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会社の在り方について教えてほしい。 西井社長のグリップがもっと強ければ当社本来のポテンシャルが出せるのではないかと思うが、過去数年間に渡りボラティリティが高くなっており、その点をどのように考えているのか。また今後どのように変えていこうとしているのか。そういう根本的なところをご説明いただき、当社は安心できるということを解説いただきたい。
2000年代から20年弱の事業構造を振り返ると、2000年の初めに日本発の食とアミノ酸のグローバルカンパニーを目指すということで、食品、医薬、アミノ酸、という3つのカンパニーを作った。この時の収益の大半は、もちろんコンシューマー食品は日本食品が占めていたが、その他は動物栄養事業、国内の製薬事業、甘味料事業、海外のうま味調味料事業の4つが背負っていた。
2010年代に脱コモディティバルクを掲げ、伊藤前社長からMSGの比率を外販から内販へシフトし、国内の製薬事業はマイノリティの出資会社にして構造を変えた。甘味料については、2つの内1つのフランスの工場を売却し、規模は小さくなったが、今ではしっかりと利益を稼げる事業に変貌しつつある。そして最後に残ったのが動物栄養事業の脱コモディティである。その観点では、グリップの効き方が遅いということかもしれないが、今自社生産比率を徐々に落としている。今回大変大きな減損損失を計上したが、もしブラジルとタイにおける生産を2019年度も続けていたら、赤字幅はさらに膨らんでいただろう。ただし、2020年度自社生産比率50%以下という目標で何とかなると思っていたところが甘いところであり、そこは猛烈に反省している。ここは必ず不退転の覚悟で構造改革を実行していく。
会社の在り方ということでは、当社のコアコンピタンスは、バイオとファインという基礎的な素材を生み出すR&Dの力、そしてそれを食品や様々なソリューションビジネスに応用していく技術だと思っている。ある意味では、多様な事業ポートフォリオを持つのは当社の特徴だと思っている。大きなコア領域3~4つで出来ていた事業から、小さいが収益性の高い事業をいくつも持つ企業体に生まれ変わろうとしている。味の素グループは2020年代にそれを実現し、持続的に成長し続けられるスペシャリティカンパニーに生まれ変わりたいと思っている。したがって、複雑性は残るかもしれないが、そこにボラティリティが重ならないようにしていきたい。
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海外調味料事業について、2019年度の売上高が下方修正されている。2020年度以降ベトナムなどの特殊要因を除けばオーガニック成長になると思うが、海外の調味料・加工食品のトップラインについて、今後の見方を教えていただきたい。
2019年度上期にベトナムの流通在庫が発生した要因と、今後の展開を分けて説明する。
ベトナムは消費者とのタッチポイントである小売店に対して丁寧に足を運び、消費者の方が買いやすいディスプレイを行うという、当社のアジア事業における典型的な売り方をずっと続けてきた。ところがここ数年、競争激化の中で、競合が卸店にかなりのインセンティブを付けて激しい売り方を展開するようになってきた。すると、当社の小売店主体の売り方では売上高が一時的に落ちる。結果売上高の減少に耐えきれなくなり、競合と同様に、少しずつ大型店の方へ労力をかけるようになり、小売店に対する丁寧なフォローが減ってしまったことが根源的な問題であったと思う。
今後は卸店のフォロー等もしていくが、海外食品の成長戦略である顧客への到達力という基本的な部分に立ち返り、消費者とのタッチポイントの中でどのように製品を伝えていくのかということに重点を置いた販売方法に変えていきたい。
続いて今後の全体戦略については、売上高の規模が大きいうま味調味料、風味調味料が堅調に伸びていくことが大前提であると思っている。当社が今までやってきた品質訴求やディストリビューターの活用も含めた小売店のフォローを通じてどれだけ消費者につなげられるかということだろう。うま味調味料については、2019年度上期は日本も2009年度以来の増収となった。要因は、店頭で「勝ち飯®」プロジェクトと連動し、うま味の減塩効果を伝えられていること。都道府県によっては、県の行政と一緒に減塩の訴求をするというプロジェクトも行っている。「味の素®」の本質的な魅力や減塩効果などを店頭で徹底的に伝えていくという活動を、海外でも展開していくことになるだろう。
風味調味料についても2019年度上期は国内の「ほんだし®」の販売ボリュームが増加し増収となった。YouTubeなどを主体に手作りみそ汁の訴求をしたことで、日本の家庭におけるみそ汁の出現頻度が2%上がっている。海外においても、品質を常に上げる努力をしながら、家庭で使っていただくというコミュニケーションをメディアや店頭できちんと行っていくことで、売上高成長率を少しでも戻すという活動をしていきたい。
