-
伊藤社長のプレゼンテーション資料の「確かなグローバル・スペシャリティ・カンパニー」に向けたロードマップにはROEや営業利益率が記載されているが、それらを見ると大きく伸長しているという実感を持ち難い。ROEや資本効率の観点からすると、近年の円安影響や直近のM&Aに伴う新規連結の影響で期末のBSが大きくなっており、我々が計算するROICと当社が事業別に把握しているROICとでは、かなり数値に乖離が出てきているのではないかと考える。主だった事業の資本効率がここ数年で上昇しているのかどうかをご教示願いたい。
14-16中計を策定する過程でROICの導入も検討の遡上に上がったが、各事業に資本と負債をどのように割り振るのかという問題があり、導入しないことにした。2017年度からの次期中計策定時に、頂戴したご指摘も踏まえながら、色々と論議をしていきたい。尚、大雑把に言うと、海外コンシューマー食品事業については小投資だが利益が大きいのでROICは高いと言える。また、アミノサイエンスでは電子材料事業も同様。概ね営業利益率の高さとROICの高さとは連動していると考えて好いだろう。
-
昨今、一部の企業では株主に対するコミットとして事業別のROICを開示しているが、当社はROICの開示をどの様に考えているのか。出来れば今後、ROEについては事業別に財務レバレッジとROAとに分け、丁寧な解説をしてもらいたい。
当社では現在、ROICは採用していない。事業別にはROAを用いて資本効率を測っており、また2015年度より事業別にROEも算出していく。14-16中計策定時には機関投資家等の外部のご指摘頂き、それを反映させているが、現在はKPIとしてROE目標が望ましいと考えている。また、外部のご指摘を伺いながら、何がKPIとして相応しいのかを検討したいと思う。
-
伊藤社長にお伺いしたい。社長在任中に「うまくいった」と考えることと、「難航して思ったよりはうまくいかなかった」と考えることは何か。また、市場の期待とのギャップのあることは何か。
在任中に中計を2回策定した。その中で、安定的な利益成長を目指せる会社に変えていくという目標を掲げたが、我々の持つスペシャリティを中心に仕事を行い、構造改革に取組んで行くと、自ずからROEや営業利益率等のKPIが好くなると考えた。結果として、EPSや時価総額も含め大きく改善したので、うまくいったのではないかと考えている。但し、2020年度の目標達成に向けては道半ばであり、更にやるべきことは沢山あるが、それらを食品とアミノサイエンスに集約して、今後取組んで行く。
「難航して思ったよりはうまくいかなかった」と考えることは特に無い。もっと早く達成したかったと思うことはあるが、難しくてどう仕様もないということはなかった。
尚、市場の期待とのギャップについては最初の11-13中計を策定する前は非常に大きかったと思う。会社の構造を変えることで利益が出てくるという様に変えてきたが、構造変革には時間が掛かり中期的な視点が必要なので、毎年の変化が見えるように変えてきた。そういう意味で投資家と同じ目線に立てたのではないかと思う。よって現在は市場の期待とのギャップは感じていないし、今後も市場の皆さんとの対話を通じて、いろいろなご指摘を経営に活かしていきたいと思っている。何れにせよ、最初の11-13中計を策定する際に、たくさんの方々から色々なご意見を頂戴し目標に設定出来たことを感謝している。 -
AGF社を100%子会社化する事により、グローバルにどのような強みが出るのかをご教示願いたい。
味の素社においてはコーヒー、粉末飲料事業などはタイから始まっており、ローカルコアの分野である。一方、AGF社における同事業は世界第2位のパートナーの、世界トップクラスの研究、技術や当社独自の購買力などを使ってやってきた事業である。コーヒーに関する技術は味の素社への移転、活用が期待出来る。現在、AGF社は味の素社の10倍ぐらいのコーヒー豆を使っており、そういう意味で両社でいろいろな取組みが可能だと考える。コーヒー、粉末飲料事業の海外での展開を通じて、ローカルコアではなくグローバルコアの柱になれるように頑張っていきたい。
-
ウィンザー社買収時は当社の既存北米冷凍食品事業並みの二桁の営業利益率に改善したい、との説明だった。北米の冷凍食品事業につき、2015年度から2020年度にかけ収益性はどの様に変化するのか。二桁の営業利益率に改善出来るのか、戦略と共に時間軸で教えて頂きたい。
