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社長のプレゼンテーション資料(以下、資料)の20ページ目には、今後フォーカスする6つのエリアが示されているが、将来どのような事業環境を想定しているのか。
上から調味料、アジアン冷凍食品。QNとはQuick Nourishmentのことであり、食品や飲料の領域を健康志向に振り向けていこうという分野である。代表的な商品はクノールのスープ類、粉末飲料の分野である。おいしさソリューションは加工用の調味料事業、いわゆるBtoBのビジネスが中心である。ヘルスケアの代表的なものはCDMO事業、医薬用食品用のアミノ酸、培地の事業である。ライフサポートは主に電子材料をこの中に組み込んでいる。上の3つがBtoCのビジネスで、先程述べた様にスモールマス需要の増加やEコマース台頭など大きな環境変化が起きている。下の3つはいずれもBtoBのビジネスであるが、基本的にはダウンストリーム型で顧客とどのようにつながり、顧客課題に一番近いところで、つまり、卸店ビジネスではなく顧客と直接的に課題解決をしながら、具体的には商品開発、ソリューション開発を顧客と共に手前でやりながらやっていくビジネスモデルに変わっていっている。従って、下の3つはカスタマーイノベーションサービスと括ってもよい事業領域であると思う。ここの仕事の仕方がうまくできていると、今のヘルスケア、電子材料の事業のように2桁成長が可能となるが、おいしさソリューションについてはまだ完全ではないため、そこまでの成長になっていない。 生活者の消費行動の大きな変化は、BtoBの事業にも影響したマクロの変化であり、それに対してどういうふうに取り込んでいくのかというと、上の3つについては自分たちがスモールマスを積極的に取り組んで変化を起こす。ただ、スモールマスだけでは絶対に儲からないので、これを数十億円規模の事業に繋げるには強いブランドの傘の元で効率よくやっていくというのがポイントだと思っている。下の3つについては、顧客との関係をしっかりつくり、先のテーマを取り込んでいける構造にしていくというのがポイントである。そのためには他社には無い非常に高い技術力が必要になってくるため、これらを重点事業に定めた。 -
6つ重点事業領域のトップラインはどういうかたちを想定しているか。具体的にどうやって環境変化を捉まえて成長させていくのか。数字についても教えて欲しい。
4%から4%プラスアルファのCAGRということで、この6つの事業領域についてはトップラインでも5%以上、できれば、上手くいっているヘルスケアや電子材料は10%の成長で当面牽引することを期待している。食品については、重点領域で伸ばしているものもあれば足を引っ張って縮小しているものもあるが、縮小分野をそぎ落としてみると海外調味料・加工食品は8%の成長ができているし、日本食品も3%という成長が得られると思っている。従って、これらの領域に集中することで4%プラスアルファの成長をしっかり実現させていきたいと考えている。個別事業の成長率については中計を作る中で明らかにしていきたい。 -
最近の決算を見ると、事業の成長が計画した程伸びておらず、結局はトップラインが伸びていないというのが、業績が滞っている大きな背景であると思う。重点分野にフォーカスすれば本当に伸びるものなのか。その仕組みについて具体的に説明してもらいたい。
2018年度に大変苦しかった冷凍食品が典型的であるが、例えば北米もアジアンだけで2桁成長しているし、それ以外のものは足を引っ張ってマイナス成長のものもある。日本の冷凍食品も「ギョーザ」や「シュウマイ」といった中華料理のなかのコアなもの、技術的に優位性が確保できているものについては2桁に近い伸びを示している。これは当社の想定よりも少し下がったというのは課題であるが、伸びている。ただ、米飯やから揚げの領域が大きくマイナスになり、それがボディーブローで効いている。業務用は伸びているが、固定費負担が全体に響いて利益を大きく下げたという状況である。 今までは全体で伸ばそうとしており重点カテゴリーに集中するといいながら、集中しない領域、縮小する領域をあまり持たずにやってきたが、これはアセットについて手を付けないという前提であったからである。今後は非重点カテゴリーのアセットを縮小し、重点カテゴリーのアセットに集中する。アジアンやデザートという重要カテゴリーについては増産が必要であるため設備投資を行う。しかし、全体のアセットを増やさないということは、それ以外のものは圧縮するということであるので、これをやりながら効率を変えていくということ。14-16中期経営計画の中でのアセットライトは脱コモディティバルクだった。食品においてもこういうことをやる。それによって、より伸びる国や収益性の高い分野にフォーカスする。全体としては2桁成長ではなく、4%プラスアルファのCAGRに変えていくというのが今回の考え方の変更点と思ってもらいたい。 -
