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西井社長が中間決算説明会で発表したアセットライト経営について、その一部はFY18から始動するという説明だったが、今回のFY18 業績予想の下方修正はアセットライト経営と関係しているのか。その場合、どの程度金額に織り込まれているか。
西井が説明したアセットライトの数値上の成果はこれからであり、まだ発生していない。FY19以降に発生する。
(今回の減損計上で膿は出したと言えるのか。西井社長は業績へインパクトというものも考慮しながら進めていくのでFY18から前倒しで始めるといった説明をしていた、との問いに) 膿を出すということについては集中的にやることだと考えている。一方で、減損の対応については出来る限りのことをしたが、このタイミングでの発表となった。この事を踏まえ今後、事業由来の課題を解決するということを前提として、FY19にどの程度新たな集中と選択に伴うアセットライトのマイナス影響が発生するのかという事を定量化していく。現在、FY19は既存のオーガニックのものから生まれる成長と、アセットライトによる影響をどこまで織り込めるのかについて計画している最中である。2019年5月の決算発表時に、より具体的な説明をしたい。
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日本の冷凍食品について、下期は「ギョーザ」等の新商品などで巻き返しを図ると説明を受けていたが、新商品効果が出ていない状況なのか。その場合、根本的な敗因はどの様に捉えているか。いつ頃リカバリーができるのか。
FY18/1Hの苦戦を取り返す施策を打ったと認識している。ただ振り返ると「ギョーザ」は二桁成長を果たしていると認識しているが、想定していた伸び率はもっと高かった。1つの既存品の改訂、2つの新商品の発売という観点では、一部のカニバリもあり想定の伸びに繋がっていない。加えて「ギョーザ」は収益という意味では製品改訂に伴う実質的な値上げも実施したが、競合との価格差が小さくないと量販店では問題なくても、消費者の購買動機には繋がり難い。よって伸長率が弱まった。から揚げおよび米飯も手を打ったつもりだが、残念ながら失敗だったと思う。真摯に受け止めてFY18/Q4にパッケージの変更や新製品の投入を行っている。まず重要な米飯、から揚げについては、FY18中に巻き返し図り、FY19以降売り上げの平準化に努める。
(当社の冷凍食品の弱さは営業由来か、商品そのもののクオリティと価格のバランスに問題があるのか、との問いに) 「ギョーザ」、から揚げ、米飯は元々は当社シェアが高い商品であったことから、商品も販売も自信があった。しかし昨今、売り場での競合のスピーディーな品質改訂や販売促進により、多くのアイテムが売り場に並んだ。その中で当社の相対的な優位性が落ちてきた可能性がある。
(まだ、はっきりとした打ち手は見えていない状況か、との問いに) 家庭用冷凍食品市場+3%という中で、当社は「ギョーザ」が2桁成長というのは力があるということ。米飯、から揚げについては、個々のバラエティ投下を増やし、ブラッシュアップすることと価格弾力性に対して競争優位性を発揮していく。
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FY18業績予想の下方修正について、減損損失を除いても大きな減額修正である。短期間での業績予想の再修正だが、事業環境が激変したとは思えず、足元の状況をしっかり把握できていなかったのではないか。
最大の見誤りは、日本冷凍食品の上期からのリカバリーを目指した下期以降の施策の効果に当初想定と差があった。また、海外の調味料についてFive Stars各国において想定していたマーケットの伸びが、実際はそこまで上がらなかった。マーケットリーダーとして、中々市場を喚起する施策が打てなかったため伸び悩んだ。 -
日本冷凍食品の価格戦略について教えて欲しい。「ギョーザ」について、他社との価格差があったことが失敗した背景だと説明があったが、今後は価格差を埋めていくのか。米飯については、競合他社で実質的な値上げを発表しているが、それに対してどの様な考えを持っているのか。
ギョーザの価格差は以前より縮まっていると認識している。施策の一つである新製品発売については、売り場では好評であった。ただし「ギョーザ」全体で見ると当社の中でカニバリが起きている。投入するアイテムをコントロールしていく必要がある。もう少し単品に寄せる必要があるかもしれない。米飯は競合が新商品を出す中、「ザ★チャーハン」の拡売を機に他のアイテムを終売させた。その結果、売り場でのプレゼンスが弱まった。元々力のあったもう1,2製品を発売することが次の機会に繋がる。既に取り組んでいる。 -
