-
2010年度と今中計期間を比較すると、売上高や営業利益は大きく変わっておらず、特別利益や税率の変化で当期純利益が上がり、それによりROEが上がったとも見える。今中計期間中に、事業面の構造強化としてはどの様な成果があったのか。
飼料用アミノ酸と医薬を除いた事業の合計では着実に営業利益が拡大している。この中には加工用うま味調味料の様に2010年度以降大きく減益となった事業も含んでおり、他の事業がそれ以上に成長しているということ。成長しているポイントは海外事業であり、今後も海外事業は更に強化していく。事業構造を比較すると、2010年度からは大きく変わっている。
-
自助努力での脱コモディティ化は進展しているように思えるが、更に加速化するために、EPSに影響を与えるような食品関連の大型M&Aは考えていないのか。
脱コモディティ化とは、食品でブランドのあるリテール事業を拡大していく事と、それを補 完する意味で、今あるバルク事業をスペシャリティ化していくという2つのアプローチがある。例えば電子材料でもスペシャリティ化しており、PCだけでなくサーバーやスマートフォン、タブレット型端末用途の商品開発を進めている。AjiPro®-Lについては通常のリジンとは違い、付加価値が非常に高く、スプレッドに影響される事もない。この商品を使う事で乳量が明らかに変わる等、質の変化が大きな付加価値になっている。こういった取組みを各々の事業で進めていくことが脱コモディティ化に繋がると考える。ご指摘の全体の構造を変えるような大型のM&Aについては、これまでも検討しているが、次の中計でも継続して検討していく。
-
今中計の3年間は資本戦略、財務戦略へ非常に注力した印象だが、一方で真の競争力をつけるような、今後の成長への種まきとなる投資は怠っていたのではないか。脱コモディティ化と言いながらポートフォリオ改革への動きはあまり見られなかった。この点につきどのように見ており、今後どうすべきかについての考えを聞かせて欲しい。
売上高を拡大するだけではなく、その結果として構造が良くなるようなM&Aを意図してきた。従ってM&Aの検討対象となるのは当社よりも事業構造が良く、それにより従来よりも経営指標が改善するような案件で、そもそも対象案件は多くなく、話をまとめるのも簡単ではない。この実現は今後も目指すが、もう一方、海外コンシューマーフーズの主要国で現在の2-3倍の規模となる国・地域を増やしていくような取り組みを合わせ、成長を実現していく。
-
次期中計での成長ドライバーとしてどういった事を考えているのか。
次期中計は現在策定中であるが、最大の成長ドライバーは海外コンシューマーフーズと考えており、現在の売上高が将来的に2-3倍になる国をたくさん創っていきたい。また、その中には日本の利益額を超える国も創っていき、海外食品が全社業績を牽引していくような形にしたい。一方、バイオ・ファイン事業においても医薬用・食品用アミノ酸や化成品のように、よりスペシャリティ化した商品を創っていき、それらを第2の成長ドライバーにしたい。もちろん、その前提として国内食品が安定的に伸長していることが重要で、そのためには市場の変化に対応した商品を我々の技術で創造していく事が大事である。また、成長だけではなく構造改革も必要で、これも更に進めていきたい。今述べた事を具体的な数値にして、来年2月の中計発表時にご説明する。
-
今中計の3年間でFCFは改善しているが、グローバル企業として先行する企業と比べればまだ規模が小さい。次期中計ではFCFをどのように拡大し、どの程度の水準を目指すのか。
ご指摘の通り、FCFの水準はまだ低く満足していない。改善のためには売上高、営業利益の拡大とともに営業利益率の拡大、投資のコントロールも必要。それぞれの目標については、課題となっている飼料用アミノ酸事業が創出する利益額のレベルも来年2月にはより明確になってくるので、これらも含めて改めてご説明する。
-
下期のリジンの市場価格前提は1.60$/kgだが、足元の価格は1.55$/kgと、前提を下回っている。営業利益予想を達成できないリスクはあるか。