また、海外でも「Cook Do®」のようなメニュー用調味料を展開しており、今2桁後半で伸びている。今後徹底的に訴求活動を行い、拡大していきたいと考えている。
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2019年度上期は、ドライバーである海外調味料は対前年+2%程度の売上高成長率だった。当社はグローバルで展開しており懐の深いビジネスをやっているはずであるが、なぜ常に売上高にボラティリティがあり、今回下方修正となっているのか。2020年度の売上高はどの程度になるか。ベトナムの状況が収束した場合、対前年+3%または+4%程度の売上高成長率になるのではないか。
重点事業の売上高は全体の約60%であり、この中では海外の調味料が柱になっている。当社が持続的に成長していくためには、全社で4%+αの売上高成長率にもっていきたい。そのためには重点分野の売上高成長率は5%を超えてほしい。海外調味料は非常にボリュームが大きくなっており、風味調味料と「味の素®」だけでも約2,500億円の売上高規模であるので、2桁成長は難しいかもしれないが、5%+αの売上高成長率は何とか実現させたい。
2019年度上期の海外調味料の現地通貨ベース売上高成長率は+2%のため、あと+3%をどうやって伸ばすかどうかだが、やはり減塩は大きなテーマであり、グローバル共通である。特に東南アジアやブラジルといった調味料の強い地域では重要な課題になっているので、戦略はグローバルで臨み、アクションはローカルで取り組んでいく。
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キャッシュフローに関して伺いたい。まず前提として、2019年度の当社の営業キャッシュフローは、今回の業績下方修正の前後でどの程度違いがあるか教えてほしい。その上で、20-22中計3か年累計の営業キャッシュフローは約3,500億円の計画。17-19中計の営業キャッシュフローも3,500億円程度。やめる事業もある中で、既存の事業で同額のキャッシュを稼ぐということだとは思うが、効率化をするという当社のメッセージから考えると、なぜ変わらず3,500億円という形になるのか解説をお願いしたい。
今回、減損損失をはじめいくつか特別な費用が発現しているが、基本的にはキャッシュに影響しないものが多い。2019年度下期に予定しているいくつかの構造改革費用についてはキャッシュを伴うものもあるが、引当金などの要素もあるため基本的にはキャッシュフローは大きく変わらない。したがって、2019年度で1,200億程度、17-19中計の3か年で3,500億円程度という金額については大きく変わらないと考えている。それをベースに、年間配当額は変えない方針を決めている。
20-22中計については、確かに3,500億円では満足のいくレベルではないと思うが、アセットライト化を図る過程で売上高成長率が鈍ることもある中で、3,500億円は最低限確保していきたいというのが現時点でのメッセージ。これから各事業の計画がまとまってくるため、2020年2月の中計発表時には計画をよりはっきりと伝えられるだろう。
事業からキャッシュを生み出す力を上げていくことに加えて、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(以下、CCC)の効率化による棚卸資産の減少など、基本的なことを全社で取り組んでおり、より力を入れていきたいと考えている。
(CCCをスリム化しキャッシュ創出力を高めるという際に、やはり次期中計の営業キャッシュフローの見込みを、本中計と同程度に置くというのはコーポレートメッセージと少し乖離するところがあると思う。2月の中計発表時には踏み込んで解説いただきたい、とのコメント)
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直近2-3年を見ていると、海外の調味料事業で、ローカルのキャッチアップに起因する突発的な問題がいろいろなところで起きているように感じる。少しボラティリティが出てきており、R&Dやマーケティング、製造、販売面で組織上拾いきれない部分があるのではないかと類推する。 これを、仕組みとしてどう変えていくのか。あるいは変えないのか。この点について解説願いたい。
2020年4月1日から、食品事業において、今までの日本と海外という括りではなく、グローバルでセイボリー事業部(調味料事業部)とクイックナリッシュメント事業部(加工食品事業部)に改組していく。
日本は日本、海外は海外の情報だけを集めていればよいということではなく、日本と海外で情報を一本化したり、戦略に共通性を持たせたりするという点も含めて変えていく。情報の共有については今後しっかりとやっていく。