「ギョーザ」は現状のプライスを維持していくのか。米飯の価格戦略はどうか。
「ギョーザ」は現在でも価格競争に耐えうる力を持っているため、維持していく。米飯は、量販店でのプロモーションの頻度に耐え得るマーケティング費用の投下を実施していく。 -
海外の調味料市場の伸びが弱かった理由。特にインパクトの大きかった国はどこか。
特にインドネシア、ベトナムにおいて風味調味料の伸びが弱かった。最大の理由は家庭内喫食のみならず、外食も含めた市場で、競合のプロモーションの戦いや、製品について業務用にも販売できる商品を持っていたかどうかという事。総合的な観点で競争環境に飲み込まれたと思っている。
(それに対し対策は打っているのか、との問いに) インドネシアの「Masako」については、風味原料の内製化と品質アップ、および値上げを2018年12月に実施。収益性と製品力強化を行った。Q4以降に結果が出てくるだろう。ベトナムも2019年4月以降、製品改訂および価格改定を計画している。
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味の素フーズ・ノースアメリカ社(以下、AFNA社)の減損損失は、5ヵ年に亘る収益性の見込みの違いが原因ということだが、5か年の収益性について何をベンチマークにしているのか。
買収時に、強い分野であるアジアン、アペタイザー、メキシカンに絞り工場を再編するという計画を立て実行してきた。目標としては、早く事業利益率を10%近いところまで持っていくということを掲げた。アジアンやアペタイザーは収益性が高く伸びており、この領域で当社が力を発揮することで達成する計画だった。しかし、工場再編と新製品投入に至る前に、工場の立ち上げに少し時間を要し生産ロスが発生し、また物流費が上昇したというのがこれまでの経緯。事業利益率10%を達成するにはまだ時間がかかると見ており、次期中計の後半になんとか達成するという計画。それが減損テスト時の評価のベースとなっている。 それ以外に、米長期金利が高まったことにより加重平均資本コストの評価が下がったことも影響した。
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AFNA社の資本コストがFY17からFY18/Q3にかけて、どれ位上昇したのか。
9.4%から11%まで上昇した。 -
今回まとめて大きな減損損失となったが、本件によって、今後の当社のM&Aの考え方に変化が出てくるか。
当社の中では大型のM&Aもしくは資本参加をしたが比較的早い時期に減損になったことは正面から受け止めなければならないと認識している。 今後の成長の為に、どの分野にどのような投資をしていくかというのが、アセットライトも含めた新たなる集中と選択という考え方。集中する分野においては、積極的に投資をしていきたい。そのためにまずはコア分野を急ぎ設定し、次期中計の前倒しで社内外に対し明確化した上で次のM&A戦略を具体化していきたい。 -
インドネシアでの風味調味料の今後の対応について、打ち手が原料の内製化および値上げを実施するということだが、競争激化の中で12月に値上げをしたことが、どの様に巻き返しに繋がるのか。
インドネシアにおいて当社の風味調味料はトップブランド。これまで製品の鮮度を継続的に上げてきており、今回12月に製品改訂を行った。またこれを契機とした値上げを実施。お客様に喜んでいただきながら収益性を上げていくということ。
(製品改訂を行うため、FY18/Q3は旧製品の出荷を積極的にしなかった背景もあるか、の問いに) No。製品改訂のタイミングが少し遅れたことにより、旧製品での販売を継続することになった。その間、景品付き特売などを積極的に行う競合他社と比較し、流通や消費者から見た時に見劣りしたと考えている。
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インドネシア、ベトナムの風味調味料の不振の深刻さについて教えて欲しい。市場はどれくらいで、当社の業績がどれくらい落ちたのか。
風味調味料が「AJI-NO-MOTO®」に代わる成長ドライバーとして堅調に成長してきたが、今は先に例に挙げたインドネシアやベトナムを見ると、重量ベースでほぼ前年並みか+1%程度の成長にとどまっている。それに対し当社の販売はインドネシア、ベトナム共にやや前年割れ。市場も若干鈍ったが、それより当社が少し弱含んでいるというのが課題認識。
