※赤字:3月11日、13日の回答より訂正。
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2020~2022年度の3年間で300億円規模の収益改善をみているということだが、事業 利益成長のカーブはどうみればよいか。初年度は構造改革のフェーズで、2、3年目以降 に利益成長が加速していくのか、それとも初年度から一定の利益成長をみているのか。ま た、300億円のうち200億円はコストダウンで、残り100億円は成長戦略ということだ が、200億円のコストダウンの詳細について定量的に言えることがあれば教えてほしい。
フェーズ1は構造改革。まず300億円のうち、コストダウンの200億円については前半2カ年で構造改革をかなり進めるつもりで、3年目の2022年度にはコストダウンがかなり効いているだろう。
一方、残りの100億円については、オーガニックでの単価を上げていくという部分になる。単価成長は、製品の改定、製品ミックス、マーケティング戦略の強化等で健康価値を訴求していくことにより実現していく。したがって、単価向上については、2020年度にはベーシックなものしか効かず、2021年度に少し、そして2022年にグラデュアルに上がっていくイメージで捉えてもらえればよいだろう。
(2020年度は投資の段階で、海外調味料を中心とした単価効果はそれほど出てこないということか、との問いに)
特に調味料は減塩に大きくシフトしていく。最初は大きなポーションを占めているうま味調味料「味の素®」、「味の素®プラス」で製品を改定することなく減塩というマーケティング戦略、コミュニケーション、店頭販売力でやっていくため、初年度からかなり期待している。ただ、風味調味料の減塩タイプについても、日本で既に販売している「お塩控えめの・ほんだし®」のように、売上規模の大きい国からチャレンジしていきたいと考えている。発売した場合、その効果がでるのは2021~2022年度になるだろう。
200億円のコストダウンは構造改革によるものと通常のオペレーションによるものがある。2017~2019年度ほどのインパクトはなくなるが、一定の低資源利用発酵技術の効果も見ている。以上大きくはこの3つの組み合わせになる。
構造改革について、2020年度までにコーポレート費用を2.5%に近づけるということで、まずは味の素㈱単体のコーポレートの構造改革を進めてきているが、具体的に発現するのは今年の人事異動等が終わる7月以降である。従って、2020年度は1年間丸々ではなく3四半期分、2021~2022年度は年間丸々効いてくることになる。また、2021年~2022年度はグループ会社のバックオフィス部門も取り込んで効率化を図ろうと思っている。これについても単体同様、後追いて発現するかたちになる。
コストダウン200億円の金額構成比は半分が構造改革。残り半分が低資源利用発酵技術効果と通常のオペレーションのさまざまな経費等の見直しの部分というイメージで捉えていただきたい。
(この200億円の中に、2019年度赤字予想の動物栄養事業は、再編もしくはアセットライト化よる赤字の解消という効果は織り込まれているか、といの問いに)
含む。
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うま味調味料「味の素®」の減塩効果を加えた製品が2020年度から効いてくるという ことだが、これは単価アップしている商品ということか。
「味の素®」は非常にシンプルな商品であり、これを減塩タイプにするということではない。いわゆるコミュニケーションや商品以外のマーケティング戦略で減塩を訴求し、売上を伸ばしていこうということである。
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うま味調味料の減塩効果の訴求について。20-25中計説明会時に、具体例として岩手県 モデルの横展開や、海外の学校給食支援などを挙げていたが、規模が小さいイメージがあ る。当社の成長率を1.3%~1.8%引き上げるほどの効果が出てくるという確信が持てな い。消費者に対するコミュニケーションの取り方や、マーケティング戦略の規模感のイメ ージがあれば教えていただきたい。
2020年度に大きく戦略をシフトし、即効性があるのはコンシューマーのうま味調味料の減塩施策である。また、うま味調味料による減塩効果を訴求すると、ソリューション&イングリディエンツの分野で、今までMSGを使わなかった外食産業や加工用メーカーがMSGを見直し、使うようになることで量的な拡大が見込める。この2つが狙うところである。
説明会では、減塩施策の全体をカバーしたモデルということで岩手県モデルを紹介したため、非常に規模が小さい印象を持ったかもしれないが、基本的には「味の素®」に対するブランドコミュニケーションによる減塩施策へシフトしていく。岩手県モデルの普及というよりも、製品マーケティングに減塩を組み込んでいくことになる。MSGは130カ国に販売しており、当社自らマーケティングを手掛けている国は、Five Stars、Rising Stars、日本、アメリカを加えると11カ国に及ぶ。よってかなり大きなインパクトになると思う。
(金額のイメージについて。広告費や販促費などのマーケティングコストがかかってくるため、利益率はネガティブな局面になるという理解でよいか、の問いに)
No。マーケティング費用については、中計資料に記載のとおりである。この中身を見直していくのであり、マーケティング費用が増大するということではない。もともとコーポレートブランド戦略として、うま味による減塩効果を伝える活動を一昨年のWorld Umami Forumから行っており、コーポレート費用として使っている。こちらも減塩によるウェルネスの訴求へシフトしていく。従って、コーポレートブランド戦略のトーンアンドマナーと、「味の素®」のトーンアンドマナーを合体させることにより、効果的に伸ばしていきたいと思っている。
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調味料・加工食品のシェアについて、カテゴリーが多いため、グローバルで現在何位と は言いにくいとは思うが、分かる範囲で教えていただきたい。
加工食品は範囲が広く、即席麺や粉末飲料など、品目によって異なり、変動が大きいため開示していない。調味料の分野で申し上げると、グローバルマーケットではドライセイボリーと表現されており、これは基礎調味料、風味調味料、キューブタイプの調味料を合わせたものである。このカテゴリーにおける当社のシェアは2018年度の実績ベースで22%。グローバルジャイアントを抑えてナンバーワンシェア。
(その領域は現在トップであり、マーケットもまだ成長するため、今後も伸ばせるということか、との問いに)
ドライセイボリーのマーケットは、数量ベースではあまり伸びていない。市場成長は主に金額の部分であり、各社の値上げの要素が今のマーケット成長につながっている。従って、今回当社がトップブランドとして進めていく減塩を含む健康価値訴求の戦略によって、数量ベースでももう少し伸ばしていきたい。
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グローバルなブランディングとして減塩を訴求していくという話を中計ラージミーティ ングでも伺い、非常に好い取り組みだと思っている。それによって市場が大きくなり、そ の中で当社のポジションが一番大きく、取り分も大きいという説明をいただいた。市場が 大きくなるならば、マーケットリーダーとして最初に訴求を始める当社が一番得られる 果実が大きいと感じる。他社の製品ではなく当社の製品を買おうと思わせる仕掛けや訴 求ポイントはどういうものがあるのか教えてほしい。
ブランディングの中でウェルネス、特にメタボリックシンドロームに関して減塩、減糖、減脂を訴求することを戦略として取り込む場合、当社の優位性がどこにあるのか、2点で申し上げたい。
まず一つは減塩の幅である。例えば日本の減塩タイプの「お塩控えめの・ほんだし®」は、レギュラー品の「ほんだし®」に比べて60%減塩という高い水準で減塩が実現できており、技術優位性がある。当社は様々なユニークな素材を持っていて、これを設計技術と組み合わせることによって製品設計が実現しており、他にはない優位性がある。
もう一つは、ウェルネスを訴求する際に対象となるローカルメニューの多さである。われわれは、徹底的にローカライズしたマーケティングを行っているため、消費者に対するアクセスポイントが、メニューという観点で非常に優れている。この2つが優位性だと思っており、より幅広い生活者の方々に訴求することができるだろう。
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収益改善300億円のうち、売上増・単価増で約100億円の利益を積み増すという説明 があったが、単価が毎年1.3%上がっていくと、単価効果だけでも300億円近くになるだ ろう。売上増および単価増の100億円の裏にはいろいろあると思うが、どういうイメー ジで100億円という数字を出しているのか、もう少しブレークダウンを教えてほしい。
1.3%の単価向上は実行する。これは20-25中期経営計画(以下、中計)ラージミーティングでも説明したとおりである。ただ、全体でいうと、事業プランの積み上げでつくるとリスクのある事業もあるため、ある程度全社で減らして計画を発表した。よって、ギャップはそこからきていると捉えてほしい。
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今回、単価を持続的に上げていくというのが一つのキーメッセージだと受け取っている が、その認識でよいのか。また、持続的な単価上昇をさせるために当社の経営組織をどの ように変えようとしているのか。
単価上昇に関しては、大きな経営戦略である。これをしっかり実行していくために、まず今回、中計2期分のROICを経営指標にしている。ROICについては、各セグメントのアセットオーナーとして執行役員チームに責任を負ってもらい、ROICの下にぶら下がっている事業部についてはROAをベースに構造を強くしていく。今回から責任を明確にしたというのが機構の大きな変更点である。これを四半期毎、月次でしっかり追いかけながら、着地の計画対比、レビューを着実に実行していく。