ただし製品開発や営業スタイルは国により全く違うため、徹底した現地適合でやっていく。
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動物栄養事業について、この事業をやる意義を改めて教えていただきたい。以前、本事業はアミノ酸の分野で非常に大きな規模があり、調味料事業をやっていく上でもノウハウや技術的な面で意義があると言っていた。足元リジンの自社生産比率は80%程度あり、状況はまだ悪化する可能性もあるのではと思っている。本事業を会社としてどうしていく考えなのか。その背景も併せて教えてほしい。
動物栄養事業は、当社のコアコンピタンスに属するというだけでなく、ASV、つまり食と健康に関するソリューションを提供していくという部分においては、かなり上流に位置する事業である。タンパク質の供給源という側面から、大きな将来性があるという考えの下、これまで事業を継続してきた。
今回、更にスペシャリティ製品も含めてアライアンスを検討しようとしている。スペシャリティの在り方が、素材に近い製品から、顧客の農家や畜肉産業に対するソリューション型のビジネスに変わりつつある。したがって、バリューチェーンの中の上流部分を縮小し、いわゆるサービス機能型のビジネスに変えていく。その中でR&Dには、当社が持っている知的財産や各種ノウハウなどを乗せていくことができる。そのようなビジネスモデルに最終的には変えていこうと考えており、途上にある。
固定資産の重いコモディティを持っているとパートナーがなかなか現れず、この10年間はその点で苦労してきた。それが軽くなったことにより、アライアンスの可能性が高まってきている状況にある。
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アフリカのプロマシドール社(以下、PH社)について。2016年度に約560億円で投資し、2018年度と2019年度中間期で約250億円の減損損失を計上しているが、残存簿価はまだ結構あると思う。 そもそもアフリカの事業はポートフォリオの拡大という意味で始めたと思うが、事業リスクについてどう考えているのか。また持分法適用会社の形態であると、通常のコミュニケーションの中では話題に上がらず、突然減損が起きてもよく分からない。当社シェアがマイノリティの状態で事業を存続すること自体、今後の展開にどのような意味があるのか教えていただきたい。
PH社に対しては、確かに当社は33.33%の株式保有という状態。またアルジェリアには味の素㈱単体の拠点も無いため、主にマーケットの情報等はビジネスパートナーを通じて得ている。もちろん当社の取締役が現地に駐在し、常に情報をキャッチアップしているが、やはり直接的に現地で展開している事業に比べると、情報の取り方は甘いといわざるを得ない。経営協議会という形で親会社間の情報交換をきちんと行ってはいるが、アフリカという広いエリアでは捉えきれないリスクがあると思っている。
では33.33%の株式保有を続けている意味は何かというと、当然、将来的な可能性を視野に入れているからである。
今回は乳製品における減損であったが、事業の半分は風味調味料であり、セカンドプレイヤー、国によってはトッププレーヤーとして存在している。これは将来、当社がアフリカで調味料ビジネスを拡大していくために重要なプラットフォームだと思っている。
残存簿価に対するリスクヘッジについて、商標権に係る部分として、昨年度および本中間期で減損計上した金額と同規模の残高がある。商標権については、アフリカの不透明な環境の中、一定期間で償却ができないかという議論を監査法人と開始したところ。まだ結論が出ていないが、次期中計の中では実現させたい。今回の減損は皆様に不安を与えることになってしまい、大変申し訳なく思っている。
(残るのれん相当額については、当社からなかなか情報が出てこない。市場環境をこちらがしっかりと見ておく必要があるということか、との問いに)
事業を展開する主要国は3つ(アルジェリア、ナイジェリア、ガーナ)である。この情報については今後、当社からきちんと出すようにする。
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本中間決算では負の遺産の処理をしたという事だが、2020年度も同じ規模感で負の遺産処理のコストが出てくると認識しておくべきか。また現時点で負の遺産の処理はどの位終わっており、あとどの位残っているのか。
アセットライト等の構造改革の施策に伴う事業資産圧縮額は約400億円。その内54%が2019年度に発現する。動物栄養事業に関していうと、その計画の75%を結果として減損計上しており、残り25%は構造改革費用として進めていくことになる。また2019年度はグローバル冷凍食品の構造改革費用は発生しておらず、2020年度以降に45億円の固定資産削減が発現する。それ以外の大きな資産については、約400億円の対象には残っていない。但しのれんについては、のれん相当額が残るアフリカのPH社や味の素AGF社について、常にリスクとして考えていないといけないだろう。味の素AGF社については2019年度も減収減益の見通しであるが、2019年2月に行った減損テスト時より企業価値の大幅な増減はないと見込んでいる。