(インドネシアやベトナムでは市場環境が変化している様だが、それに伴いメニュー調味料の伸長率は加速の局面に入ってきているのか、の問いに) 構造変化は2つあると考えている。1つは、汎用的に使える「AJI-NO-MOTO®」や風味調味料から、用途は限られるが簡便なメニュー用調味料に市場のニーズも変化してきており、メニュー用調味料は当社の販売も2桁以上成長している。もう1つは家庭用と外食という視点で考えた時、かつては外食という概念がアセアンの中で薄かったが、最近は外食が広まり外食製品が伸びてきている。その中で当社の製品が入り切っていないという課題があると思っている。幅広く喫食をとらまえて、特に外食やフードサービスといったまだ伸び代がある分野へも注力すべく、品種戦略もふまえて見直ししたいと考えている。
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プロマシドール社が減損損失に至った背景。事業環境がどれだけ悪化したのか。また、今後どうなっていくか。
プロマシドール社が展開している国は36か国ほどあるが、大きいのは5か国。具体的にはアンゴラ、ナイジェリア、アルジェリア、ガーナ、コンゴであり、各国に共通しているのは、外部環境要因。例えばアルジェリアは原料輸入の規制が起こり、アンゴラは外貨不足、事業縮小も起きている。またナイジェリアは産油国のため、原油価格下落により外貨不足となり、経済の停滞が内需に影響しているというように複合的な要因が絡んでいる。 その中で当社事業も影響を受け、当初計画には至っていないというのが今回の減損の一つの要因。それに加えて、金利の変化、カントリーリスクの上昇によりマルチプルが大きく変化しており、評価減につながっている。
(プロマシドール社の資本コストはどの程度になったのか、の問いに)マルチプルだけの計算になっており米国とは少し状況が違う。
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いずれのエリアでも当社の打ち手が後手になっている。問題が起きてから対処しているように見える。マネジメントが行き当たりばったりだという印象。アセットライト経営も重要なことだが、いかに環境の変化に迅速に対応していくのか。どのように課題の認識をしていて何を根本的に変えようとしているのか。施策は既にあるのか。
競争戦略には自信を持っていたが、「任せる現場」において迅速な行動を展開できることが大事と思っていたが、大きな変化に追いついてない。「統率するヘッドクォーター(HQ)」で事業環境の変化をタイムリーに把握し、臨機応変な施策と戦略、大きなリソースの配置をHQがグリップすることが十分果たせていない。コア事業については市場で起きていることに対して軌道修正できるように意思決定をシャープにしていく。危機感を持っている。 -
体制はアセットライト経営と同時に変わっていくと考えて好いか。
まだ社内での詳細な検討はこれからだが、絞った領域のマネジメントが迅速にできる事業体制とそのサポート体制を実現する。例えば重要な調味料は、従来の日本、海外と分けずグローバルで戦略の実行についても一本で立てていく計画。 -
今後の取り組みについて、現状のスタッフ、経営陣でやっていけるのか。後手に回ったマネジメントが、組織を再編して実行するということが理解できない。どの様に考えているのか。
考え方として、マーケットに近いところで意思決定をすることは重要なマネジメントスタイルと認識している。但し、重要な武器となる技術や商品設計、人材の配置には、全体を見て必要な分野に配置することも重要である。当社は前者を是として進めてきた。日本でも冷凍食品の分社化やAGF社の買収など各社にフルライン、フルファンクションがあり多角化してきた結果、分散化してきた反省がある。 伸ばしたい「ギョーザ」やメニュー調味料は今後も投資が必要であるが、事業が多角化しているため分散化している。どの分野だとグローバルトップ3域内にはいるか明確に定め、事業部体制がより力を持って、市場を把握し必要なリソースを迅速に配賦していく。伸ばしたい分野に必要な投資する。得意とする分野に集中することで、当社の経験の深い人財がマネジメントできる。事業を集約することと人財をセットで考えていきたい。 -
今後は専門的な能力のある人財を配して、事業を人から変えていくというアイディアは持っているのか。
フォーカスする分野に最もスキルや経験のある人材を配置する。分野ごとのプロフェッショナルを発揮するという観点でやっていく。 -
当社のスピード感は遅い。リストラ或いはアセットライトをするにしても、オープンな形で話してはいるが実行には時間が掛かるイメージ。当社が検討している間に、競合は全部情報を共有し、当社に対する防御壁も作ってしまっている。働き方改革に反するかもしれないが、時間を費やすべき時には時間を費やし、またもっとスピーディーに動き、この厳しい局面において是非、踏ん張って欲しい。
激しい変化に対応してスピードを上げる。西井社長を中心としてトップダウンで迅速な姿勢で臨みたい。