そして、単価向上につながるのは単純な値上げよりも、主に健康を軸にしたり、栄養価値を高めたりすることで付加価値を上げていく考え。これは製品戦略あるいはダイレクトマーケティング等の新しいチャネルの開拓によって実現できると思っている。2023年度から立ち上げる計画である、オーガニック成長のプラス1%の部分を狙っていくような新しい事業については、通常のラインとは別に、このラインから引き出せるような強力なタスクを立ち上げ、私のイニシアティブで遂行していく態勢で臨む、というところが大きな変化だろう。
(計画通り1.3%が達成できれば、大幅な上振れファクターになるということでよいか、との問いに)
Yes。
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組織体制をどう変えていくか。今回レポーティングラインも大きく見直されることにな ると思うが、部門ごとでROEに対してコミットする形になるという理解でよいか。
アセットオーナーを設置し、ROICをアセット単位でみていく。当社の有形固定資産は、同じ食品事業でもBtoBビジネスとBtoCビジネスが共有でアセットを持っているところがある。これまでは2つのアセットをシェアする形でマネジメントしていたが、責任を一本化し、全体のアセットマネジメントについては有形固定資産をベースにしたアセットオーナーを設置する。この責任者がROIC全体を高めるための判断を行い、それを経営会議メンバーとしっかりと握っていく。そのために今回、日本と海外に分けていたコンシューマー事業についてもグローバル事業に改組し、マーケティング戦略の強化という観点とアセットオーナー制をはっきりさせる。アセットオーナーというのは複数の事業を統括する役員で、その下に事業部長がいる。この事業部長はROAを管理し、全体のROICを高めていくのは役員クラスの仕事だと位置付けている。
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単価向上に向け、グローバルで共通のマーケティング戦略を打つのか、今までどおりエ リアごとにやるのか。どうなっていくのかイメージしたい。
一番分かりやすいのはうま味調味料「味の素®」のグローバル戦略であり、減塩訴求をグローバルで展開する。また調味料を中心とした減塩や減脂に貢献する新製品をいつ出していくかという戦略についても、グローバル事業部でコントロールする。ただし、具体的な製品のブランドは既存のものを使い、開発や生産・発売のスケジューリングについては現地と調整していく事項になる。ヘルシーやウェルネスのほうにシフトするマーケティング戦略と製品戦略のコンセプトについてはグローバル事業部でコントロールし、実行プランは現地とアジャストしていくと捉えてもらいたい。
(グローバルプランを立てる部隊が本社にできて、ここがより力を持ってリーダーシップを発揮していく形になるのか、との問いに)
ウェルネスの価値を上げていくということになると、一つ一つのローカルの製品や法人がマネジメントすることは非常に難しいため、ブランド政策という観点で本社がコントロールしていきたい。
(マーケティング戦略を引っ張るのは誰になるか、との問いに)
基本的にブランドオーナーについては組織再編後の調味料事業部長、栄養・加工食品事業部長、グローバル冷凍食品事業部長、この3人がブランドオーナーとしてこの責任を負う。
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冷凍食品事業を主要な事業として位置づけているが、ROICとWACCの考え方を見る と、WACCを上回るROIC実現には時間がかかる。本事業のポテンシャルをどのように 考えて長期的な目線で主力事業として位置付けたのか、その検討のプロセスについて教 えてほしい。
2019年度中間期に申し上げたように、今回の重点事業の選定は成長性と、ROICを用いずROAを基準にして一時的な絞り込みを行った。従って、冷凍食品についてはROAの高いものと低いもの、成長性が高いものと低いものが併存している状態である。これを今後3年間のフェーズ1で構造改革することにより、FY25にはWACCを上回るようなROICまで持ち込めるだろうと考えている。その後平均値の8%をクリアし、11%を超えるところまで上げていくことについては、冷凍食品全体で抱えている大きなアセットの中には北米と欧州ののれんがあるが、これを早期に解消していくことにより、かなりROICが持ち上がってくると思う。
また、都市型の製品である冷凍食品が現状の低ROAになっている大きな構造の一つに、ほとんどの製品を自社の有形固定資産で製造しているという弱点があるとみている。2000年代前半に主に日本で起きた食の品質に関する消費者の大きな不安、残留農薬や異物混入の問題といった、社会的に大きなインパクトのある事件を受け、当社は自社工場比率を高めることにより品質の担保をしてきた。結果としてアセットが重くなったという構造も否めないと思っている。ただ近年は、自社工場でなくても自社のノウハウをもって OEMを組み合わせることにより、品質の透明度を上げて管理することが可能な時代になってきている。アセットライト化を行う中で新しい成長を取り組んでいくものについてはOEM、それを当社のノウハウで管理していく。こういうことが段階的にROAを高めるための大きな戦略になり、ゆえにその可能性を残していると判断した。
(北米と欧州ののれんを解消していくことの意味は何か、との問いに)
当社は北米と欧州にアジアン冷凍食品の大きな基盤を得るためにM&Aというプロセスを取った。アジアン冷凍食品の成長、利益の増加により、のれんを上回る利益をとっていきたいという意味である。のれん代の償却ということではない。
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タイの子会社の保有株式引き上げについて、取り組みの基本的な考え方と、今後も取り 組みとして行われていくのかどうかについて教えてほしい。
タイの子会社の追加株式状況は既に発表のとおり。背景にはROEを高めるというわれわれの目標に大きく資するということと、この数年タイにおいて事業成長が停滞してきたということがあるが、当社としてはまだポテンシャルのあるマーケットと見ている。追加株式取得により当社の支配力を高め、まだできることがあるだろうということで今回踏み込んだ。
今後、2020年度からどうしていくかということについて。2019年度中間期のラージミーティングで説明した全社の財務政策とキャッシュバランスでいうと、3年間で800億円程度の戦略原資がある中で、資本政策を進めていくということも一つの大きな選択肢として組み込みながらやっていく。タイに関しては、機関投資家のものは今回買い取ることができた。残っているものは、当社の初期のころに持っていただいた複数の個人株主分のため、時間がかかるとみている。一方で、タイ以外の国でも少数株主が存在する法人があり、交渉を続けていきたい。具体的に3カ年での買い取り分等はまだ定めていない。
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新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナウイルス)が業績に与える影響を教えてほしい。
まず現時点では、この状況が継続するか不透明なところがあるため明確でないところはお許し願いたい。日本では、巣ごもりといわれる状態が続く場合、過去のケースでは調味料や加工食品など家庭で消費されるものは追い風を受ける。現実に家庭用製品は、2月から3月にかけて追い風を受けている。一方、フードサービス向けのビジネスについては非常に厳しい状況であり、これはネガティブな要素である。ただ、国内食品事業の売上高構成比は約7割が家庭用で、約3割が業務用であるので、家庭用のポジティブなところが上回る状況である。
ソリューション&イングリディエンツ事業の、加工用のうま味調味料、あるいは高付加価値の天然系調味料等については、レトルトカレーや即席麺といった加工食品向けに素材を提供しているので、家庭用同様追い風を受けるという状況。いずれにしても、影響が長引くことによって日本経済全体へのインパクトがあり、消費者の財布がさらに締まることになるだろう。追い風は一定の期間が過ぎれば落ち着いていき、今後発売を検討している高付加価値型商品についてはしばらく厳しい環境がくるのではないかと思っている。
グローバルでは、具体的な消費環境は推し量れないが、現在BtoB事業の供給に対する不安感から、顧客が在庫を増やして乗り切ろうというアクションが出ている。ここは短期的に3月ぐらいまではポジティブな要素であるが、2020年度第1四半期のところでは、もしかすると在庫調整が入ってくるかもしれないというリスクも抱えている。
最後に動物栄養に関して申し上げると、新型コロナウイルスの発生源が中国であったということもあり、グローバルの供給に影響が出ている。今のところは流通在庫があるため大きな変化はみられず価格が若干下げ止まった程度だが、2020年度第1四半期では、中国のオペレーションが徐々に回復する一方でグローバルマーケットの在庫が縮小されるため、単価アップという形でポジティブな風が吹くかもしれない。ただし、構造的には第2四半期以降は今の状態に戻るだろうとみている。
(中国の景気への依存度が高いタイやベトナムの景気の減速も懸念しているが、当社のビジネスは、調味料であり生活必需品であるので相対的にはそれほどネガティブな影響は危惧しなくてもよいか、との問いに)
これからの戦略は付加価値型へシフトしていくので、この点を懸念はしているが、現在の主力事業については大きな心配はしていない。業績については、ご承知のとおり為替は日々動いており、もう少し精査し、2019年度決算発表や業績予想でお伝えしたい。
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新型コロナウイルスによる影響はご説明いただいたが、重点事業の中でも最大の成長ドライバーとなるであろうFive Starsについては、日本ほど世の中の動きも大きくないということであり、コントローラブルでオペレーションは改善されてきているという理解でよいか。
Yes。Five Starsの不確定要素で言うと、ベトナムで2019年3月に起きた大きな仮需は、今年はない。それについては、2019年度下期のマイナス要素として中間期に修正予想を発表した。2020年度以降は、影響は一巡する。2019年度上期に非常に苦しんだベトナムの状況は緩和されており、その分はポジティブに効いてくるだろう。全体としては、核酸事業の足元の追い風の状況を、どの程度2020年度のリスクとして、5月の本決算に向け精緻に読み込めるかというところがポイントだと思う。
