※赤字:6月10日、12日の回答より訂正。

  • 決算発表後、2週間が経ち、国によっては動きが出てきているとのことだが、状況を教えて欲しい。

    売上としては、大きな数字の影響はないと思っている。当初の見立てよりも国内の消費が徐々に平常に戻りつつある。つまり家庭用の需要が前年並みに落ち着いてきた一方、業務用については戻りきれていないところもあるため、日本がやや弱めというトーンである。

    また、アメリカについては第2波を非常に警戒している。感染は少し落ち着きつつあるが、感染者数は毎日7,000人ぐらいのレベルで出ている。一方、経済活動が再開されてくる中、消費は戻りつつある。従って、第2波が秋以降に訪れる可能性やそのリスクについては警戒が必要であるが、足元の回復は他の国々に比べると早い状況である。

     ASEANについては、概ね予想通りである。タイの回復は緩やかであり、経済の落ち込みが効いている。インドネシアについては足元で感染が広がりつつあるが、消費という観点ではトラディショナルトレード(以下、TT)は堅調であり、モダントレード(以下、MT)も好調に推移していることは変わらない。少し心配しているのはフィリピンである。フィリピンでは急速に感染が拡大しつつある。外出制限は緩められているが、消費はややマイナスという状況である。ヨーロッパの状況は変わらない。

     アミノサイエンスについては、医療関係の混乱で出荷が落ちていたが、ここにきて医薬用アミノ酸はかなり需要が戻ってきた傾向がある。香粧品素材についても洗浄剤等の需要は引き続き好調であり、決算説明会で説明した時よりもプラスサイドの動きが見えてきた。

    (第1四半期の事業利益に与える60億円のマイナス影響見通しについては、インラインかややポジティブに進捗していると理解しているが、それでよいか。特に米国では経済活動が再開されているということであるが、主に業務用の需要が戻ってきているということか、との問いに)

    5月については当社の売上ベースの感触であり、利益については、現在、様々なマーケティング費用等を検討中。よって、業績予想に対する進捗については、現時点でまだ申し上げられない。

     北米の冷凍食品は5月単月で言うと、家庭用と業務用と合わせてほぼ前年並みまで戻ってきた。4月は全体で20%以上落ち込んでいたため、急速に回復しているという実感がある。当社の工場でも感染者が出たため生産停止や再開が続いている中で、それに5月は対応して家庭用は20%以上伸ばすことができた。本来の需要はこれぐらいあると思うが、4月は急速に感染が拡大したため、十分に対応できなかったということだろう。

     業務用については、4月は8割減と申し上げていたが、現在は4~5割減のところに戻りつつある。大きな宴会などはまだ難しいが、フードサービスを中心にテイクアウトやドライブスルーなど様々なところで積極的に対応している。その影響が業務用冷凍食品の販売にも出てきたとみている。

  • ブラジルの足元の状況について解説をお願いしたい。

    ブラジルについては大変憂慮している。感染が猛烈に拡大している中、国として感染者数や死者数を発表することを止めるというアナウンスがあり、これに対して各州知事がかなり反発している。そのような中、われわれのビジネスについては、現地通貨ベースで家庭用は前年を5%程度上回るような消費が続いている。一方、外食については、4月に比べればやや回復しているが、前年の30%程度にしか回復できていない状況である。ブラジル全体を見ると、アミノ酸や化成品の原料の供給拠点であるし、レアル安ということもあり、輸出は非常に好調である。

    (2020年度の計画についてブラジルは厳しい見通しであると認識しているが、下振れリスクがあるような進捗ではないと理解してよいか、との問いに)

    感染の勢いが全く衰えていない中、政府は経済活動を再開しようとしているわけだが、今現在においては経済活動が続いており、足元の業績でとどまっているのだろう。今後、さらにこれが社会不安につながってくると非常に良くないという懸念を持っており、第2波によるネガティブインパクトの可能性はまだ消えていない。

    (当社は第2波を想定している前提で、計画に沿って進捗してはいるが、下振れリスクも若干あるという考え方で好いか、との問いに)

    アメリカとブラジルはワーストケースで見積もっているため、それを下回ることはないだろう。ただし、ブラジルは目に見えてよくなることはまだ見て取れていないと受け止めていただきたい。

  • 20-25中計に掲げられた構造改革に伴う収益改善とコストダウンについて、COVID-19によってどういう影響があるのか。1年目にどの程度織り込まれているか進捗を確認したい。