買収時には当社の北米冷凍食品事業は二桁の営業利益率、ウィンザー社は当社国内冷凍食品事業並みの営業利益率で、両者を融合し二桁の利益率を目指す、との説明をした。クロージング後、全ての情報を得てからのPMIを通じ、当初計画した10%には若干、届かないかもしれないが、それに近い線に向かえるとの自信はある。(PMIを経て10%の利益率に届かないかもしれない、と思う背景は、との問いに対し)当初計画からは若干の遅れという程度である。例えば、当初は一工場を2014度中に閉鎖する予定だったが、PMI(Post Merger Integration)で新しい事業計画、製品戦略を立てる中で、従来考えていた工場の活用の考え方もトータルで再検討するといった変化が出てきている。
-
動物栄養事業のスペシャリティ製品の営業利益額は2014年度では約16億円の期初予想が約28億円まで上振れて着地したと推測出来る。一方で、2015年度は約33億円で5億円の増益に留まり保守的な計画と見えるが、その背景は何か。
2014年度は「AjiPro®-L」とバリンの実績が計画を上回った。特にバリンは競合参入による価格下落を一定程度想定していたが、実際には価格が維持出来て上期はほぼ100%の市場シェア、下期もわずかなシェア低下に留まった。2015年度は競合参入と価格低下を予測し、リスクも踏まえたやや厳しめの前提を置いている。市場拡大でこの吸収に努める。「AjiPro®-L」は増産分の販売に努め、北米以外の地域への新規導入に関わるマーケティング費がかかることも想定している。
-
海外調味料・加工食品について、2015年度の営業利益率が低下する理由。販管費率 が上昇するようだが、無理に販促をしなくてもトップラインは着実に伸びており、理解しにくい。
売上高伸長率は110%以上の計画で、2014年度の伸び率と大きく変わらない。まだ規模は小さいが拡大しているメニュー用調味料については2015年度の新製品発売も積極的に行い、販管費も必要になるので利益は大きくは伸びない。地域本部の強化に伴う要員増、全社共通費増もあり、伸長率がやや小さく見える。
-
インドネシアでの販売状況を教えてほしい。他の消費財メーカーは苦戦しており、伸ばしているのは当社だけだが、その理由は何か。
インドネシア経済はこの2年程度は5%程度の伸長。競合との競争は激しいが、当社の強力な販売網を活用しつつ、「Masako」の大きな改訂と積極的なコミュニケーションなどが奏功し成長しながら収益性が改善されている。併せて各種調味料も伸長しており、力強い成長路線に入っている。
-
KPIについて、2016年度のROE9%の目標達成は遠く見える。11-13中計でもROE目標は達成できなかった。資本効率化の意識、ROE目標達成の意欲はどれだけ強いのか。
2015年度の当期純利益(※親会社株主に帰属する当期純利益)予想をもう少し上げたかったが、2016年度の当期純利益の伸び率は今まで以上にしたいと思っている。資本のコントロールも含め、目標達成に向かっていけると思っている。
-
AGF社の2020年にかけた営業利益規模はどのような計画か。
2014年度はAGF社個社の営業利益が過去最高の48億円、味の素社へのコミッションを加味すると63億円となった。社長就任後の2年間で事業構造を強化してきたことの成果で、安定的にこの様な水準の利益を出せるような構造になってきたが、一方で、どうしても利益水準はコーヒー生豆相場に影響を受ける。前年のコーヒー豆の高騰を受け、2015年2月に家庭用のほぼ全製品の改定を行った。2015年度の営業利益額の開示は出来ないが、これを定着させ可能な限り吸収していきたい。
-
M&A戦略としてウィンザー社とAGF社で十分と考えているか。目指すべき事業プラットフォームの構築に向け、更なるM&Aを今後も検討していくのか。また、これら2件のM&Aによる業績貢献が顕著になる時期は何時頃を想定しているのか。
M&Aの対象としてはグローバル成長と技術貢献を柱と考えている。ウィンザー社の買収は先進国である北米でのプレゼンス向上、ブランドや営業基盤構築を意図しており、日本もグローバルの一地域と考えればAGF社の100%子会社化もグローバル成長を目指しての案件である。事業展開地域としてはまだ不十分で、特に欧州地域がまだまだ弱い。ポーランドに生産拠点を設け、将来的には40-50億円程度の売上高になるかも知れないが、現在はまだその半分程度。ここ数年で急速に成長してきてはいるが、他地域と比べると桁が1つ異なるため、どの様に規模を大きくしていくかが課題である。先進国以外についても同様に、各地で取り組めることが沢山ある。当社が展開している調味料の領域はまだまだ狭く、展開領域を広げていきたい。技術面ではかなりの水準に達しており、食品添加物には該当しないナチュラルな調味料の生産等、他社には出来ないことが沢山ある。国内外の商品にこれらの独自技術を使用しているが、この分野ではまだまだ取り組みたいことがある。