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新型コロナウイルスの流行がいつまで長引くかは分からないが、例えば北米の冷凍食品 事業の構造改革など、当社計画に影響があるということはないか。
一番の懸念事項は、流行が長引くことにより、全体の消費マインドが低下してくることである。ただし、われわれが目指す食と健康の課題解決や、構造改革というのは、新型コロナウイルスの影響で遅れたり止まったりするものではないと思うので、計画どおり実行していく。
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今回の中計では、アセットライト化の金額がトータルで2,000億円とアナウンスされた。 これまでに発表された1,000億円から増額となっている一方、非重点に含まれる事業は 今までと変わらない。この理由について教えて欲しい。
当初2020~2022年度で1,000億円程度と言っていたが、期間を2023~2025年度まで伸ばし、かつ1,000億の積み上げとなった。非重点としている事業の範囲は、動物栄養のコモディティ、MSGの外販の一部、冷凍食品の一部で、これまでの考え方と変わっていない。リソースアロケーション分も含め精査した結果、この金額が1,000億円から1,500億円に増えた。また、2023年度から2025年度で500億円を追加しており、これにはリソースアロケーションと、見極め事業と申し上げている、効率性は高いが成長率に懸念のある事業が一部含まれる。「食と健康の課題解決」の方針の中で、成長を取り戻していける事業もあるかもしれないが、この戦略で進めても成長を取り戻せない事業が一定程度あるという前提で500億円を加えた。
(非重点事業の増額は、アセットライト化する範囲が広がり、結果的に金額が500億円アップしたという理解で良いか、との問いに)
Yes。
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20-25中計の中に原材料や為替など、リスク要因として織り込まれているものはあるか。
1.3%の単価上昇の戦略転換を行っていくが、現在の事業すべてを反映しているわけでなく、一部なくなる事業を想定しているので、これがリスク要因の一つと言ってよいだろう。また会社全体のリスクとしては、ESGに関わるところとして、特に温室効果ガスの問題で、TCFDの方針に沿ったシナリオ分析を行うと、MSGや核酸、動物栄養など発酵事業全体で、環境税賦課のリスクが80~100億円程度ある。まだ実際に税金が賦課されると決まったわけではないが、6年間という期間の中では現実味を帯びてくるのではないかと思っている。
(6年間で80~100億円のリスクがあるということか、それとも年間か、との問いに)
6年間という期間の中で、あるタイミングで環境税賦課となった場合、関係する海外法人すべてに課税されたとして、単年度で80~100億円程度のリスクがある。これに対処しなければいけないが、施策を検討しているところであり、現時点で具体的な対処案が計画できていないため、今回はリスクとして表現した。
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当社の中計を見ると、再生と成長を同時に実現していくという方向にあるのではないか。 普通の会社は再生を行ってから成長に矛先を向けるが、当社の場合はアセットライトを やりつつグロスも上げていくという非常に難しいことにチャレンジしているように思う。 これについてどのように舵取りをしていくのか教えてほしい。
当社の事業は食品とアミノサイエンスという大きな事業本部に分かれており、各事業部が、事業利益ベースではあるが独立して運営してきた。これまでもそういうオペレーションを繰り返してきており、構造改革を進めることと成長のエンジンを取り戻していくことについて、舵取りが難しいということはない。むしろわれわれが経営陣として変えていかなければいけないのは、食品とアミノサイエンスが分業体制になっているところを、協働しながら強みを結集していくことで、アミノサイエンスの中に埋もれているアミノ酸の機能を追求し、それを具体的に製品化していくことである。また、これを食品事業の、特に新興国を中心としているわれわれの販売網に乗せていくこと。それが一番難しいところである。
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中計資料19ページの、オーガニック成長の伸長について。2019年度は2%の計画にな っているが、どうすれば2%になるのか。全体で見ると1%ぐらいではないかと思う。東 南アジアの海外調味料だけを見て2%というのは分かるが、19ページは全社ベースであ ることを考えると、2%というのはやや強気にみえるがどうか。
2019年度の2%程度のオーガニック成長は、1月末までの足元の状況を反映したものである。したがって、中間期のときに業績予想として発表したものとは少し変わっている。
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2020~2022年度の 3年間で、固定費、人件費、マーケティング費などの費用をどうい うふうに見ているのか教えてほしい。
人件費は、基本的に全体のキャッシュフローの中で一定の額でコントロールするという方針のもと、3カ年で予算管理している。先ほど構造改革のコストダウンの箇所でも触れたが、バックオフィスの費用が削減されるなかにも、人件費が一定のウエートを占めていると思っていただければよい。
(業績が好くても悪くても、コンスタントに人件費は上がっていくというイメージを持っている。こういうチャレンジングな状況において人件費、あるいは他の固定費でもいいが、どうやってコントロールしようとしているのか。例えば人件費がどれぐらい増えるのかという計画があれば教えてほしい、との問いに)
グループ全体のポリシーはなく、それぞれの法人でコントロールしている。
(法人とはいえ、オーガニックの人件費もかなり抑制されるという理解でよいか、との問いに)
それぞれの法人できちんとマネジメントされている。
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中計の考え方について、単価向上や減塩のプロモーションも素晴らしいと思うが、尻上 がりに業績がよくなっていくというイメージを持つ。過去の中計も大体そのような感じ であったと思うが、株式市場における当社の信頼度を回復させるにはかなり時間がかか ると思う。従って、会社への信頼という意味で初年度2020年度は非常に大切だと思って いる。2020年度の事業利益イメージについて、2019年度中間期では約100億円ポジテ ィブに効くものがあり、そこから海外核酸の価格ダウンなどを差し引いてイメージして ほしいという話があったと思うが、事業利益は現段階でも増益をイメージしているのか。
2019年度に発生する費用と、2020年度への影響については、中間期に申し上げた見込みのとおり。第3四半期に発生した欧州の調味料製造設備に関する減損についても、その際に織り込んでいた。ただ、2019年度の着地見込みについて、中間期より上振れて推移しているところは、皆さまの目線とあまり変わらないだろう。そういう意味で、今回の中計は1月末時点の足元の状態を勘案しながら発射台を決めてプランを発表したと思ってもらえればよい。
2020年度の業績予想については、アセットライト化の部分を除けば増益のほうに振れていくと思う。アセットライト化についても、中計のフェーズ1における1,000億円については2020年度から2021年度の、概ね2年にわたるものだと思っている。2019年度に行った500億円程度のアセットライトと比べて、2020年度に集中して増えるということではない。何とか増益のほうに持っていけるようにマネージしたいと思っている。
(2019年度第3四半期は中間期の想定より少しよくなり、普通で考えると着地は少し上振れる可能性がある。2020年度は、アセットライトの構造的な費用を除けば増益というイメージを持っているということでよいか、との問いに)
不透明な部分、例えば為替や原燃料を一定としてみれば、そのようなプランになっている。
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コーポレート部門の構造改革のイメージを持ちたい。11月に特別転進支援施策やアク センチュア社とのJVを発表しているが、どういうことが変わってくるとコストダウンに つながるのか。アクセンチュア社との取り組みはどんなダイナミックさを持った仕掛け なのか。
コーポレート部門の構造改革については、全社共通費2.5%への取り組みとして、バックオフィス業務の高度化・効率化に向けた施策である。数字的なインパクトとしては、記述のとおり300億円の収益改善の中に含まれている。
(アクセンチュア社との取り組みは、合弁会社を立ち上げて先方が33%を持つ。出資割合の意味合い、先方のメリットは何か、との問いに)
時間当たりのコストがリーズナブルで、かつサービスは今よりも落ちない、あるいは更によくなるためにアクセンチュア社と組んでいる。なぜJVかということについては、アクセンチュア社のノウハウ、人材開発手法などマネジメントスタイルをJVに持ち込めることがメリット。これは通常のコンサルティングだけでは得られないものだと考えている。先方のメリットは、今後JVが上手く進展していけば、国内の当社グループ内でカバー範囲が広がる可能がある点だ。
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冷凍食品事業の中期見通しについて。海外で4工場の閉鎖を予定しているとのことだっ たが、今後のサプライチェーンをどのような考えで再編していくのか。
北米の再編が中心になる。基本的には、全体的に見て非効率な工場のオペレーションを集約化していくという考え方が大前提である。また、工場の集約化と同時並行で、アジアン冷凍食品にフォーカスした戦略を強化していくため、アジアン製品に対する増産投資も必要になる。完全に4工場を閉鎖するのではなく、メキシカンやイタリアンを縮小し、アジアン製品に転換をしていく。結果として、冷凍食品に関わるアセットライト化の金額が約45億円と規模が大きくないのは、転換した後資産として残るものも含まれているとお考え頂きたい。