外部からはあまり分からないが、実際は元々フォーカスしているところがあり、それが伸びているので、それに投資したらもっと成長できるという考え方なのか。
Yes。食品全部がスペシャリティではないということ。 -
重点事業比率は、売上高で60%という話であったが、これに対応する事業利益の比率はどれぐらいあるか。
これがほとんど稼いでいると思ってもらいたい。
(売上の60に対して事業利益は大体100ということか、との問いに)
100まではいかない。資料19ページ目の表の成長戦略再構築事業は、ROAは高く低成長市場の分野であるが利益には貢献している。一方、効率性検討事業ついては成長率は高いが、先行投資などが響いて赤字のケースもある。それぞれをしっかり見極めて重点事業の比率を高めていきたい。
(非重点領域の利益は出ていないという認識で良いか、との問いに)
利益が出ていないわけではなく、小さいということ。
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売上高は重点領域が60%あって利益の構成が90%あり、売上高の20%で損失が発生しているので、それを非重点領域としてアセットライトして数字を改善すると説得力が非常に増すのではないか。
そのようにしていきたいが、20-22中期経営計画の発表まで待ってほしい。 -
アセットライトに関係するところで、重点事業比率をアセットベースで見たとき、これは全社アセットの何割を占めるのか。また、アセットライトの資産圧縮1,000億規模ということであるが、資料18ページ目では、事業資産圧縮は「グローバル冷凍食品の再編等」という1行にとどまっている。この冷凍食品の再編だけでアセット1,000億円を圧縮させるとは思えないので、アセット圧縮の考え方を教えてほしい。
1,000億円のアセットライトで言うと、比率は申し上げられないが、リソースアロケーションによるものがかなり大きい。事業資産圧縮について言うと、グローバル冷凍食品の再編についてはきちんと計算しており、また冷食以外の事業も含んでいるが、その詳細については申し上げられない。資産ベースでの重点事業比率については、売上高ベースとほぼ同様の比率(おおよそ60%)である。
(味の素AGF社のコーヒー事業は含まれていないのか、との問いに)
AGFについてはリキッドコーヒーの縮小を決めたが、この中にアセットライトの部分は入っていない。見極めの事業の中に入っている。つまり検討して何か活用できるものがないかというところに入っている。
(まだ検討段階であるということか、との問いに)
Yes。なぜかというと、リキッドコーヒーだけ切り離してもアセットがそれほど小さくならない。垂直統合しているため、どうやって切り出すかというところが非常に難しい状態になっており、検討の時間が少しかかっている。
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資料の4ページ目のウォーターフォールのチャートでは、2019年度業績予想は事業成長で108億円の利益増を想定している。ただし、ここにはアセットライトのコストが約20億円含まれているので、約130億円の事業利益成長が出るということになる。ただ、2018年度実績では事業利益が対前年140億円のマイナスにもかかわらず、2019年度には事業利益がなぜ成長するのか分らない。下げ止まるということならば分かるが、なぜここまで上がるのか。アセットライトでの選択と集中の期間であるにもかかわらず、ここまでの事業利益が出るという点について、構造的に何が変わるのか。
2019年度業績予想において、事業利益108億円増の中にはアセットライトによるマイナス分が少し含まれており、この増益を実現していく一番大きなポイントは、海外調味料である。海外調味料・加工食品のうち80%強がFive Starsである。Five Starsの2018年度の実績は複数回の値上げを実行した上での数値である。2018年度期首に発酵原料を中心に80億円のコスト増になるということに対し、各法人が最優先課題ということで値上げに取り組んだ。商品「味の素®」は他の商品とは違い原料コストアップが直接に効くため、値上げ以外に大きな手があまりない。従って、2018年度は相当数の値上げを行ったので、それによって販売数量が鈍化した要素がある。2019年度予想の原料コストアップは副原料を中心に36億円であるため、80億円のプレッシャーと36億円のプレッシャーでは打ち返し方が全く違う。従って、2019年度は、特に海外調味料の品質向上による利益成長をきちんと取り込めるだろうと思っている。 日本食品については、冷凍食品、コーヒー類に関しては2018年度に新製品の在庫処分を行っているが、2019年度はこういった要素がなくなるため、108億円増益はかなり手堅い予想と考えている。 -