M&Aについては対象企業の規模もよく検討するが、積極的に検討していきたい。 ウィンザー社とAGF社の営業利益率は現時点では当社グループ平均よりも低いが、これから立て直していく。2020年をイメージしながら、手に入れたチャネル等を活かした構造改革を進めているので、この2社による利益貢献が顕著になるのもその頃になろう。特にウィンザー社についてはJカーブの成長曲線を描く可能性がある。AGF社については更に理想的な構造にするために今後商標ロイヤルティの買い取りも視野に入れているが、相手のある話なので具体的なことは申し上げられない。両社とも、2020年には当社が基準としている範囲内になることをイメージしている。 -
動物栄養事業の2014年度と今後のスペシャリティの売上高と販売数量の成長見通しについて教えて欲しい。
2014年度はスペシャリティの販売数量は対前年で40%以上増加した。2015度以降もそれに近い水準を目指したい。中期的には更なる新製品を発売したいが、そのタイミングによって今後の販売数量は変わるだろう。
売上高は単価が相対的に高いバリンの価格と販売量の影響を受けるが、売上高の伸び率は数量の伸び率より少し小さいというイメージである。 -
ミラノ万博への出展による当社の海外食品への影響を教えて欲しい。特に先進国において、どの程度の波及効果が見込めるのか。
ミラノ万博においては日本館に協力しており、うま味やだしについて科学的、文化的背景を展示している方々と一緒に検討してきた。当社の「食の文化センター」が保有している食を通じた錦絵も出展しており、そこに描かれているメニューの具現化も行っている。
農水省が7月11日にJapan Dayを計画しているが、当社もその前後を含めた1週間程度を利用してシンポジウムや展示を行う。イタリアやイギリスの有名シェフを招いてうま味やだしを使った料理を紹介したり、減塩、満足感の増強といった効能を最新の欧米の研究と合わせて発信する。
当社創業の原点はうま味であり、事業の軸もだしであるので、従来からアンチMSGへの誤解解消の活動は、全社的課題として取り組んでいる。特に最近その成果が現れ始めており、その元になった有用な知見をミラノ万博を機会として発信していく。世界的な和食ブームもあるので、その原点であるうま味、だし、MSGの価値をしっかりとアピールする。直接的な商品の拡売に繋がるには時間を要するかも知れないが、ギョーザ等も含めた日本食の価値を高めてその波及効果に期待している。 -
全社共通費が2015年度に30億円近く増加する理由。2016年度以降も継続的に増加していく見通しか。
2014年度も対前年で全社共通費は増加しているが、2015年度も同様に全社研究テーマの増加を見込んでおり、増加額の半分近くを占めている。また、2年続けてベースアップも行っており、人件費が増加している。この2つが大きな要因である。
-
14-16中計最終年度の目標を達成するために2015年度にポイントになる点と考え得るリスクを教えて欲しい。
2015年度のポイントは、成長分野では国内外の食品事業。特に国内の食品事業は2014年度前半に消費税増税前の駆け込み需要の反動影響があったため、しっかりとカバーして計画の達成を目指す。2014年にも安定成長を実現した、特に機能性を持った外食向け商品も引き続き成長を見込んでいる。
海外は2014年度並みの成長を目指す。
2014年度は売上高の成長率よりも売上総利益の成長率の方が大きかったが、販売費および一般管理費の増加は売上総利益の成長率内に収まっているため、利益率も改善することが出来た。今後もこの管理を継続していきたい。
別のポイントとしては動物栄養事業の安定化である。それ以外のアミノサイエンス事業は規模こそ小さいが各事業が着実に成長しており、まとまると大きな成長になっている。製薬カスタムサービスは2014年度にも大きく成長し、2015年度も引き続き成長を持続出来れば、目標は達成可能だと思っている。
想定出来るリスクは為替と原燃料価格。過去1-2年間は安定しており好い状況が続いていたが、今後の見通しには注視したい。