日本のマーケットは非常に厳しい競争環境になっており、サプライチェーンの見直しは必要だろう。タイや中国の工場でも生産しており、日本の工場と共にオペレーションをしている中で、整理が必要だろう。これは20-25の6か年計画に含まれている。
(4工場閉鎖というのは、中国やタイなどの見直しも含んでいるのか、との問いに。)
センシティブな内容であるので、現時点では回答を差し控えたい。
(アセットライト化約45億円は投資も含めてネットベースという事だと思うが、グロスでいくらになるか。考え方を教えて欲しい、との問いに)
工場が紐付けられる可能性があるので、回答を差し控えたい。
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北米の冷食事業について。現在、工場の稼働もそれなりであり、一定程度の売上規模も ある中で、事業利益率は1%や2%くらいである。一方、ある競合の状況を見ていると、 事業利益利率は17%や18%と非常に高く、成長しているということが直近の決算から分 かる。当社と競合でここまで利益率の差があるのは、何が違うためなのか。
例として挙げられた競合はフードサービスに非常に強い会社である。
フードサービスのビジネスというのはソリューション用に、かなり多くのSKUが必要になる。したがって、当社のフードサービス事業の収益力とはかなり差があると思っている。
これは国内で、当社が別の競合に対し劣後しているのと共通の要素であり、北米の場合は、国内よりもさらに規模が大きいということだと思う。当社の強みはアジアン冷凍食品である。ここについて切り出してみると、上述のような劣後にはなっていないので、ここにシフトしていこうという戦略である。
(例えばアジアン製品とメキシカンやイタリアン製品で、歩留まりが全く違うのか、の問いに)
ユニットプライスが全く違う。製造コストが大きく違うというよりは、同じような素材を使っても、最終的にお客様に支払っていただくユニットプライスが全然違うということ。
(つまりアジアンカテゴリーについては、収益性は2~3%よりかなり高いということだと思う。ちなみにイタリアンやメキシカンカテゴリーは、赤字になっているわけではないということでよいか、の問いに)
赤字のものもある。
(するとアジアンカテゴリーにしっかりとシフトしていけば、プロダクトミックスから考えても収益性はしっかりと上がってくるが、急いでやろうとすればリスクがあるので、ゆっくり慎重にやっていくということか、の問いに)
そのとおりである。
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アジアン冷凍食品について、北米と欧州における現状のシェアを教えていただきたい。
北米のマーケットシェアは2018年度の実績ベースで33%程度。欧州はまだビジネスが小さい。大きく伸びてはいるがあまりにも小さく変動が大きいため、当社としては公表するレベルではない。
(2019年度中間決算の資料によると、北米・欧州ともに伸長している市場。北米はシェア1位で、欧州市場はアメリカの市場の3分の2ぐらいだとみている。欧州のシェアはそれほど大きくないため、今後シェアが上がることにより売り上げも伸びると考えて良いか、との問いに)
Yes。北米と欧州におけるアジアン冷凍食品の市場の伸び率は引き続き堅調に推移している。
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北米の冷凍食品事業について、今後収益性を高めていくという計画であるが、想定より 時間がかかる印象である。競争要因により収益性の改善が遅れていることはないか。韓国 の競合は近代的な工場で餃子を生産してアメリカに輸出している。また、 アメリカNo.1の冷凍食品会社を買収し、当社以上にスケールが大きくなっている。20- 25中計の中で、米国冷凍食品の競争環境をどのように見ているか解説願いたい。
北米冷凍食品の主戦場であるアジアンのマーケットは非常に活性化しており、市場は拡大している。その中でアジアや日本の競合が参入しており、競争環境が変わってきている。しかし、当社は競合の参入を五月雨式に許しているわけではない。当社がイノベーションを急いで実行していくことで、競争優位に立てる計画になっている。収益改善には時間をかけている。これは17-19中計の反省も踏まえている。トップダウンで急速に構造改革を進めると、製造現場のオペレーションがついて来ない。重点事業への転換にしても同様のことが起きてくる。よって、一つの工場で在庫を潤沢に持ちながら、もう一つの工場を閉めて転換をしていくという計画。2つ、3つの工場を並行して進めるというより、今回は直列型の計画に見直したため、少し遅いという印象につながっていると思う。あまり無理をすると同じようなリスクを負うので、このようにさせていただきたいと思っている。
(競合も含めたアジアンのマーケットは、今何%ぐらい伸びているのか。当社が時間をかけ現場とのバランスを取りながら転換を図っている最中に、マーケットシェアを取られてしまうリスクはないか、との問いに)
リスク管理という観点で、参入してきている競合は大変強い会社なので、甘く見ているわけではない。ただ現時点では、先方も相当苦労しているという認識であり、ここはまさに競争であると思っている。一方で顧客に対して、しっかり仕事をつないでいくことが必要。当社の北米におけるプレゼンスをしっかり守るということである。北米での生産体制が整うまでは、タイの工場から製品をつなぐことで、顧客との強い関係性とマーケットシェアを維持している。
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マネジメントの役割について。今回初めて外国籍の役員がいるが、役割はどのようなも のか教えてほしい。
直接的な責任は、アミノサイエンス事業本部長ということである。現ヘルスケア事業と、電子材料を含むライフサポート事業の成長戦略、そして動物栄養事業のリストラクチャリングの全体責任を負う。もう一つ、経歴としてグローバル企業で働いてきたキャリアを持っているので、当社全体のガバナンスやカルチャーに属するような仕事の進め方、やり方について、非常にリーダーシップを発揮してくれている。これが当社のマネジメント全体にプラスの影響を及ぼしてきていると考える。
(当該役員の最初の功績としては、動物栄養事業のアセットの縮小、売却、あるいは資産の転換のスピード感というところか、との問いに)
責任の範囲は、2020年度以降の開示区分でいうと「ヘルスケア等」である。この中には電子材料、動物栄養のスペシャリティ、また製薬カスタムサービス、医薬用・食品用アミノ酸などを伸ばしていく仕事も入っている。構造改革を要する部分は動物栄養事業であり、それ以外は成長領域である。
(効率性検討事業としてヘルスケアの一部を挙げているが、ここは当該役員の管轄ではないということか、との問いに)
効率性検討事業のヘルスケアの一部も担当である。ただしここは、一部の新しい事業である。サプライチェーンの充実やマーケットの拡大により収益性を高めていくことがテーマになるが、割合としてそれほど大きくないだろう。
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中計資料の5ページに記載のある、サプライチェーンマネジメントの強化について。マ ニュファクチャリング戦略をサプライチェーンマネジメントで横断的に構築できる体制 というのは、具体的に何を想定しているのか。
マネジメントの形を変える。つまり責任を持っている経営会議メンバー、役付け役員の管掌を変えてしまうということである。今まで、一次物流については、各事業本部長が責任を持つ形になっていた。今後は、一人のコーポレートオフィサーが生産とサプライチェーンの川上の物流を一緒に見ることで、需要予測や流通在庫の削減に対するDXの導入など、スピーディーに包括的にマネジメントできる体制に変更していくということ。将来的にはここに調達もつなげていきたいと思っているが、まだ計画には入っていない。
(今後例えば食品事業では、ローカルからグローバルで管理する体制に変えていく。その関係でいくと、コーポレートオフィサーは、冷凍食品では冷凍食品のコーポレートオフィサーがいて、さらに生産から物流までグローバルで1人のコーポレートオフィサーが掌握するというイメージなのか、との問いに)
コンシューマー食品事業のグローバルでの組織化は、事業ユニットのことであり、調味料・加工食品事業を国内と海外に分けていたところを、調味料と栄養・加工食品という、2つのグローバル組織に改組されるということである。
生産とサプライチェーンについては、機能の部分であり、コーポレートオフィサーが責任を持って効率化を図るということ。事業と機能ということで、DXや全体の在庫を削減するためのシステム、また需要予測の仕組みなどは共通で使えるものだと思っており、そこを一人のコーポレートオフィサーが担うということである。
(コーポレートオフィサーは、全社的にその仕組みを考えるということか、との問いに)
実際は、B to Cビジネスと、B to Bビジネスはサプライチェーンも大分違うので、大きくはこの2つに分かれるが、全体の仕組みそのものを構築するのは、経営会議メンバーの一人である常務執行役員がこれを担う。
(それにより全社的な運転資本の効率化などにつなげるということが、大きなビジョンという認識でよいか、との問いに)
Yes。当社は、キャッシュ・コンバージョンサイクル(CCC)が100日を超えており、中間在庫も含めた在庫のところに大きな課題がある。バルクビジネスのマニュファクチャリングにおいて、ある程度工場を集約化する戦略を取ってきたが、結果として在庫が大きく膨らんできていることにつながっている。ここにメスを入れていく役割である。
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中計資料36ページを見ると、おそらく国内と海外の調味料・食品が中計の成長ドライ バーで、単価も上がっていくということだと思うが、事業利益率の改善があまりない理由 を教えてほしい。
まず参考資料である36ページについては、2019年度の発射台の数字が中間期の修正予想となっているが、資料本編は1月末の足元の状況を勘案した数値となっている。大変申し訳ないが、前提が違っている。その要素が今の大きいところだと思う。加えて36ページは、フェーズ1でアセットライト化を含んでいない計画になっている。そのため、オーガニック成長率が高めに出ている。
