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2017年度の事業利益は1,020億円で、対前年50億円しか増加しない予想になっている。また、本年2月に発表した2017-2019年中期経営計画(以下、17-19中計)の事業利益目標(2019年度1,240億円)との対比でもスローな出だしと言えるが、この予想値の背景について伺いたい。特に、事業のオーガニック成長による利益増加が対前年で89億円に留まる見通しである事に加え、現在低位安定している原燃料価格の影響を対前年で52億円のコストアップ前提としている点が理解し難い。
事業由来の対前年89億円の増益については、事業毎の利益をきちんと積み上げているので堅い予想だと考えてもらいたい。原燃料価格については、17-19中計策定に当たり2016年12月時の価格をベースとし、将来の価格動向やサプライヤーとの価格交渉なども想定し、各現場で設定している。御指摘の通り、保守的な前提に見えるかも知れないが、厳しい価格交渉を前提にしている事を理解頂きたい。尚、事業利益予想が低いとの御指摘には為替前提も影響している。2017年度予算策定に当たり1USD=100円の前提としたが、直近の状況を勘案し同108円に見直した。しかし、この設定が妥当かどうかの判断は正直難しいので、皆様とは主要通貨の為替感応度を共有させて頂いている。
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016年度第4四半期において、タイの調味料・加工食品の売上は3%程度伸長した様に見えるが、何か特殊要因によるものなのか。或いは業績回復基調に入ったと捉えて好いのか。また足許の状況を踏まえ、タイとミャンマーの成長に対する自信を聞かせてもらいたい。
2016年度第4四半期において、少しタイの業績が少し上向いたのは好い傾向と捉えている。これは粉末飲料「Birdy®」3in1が昨年11月に製品改訂し、第4四半期のタイ国内売上が対前年同期を上回った事が要因である。しかし、他社品との競合は激しくなっており2017年度も状況は変わらないと思うが、競争に勝っていきたい。
この状況を踏まえても、実質的な売上成長目標である2%の伸長は必ず実現可能であると考えている。ミャンマーの「Birdy®」3in1については、まだ前年実績を大きく下回っている。2017年9月に「味の素®」の包装工場が稼働する予定なので、そこを拠点に徹底的に「Birdy®」3in1の偽物の取締りを行っていく。これによってV字回復は可能であると考えている。期待して頂きたい。
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タイの復調について再確認したい。2016年度第4四半期復調の理由は11月改訂の「Birdy®」3in1とのこと。2016年度は缶コーヒー「Birdy®」はネスレ社との戦いがあったが、市場動向はどうか。販促費を投入したと推察するが、2017年度は売上高の成長率に比べて利益は見込みにくいのか。また、ブラジルの2016年度売上高は対前年+37%成長。ハードルが高くなったことで、2017年度予想である+12%成長の足枷にならないか。
タイの缶コーヒー「Birdy®」はトップシェアの60%。粉末飲料「Birdy®」3in1のシェアは10%程度。競合はネスレ社。エナジードリンクの会社他2社が参入し競争が激化している。缶コーヒー「Birdy®」で伸び悩んだのは、CVSでの購入が進みモダン化している中、ここへの打ち手が遅れた。収益に関しては、販促費も使うので横ばい。「AJI-NO-MOTO® Plus」、「RosDee®」、メニュー用調味料が好調、かつ2016年度に大きくGP改善しており、その原資が「Birdy®」の販促費にまわっている。まだ調味料のGP改善の余地はある。また、粉末以外に新しくCubeタイプの「RosDee®」の新製品を予定しており、さらに構造を強化していく。
ブラジルの売上高は2016年度+37%伸長しているが、従来甘味料に含んでいた粉末飲料の移管分を含んでいる。粉末飲料を除いても+12%。風味調味料「Sazon®」、メニュー、粉末飲料の伸長により2015年度の水準まで戻った。2017年度の+12%成長も堅いとみている。
(2016年度、ブラジルは粉末飲料で伸ばしたと思うが、2017年度は何で伸ばすのか、との問いに)2016年度は粉末飲料だけで伸ばしたわけではなく、風味調味料「Sazon®」、メニュー調味料あわせて伸ばした。2017年度も同様に考えている。
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海外の冷凍食品事業について。味の素ウィンザー社を見学させて頂き、取り組みについてよく理解でき、また新製品が好調だということも認識している。一方で、北米では日系企業の事業拡大の動きが出てきている。競合環境は見立て通りなのか、戦略に変更はないか。また、フランスにおける当社の冷凍食品事業拡大について、MSGは使っていないのか。冷凍食品事業の先進国戦略を教えて欲しい。