西井社長の覚悟をお聞かせ願いたい。社長就任1~2年目は成長戦略、事業拡大戦略に走り、今回大きな戦略の転換をされた。現場サイドの従業員の方々はこういった転換に本当についていけるのか。なおかつ、従業員の方々が危機感を共有しながら社長の統率によってこの構造転換の方向に足並みを揃えていけるのか。この点はどういうふうに努力しているか。また、資料の19ページ目を見ると、非重点事業は売上げでは非常に大きいのではないだろうか。この基準によると、ダウンサイジングするビジネスが相当出てくるのではないだろうか。それに伴い、かなりの痛みを伴う改革であり、当然、固定費等々を見直していかないといけない。そういったところで、構造改革のスケール感は痛みという面では大きなものになるのかどうか、その点について考えを聞かせてほしい。
どの程度覚悟をしているかということについては、経営陣はもちろん覚悟している。それを実際に行うそれぞれの組織に落としつつある。具体化した、例えば冷凍食品事業についてはかなり覚悟が浸透してきている。次期中計に向けて、これを試金石として、それ以外の事業のところでも受け止めてもらうような構造を作っていくということである。従って、それ以外の事業についての具体的な計画は次期中計発表まで待って頂きたいと申し上げている。 ただ、覚悟という観点では、先ほど「マクロ環境の変化」と申し上げたが、それが自分たちのビジネスにどういうふうに影響してきているかということについては、生半可な打ち手では打ち返すことができない、ということはしっかりと共有できていると思っている。そういう面で、他に選択肢があるのかという迫り方をしていると受け止めてもらいたい。組織として、味の素グループがこれを受け止められなければ駄目になると思っているので、その覚悟でやっていきたい。 -
海外事業については2018年度第3四半期に大きく減損損失を計上しているため、実態ベースで当社の海外食品事業の状態がどうなっているのかというのがよく分からない。結果的に値上げの効果がしっかり出て、当社の競争力が低下していないという結果になっていると思うが、海外食品において思ったよりも苦労しているところと、結構うまくいっているところ、また、実際にトップラインが5%伸びて利益は1桁後半伸長しているのかどうか、この点について聞きたい。
海外食品のところをどの程度信じていいのかという話だが、基本的に伸びているのは、海外食品の中でもメニュー用調味料。一方、調味料の中でも、基礎調味料である「味の素®」と風味調味料の成長率は鈍化していることは間違いない。ゆえに、かなり値上げに頼った対策で今までやってきており、現状、5%の売上成長、8%程度の利益成長というところにとどまってしまっている。これは本来のわれわれの期待値ではない。2019年度はこの要素を織り込むも、これでは駄目だということだと思う。従って、もっとメニュー用調味料を伸ばさないといけない。プレゼンテーションでご説明した海外調味料の戦略では、日本と海外食品のメニュー用調味料を合わせると売上約700億円。うまみ調味料の売上構成比はほとんどを海外が占める。風味調味料の売上は国内外あわせて1,200億円。これはわれわれの食品のコア中のコア事業である。メニュー用調味料は売上700億円、海外の構成比が3割で210億円。残りは日本である。日本の調味料・加工食品が前年微増で家庭用について踏ん張れているのは、これがあるからである。一方、海外比率はまだ3割しかない。現状、現地通貨ベースで16%伸長しており、これを加速させたい。7割ある国内の伸びは3~4%程度、1,000億円を実現しようとすると、構成比30%の海外の伸びが16%では足りない。したがって、伸長する領域に重点的にフォーカスしていくことによって、5%の売上成長、8%の利益成長ではなく、利益成長についてはもう少し高いものにしていくということが今必要だと思ってほしい。 -
風味調味料をはじめとし、通常の調味料は従来伸びていたものの、市場全体がマイナストレンドに入ったのではないかと聞いている。それについてはどうか。
「味の素®」と各地の風味調味料が展開されている国は、グローバル競合の風味調味料の展開国とは違い、基本的にわれわれのほうがエリアが狭い。Five Starsのうち4カ国がその国でトップブランド。自分たちが製品改訂およびマーケティング強化をすることによってもう少し浮上できるレベルであり、そういう余地は残っているだろう。従って、われわれが市場をリードするような投資をこの分野にやっていくことによって、市場は浮上もするし停滞もすると思っている。 -