(36ページは前提が最新の状況ではないということだが、それをベースにしても、2019年度と比べ2020~2022年度では、事業利益率を1%しか伸びないということ。しかもオーガニック成長率は重点事業のみと聞いているので、もう少し伸びる計画でなければいけないのではないか、の問いに)
ご指摘のとおりである。ただ調味料・食品事業の中には日本ももちろん含まれる。また事業利益率が1%しか変わっていないという部分については、一定のマーケティング費用の増加を見込んでいるためである。
(すると、2020~2022年度の3年間で事業利益を300億円程度伸ばす計画であり、このうちの大きな要素は調味料・食品事業の事業利益成長かと思っていたが、少し違うイメージを持ったほうがいいのか、の問いに)
約300億円の収益改善の内訳については、単価アップによるものが約100億円、構造改革によるものが約100億円、低資源利用発酵も含め、事業活動の中で生み出すコストダウン約100億円となっている。
(ということは、単価アップによる収益改善約100億円については、金額規模が少し小さいという指摘があるが、マーケティング費用の増加も勘案したNETという理解でよいか、の問いに)
約300億円の収益改善は、参考資料36ページ以降で示している事業別プランの中に含まれている売上高成長に伴う事業利益の伸びから、全社でリスクを差し引いた数値になっている。
(では、前提が違うため正確ではないが、36ページ以降に記載の3つの事業で計算した事業利益の積み上げから、リスクを考えて下に下げた金額が約300億ということか。あくまで目指すのは、今後3年間で事業利益を約300億円伸ばす、という理解でよいか、の問いに)
共有させていただきたい数字は300億円である。
(その約300億円は、中間期の修正予想から足し上げればよいのか、あるいは1月末までの実績を考慮した着地見込みからなのか、の問いに)
大変申し訳ないが、1月末時点の実績を勘案した着地見込みは中間期の修正予想より上振れており、そこを発射台にしている。
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20-25中計を発表してから、社内でどのような変化があるか教えていただきたい。
今回の中期経営計画(以下、中計)の内容については、皆さまと同じ情報をオンラインで、またオンデマンドで社内に共有している。発表直後から社内説明会を私のほうで進める予定であったが、こういう環境になり、4月の頭以降にずれている状況である。皆さまに説明した内容よりもさらにかみ砕き、変革と成長をどう取り戻すかということについて、細かいところまで対話しようと考えている。
社内の受け止め方だが、2018年度中間期の業績見通しの際にアセットライト化ということを表明し、資本の効率性という観点で社内にもアナウンスした。今中計のガイドラインは2019年7月に出し、2019年度中間期の決算発表等でもあらためてそのエッセンスについて話をした。コーポレートについては、業務の効率化のためにアクセンチュア社とJVといった具体的なものが進んできたし、海外の機能型のグループ会社についてもスピンオフを決め、具体的な施策が先に走る形であったので、今中計の骨格を共有する中で、言ってきたことが先に進んでいるという受け止め方はしているだろう。
ただ、詳細についてはよく分からないところも多々あるので、できるだけ速やかにギャップを埋めていきたいと思っている。共有するにはこの数カ月が勝負であり、私自ら職場対話をしていきたい。
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よく練られた中計であると思うのでスピード感を持って前倒しで進めてもらえたらあり がたいが、前倒しで成果が出てくるとしたらどのあたりから出てくるか。また、今の環境 における追い風の中、投資や変革を加速できるとしたらどういう部分かということにつ いてご示唆いただきたい。
2020~2022年度の3年間を構造改革と位置付けるも、単にポートフォリオの見直しだけでなく進めていく。ウェルネスの価値を高めるために、主力の調味料事業や加工食品の事業をどれだけシフトできるかどうかが大きなポイントだろう。国内は既に相当腹に入っているので押し上げてくれると期待しているが、現Five Starsを中心とした海外の大きな事業についても、施策をどれだけ早く実行に移せるかがポイントである。これがキャッチアップできると、おっしゃる加速というところが見えてくるのではないか。
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中計資料の12ページによれば、高・上位中間所得層は健康関連支出が高い。当社はそ こへの注力が遅れたという反省があったということであるが、ここが成果として出てく ると力強い当社が実感できるだろう。一方注力が遅れたとすれば、どのようなニーズを取 り逃したことになるか。例えば、過去5年間でローカルの競合に取られたこういうとこ ろを取り返さないといけない、など具体的なイメージがあると、確信を高められると思う のだがどうか。
頂いたご質問は、これから投資家の皆さまと分かりやすい観点で共有しないといけないところだろう。この層をつかまえていくためにはいくつかの要素があるが、やはりEコマースやインハウスのものも含め、生活者にダイレクトに製品を届けていくことが乗ってくるという実感を持てると、もともと海外で営業力の強い当社のいわゆる陸軍型の組織も、これに乗っていけるのではないかと思っている。また、海外でも「勝ち飯®」の展開を主にアセアンでやっており、これは現地の全従業員が非常に体感できる施策である。
この2つをうまく使い、高・上位中間所得層の市場に飛び付いていきたい。
(ダイレクトに製品を届けていくとなると、今までの営業マンやリソースと違った組織や人材の投入も必要ではないかと思うが、そのあたりも加速度的に進めていけると考えていてよいか、との問いに)
日本から中国や東・東南アジアへの輸出については、専任の組織を新体制でつくっている。この組織を固める前に半年かけて実際にタッチポイントを作ってきたところであり、実稼働の段階に入る。特に東南アジアにおいてデジタルマーケティング、そしてダイレクトに顧客に届けるBtoCのビジネスが急速に立ち上がってきており、ここは外部人材を登用することを検討している。
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2020~2022年度の構造改革について、効果が出てくるのは2年目の途中か3年目だろ う。ただ初年度から、外部の人間が当社の改革が進んでいることを感じるにはどのような 定量面や定性面を見ておけばよいか。
全体の利益成長に向かって構造改革が進んでいくのは、ご認識の通り2021年度の中ごろ、2022年度になるだろう。既に申し上げた通り3年間で300億円程度の収益改善を目指しており、このうち200億円がコストダウンと構造改革の部分。これまで、コストダウンは低資源利用発酵の進捗という形で共有していたが、これに業務革新による効率性によって出てくるコスト改善が乗ってくる。初年度では、この2つのコスト削減を通じた効率化をぜひ見ていただければと思う。また事業ポートフォリオの組み替えによる構造改革の部分については、結果的に赤字の削減、黒字への転換につながるわけだが、これについてはできるだけ2020年度に実行したいと考えている。しかしながら、相手先との交渉の関係で一部2021年度にずれこむ可能性が高いものもある。このあたりを見ていただくと、一番分かりやすいのではないかと思う。
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17-19中計のFit & Growも20-25中計も、投資家に対して非常にメッセージのある良 い中計だと思う。3年前と比べて実行力や変化への対応力が組織としてどういうふうに変 わってきているのか教えていただきたい。
組織における変化のポイントはマネジメント層の考え方が大きく変化したこと。今回の新しい計画を一言で申し上げると、短期のPLを積み上げる事業拡大の戦略から、ROIC経営に舵を切るということで表現できると思うが、それに対する理解や重要性を認識している経営層に変わったということである。実効性という観点について言うと、単にリーダーシップをとるだけでなく、組織のカルチャーにつながるような仕事の仕方、仕組みそのものを変革していかなければいけないというところに今きている。これについては、影響力の大きい組織や法人から着実に実行することでベストプラクティスを示しながら前に進めていきたい、というのが前中計と大きく違うところだ。
これまで2020年度にグローバル食品企業トップ10クラス入り、という目標を掲げ10年間走ってきたが、今後はこの目標に対して全体で走らせながら、一方ではマネジメント層で次の10年につながるような全体の仕事の仕方の棚卸し、あるいは着眼点について変化させなければいけないという議論を積み重ねてきた。
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先進国であるならば減塩製品にプレミアムの価値を払うのは分かるが、新興国でも同様 なのかという疑問がある。具体例があれば紹介いただきたい。
新興国でも同様に減塩製品を浸透させることは可能である。現Five Starsにおいても、WHOが掲げている1人1日あたりの塩分摂取量を5グラムに近づけるということについては課題が大変大きいという認識を持っており、社会的にも浸透しつつある。具体的にはタイやベトナムにおいてもこのテーマについては非常に深刻に受け止めていて、ソリューションや提案を待っている状況だと思う。またブラジルなどにおいては、塩分摂取量について一定の規制を設ける必要があるのではないかという動きが国レベルで進んでいる。そういう面で機はかなり熟してきていると捉えている。
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今回KPIで従業員のエンゲージメントスコアを入れているが、この測り方について、 経営層が考えていることとゴールが一致する形でうまく導入できるのか。
Yes。ベースとなるエンゲージメントサーベイは、さまざまなリーダーシップやASVといった経営のビジョンへの信頼感や賛同性に加え、このビジョン実現を自分の仕事として捉えられているかどうか、あるいは自分のやっている仕事がビジョンの実現につながっているかどうかという観点でも測っている。これまで2017年と2019年の2回に渡りエンゲージメントサーベイを実行しており、トップの項目にくるASVに対する信頼と、これを旗頭に味の素グループが進んでいることへの賛同は、80%の社員がYesと表現してくれている。これはグローバルに見ても大変高いレベルだと思っている。