(味の素AGF社の減損リスクを含めると、約300億円以上の減損リスクがあるということか、との問いに)
味の素AGF社はリスクとしてまだ残るが、次期中計で最小化できると思っている。またPH社については、商標権に係る減損損失後の残高については会計処理でヘッジできると思うが、のれん相当額についてはまだリスクがある。これはマイノリティ出資である当社だけではコントロールしきれないところがあると認識している。それ以外では大きなものはもう残っていないと思っている。
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2020年度は、アセットライトによって一時的に成長が鈍化するということだが、事業利益の水準は構造改革中という事もあり、踊り場の時期になるのか。
2019年度に発現して2020年度に発現しない事業利益というと、PH社の商標権に係る減損損失▲38億円、下期に発現する予定の構造改革費用▲20億円である。また、2020年度に発現するものとして、構造改革により費用が効率化される部分が+約20億円、2018年度の減損計上による減価償却費の戻り分や、低資源利用発酵技術によるコストダウンも新技術導入により数十億円程度寄与するだろう。
(年間で数十億円のコストダウン効果が出てくるということか、との問いに)
Yes。したがって、改善される部分が一定額あると理解してもらいたい。
(全部足すと2020年度は約100億円増益になるのか、との問いに)但し、2019年度は加工用うま味調味料事業の追い風部分が大きいため、それは差し引いて考えてもらいたい。
(動物栄養事業の更なる事業環境悪化リスクについてもディスカウントしなければならないか、との問いに)動物栄養事業については、基本的に2019年度と同規模の赤字が続く可能性があるだろう。それはぜひ勘案してほしい。
(同規模の赤字ということは、赤字幅の拡大まではいかないか、との問いに)2019年度上期に赤字を計上し、下期も赤字幅を拡大し見込んでいる。今後変更があった場合はアップデートする。
(これベースにして、あとは既存事業でどれだけ伸ばしていけるかという理解でよいか、との問いに)Yes。
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社長プレゼンテーション資料のスライド17を見ると、非重点事業が3つ(グローバル冷凍食品事業、加工用調味料事業、動物栄養事業)出ている。これは誰もが理解できる非重点事業であり、社内でもコンセンサスを非常に取りやすいものだろう。約400億円の事業資産圧縮を目指しているわけだが、この3事業だけを取ってみると、アセットライトにしては圧縮額が非常に少ないように思う。より踏み込んだ事業資産圧縮がこの先にあるのか。また、そういったものが次期中計に盛り込まれてくるのか。
アセットライト経営は2022年度で終わらないと思う。但し、2022年度までは約400億円の事業資産圧縮と約800億円のリソースアロケーションを具体的なテーマとして臨もうとしている。それから後については、未だ皆様にお話しするレベルには至っていなっていない。
(2020年2月に発表する新中計では、より踏み込んだアセットライト化施策等々については、数字としてはあまり表れてこないという理解で好いか、との問いに)今のところ頭にないが、検討する。
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国内の冷凍食品とコーヒー類について。第2四半期だけを見ると、減収ではあるが利益がきちんと出ている。コーヒー類が、特に第1四半期の時にはマーケティング費用の期ずれで出来過ぎているという話であったが、第2四半期になったら、これが効率化と文言が変わり、利益計上されていて、ここは非常にポジティブだったと思う。同様に、冷凍食品も競合のトップラインと比べると▲2%ではあるが、利益は約28%伸びていて変化しているという印象。冷凍食品とコーヒー類のところがどの様にターンアラウンドしてきているのか、もう少し細かく教えていただきたい。