アセットライト経営および次期中計についての考え方について。先ほど、売上高CAGR4%ぐらいに持っていきたいというご説明だった。今後アセットライト経営を進めていく中、いわゆる事業売却等も発生すると思う。何をベースに4%という数字を設定したのか。例えば今年でいくと1兆1,700億円の売り上げに対し、売却があっても着実に4%伸ばしていくというイメージなのか、一部減る部分もあるも、残すものに対して4%を伸ばすのか。このあたりの考え方を教えてほしい。また、同じような質問になるが、アセットライト経営による資産圧縮規模の1,000億円の内、事業売却はそのうち一部だという話であった。当社のトータルのアセットは1兆3,000億円。その内の1,000億円だと約7~8%相当。そうすると、事業の再編に関わるアセットライトはだいぶん小さくなるイメージになるのか。重点比率を6割、7割、8割と上げていく計画の中、1割ずつの重点比率のアップは事業を切り離すというより、むしろ課題のある事業をより重点事業のカテゴリーに持っていくというアプローチがより重要になってくるというイメージを持っているのか。
次期中計については、2019年度の売上高予想が発射台になる。今回、売上高成長率は最終年度(2022年度)の対前年度伸長率しかお示ししていない。アセットライトを進めるので、当然ながらいったん沈むタイミングがあると思う。従って、毎年4%ずつ上がるということではない。場合によっては前年割れになる年が出てくる可能性もある。できるだけ集中させたいとは思っている。冷凍食品のように課題が明確な事業もあるが、飲料事業をどうするのかという問題もある。それをいつ実行するかというのも調整しながらやっていきたいと考えているが、具体的なものはまだ作っていない。全体のアセットによる資産圧縮1,000億円規模については最低限必要だと決めたが、全部に紐付けているわけではない。リスト化して対象になるものは全て持っているが、紐付けたものと、これから紐付けるものと両方があり、これを組み合わせていこうと思っている。 -
海外調味料の内、いわゆるコア中のコアについて。ここの当社の競争力はこの数年来落ちていない、ないしは着実に上がっていくというイメージを持っていていいのか。デジタルトランスフォーメーションなど業界環境の変化がいろいろ起きていく中、グローバル大手にそれがキャッチアップされているリスクは感じなくていいのか。
海外調味料における競争力について、市場ではグローバルビッグブランドとの競争というより、小さなプレーヤーによる大手ブランドの棄損が起こっている。先進国ではそれが非常に顕著である。当社もそういったことについてプレーヤーになっていかなければならない。新興国においても都市型需要という観点では、同様の状況が発生しているとみている。今までとは異なる戦い方をしていかなければならないと思っている。 2019年度と2020年度にかけての成長戦略については、うまみ調味料の面を広げて、風味調味料の基本品質を高め、メニュー用調味料を伸ばしていくという基本構造は変わらないが、それ以外のプラスアルファの挑戦もしていかないと、それ以上の成長は望めないだろう。例えば、先ほどメニュー用調味料は現地通貨ベースで16%成長では厳しいと申し上げたが、それをどの様に上げていくかについては未だ見つかっていない。スモールマスからミドルマスという動きを捉えることが一つのヒントだろうとは思っている。そこにフォーカスしていく。 -
今までにない構造改革を踏まえているので、2020年度以降の業績は山谷があるのではないかと思っている。それに関連し、2019年度はアセットライト関連で、事業利益ベースで約20億円のネガティブ要因を織り込んでいると予想している。一方、ポジティブ要因はどれぐらい織り込んでいるのか。また、2020年度はその比率についてネガティブ要因が少し大きくなるのではと予想しているが、この様なイメージでよいか。
2019年度のアセットライトの費用は、事業利益ベースで約20億円を織り込んだ。この影響を正確に算出して決議をすると、金額によってはそれぞれの法人で発表しないといけないレベルになるだろう。よってこの金額は全社共通費へまとめて入れている。また、親会社所有者に帰属する当期利益ベースについても、約70億円の費用が発生すると申し上げたが、これについても業績予想に織り込んでいる。従って開示資料上では、どの事業でアセットライトに取り組むのかは見え難くなっている。決議して発表する際は、事業に織り込んでいく。 今後の事業利益のイメージについては、組織の縮小等により、モチベーションが下がる要素も伴うため、できるだけ慎重に取り組みたい。但し、分散させずに集中的に取り組みたいと考えている。よって2020年度業績については一旦落ち込む形を想定している。この考え方がしっかり実行できるかどうかについて、現在精査をしている状況である。税制が複雑、或いは国としてこれらの取り組みを簡単には許してくれない国は時間が掛かるかもしれない。出来るだけ2020年度に業績の落ち込みを持っていきたいと思っているが、場合によっては2021年度に持ち越すものもあるだろう。
(その際に絶対に守りたい事業利益水準はどの程度か、との問いに)