しかしながら、ASVの自分ごと化という観点では55%にとどまっており、ここが大きな課題と考えている。従って、ここを80%に上げていく。さらに理想として、2030年には本当のエクセレントカンパニーとして85%のレベルに上げるということを、組織のマネジメント上の PDCAに組み込むことがポイント。今後、エンゲージメントサーベイは2年に1回ではなく、毎年実行することに変えている。
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17-19中計の課題でもあった環境変化への対応スピードという点でお聞きしたい。実行 力という言葉に関連するが、何かしら問題は必ず起こるものであるので、最終的には戦略 は変えずとも戦術は変える、もしくは細目やドライバーを変えてでもROICを達成する ということが第一ではないか、と個人的には思っている。具体的には、世界的に市場が混 乱している中でアセットライト化の交渉が想定より長引くとか、節約志向で減塩が進ま ない、などいろいろ想定はできるだろう。今、どういうリスクシナリオに対しどのような 軌道修正、追加策を考えているのか。変化への対応スピードという観点でお考えを伺いた い。
さまざまな変化が起きて、どうシナリオを修正するのかという時に一番大事な指標がPLにあるのか、ROA/ROICにあるのかによっても全く違う。これまではPL志向であり、事業利益を短期的に上げるためにどちらを取るかという判断基準であった。新しい事業への投資、あるいは構造的によりよくしていける事業への投資を縮小し、足元の短期利益のために仕事をするということが組織の中に染みついており、これが大きな課題だと思っている。
今後指標とする中期的なROICは、年度ごと、事業ごとのROAで構成される。これを組織の目標として置き、そのために仕事をするという意識に変えていくことがリスクに対する強さにつながるのではないかと思う。
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今後当社が、4~5%のオーガニック成長を遂げていくところがイメージできない。調味 料「味の素®」、風味調味料、メニュー用調味料を国内外合わせると2,500~2,600億円程 度の売上高になると思うが、このうち、例えば5年後までに減塩あるいは機能を付加し た付加価値品の構成比をどのぐらいまで高めていきたいというような目標があれば教え ていただきたい。
今回の戦略の中に価格を上げるということが組み込まれている。これに関しては、健康訴求型の新製品を増やすということと、既存の風味調味料や「味の素®」というコンシューマー食品のマーケティングを変え価値を上げるということの2つの側面がある。
日本では、和洋中の風味調味料のうち、減塩タイプの製品の構成比は5%程度。ただし、ユニットプライスはレギュラー品に比べ20%以上高くなっており、全体では2桁成長をしている。従って、国内の調味料・加工食品は現在1.6%程度のCAGRであるが、このうちの1%の部分はそれらの製品群が押し上げている。
このようなことは、現Five Starsのみならず海外では全く取り組んでこなかったため、まずここを目指していくというのが、新製品という意味での期待値である。しかしながらそれだけでは4~5%のオーガニック成長には届かないため、既存の風味調味料の売上規模の大きいところについても同じような取り組みをしていく。
(既存の風味調味料ブランドの中でレギュラー品と減塩商品をつくっていくということか、との問いに)
Yes。減塩については共通のブランドを使うのが一番よいと思っている。
(減塩タイプの構成比が5%というのは、例えば、既存品である「ほんだし®」の減塩タイプの構成比が5%ということか、との問いに)
日本の場合は「ほんだし®」、「コンソメ」、「丸鶏がらスープ」、いわゆる和洋中の風味調味料全てに減塩タイプを揃えており、それらを平均すると5%程度の売上構成比を占める。
(今、日本は5%で、さらに10%ぐらいに上げていくということ。海外はほとんどゼロだが、日本のようにまず5%程度を目指してやっていくというイメージでよいか、との問いに)
Yes。
(海外での減塩タイプ製品展開において、生産設備の面では整っているのか、との問いに)
海外における戦略を減塩訴求にシフトしていく時、一番重要なのは製品「味の素®」だと思っている。これは製品そのものに減塩効果があり、減塩版の「味の素®」というものはない。「味の素®」そのものの減塩価値を訴求するマーケティング戦略へシフトしていく、これが最も早いアプローチ。海外の風味調味料で圧倒的にボリュームが大きい国での減塩製品展開は、現地での生産を整えるのに少し時間がかかるが、いずれにしても2021年度には減塩タイプが揃うようにしていきたいと思っている。
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新製品で健康訴求型のウエイトを増やしたいという話があった。昨年、研究開発体制を 変えた成果として、この1年で健康訴求タイプの製品につながるものが出てきていれば 紹介いただきたい。
具体的に申し上げると、2019年度当社の製品の中で減塩として反映できたものは、年間換算で990キログラム。2020年度の計画は7,700キログラムであり、当社の製品で減塩が進む。研究開発の意識を、単なるおいしくて簡便ということだけでなく、健康価値を訴求していくことにシフトしていくことで、これぐらい加速できている。
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サプライチェーンマネジメントの強化について、グローバルでの在庫など、キャッシュ フローに影響するものが今後どのように効率化できるのか教えてほしい。
グローバルのサプライチェーンマネジメントの強化については、在庫管理、需要予測の精度アップについて、AIを用いた手法を現在検討している。これを何とか2022年度までのフェーズ1に組み入れていきたい。当社の課題はB to C、それからグローバルでサプライチェーンを構築しているB to Bビジネスにおいて、グローバル企業と比較しても在庫が非常に多い点。現在、キャッシュコンバージョンサイクルが100日を超えており、キャッシュマネジメント上の大きな課題になっている。一番大きな部分が在庫であり、これを削減するために、サプライチェーンマネジメントの強化を掲げている。
(在庫管理の問題を改善するということであるが、今の問題点はどこにあり、どのあたりが大きく変わってくるのか、との問いに)
工場、物流、事業全体をコントロールする事業部というように、多部署にわたって需要予測に関わる仕事が発生している。顧客に迷惑を掛けないよう、より安全サイドで見積もるため、在庫が必要以上に積み上がる。AIと申し上げたのは、DXに最も期待するところであり、人間の予測を介在しない形でできるだけ少人数のメンバーとAIでこれをマネジメントしていく形に持っていきたい。これは大きな成果が出るのではないかと思っている。
(改善金額のイメージや最も効果が出そうな領域など、具体的なイメージはあるか、との問いに)
DXの段階でいうと、現在はDX1.0という段階にあり、試行錯誤を繰り返している。これによって改善されるキャッシュは、フェーズ1のところではそれほど大きな金額を入れていない。期待値としては、2023年度以降には数百億のレベルで在庫を圧縮できるように持っていきたい。2022年度までの営業キャッシュフローの計画も、現時点から極端に増えているわけではないので、フェーズ1ではまだトライ・アンド・エラーを行う時期と考えている。
(当社も以前からDXに取り組んできていると思うが、国内の他社の事例ではDXとグローバル化に取り組み、目に見えて成果が出てくるまでに10年ぐらいかかっている。今後10年かかるといわれたら厳しい。できれば当社は専門人材の投入も含めて加速化し、3年程度で済むように頑張っていただきたい、とのご意見に)
3年のイメージで考えている。
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動物栄養について、コモディティは非重点事業で、スペシャリティが効率性検討事業と なっている。以前、スペシャリティをやるためには、顧客への提案力を維持するためにコ モディティも必要というお話があった。これを切り離す意味合いをお聞きしたい。また、 スペシャリティのROICやWACCはどの程度か教えて欲しい。
便宜的にコモディティとスペシャリティに分けているが、動物栄養事業全体の構造改革を最優先する。動物栄養事業全体をなくしていくこともあり得る。ただ、大事なことは、当社にとってスペシャリティ事業のボリュームは小さいが、非常に収益性の高い事業であり、これを切り離して構造改革するということも併せて考えている、ということ。順番としては構造改革が最優先であり、できることなら小さいが収益の高いスペシャリティ事業を残したいということ。仮にスペシャリティ事業が残った場合は、ヘルスケア等のセグメントに入るが、全体のROICに影響を及ぼす規模ではなく、非常に小さな収益事業が一つ残るということ。
また、顧客に対するサービスが必要だから両方を残しているという説明に対する整合性だが、これは当社が売却なり提携先を模索する中でユーザーやディストリビューターをバトンタッチしていくという考え方であり、顧客視点の重要性は担保していきたいと思っている。
(仮に動物栄養事業のスペシャリティを残したとしてもROICへの影響は小さいという話があったが、そうであるならばこの小さい事業を残すべきなのかと疑問に思った。顧客志向でやむを得ず残すということになるのか、との問いに)
繰り返しになるが、構造改革をまず最優先にする。ただし、相手先と話していく過程の中で様々なオプションがあるということであり、必ず残すとは申し上げていない。コモディティとスペシャリティに分けた場合、スペシャリティの事業は全体からいうと小さく重要度は低くなるが、これを全社のソリューション型ビジネスと位置付けた場合、顧客の課題解決に繋げられる可能性も残っている。従って、資料上では便宜的に分けているということ。
