
同時に、17-19中計で発表した当期利益の改善策として、Five Starsにおける非支配株主からの株式買い取りも検討している。これまでずっと過去の経緯もあり、創業以来、非支配株主にも株式を保有頂いているが、世代交代もあり、当社としては経済合理性などと、理解頂ける範囲の中で株式を買い取り、出来る限り業績の全てを味の素グループの連結につなげるべく取り組んでいる。これをFY19中には何とか実行に移したい。金額規模そのものは申し上げられないが、アジアの主要法人で株式を100%保有していない所が対象になる。ただし、一度に全てを買い取るのは無理であるので、段階的に実行していく。
事業成長以外のところでもこの様な取組みによって、早期にROEの10%超に到着させたい。