2017年度、2018年度、2019年度の3ヵ年における事業利益はほぼ横ばいの状態である。何とかこれを下限にしていきたい。但し、2022年度に売上高成長率対前年+4%に対して、事業利益がしっかり出るかについては、アセットライト等との絡みで精査をしたい。
(事業利益が約800億円まで下がるイメージは持たなくてよいか、との問いに)
そのイメージは持っていない。
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2019年度の業績予想達成に向けてのリスクについて何点かあれば教えてほしい。
2019年度についてはかなり精査し織り込んでいる。 -
コーヒー事業について、2月に減損テストを実施したと思うが、結果として減損しなくてもよいという判断に至った背景を教えて欲しい。2019年度はリキッドコーヒー事業を縮小するということであるが、当社のコーヒー事業の7割以上がインスタントコーヒー事業でないかと思う。この市場はかなり需要が下がっている。インスタントコーヒーを中心として、減損しなくてもよいポテンシャルというものがどの様に議論されたのか。
パーソナルリキッドコーヒーが縮小すること、スターバックス社製品販売終了の影響を織り込み2019年度の計画を立て、そこを発射台に今後5年間の計画を立てた。その計画を味の素AGF社で決裁し、外部の第三者機関を使って減損テストを行った。その結果、現在価値がのれん簿価に対して余裕があるという結論になり、減損に至らなかった。今後アセットライトを議論する中で、味の素AGF社の一部の事業を、撤退或いは縮小するといったことが出てきた場合、加速償却も含めた減損が必要になってくる可能性はあるが、現状の計画においては減損の必要なしという判断をしている。
(コーヒー事業の業績は2019年度が底であると考えて好いか、との問いに)
2019年度に減益計画となる一番の要因は、スターバックス社製品の受託事業が2019年秋から無くなるということである。2019年度を底にして、2020年度以降、主力のスティック製品を含めて伸ばしていきたい。
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重点事業へのフォーカスについて、資料の19ページ目では、ライフサポートの重点事業は電子材料事業となっている。動物栄養事業は非重点事業の中に入っているという意味か。また、非重点事業への対応をなるべく集中して取り組みたいという言葉があったが、売却や撤退、縮小について、バランスを考えるが故に判断が遅れてしまい、結果として、それが中長期的に大きなリスクになる可能性あるか。
資料の19ページ目では、「調味料」や「ライフサポート(電子材料)」など大きな事業単位でしか書いていないため誤解があるかもしれないが、重点事業をどこに絞っていくかについては開示しているビジネスユニットよりも細かい単位で検討している。 動物栄養事業では、コモディティ化した事業からアミノ酸ミックスを中心とするスペシャリティ事業への転換を前中期経営計画から進めている。2018年度も再修正予想に対してはぎりぎりでの着地であったが、20億円近くの事業利益を稼ぐことができた。これはコモディティを縮小してOEMに切り替えボラティリティを小さくし、スペシャリティを伸ばした結果としてほぼ予定どおりの利益を生み出してきているということであり、構造改革が着実に進んでいる状態。つまり既に非重点化しアセットライトを進めている部分と、現時点では効率性がまだ低く検討段階に入っている部分が混在しているのが現在の動物栄養事業。今後スペシャリティを重点事業にうまく入れていけるよう、動いているとお考えいただきたい。 経営判断が遅れるリスクについて。経営基盤検討会にて、今までのアセットライトから舵を切り、デジタルトランスフォーメーションの重要性を認識し全社で取り組むという非常に重要な判断と、各事業のスクリーニングついて経営基盤検討会でたたき台を作り、議論を進めている。7月から新しい取締役体制となる予定だが、高藤が執行を担わない非執行取締役という立場で経営基盤検討会を監督することになる。当然取締役会と直結しているので、社外取締役の目もきちんと入る。形の上でも、遅滞を許さないガバナンス体制に変えていっている。 -
デジタルトランスフォーメーションのデジタル化について、主にB to Cがメインになってくると思う。海外の観光客が増加してきている中、国内でのデータが積み上がっていて手応えがあるので、そこから戦略を練った上で越境Eコマースへ進出するということか。越境Eコマースに取り組む背景や取り組み方、本気度を知りたい。プラットフォームも含め、ご説明願いたい。