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投資家に対するメッセージを確認させていただきたい。20-25中計発表後、ラージミーティング、セルサイド/バイサイドミーティングと続けて設けており、タッチポイントが多くありがたいと思っている。多くの反応があったと思うが、それをどのように受け止めているか。もう十分伝わっていて、あとは実績を急いで出すのみということなのか。
タッチポイントを多く作ることで、「食と健康の課題解決企業に生まれ変わる」というメッセージは、おおむねポジティブに捉えていただいているのではないか。課題はやはり実行力という評価をいただいている。従って、実行力のところについては、やってみなければ分からないということではなく、実行力を上げていくための組織マネジメント、企業カルチャー変革につながる仕事の仕組みの変更を、IR DAY、またその後のコミュニケーションの場で共有させていただきたいと思っている。
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西井社長の後継者をどのような人材に託したいと考えているのか、教えて頂きたい。西井社長の時代になって特に海外事業での受難が続き、成長復帰するために事業構造改革、社内の意識改革に踏み出し、それに追われる時間が多かったと思う。改めて、2030年の目指す姿を定めて進む中で、西井社長に続く舵取り役に何を求めていくか。それによって、今回発表した計画の実現性を測ることができると考えている。
20-25中計でやらなければいけない変革は、単にポートフォリオの組み換えや、経営指標の変革に留まらず、会社のカルチャーそのものを変革していくことになる。それぞれの事業が個別に作っていた仕事の仕方のようなものを統合していく。このカルチャーを作っていくためには、人財の能力を最大限に引き出すマネジメントが必要である。
当社は、アミノサイエンス事業と食品事業との間に大きな壁のようなものが出来上がっている。マーケティング、研究開発、生産など、様々なバリューチェーンの中に壁が知らないうちにできてしまい、結果として構造的なカルチャーの弱点があると思っている。この観点では、社員と向きあえるということだけでなく、仕組みを変えることについてもリーダーシップを発揮できるリーダーが相応しいだろうと思っている。単にビジョンだけで仕事を関連づけるのではなく、具体的に組織マネジメントを掌握して、食と健康の課題解決カンパニーを目指していけるリーダーであること、これが最優先事項である。
仕事の仕組みを変えていくためには、社外の優れた知見や経験を持っている方々をマネジメントチームの中に入れ、マネジメントの仕方をきちんと整えていくことも併せて必要だろう。その意味ではオープン&リンクを率先垂範できるようなリーダーシップが、次に大事なことだと思っている。
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今回、食と健康の課題解決という非常にクリアなメッセージを出しており、非常に腹落ちする部分もある。一方で、各市場とのコミュニケーションの形を変えることによって、どのように業績のモメンタムを加速させるのか教えていただきたい。特に海外食品事業においてモメンタムが鈍化している背景として、チャネルの変化やローカル企業との競合激化、また場合によっては製品の付加価値に従来のような優位性がなくなってきているという部分もあったと思う。その辺りを、コミュニケーションの変化だけでどの程度引き上げていけるのか。製品開発面でも、何か今までと違う点が出てくるのか。
20-25中計では、フェーズ1で主に構造改革をやり、フェーズ2の成長回帰につなげていくことがポイントである。フェーズ1では300億円程度の事業利益を積み上げていくが、内200億円が構造改革とコストダウンである。したがって、フェーズ1の中の更に前半においてこの部分が好転していくことが、まず一つのコミュニケーション上の大きなポイントになるだろう。
重点事業における成長モメンタムをどのように作り上げていくかについて、2つの観点がある。1つは当社のドライバーであるが、成長が鈍化してきている現Five Starsにおいて、具体的な健康訴求により成長のカーブをどう取り戻すかということである。当社のこれまでの成功モデルである陸軍型の仕事の仕方で、単に一生懸命やるというわけではない。例えばEコマースへの取り組みや、デジタルマーケティングへの新しい取り組みについては、ベストプラクティスを早期に示していく必要があると思う。この分野は当社のこれまでのメンバーでは弱点があると考えており、外部のスペシャリストと連携して仕事の見える化をしていきたい。
もう1つの観点は、2023年度以降の立ち上げを計画している新しい事業であり、ここについてはできるだけ早く仕組みを示していきたい。
(その際に、今ある当社の製品、マーケティングやチャネルの開拓等で、一定程度は改善できるのか。それとも、2023年度以降の新しい事業を待つ必要があるのか、との問いに)
強い調味料事業で健康価値を訴求したマーケティングにシフトしていくことは、今の事業形態も含めての戦略である。ユニットプライスの上昇につながり、また「味の素®」のような基礎調味料については、マーケティング戦略の転換により数量的なモメンタムが変わってくる。新しい事業はこれにオントップしてくる形であり、ビジネスそのものを強化することが大前提になっている。
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企業文化や組織文化の変化については、西井社長就任以降に変えてきて、これから花開くフェーズが来るということなのか。あるいは20-25中計で長期的なありたい姿を定めたので、改めてこれから変えていくということなのか。
社長就任以降、17-19中計の中で、ASV経営によりビジョンを共有することついては浸透できたと思う。事業を通じて社会課題に貢献することについて、社員や組織のコンセンサスが得られるようになっていたので、今回のビジョンの変更がスムーズに行えたと思っている。したがって、フェーズとしては次の段階に移行する準備ができたと捉えている。その中での難しさは、ビジョンだけで変われるものではないということ。仕事の仕方、評価の仕方を回転させていくようなマネジメントシステムや仕組みが重要である。これまでの分業という形では当社の強みは生かせないので、人的資産や経験値としての財産を協働することで、モメンタム作りに入るということである。これを実践的にやっていくためには、いくつかのベストプラクティスを早期に生み出していかなければいけない。今後構造改革において、アセットライト化によるポートフォリオの見直しを実行する中で、ベストプラクティスを示していかなければ組織の活力が出ない。そのような段階に入ったと思う。
(仕事の仕方や評価の仕方といった、いわゆる会社としてのスキームの変更は、2020年4月から走り出すと考えてよいか、との問いに)
重要なKPIは、中計資料6ページで赤の網掛けをしているKPIである。黄色の網掛けのKPIは対外的に常時共有するものではないが、社内ではこれを組織目標の中に位置付け、それにより評価が行われるような形にしていく。これは4月からスタートする。
また、ROIC経営を実行していくためには、KPIのみならずカルチャーを変えることが一番難しいだろう。短期の事業利益の積み上げを最優先するカルチャーを、ROIC経営によって中期的に効率を高め、オーガニック成長の意識に変えていけるかということが大きなポイントである。
これまでのマネジメントシステムは組織により異なっていた。オペレーショナル・エクセレンス(OE)を使う部門もあれば、生産部門などはTPM活動の流れを用いた改善活動を行い、また別の組織は5Sの日本モデルのシステムを使うといった形だ。これを4月から、OEに統一していく。するとPCDAがどのようなレベルにあるのか横軸で比較しやすくなるので、これにより組織が自走化できるような仕組みを標準化していきたい。
(新しいOEを浸透させるため今までのやり方を捨てることも必要になると思われる。マネジメントサイドからその仕組みを整えるために、どのようなことをしているか、との問いに)
数あるマネジメントシステムの中でOEを選んだ唯一のポイントは、顧客志向である。ここには顧客価値を上げるために、業務の全てを効率化していくという概念が入っている。バリューチェーンをつなげることで、事業のみならず、コーポレートあるいは生産部門においても、最終的にはこれが顧客価値の向上につながるということが見えてくる。例えばコーポレートの仕事は顧客価値の向上を直接的には実感しにくいが、組織のOEの中に川下には顧客がいるという考え方を組み込むことにより、顧客視点で役に立たない仕事は必然的にそぎ落とすようなマネジメントを定着させたい。
また一人当たりの時間生産性が高まるという観点で、非常にシンプルに個人評価につながってくるだろう。これは今までの働き方改革において総実労働時間を1,800時間程度にしてきたというレベルとは一段違う。1,800時間の中で健康経営を保ちながら、顧客価値を上げるための仕事に時間を費やしていく。そのようなことを、組織マネジメントと個人評価に紐付けていきたい。
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海外の調味料・食品事業において、ユニットプライスを上げていくことは今後の鍵となる部分だと思うが、製品のプレミアム化をどのように行うのか。現状プレミアムなカテゴリーが少ない中で、本当にポジションを作っていくことができるのか。時間軸、投資、リソースのイメージを教えていただきたい。
現Five Starsにおいても、既に調味料のマーケットで付加価値の高いカテゴリーが出てきている。グローバル戦略のヘッドクオーターから現地の責任者へ、マーケットで付加価値の高いカテゴリーが顕在化してきているという事実を共有するところからスタートしている。プレミアムなカテゴリーは、当社が得意とするトラディショナルトレード(TT)や一部のモダントレード(MT)ではなく、主にEコマースや、B to Cの別のビジネスから始まっていること、また付加価値型の製品に各国の市場が受け皿を持っていること、は共有できている。
その中で今後、基礎調味料「味の素®」の価値を高めること、また売上規模の大きい国で風味調味料の減塩タイプの展開を図ること、により価格を上げる。メニュー用調味料についても、さらにプレミアムを志向した製品コンセプトや設計により、まだチャンスがあると思っている。減塩により基礎調味料、風味調味料のベースを上げながら、新しいプレミアム型製品を組み合わせていきたい。
