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現在、当社の冷凍食品事業は海外売上高も含め、国内食品セグメントの中の「冷凍食品」に計上している。一方、最近当社は北米におけるウィンザー・クオリティ・ホールディングス社の買収や東洋水産(株)との合弁会社設立など海外事業を伸長させようとしているが、来年度以降は、冷凍食品事業の国内と海外を区分し、例えば前者は現状の通り国内食品セグメントに残し、後者は海外食品セグメントに移すといったような事は考えているのか。
冷凍食品事業は、将来的に国内と海外でそれぞれの売上高を1,000億円ずつにしたいと考えており、現状の開示区分では実態に合わなくなるだろう。従って来年4月より、冷凍食品事業のトータル業績と国内外で区分した業績を開示できる様に変えたいと考えている。
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国内の調味料・加工食品事業については、下期にマーケティング費を増加させ主力商品の売上拡大を図っていく予定との事だが、本年度上期に積極的な取組みが奏功した企業とそうでない企業もあり、食品業界の環境も踏まえ積極策を採る意味合いを教えてもらいたい。
消費増税前の駆け込み需要に対する反動は6月末には収束しているものの、食品を含めた消費材の動きは首都圏の一部を除き全国的に鈍い。この夏の天候不順も影響を与えていると思う。この傾向は、下期の事業環境の1つの不安要素ではある。しかしながら、「Cook Do®」など積極的にマーケティング投資をした商品の動きについては大変好い。全ての商品を対象に積極投資はできないが、下期にたくさん売れる「ほんだし®」やスープの様な商品もあるので、費用対効果を見ながら積極投資をしたいと考えている。
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海外コンシュマーフーズの下期売上高予想は、対前年で200億円以上の増収、18%伸長する事になっている。これは新商品の投入によるものなのか、或いはマーケティング費の積極投入によるものなのか。従来とは市場に対するアプローチが相当変わるのか。
確かに例年、下期の売上高は上期に比べて高くなっている。14-16中計でご案内の通り、Five Starsを中心に大きく成長させるという計画であり、商品では「味の素®」、風味調味料、即席麺などを大きく成長させたいと考えている。費用対効果を見ながら積極的なマーケティング投資をしたいと考えている。
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足元では飼料用アミノ酸のリジン価格が上昇し始め、またスレオニンの価格も急騰している様だが、この背景と今後の競合関係を見据えた価格の見通しを教えてもらいたい。
リジンもスレオニンも販売価格が回復してきているのは、中国の競合が大きく減産に動いた事が主因である。特にスレオニンの価格が急騰しているのは、市場における中国メーカーの供給量のウエイトがリジンより高いことが主因。夏場から生産量を大きく落とした事で、急に需給がタイトになった。今後の見通しについては、販売価格が上昇してくれば各メーカーとも当然生産量を増加させてくる。例えば、ある中国競合大手はしばらくリジンの生産を止めていたが、10月半ばに一つの工場を50%稼働させた様だ。他メーカーも徐々に稼働率を上げてくると思われるので、当社は今後の状況を楽観視はしていない。またリジンの場合は中国以外に大きな競合メーカーもあり、上値は重いと感じている。スレオニンは販売価格が急騰しているが、これは顧客にとっても当社にとっても好くない状況である。極力安定的な販売価格で供給できる様にしたいと考えており、慎重に状況を見極めながら判断していきたい。
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過去から計画の未達が続いたが、14-16中計初年度の半年を経過した現時点での本年度予想、および14-16中計達成への手応えはどうか。2016年度の営業利益計画の910億円達成には2015年度では800億円程度が必要になるが、その見通しはあるか。
本年度、来年度については必ずしも楽観視していない。飼料用アミノ酸事業の減益が前年度および本年度上期の減益に大きく影響しているが、当社は業界の収益構造の悪化をもっと早くから予測しており、競合企業の気づきが遅く収益性改善の時期が遅くなった。今後、この状況がどの様に変わるかは分からない。利益が拡大すればこれを見て競合企業の供給量も増える。第4四半期以降についても冷静に見極める必要がある。当事業からの利益が急激に増えることが好ましいとも思っていない。