日系企業の北米での事業展開がみてとれるが、当社はアジアン、メキシカン、イタリアン、アペタイザーの4カテゴリーをそれぞれ強くし、ポートフォリオを整理している最中。一番注力しているアジアンは、昨年の市場をみると、価格の戦いというより、価値の戦いになっている。クリーンラベルを謳っている競合は伸長している。新しい価値、新しい喜びという観点を加えることで製品を強くしていきたい。大きな戦略の転換はない。フランスでのテスト販売からの約4,000店強の全国展開については、製品にMSGを使用している。MSGに対するネガティブな印象はあるも、MSGへの正しい理解で支持されていると考えている。テスト販売は好調に住んでいるので、販売に注力したい。
(味の素ブランドで出していけばNo MSGとはとられないと思う。「AJI-NO-MOTO」=MSGではなく、「AJI-NO-MOTO」=Umamiととって頂けるような啓発活動はしているのか。Umamiに対する理解度はフランスの方が高いと思う。アメリカはAll Naturalで製品にMSGは使わない。でもフランスではMSGを製品に使用する。少し変化が出てきたのではないか、という問いに)Umami=MSGが上手く結びつかないとのいうのはご認識の通り。日本食のおいしさの原点がUmamiにあり、その普及が上手くいった。Umamiはアメリカ、ヨーロッパでポジティブ。ヨーロッパでは日本食まで結びついて更にポジティブ。Umamiは好いが、MSGは嫌だというのがアメリカであり、ヨーロッパも無いとは言えない。17-19中計の中のコーポレートブランド戦略強化の中で、Umamiフォーラムを計画中で、第一回のフォーラムは2018年度にニューヨークでの開催予定。Umamiの有用性、Umamiの中に含まれる大事な素材としてのグルタミン酸、およびMSGの誤解の払拭が目的。MSGがなぜアメリカで悪者になったのか、ハーバード大学の先生に歴史を紐解いていただく。フォーラムを通じて、オピニオンを形成し、合理的な精神を持っているアメリカから発信していく。10億円強を計上し、2017年度以降、継続的に実施していく。
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日本食品の事業利益は2017年度予算において9億円の増益となっている。全社調整も加味した業績予想1,020億円ベースで考えると、日本食品は貿易為替がネガティブに効いて、減益予想になるという理解でよいか。貿易為替分は原料の調達コストだと思うが、これを吸収するのが経営。実質増益を考えていると推察するがどうか。
日本食品は調味料・加工食品、冷凍食品、コーヒー類から成る。貿易為替を各セグメントに紐づけしなかった理由を説明したい。プレゼンテーション資料P.29で貿易為替の主な影響額を整理しているが、日本拠点での取引が日本食品に影響するのは確か。しかしながら、個別にプラス/マイナスの影響を受け入り組んでいる。加えて、原料調達の価格交渉はこれから。影響額の全てを日本食品に織り込んでしまうと誤解を招く。故に、今回業績予想を発表するにあたり、為替前提を換算為替も貿易為替も前年実績とし、グループ全体への影響度として明らかにした。
冷凍食品は単純計算だとマイナスになる。そうしないのが自分の仕事。2016年度は各社利益が出たが、為替メリットを費用として使って値引きしている。2017年度は値上げは考えていないが、値引きの減少、マーケティング費の減少で、10億円増益の当初計画を達成すべく取り組む。
(10億円増益というのは、全社調整前の2017年度予算の達成を目指すということか、との問いに)Yes。
コーヒー類については、1USD=100.0円で予算を組んだが、足元円安はデメリット。しかし、110円台後半になっても予算達成できるシナリオを持っている。為替に加え、コーヒー豆の相場も影響する。両方見ながら、攻めと守りを戦略的に適正に行っていく。販促費の抑制も考えている。あわせて、利益を出す構造改革として、相当数のSKUの見直しを昨年後半から行っており、これもプラスに効いてくるはず。
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2017年度は17-19中計に沿って考えると事業利益は踊り場という印象。今の前提では2018年度と2019年度には10%以上の事業利益成長が必要になるが、なぜ利益成長が後ろ倒しになっているのか。今先行投資している事業は、いつリターンが得られるのか。どの時点で大きく成長が加速するのか教えて欲しい。また、過去にも利益予想が踊り場になっており、「先行投資をしているので今後成長する」というメッセージがあったが、結果としてその様なストーリーは達成出来ていない事が多い。17-19中計についても同様の結果になるのではないかという不安がある。17-19中計目標達成にかける社長の思いを聞かせて欲しい。
これまでも、中計に沿って成長(GROW)と構造改革(FIT)を実行し、年度による多少の差はあれどスペシャリティ事業を成長させてきた。過去、スペシャリティのポートフォリオを拡大してきており、それが17-19中計のベースになっている。2017年度の事業利益予想1,020億円から2019年度目標の1,240億円に到達するには2年間で毎年約100億円ずつの成長が必要になるが、現在も構造改革が進行しているので3年間の中で尻上がりの成長になる。2017年度で大きなテーマになるのは動物栄養の構造改革をやりきる事。また、将来の為の設備投資やマーケティング投資も行う為、売上高成長率と利益成長率は必ずしもパラレルにはならない。全体成長を牽引するのは海外のコンシューマー食品で売上高については12%成長を見込んでいる。また、ヘルスケアその他セグメントに含まれているが、日本におけるサプリメントや医薬用・健康食品用アミノ酸も大きく伸びている。短期的にはこの事業をヘルスケア事業の柱とし、その先には先端バイオ医薬関連事業がある。スペシャリティを更に伸ばし続ける事が17-19中計の目標達成に向けた取組である。