    中計の構造改革、アセットライト化については3年間で1,000億程度という計画をそのまま実行したい。成長という観点では300億円程度の収益改善を織り込んでいるが、その内の200億円程度がコストダウン、100億円程度が付加価値製品の販売の積み上げによる収益改善である。構造改革のアセットライト化の部分については、350億円程度を2020年度に計画しており、予定どおり実行できると思っている。ここは事業資産の圧縮が約3分の1、それ以外は政策保有株式の売却やグループ内融資等で資金を環流させて有利子負債等を削減していく要素である。問題は、付加価値製品の販売の積み上げによる100億円のところである。今回のCOVID-19影響により2020年度は非常に厳しいと申し上げている。コストダウン200億円の計画についてはアセットライト化やコーポレートの合理化の中で生まれてくるコストダウンもあるが、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)による業務の効率化、あるいはマーケティングROIを高めるという観点で、つまり、もっとデジタルにシフトした効率の良いマーケティングができないかということも含め、現在、2020年度の利益の積み上げでマイナスになる部分を取り戻すことが可能か検討中。2020年度にどこまで付加価値製品で利益を積み上げ、さらにコストダウンをどの程度多くやるということはまだ申し上げられないが、そのような考え方で利益を積み上げていっている。

  • コーポレート費用を削減できるよう努力していくという話があった。もともとは20-22中計の3カ年初年度からしっかり削減すべく、アクセンチュア社とのジョイントベンチャーや組織変更を行っていたかと思う。それが2020年度からは発現しないという業績予想になっているが、何が計画と違ってきたのか、教えてほしい。

    共通費を売上高比率2.5%にしていくということは、17-19中計の重要なテーマの一つと掲げ追いかけている。その一環で、味の素㈱単体のサービス部門を外出しするということで、アクセンチュア社との間で4月1日に合弁会社を立ち上げた。今サービス事業の効率化について検討を進めているところで、これはだんだん具体化してくる。

     また既にご存知のように、様々な再編に伴い当社の中で人材のマッチングが難しい方については、特別転進支援施策という形で公募し、結果144人の対象者が決定。対象の方々は6月末で退職し、新しいキャリアに向かっていただく。この人件費に相当する部分について、実際にコストという観点では年間で数十億円規模のインパクトがある。2020年度に影響があるのは第2四半期以降である。そこに、アクセンチュア社との合弁によって効率化された分が上乗せできる。これらを総合して、コーポレート費用2.5%が実現できるだろう。

     さらに追加で検討できる部分として、例えば本社のコーポレート部門だけではなく、それぞれの工場やグループ会社にも類似の間接部門の仕事がある。まずはアクセンチュア社との合弁会社に機能をきちんと打ち立て、そこにグループ会社や事業所のサービス部門を取り込んでいく。このようなことを、20-22中計3カ年の中で進めていこうという計画である。

    (売上高比率2.5%については、どれぐらいのタイミングで実現できそうか。今期の計画では3.5%ぐらいで、そこからさらに1%というとかなり遠い道のりではないかという感じがするがどうか、との問いに)

    中計のフェーズ1の間、2022年度には実行したいと思っている。

  • 2020年度は数十億円のコスト削減効果があるとのこと。計画ベースで結構だが、2021年度、2022年度、実額でどれぐらいのコスト削減を計画していたのか教えてほしい。

    20-22中計の3年間で 200億円程度のコストダウンを行うということから考えると、毎年60億強のコストダウンとなる。ここには事業由来のコストダウンの他に、アセットライト化によるものも入っている。また、全社共通費等のところでできることがまだあると思っており、毎年60~70億円程度のコストダウンを実行していくようなプランでいる。

     ただ2020年度は事業利益が減少する計画のため、これをROICの観点でカバーしていくためには、さらに大きなコストダウンを実行する、あるいは追加のアセットライト化施策を検討するということが必要ではと考えており、経営の中では議論している最中である。

    (2020年度は計画上、20~30億円のコストダウンが入っていると思っている。すると2021年度は100億円程度、2022年度も100億円程度というイメージを持っていて、それに追加できるものを考えているという理解でよいか、との問いに)

    20-22中計の3カ年の中で200億円程度の削減であり、ここにはアセットライト化も含めた構造改革による分も入っている。もともとの計画自体は、多少の凹凸はあるが、ほぼ3等分だと思っていただければよい。そのうち2020年度、事業由来のコストダウンについては数十億だということ。 ただしアセットライト化については、6カ月程度交渉が凍結している部分もあるので、2020年度の計画が2021年度にずれこむ可能性もゼロではない。従って、その部分は少し変わってくることがあるとご理解いただきたい。