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飼料用アミノ酸事業のフレキシブル生産体制への取り組みが実現すると営業利益にはどの様に影響するのか。
商品価格などの前提により利益へのインパクトは変わってくるが、例えば現在の様にスレオニンの市場価格が急騰する局面ではスレオニン生産を最大化することにより大きな利益を生み出せる。従来は単品ごとに製品の製造固定費を最大限下げることに取り組んできたが、今後はいかに小投資で市況変動に柔軟に対応できる体制を作るかが重要で、これはボラティリティ低減にもつながる。その体制実現にようやく目処が立ってきた。背景には新技術の導入がある。例えば製品によっては排水負荷が高いものがあるが、小投資で排水を節減できる技術導入の目処が立ってきた。今後、更に技術力を上げていく。
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医薬事業につき、包括的提携も検討しているとのことだが当事業の将来像をどの様に描いているのか。
2つの視点からご説明する。一点目は、味の素グループにとっての役割。グループとして医薬・医療周辺といった先端的領域に新たな成長を求めているが、その為の専門的機能を担うプラットフォームとしての役割がある。また、R&Dの出口として、ドクターとのネットワークを持っていることによる価値がある。二点目は、製薬事業として、近年の成果からIBD(炎症性腸疾患)領域での展望が見えてきた。足元は厳しいが状況は少しずつ変わってきている。これらの観点から、医薬事業の売却は考えていない。他方、既存商品の連続的展開による成長路線の実現だけではまだまだ不十分で、一歩踏み込んだ非連続的な成長も必要と考えており、これを包括的提携と表現した。ただし、現時点では具体的にご説明できることはない。
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14-16中計で2016年度目標として掲げていた時価総額1兆円を既に達成したが、今後の時価総額水準についてどの様に考えているか。
当社の株価に限らず、日本の株式市況全体が好転している為にわかには喜べない。しかし市場から「当社はEPSやPER、ROEを今後高められる」との信頼を得られたという事で、14-16中計で掲げた目標を1つ1つ達成していくことが企業価値の向上に結び付くのだと経営陣一同確信を持ち始めている。2020年度の目標時価総額1兆5000億円というのは足元の株価水準を前提とすると適切ではないかも知れない。来年度以降は、市場全体の株価水準を見ながら時価総額の目標値を更新することも考えていく。但し、チャンスがあれば常に高い水準を目指すことに変わりはない。
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飼料用アミノ酸のスペシャリティに関し、具体的にはどの商品がどの程度成長しているのか。また、業績への貢献はどの商品が大きいのか。
業績への貢献が大きいのはバリン。販売数量は対前年では倍近く増加している。競合の新規参入はあるものの、まだ規模が小さく本格化はしていない為価格が安定している。「AjiPro®‐L」は販売数量がまだ少ない為、業績貢献が本格化するのは増産完工後になる。子豚用成長促進用途の「AminoGut®」についても、安定的に販売数量を伸ばしている。また、顧客と個別の取組みも行っており、水産業向けに特別に設計したリジンやブロイラー用の新規アミノ酸も販売している。但しこれらは留め型品に近い為、個別に詳細情報を開示するのは控えたい。この様な取り組みを重ねていき、スペシャリテイの拡大を目指している。
(期首の目標よりも業績貢献が大きいスペシャリティ商品は何か、との問いに)バリン。販売数量も多く、期首の計画を上回っている。「AjiPro®‐L」は増産工事が12月完工予定なので現時点では堅めに見ている。 -
海外コンシューマーフーズ事業の本年度下期計画は営業利益率が上期よりもかなり低くなっている。発酵原燃料等の価格面でメリットを享受出来るにも関わらず、なぜ下期の営業利益率が低くなるのか。マーケティング投資にそこまで巨額を投じる計画なのか。