足元のリジン市場価格は当社前提を下回っているが、コスト面では副原料・エネルギー使用量を下げる低資源利用発酵技術の北米工場への導入が進んでおり、この利益貢献を前提にしている。また、米国のコーン価格が大幅に下がっていることに加え、リジン・スレオニン以外の商品の販売増も図り、利益目標を確保していきたい。
-
飼料用アミノ酸のスペシャリティ化は本当に出来ているか。北米でAjiPro®-Lの拡売に取り組んでいるが、競合も積極的に研究開発をしているので、1-2年すると直ぐに競合も同じような物を造って、コモディティ化してしまうのではないか。設備投資を抑えながら高付加価値化が図れるのか。
商品によって其々ステージが異なるが、例えばリジンやスレオニンは当社が最初に飼料 用として発売し、競合が参入するまではスペシャリティであったが、徐々にコモディティ化してきた。トリプトファンも既に競合品が出てきており、バリンもいずれ追随してくると考えている。どの商品であっても何れは競合品が出てきて同じ道程を辿る事になる。そこで競争力をつけるための手段の1つが低資源利用発酵技術等の新技術導入でコスト競争力強化を図ることである。もう1つはスペシャリティ化を進めることである。乳牛用リジンのAjiPro®-Lについては、既に競合品は出ているが、我々は牛にとって本当に有効な商品を造るべく顧客に評価してもらい、何度も性能を改良するという取組みを顧客と一緒になって続けてきた。また、乳牛用リジン有効含量の正しい評価法も一緒に作り上げていく。こういった顧客に対するソリューションを提供する取組みは商品がスペシャリティである期間を延長する事に繋がると考えている。
-
飼料用アミノ酸事業について、リジンの適正な販売価格はどのレベルだと考えているのか。
需要面から見た場合は、スプレッドによりリジンが穀物の代替をする適正価格を算出できる。需給が緩み販売価格が軟化している場合には、製造コストプラス適正利益で適正価格を判断することになる。現在のスプレッドであればもっと高い価格でも畜産農家にとってメリットがある状況だが、高スプレッドにも関わらずなかなか値上げが出来ないのは供給過剰が要因である。競合の状況を注視しつつ値上げのタイミングを計っていきたい。
-
今年度の飼料用リジンの当社市場シェアは2割を下回っている。北米とアジアでは値上げが通らなかったとのことだが、当社のシェアにも影響は出ているのか。
リジン市場全体は大きく伸びているので、当社がシェアを落としているのは事実。但し、北米や欧州など生産拠点のある地域では維持出来ている。
-
AjiPro®-Lの畜産農家にとってのメリットは何か。AjiPro®-Lの使用がユーザーである乳牛農家の国際競争力向上などにつながるほどの可能性のある商品なのか。
乳量、乳たんぱく含量、乳脂肪含量の改善は実際の北米の農場でのデータに基づいたもので、実際畜産農家は飼料の経済性、費用対効果を求める。これらを十分に踏まえ、農家にとってもメリットがあり、当社にも利益が出るような価格設定を計算して提案している。高泌乳牛は乳量を最大化するために品種改良、育成管理されているが、牛の身体への負荷が大きく、人間同様にアミノ酸の添加効果が顕著に出る。分娩後100日間のAjiPro®-Lの使用で乳牛への負荷が軽減され、乳量や乳タンパクが改善することがデータで実証されている。これまでテストマーケティングを重ねてきたが、農家と当社の双方に経済的メリットが出るよう、生産能力を拡大して本格販売を開始する。また乳牛農家の抱える課題の1つは周産期病だが、そこにも解決策を提供できると考えている。リジン以外のアミノ酸の可能性も含め、今後商品開発を進めていく。
-
ABFのスマートフォン、タブレット型端末への採用進捗状況。来期の業績影響、見通しを教えて欲しい。
ABFはすでに一部のタブレット型端末、スマートフォンには採用されている。ABFのような 高性能部品が求められていることもあり、面積はまだ少ないが付加価値の高い商品である。現在大手メーカーと採用に向けた取り組みを進めている段階。今後採用は更に拡大する見通し。