  • 今回、COVID-19の影響では中計の戦略や方向性をあまり変えないというメッセージを今まで頂いているが、外部環境の変化で中計の戦略を見直す可能性のある分野やテーマがあればご示唆いただきたい。

    20-25中計の目標として、オーガニック成長5%、また2022年度までにROICを平均8%程度までに戻したいということをフェーズ1の目標に掲げている。今回のCOVID-19の影響で2020年度は非常に大きなネガティブインパクトを予想せざるを得ない。売上については2022年にかけて回復させ、2021~2022年度にかけて戻すことは十分可能だろうと思っている。問題はROIC。ここをしっかりやっていくためには、コストダウンの積み上げ、それから、6カ月凍結して遅れているアセットライト化を確実に実行するなどが大きなテーマになろう。コストダウン等で利益の積み上げができず、2021年度にかけてV字回復出来ないことも想定しながら、追加でアセットライト化ができないかを柔軟に検討していきたい。

    (アセットライト化は少し遅れるかもしれないが、COVID-19の影響は大きく出ないイメージか。4月度、5月度の環境は大きく変わっており、売上の目標に本当に戻るのかというところに懸念がある。ここについて手応えを教えてほしい、との問いに)

    2020年度はかなり大きなマイナスインパクトがある。当社の売上構成比は75%程度が冷凍食品も含めた食品事業の売上。この期間に人が食べなくなった売上を戻す、既存の事業でなくなったものを取り戻すことは難しい。従って、それ以外のもので2021年度以降どのように積み上げができるかで売上規模が決まってくるだろう。ヘルスケアの分野で若干ポジティブな動きがあるも、今のような状態では売上構成比の高い食品を一気に取り戻すことは難しい。2021~2022年度の完全に回復期に入ったところでは5%の成長を取り戻せるだろうと思っているが、失われた売上額そのものが完全に戻るというところまでは、今は申し上げられない状況である。従って、ROIC8%を達成していくために、追加のコストダウン等の施策をしっかりと実行し、組み合わせで届くように経営したいと思っている。

  • 足元の競合状況、特にシェアについて伺いたい。COVID-19の流行後、消費財の中では、強い企業がいっそう強くなっている例も出ているが、当社はどうか。エリア・国ごとのシェアの変化について、データがあれば教えてもらいたい。

    COVID-19発生以降の状況について、傾向をお伝えする。日本、アメリカ、そして東南アジアの主要国であるタイの状況と捉えていただければと思う。まず日本、外出規制と感染の大幅拡大を経て、当社のナショナルブランド(以下、NB)の製品が非常に売れた。家庭用を中心に駆け込み需要があり、基礎調味料や「クノール®」スープのようなブランドの強い製品が、シェア2番目、3番目の製品と比べると非常に好調であった。トップブランドは市場をリードするポジションであるため、それらの製品は市場全体の伸び率を牽引していたと思っている。 そのような状況が終わりCOVID-19との共存期に入ってきている中で、日本では家庭用のNBの供給が非常にタイトになってきている。5月、6月と小売業には特売の自粛をお願いしており、定番棚を中心に製品を提供してきた。この特売を止めた影響が5月中旬以降顕著に表れている。NBとプライベートブランド(以下、PB)では、大きくて2倍程度のユニットプライスの差があるということが起きており、NBの伸びが止まり、PBが伸びるという状況が出てきている。

    またタイについては、政府から値下げ要請が出ているが主に流通に対するもので、当社は要請を受けておらず、値下げもしていない。しかしうま味調味料のような基礎調味料の分野でも、PBの動きが少し当社よりも上回っているという傾向は出てきている。ここについては、当社の需給バランスが整えばプロモーションを復活していくため、第2四半期以降完全に取り戻していけるのではないか。従って、第1四半期が非常に厳しいという背景には、このような要素も含まれているとお考えいただきたい。

    (世界経済が、今年、来年と回復はしても元には戻らないだろう。IMFによれば2022年も同様との見立てである。その中で、PBやトレーディングダウンの影響があるのではないかと思うが、どのように考えているか、との問いに)