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海外食品について、2016年度は第4四半期に売上高は成長路線に回復した様に見えるが、利益成長は売上高成長よりも弱い。通期も同様。一方2017年度の業績予想を見ると、全社調整の換算為替影響を加味すると売上高成長が11%に対して利益成長率は17%となっているが、その背景を教えて欲しい。
※本質問については説明会当日、回答を保留させて頂きました。本ホームページ掲載内容にて回答とさせて頂きます。
ドライセイボリー事業については売上高以上に利益が成長しているが、そこで生まれた原資をメニュー用調味料や加工食品といった次の事業の柱に投資していく。これは事業のポートフォリオを拡大し、2020年度以降も継続的に成長する為に必要な投資である。将来に向けた投資をしないと成長の機会も失ってしまう。但し、過度な投資にならない様、バランスを見ながら行う。
(2017年度に着目した場合、なぜ売上高成長率以上に利益が成長すると見込んでいるのか、という質問に対し)確かに海外食品セグメント全体では、全社調整の換算為替影響を加味して考えると売上高で11%成長、利益で17%成長。サブセグメント別の内訳は開示していないが、調味料・加工食品は増収増益だが持分法適用子会社を新規連結するため利益伸長率が売上伸長率を上回る。また冷凍食品は増収増益だが伸長率が異なり、売上高よりも利益が大きく成長する見込みになっている。これは売上成長による増益に加えSKU削減等のコストダウンの取組みの成果である。
尚、冷食の売上高については、「Ling Ling®」ブランドのFried Riceや「TAIPEI®」の改定品を2017年春より発売しており、出荷は好調だが米国は国土の広さ故に小売店に並ぶまでに多少の時間が掛かる。その為、2017年度だけを見ると売上高の成長率が小さく見えている。店頭での商品切り替えが進めば、売上高成長率も大きくなってくるだろう。
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17-19中計において、海外調味料・加工食品のRising Starsもかなりの成長を見込んでいるが、各国の足許環境を教えて欲しい。アフリカ、トルコがポイントになると思うが、目標達成に向けて順調に進んでいるのか。
Rising Starsは17-19中計に大きく成長させる計画であるが、その確信度が高まる例をお話しする。1つはナイジェリア。現在、昨年度株式を取得したプロマシドール社との統合に向けた過程にあるが、2016年度は国の外貨不足の影響で苦戦をした。しかし9月に大幅な減量値上げを実施し、通期で若干前年を上回る水準まで回復。消費者にとって購入しやすい価格を変えずに容量を減らしたが、それが受け入れられた。過去程ではないかも知れないが、成長路線に戻ったと思う。トルコについてはキュクレ社とオルゲン社の2社があり、両社の統合を進めている。単純計算で2社合わせて50億円程度の売上高規模。元々キュクレ社はハイエンド向けで収益性が高く、オルゲン社もキューブ状の調味料を主体としており、収益性は悪くない。更に相乗効果を生み出す事で大きく成長させていきたい。
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2017年度、ヘルスケアその他セグメントが売上高、事業利益共に大きな成長を見込んでいる。これまでとは異なる転換点を迎えているのか。
スポーツニュートリションは「アミノバイタル®」を中心としたアミノ酸によるスポーツ栄養、健康への貢献という事に対する認知度が上がっている。これは当社のマーケティング活動に加え、オリンピックへの貢献の認知度も上がっている事が要因。また、2016年初にマスコミが大きくこのテーマを取り上げ、エビデンスに基づいたアミノ酸の効能、スポーツへの貢献が注目される様になった。そうした背景にも後押しされ、2桁成長している。
ダイレクトマーケティングについては、アミノ酸の健康面への貢献に対する認知度向上や機能性表示への対応によって成長している。特に機能性表示については‘カテゴリーファースト’として例えば「グリナ®」は睡眠改善、「アミノエール®」はロコモ等の高齢者を中心とした栄養課題への効果を訴求したところ、一気に拡大した。今後は別領域における‘カテゴリーファースト’を目指している。更にはサプリメントだけではなく食品や香粧品等にも機能性表示対応を拡大し、飛躍的な成長を目指している。
(中国、アメリカ等の海外においてはE-Commerce市場が急速に拡大しているが、当社にとって将来的にチャンスとなり得るか、との問いに)上記のダイレクトマーケティングは全て国内のご説明である。海外における展開は当社を含めて食品事業はやや出遅れたと思っている。国によって表示やレギュレーションが異なる為、日用品とは異なる。専務の高藤の下で検討を進めており、質の良いサイトを見極めてトップラインだけが伸びる様なE-Commerceではなく、ライフタイムバリューに貢献出来る様な、顧客の属性をしっかりと追跡出来る様な取り組みを行っていきたい。