確かに、下期計画は売上高の成長率に比べて営業利益の成長率が小さくなっている。これは、上期と違ってブラジルの電力やインドネシアの包材、アンモニア等の一部の原材料が一部の国において高騰する事を見込んでいる。計画においては様々な要素を加味しているものの、売上総利益の成長率以上にマーケティング費用を増加させることはない。どちらかと言えば、やや堅めの計画になっている。過去2年間は新興国を中心に事業展開エリアを拡大させている為、新商品の投入や市場浸透の為のマーケティング投資は積極的に行う。上期の成長率が弱かったタイについても目標としている成長率に近づける為に積極投資を行う予定である。堅めの計画であるため、目標を上回りたいと思っている。
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飼料用アミノ酸のフレキシブル生産について、なぜリジンのみ最大可変量が10%程度と小さいのか。
精製の工程がリジンとその他アミノ酸(スレオニン・トリプトファン・バリン)で異なり、設備の共有部分が少ない事が主な理由。ただリジンにおいて更に可変量を増やせないかは今後の検討課題。
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対前年度でリジン価格が下落しているにも関わらず、第2四半期の飼料用アミノ酸が黒字となった理由。このトレンドは、今後長期的に続くと考えて好いか。また、コストダウン等の取組みでリジンの損益分岐点は下がっているか。
第2四半期のリジン価格は$1.40/kgと厳しい状況が続いていたので、黒字化を達成できたのはリジン以外の製品、スレオニン、トリプトファンとスペシャリテイ製品の貢献が大きい。通期営業利益目標40億円の達成およびその40%以上をスペシャリティが占めることの見通しは立っている。またコストダウンに関しても、低資源利用発酵技術の導入等着実に進めており、加えて原料価格安、そして為替の面でもドルベースでのコストダウンに追い風となっている面がある。
(リジンの損益分岐点は下がっているのか、との問いに)計画よりかなり下がっている。
(損益分岐点を下げられたのは自助努力由来か、外部要因由来か、との問いに)コストダウンの新技術導入と原燃料価格安、為替との組み合わせ。
上記の組み合わせによって採算性を改善出来たのは当社の実力に由来する。 -
海外コンシューマーフーズにおいて、Five Starsの中でも国によって成長率に濃淡があるが、タイの売上高成長が弱まったのは一過性の要因か。併せて、売上高の成長が弱かったにも関わらず営業利益はそれ以上に成長した要因を教えて欲しい。また、そのトレンドは今後中長期的に続くと考えてよいか。
タイ以外の国は期待通りの成長をしているが、本年度上期のタイの売上高成長率は2-3%程度で、営業利益はもう少し高い程度。タイは市況自体が弱く、当社にとって大きな領域である飲料や即席麺は市場が前年を下回っている。タイの経済成長率は4-6月で+0.4%程度であり、当社の成長もその程度になっている。年度見通しも1.5-2.0%と下方修正されている。営業利益については、前年度は稼働間もないアユタヤ工場の垂直立ち上げに苦労したものの、現場の経験値も増え生産が安定したことで貢献が大きくなっている。また、もう1つの主力工場での新技術導入も利益貢献しており、工場の収率改善が利益に大きく寄与している。併せて、利益の柱である風味調味料はタイの市場成長率を上回って成長しており、この強さは一過性ではない。
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本年度上期の税率は約21%と、通期見通しの約30%と比べてかなり低い水準になっている理由および通期見通し。また、来年度以降の税率見通しについても教えて欲しい。
本年度上期の税率は約21%で、前年度の約24.7%よりも低くなっている。地域別の営業利益を見ると、本年度上期は比較的税率の高い日本や欧米において減益となる一方、相対的に税率の低いアセアンの構成比が約52%となっている。ベトナムの法人税率は約22%で、フィリピンやマレーシアは約25%である。タイの税率は約20%だが、当社は投資奨励による優遇を享受しており実際の税率はその半分程度。下期は飼料用アミノ酸の利益回復や国内の調味料・加工食品の売上高が大きくなり、比較的税率の高い先進国での利益が増える為、アセアンの利益構成比は35%程度になる。その為、通期では計画並みの税率になる見通し。
(来年度以降は、アセアン各国の成長により更なる税率の低下が見込めるか、との問いに)地域別の利益構成比次第。アセアン各国の構成比が増えれば、それに伴い税率は低下する。