海外ではまだプレミアム戦略をほとんど取ってきていなかったので、現Five Starsには実例がない。日本では、風味調味料の中で和、洋、中、全てのタイプの減塩製品を持っており、売上高構成比としては5%程度だが、ユニットプライスは通常の製品より20%程度高い。ここが2桁成長しており、日本の風味調味料のカテゴリーを1%押し上げるモメンタムを作っている。海外でも同様の製品を早く発売し、全体の押し上げ効果を図っていきたい。
(今まで現地と共有できていなかった部分があったが、それを本社のガバナンスで共有するコミュニケーションに変える、という理解でよいか、との問いに)
現地法人が仕事をしやすいよう本社がバックアップする構造が出来上がってきた時に、市場の変化が起きていたということである。今回コンシューマーフーズ事業をグローバル事業部に改組したのは、競合と戦うのと同じような観点で、社内でも葛藤がないとチャレンジングなことは生まれてこないという考え方に拠る。
(グローバル事業部の人財や知見が、現地で情報を持っている人と伍する形でなければいけない。そこに対する人財投資について、社内外でどのように取り組んでいるか、との問いに)
アミノ酸の働きを使って食品を強化するという観点では、人財の配置転換を実行する。健康栄養に関する知見の高いメンバーを、食品の組織の中に組み入れていく。2019年に研究所では、基礎的研究や分析力に秀でたメンバーを、食品研究所あるいはバイオ・ファイン研究所に配置しており、成果が見えてきている。これを事業分野でも行うことによって、より強くしていきたい。
また、デジタルマーケティングやB to Cの分野については、既存の食品メーカーやベンチャー企業が多く参入してきているので、外部人材が必要だと考えている。
全体のマネジメントとしては、特にパーソナル栄養に関する新しい事業を作るということで、各事業部に散在しているタスクを社長直下のタスクに統合し、ここに外部から人材を招く。特にB to C、デジタルマーケティングの分野については、ASEANも含めてカバーしていく体制でやっていきたい。
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アセットライト化については、利益の出ない事業から撤退しても、単純に引き算できず、戻ってくる固定費の部分があるだろう。その点について、20-25中計ではどのくらいまで織り込んでいるのか。また逆に、固定費の戻りがあまり起きないような仕組みは構築できるのか。
これは人の問題であり、単純に固定費が戻るということではないと思う。今、味の素社単体の基幹職に対し特別転進支援施策を発表しており、今月中に大体目途がつく。この背景にあるのは、アセットライト化に伴う事業ポートフォリオの集中である。これまでいくつか事業の構造改革に取り組んできたが、そのメンバーが味の素社に戻ってきたときに、残念ながら新しいキャリアを描くことが難しいメンバーも出てきていた中で実行に移した。その点では、今回一つのハードルをクリアしたのではないかと思っている。
また、非重点事業に関しては、事業の転換ということになれば、例えばタイの飼料用アミノ酸リジンの生産を止めMSG生産に転換した場合、所属するメンバーはMSG事業でカバーできる。むしろ慣れたメンバーが残ってくれるということは、大変有効な人財の使い方になる。
(事業の再構築は常に起こるものであるので、今後そのような際には、人財に関する流動化が機動的に起こっていくというイメージでよいか、との問いに)
できれば追い込まれる前に、Win-Winになれる形で事業の再構築を進めていけると、組織としても痛みが小さいのではないかと思っている。
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20-25中計では、17-19中計まで掲げていた「グローバル食品企業トップ10クラス入り」という目標がなくなってしまい、少し残念な感じもする。今、社長がグローバルでベンチマークとして考えている会社があれば、教えていただきたい。
2022年度には「グローバル食品企業トップ10クラス入り」の諸条件である、財務的指標やESG指標についてほぼ実現できるだろうと思っている。従って、これまでの目標に対して3年遅れでの達成ということになる。
その中で、今回トップ10クラス入りという目標を取り下げた最大の理由は、資本の効率性という観点である。2022年度時点では、トップ10クラス入りとして株主の皆さまやその他ステークホルダーの皆さまから評価をいただくような資本の効率性が実現できない。今回、構造改革についてはかなり踏み込んだつもりであるが、ROICは2022年度でもまだ8%ということである。これはグローバル食品企業の平均値にしか過ぎないということで、トップ10クラス入りという表現をやめた。
ベンチマークについては、ROICでは2030年に13%を超えることを目指したいと思っている。そしてその時のオーガニック売上高成長率は5%。この2つの要素は、グローバル企業トップ10クラス入りしている企業のクライテリアだと認識しており、その点ではベンチマークを変えたというわけではない。
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今回の中計は、「食と健康の課題解決」に対しあらゆる経営資源を集中するというメッセージを前面に出していると思う。その中で電子材料事業の位置付けについて、確認させていただきたい。
「食と健康の課題解決」という観点では、電子材料事業は少し遠いところにあると思われるかもしれない。しかし、当社の中にある全ての資産を使ってトップレベルの情報産業に貢献しているという形は、BtoBビジネスのビジネスモデルとなっており、われわれの中の非常に大きな資産になっている。また、シリコンバレーの情報拠点をベースにし、B to C事業として新しいパーソナル栄養の事業モデルを作ろうとしているが、オープン&リンクという信頼のおける会社と情報のつながりができてきている。これらの点から、電子材料事業は重点事業であることに変わりないと考えている。
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実際に20-25中計を策定するにあたり、社外取締役の方々はどのようなことを課題として認識していたのか。また意見をどのように中計に入れることができたのか。可能な限りでご紹介いただきたい。
中計策定の中においては、2030年のビジョンを「食と健康の課題解決」企業と定めるところ、またそれに向けた事業の骨格について、社外取締役の皆さまに大変大きな役割を果たしていただいた。何度も取締役会の中で、この計画について議論をした。2019年、取締役会の下部機関として私が議長を務める経営基盤検討会を作り、社外取締役と連携しながら作ったのが今回のプランである。したがって完全にコミットしていただいていると思っている。まだ不完全なところ、特に実効性をどう高めるかということについては、現在進行形で色々なサポートをいただいている。
(社外取締役から企業価値という観点で見た時に、一番の課題と認識されているところはどこなのか、との問いに)
17-19中計における企業価値についてのコミュニケーションの中では、財務と非財務から成る統合価値をコーポレートブランド価値とする、とお伝えしていた。確かにコーポレートブランド価値について、インターブランド社の評価軸の中に、財務指標とESGの観点が半分ずつ入っているが、顧客、そして従業員という観点が希薄であった。そして大変残念ながら、われわれがいくらESGと言っても、直接時価総額につながるという観点ではまだまだ不透明な部分が多い。
そこで今回は、企業価値を3つの分野から成るものとして位置付けた。時価総額、顧客価値としてのコーポレートブランド価値、従業員のエンゲージメントの3つのバランスを取りながら、全て向上していくような経営に変えていこうということである。この点については社外取締役からもかなり評価をいただいている。
(どちらかといえばバランスを取ったということかと思う。今回の中計においては、ROICとWACCの関係性をより重視し、財務的な基盤からしっかり取り組むことで価値を創出することに重きを置いたと理解したがよいか、との問いに)
企業価値を構成する要素を3つと置いたのは、あくまでもアウトカム的に測れる指標としてである。従業員のエンゲージメントとコーポレートブランド価値を高めることが、経済的な価値として時価総額につながっていくということは切り離せるものではなく、サイクルで回っていると理解している。したがって、バランスを取るというよりは、3つの価値がバリューチェーンという形でつながって価値を上げていき、最終的には投資家の皆さまが評価される時価総額の向上につなげていく、という構造にしていこうと考えている。
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ROICやWACCのような指標を使っている企業が日本国内でも増えてきたのは非常によいことだと思っている反面、いろいろな事業を持っている企業は実際のマネジメントが大変、という意見もよく聞く。その中で、当社はどの程度管理をしっかりやっていく方針なのかということを、教えていただきたい。
今回は事業の公表区分ごとに、ROICとWACCの関係を示し、これを改善していきながら、全社では2022年度に8%、2025年度に11%、2030年には13%を超えるレベルを目指していくということをお伝えさせていただいた。
ROICというのは非常によいところがある。当然だがPLだけではなく、BSまで分解し、両方の観点で高めていかなければいけない。ROICツリーとして示し、具体的なKPIという形で組織に落とし込み、マネジメントしていこうと思っている。
例えば具体的には、中計資料6ページに「変革の全体構造とKPI」として、人財、顧客、財務という観点で、重点KPIを赤の網掛けで示した。これは皆さまと常時コミュニケーションをするためのKPIである。黄色の網掛けのKPIは、適時皆さまとの対話にも使っていくものだが、社内においてはこちらも重要な管理指標として、常時追いかけていく。
これまでの最大の組織的な課題は、中計の目標が売上高と事業利益で主に構成されており、それが各事業まで分解されていたことで、どうしても一年ごとの事業利益を積み上げていく形になってしまっていたこと。各事業部門はそれを最優先にビジネスマネジメントをすることが染みついている。
今後は、短期のPL志向ではなく、全体の目標として掲げた中期的なROIC改善を追いかける組織に変えていくというのが、フェーズ1の大きなチャレンジである。これはしっかりとやっていきたいと思っている。