日本のコーヒー類と冷凍食品は課題解決の途上にある状態だと思っている。共通しているのは、シェアポジションが高く収益性の高い分野に集中した戦略に徹したこと。冷凍食品で言えば「ギョーザ®」や米飯類にかなりマーケティングの集中と製品強化を行った。同様にコーヒー類もパーソナルリキッドコーヒーを終売し、スティックコーヒーのフレーバーバラエティーをかなり充実させたことにより、競合からの激しい価格競争は続いているが、品種バラエティーでシェアをかなり取ることができている。これにより、スティックコーヒーとインスタントコーヒーが好調になってきた。したがって、マーケティング費用の発現時期がスライドしたということではなく、リキッドコーヒーにお金を使わなくてよいということがきちんとできるようになってきた。冷凍食品も全く同じ構造である。若干残念なのは、スターバックス社向けの製品が販売終了となったこと。これが一定量利益の上でも貢献していたが、下期はこれがなくなる。よって、上期と比べると下期が減益になる要因である。冷凍食品で残念なことは、上期は米飯類が売れ過ぎた。そこに台風による生産の停止が影響したため、第3四半期は残念ながら「ザ・チャーハン®」を休売している。1月には回復する見通しであるが、下期に減益予想となるのはこのためである。大きく振れることがあるとすれば、この2つの事業もそうであるが、新領域のカテゴリーに出ていっても稼ぐのはそう容易くないわけで、そこに費やしたマーケティング費用が回収できないと、昨年度のようなことになってしまう。そういう教訓を持って臨んでいる。
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当社のMSGの外販比率を下げ、自社内使用比率を上げていくことについて。それには調味料・加工食品と一部の冷凍食品のトップラインを上げていくことと連動していると思う。自社内使用比率を80%に引き上げるためには、国内と海外に分けて、調味料・加工食品のところがどれ位伸びれば80%に必達するのか。ベンチマークがあれば教えてほしい。
MSGの自社内使用比率を7割台から8割へ引き上げるステップであるが、直近の業績を振り返ると、海外コンシューマーフーズの数量ベースの伸びは鈍化している。つまり、商品「味の素®」の数量の伸びはほぼ横ばいの中、値上げで売上高を伸ばすという構造になってきている。真水でいうと、風味調味料に含まれる原料としてのうま味調味料の伸びがMSG自社内使用数量の伸びを支えることになる。海外の調味料事業全体で言うと、うま味調味料と風味調味料が45%、45%。残り10%がメニュー用調味料。冷凍食品に使われるMSGの数量は非常に少ない。よって、風味調味料だけでMSGの自社内使用比率を7割から8割への引き上げ分を埋めていこうとすると、風味調味料が毎年4%ずつ伸びていって、10年程度かかるということである。2019年度上期の風味調味料の現地通貨ベース売上高伸長率は、値上げ込みで+4%の成長である。したがって、コンシューマーフーズ製品だけで数量を7割から8割に上げていくのはかなり時間がかかるだろうとみて、今回、戦略を見直した。外販を縮小するというふうに組み合わせたのはその理由である。
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海外冷凍食品について、競合もアメリカにおける冷凍食品にかなり力を入れている。競合からの脅威があるとすればどのようなものか。相当自動化されており、スケールの大きいオペレーションとも聞いている。それに対する当社の対応策を教えてもらいたい。
アメリカで冷凍食品を拡大しようとしている競合については、かなり手ごわいと認識している。先ほどの海外冷凍食品についての説明では45億円の資産圧縮というアセットライト化のことだけを述べたが、縮小したアセットをアジアンカテゴリーにシフトしていく。つまり、「ギョーザ」、チャーハン、ラーメンといったものについては非常に伸びしろが大きいため、停産した工場、あるいはメキシカン・イタリアンカテゴリーの工場をアジアンカテゴリーに転換していくことが含まれており、真水の部分が45億円のアセットライト化ということになる。品質やおいしさの観点で負けないよう、しっかりやっていこうと思っている。
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アメリカの冷凍食品は競争の関係で価格が落ちている状況にはまだなっていない。どちらかというとバリューのほうが市場で実現しやすく、環境としてはそれほど悪くないということであったと理解する。その継続性はどう考えたらよいか。
なぜ各社アジアンカテゴリーに進出してくるかというと、アメリカの冷凍食品の中で最もユニットプライスが高いカテゴリーであるからで、イタリアンやメキシカンカテゴリーとは全く違う分野のため、競合が参入してくる。すると当然、単価ダウンも想定しなければならない。ただ、それを上回る生産性、あるいは品質向上、こういったことも当たり前ではあるが、これをしっかりと日本のようにやっていけばまだ余地が残っているだろう。現状、北米のアジアン冷凍食品は、ポンド当たり2.5ドルというレベルである。これはアメリカの中では高いが、日本と比べるとまだ安い。日本は品質を上げ、おいしさを上げ、生産性を上げ、ユニットプライスも上げながらGP率を上げていき、それにより今の収益構造をつくっているため、まだ改善余地が残っていると思っている。