データドリブンのマーケティングを今までやっていないわけではないが、デジタルトランスフォーメーションが進む中で、特にモール型のEコマースを中心とし生活者の解像度がかなり細分化して見えるようになってきた。また昨年から大手CVSがデジタルマーケティングに大きく舵を切り、当社も顧客との情報共有のプラットフォームに参加している。これにより、今まで見えていなかった生活者と消費像が相当見えるようになってきた。 社内で対応すべく新たに組織化したのは昨年4月で、B to Cに関するマーケティング情報を集約できるようになっている。味の素社のEコマースのメンバー、マーケティングメンバー、そして味の素AGF社からもメンバーが加わり、混成チームで運営している。この組織で越境も含めたモール型Eコマースと、既存チャネルのデジタルプラットフォーマーをブラッシュアップしており、かなりチャンスが見えてきている。 一番の課題は、スモールマスをどのようにミドルマスにつなげていけるかということ。我々メーカーはものづくりの観点で強くなければならず、ミドルマスにしないと生き残っていけない。今トライアルとして既存チャネルでスモールマスを広げているところであり、次の段階として、Eコマースにおいてミドルマス化を図っていく。そのためには越境Eコマースも絶対に必要だという判断をしたということ。5月中に中国の越境Eコマースに当社のサイトができる予定であり、秋に向けては具体的にもっと広がっていくだろう。国内のEコマースを使うということだけではなく、このチャネルを活用し東アジアの先進国モデルを取り込んでいくようなマーケティングと、それに向けたアジャイルな商品開発に変えているところである。
(越境Eコマースのサイト上で当社製品の認知度は高い水準にあるのか。それも含めて今後進めていくという認識か、との問いに)
中国の越境Eコマースでのサイト開設について、開設する場所は例えで言うとデパートの1階のような良い場所である。また商品の認知度が一番高いのはアミノバイタル®という製品。ここから始め、どうしたら中国の越境Eコマースに適した商品になるかという開発を併せて進めていくが、まずはスポーツニュートリションからスタートする。
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北米の冷凍食品事業について、2018年度第4四半期では改善してきたと思う。実際に構造改革を進めてきて、今どのようなステージにあるのか。物流もまだ改善の余地があるとのことだが、もう少し詳細に教えていただきたい。
北米の冷凍食品については、事業利益はようやく前年をやや下回るくらいの程度まで回復してきたレベル。一方トップラインは10%近い成長をしており、この部分にまだギャップがある。この差を埋めていくためにアセットライトも含めアジアンカテゴリーへの集中を行い、売上が10%伸びれば10%以上の増益ができるようにすることが当社の狙い。従ってまだ目指すところの半分しかいっていないということ。 物流面については、北米での2度にわたる物流費の高騰に対し、値上げによりようやくキャッチアップができるようになってきた。しかしながら物流効率がもともと悪く高止まりしている状態であり、よりシンプル化することが課題。まだ構造改革にはつながっていない。 国内の冷凍食品については、「ギョーザ」への集中、米飯の製品ラインの拡大により、製造固定費の面ではかなりカバーできるだろうと思っている。2019年度はそれをベースに底上げを図っていく。から揚げについては重点事業であることは間違いないが、競合製品との品質差がかなり少なくなっておりレッドオーシャンに近い状態になってきている。ただし方針は決めているので、そのとおり進めていく。これまでのように伸びないのであれば資産を軽くする必要があるし、経営判断でやっていこうと思っている。 -
2019年度の計画について。海外の調味料・加工食品が増益の大半を占める計画になっているが、2018年度はプロマシドール社の減損損失を計上している。その点を踏まえるとオーガニックで10億円程度の増益しか果たせないということ。その背景を教えていただきたい。
2018年度にはプロマシドール社の商標権の減損損失で32億円を計上しており、確かにその点を考慮すると全体で利益は1%しか伸びておらず、海外食品もその程度と見える。しかしそれ以外に、事業利益にヒットするアセットライトの影響額として約20億円を全社の費用として見込んでいる。また全体で共通費が増えているわけではないが、各事業部門に紐付けられる共通費が上昇している部分もあり、それらを考えるとオーガニックで3%程度の売上成長、そして利益も実質3%増という構造となっている。
(海外の調味料・加工食品だけを取り出した場合、2019年度は41億円の増益の計画であり、2018年度の減損影響を除くと9億円の増益計画。96億円の増収予想に対し増益額は9億円のみ。ここに何らかの背景があるのか、との問いに)
2018年度第4四半期が見込みより最終的にかなり上に行き、発射台の位置が少し変わったと理解していただくのが一番分かりやすいかと思う。