    PBとNBの競争について、これまで意識していなかったわけではない。当社のマーケットシェアをきちんと確保していくという観点では、PBとNBの間に品質差と価格差のある程度の許容範囲があると思っているが、その中で今までも慎重に値上げ等を行ってきた。今回はCOVID-19の爆発期においてこのバランスが完全に崩れた。生活者がまずNBから買い始めそれが家庭に行き渡ってくると、今度は店頭に製品が無いため類似のカテゴリーであれば安いほうから買っていこうという状況が起きているのだと思う。そういう点では、今までと同じようにPBとの価格差もしっかりと睨みながら戦略やマーケティング戦略を実行していくということになる。

     ただし、COVID-19の影響が長引き失業率の増加等で低所得層が大きく増加すると、市場そのものの構造が変わる可能性もある。当社はうま味調味料、風味調味料、メニュー用調味料を展開しており、この順番に価格は高くなっているが、これをミックスさせる形で柔軟な戦略を取っていかなければいけないと思っている。

  • DX関連で、社長直轄のタスクフォースを2つ立ち上げている。3年で300億円の収益改善に、DXはかなり貢献するということだったと思う。今回の説明では、COVID-19影響で事業にはマイナスもあればプラスもある中で、変革にはプラスなのだというコメントもあった。どういうところでチャンスが出てきたのか、またコストの面で300億円の収益改善に対してどの程度確度が高まってきたのかを教えてほしい。

    まず、全社オペレーション変革タスクフォースだが、3つのタスクを負う。 1つ目はJ-SOXの対象になるグループ16社を対象に、管理会計のシステム化を進めることで、ROICツリーをKPI化し各人の仕事に落とし込み、効率的な仕事に繋げる。今年度中に16社と共有して、来年度に実行できるようにする。費用の効率化ができると思う。 2つ目は、サプライチェーンマネジメントの改善で、在庫の削減を目指す。DXを用いて、外部機関と一緒にシステムを構築中。まだ具体的なターゲットはないが、外部との連携が始まった。 3つ目は、ASVのエンゲージメント。ビジョン実現のために貢献出来ていると感じる従業員を増やしていく。各種サーベイや人材育成の投資、個人のモチベーションを上げるような施策を組み込んで、実行していく。 もう一つは、事業モデル変革タスクフォースで、当社既存の事業やR&Dの強みと、フードテックベンチャーを掛け合わせる。コーポレートベンチャーキャピタルは、モデル変革をアジャイルに実行していくため、M&Aの手法ではなく、社内で一定規模の資本を確保し運営していく。7月1日付で調査部を新設。国内外のベンチャー企業とのアクセスポイントを作っていくための部門となる。外部から専門家を招聘し、内部の社員とのハイブリッド型組織にし、ベンチャー投資を進めていく。テーマはフードテックである。

    (COVID-19の環境下で事業改革が進みそうと感じられているところはどの辺りか、との問いに)

    従業員のエンゲージメントと、フードテックとの連携は、COVID-19が追い風になると思う。2020年度は厳しい業績を予想している中、当初中期計画に組み込んだ200億円程度のコストダウンだけでは、FY22に目標としているROIC8%の達成は難しい。全社オペレーション変革を通じ、プラスアルファのコストダウンを実現し、利益を上げていくことが大きなテーマになる。

  • 20-25中計で一番重要なのが、コア事業への投資をノンコアからシフトさせることによる成長率の上昇だと思う。具体的に設備投資の観点、マーケティングの投資の観点で、それぞれどういうことを今年、来年とやっていくのか。減塩タイプの製品だけでなく、もう少し具体的に教えていただきたい。

    設備投資全体について言うと、3カ年で2,100億円程度なので、年によって若干違うが700億円ずつ程度で、これを重点6事業に配分していく。一方でアセットライト化を進めていき、その分も重点事業に回せるので、重点事業そのものに対する投資額が減るということではなく、700億円程度を重点化していく内容になっている。主に基本戦略に則って、メニュー用調味料や風味調味料の減塩タイプを造る設備などに投資をしていく計画である。

     マーケティング投資に関しては、基本的に中計で発表させていただいたように、概ね17-19中計と同様の額のマーケティング投資を行っていく計画で20-25中計を作った。この中 ではROICを上げていく観点で、よりデジタルコミュニケーションにシフトして、効率のよいマーケティング活動をしていくことがポイントである。コミュニケーションの中身は、日常の食の改善で健康に貢献するという要素を重点化していく。

    (売上に結び付くという意味では、生産設備の投資のところが大きいのか。これまで当社の認識としては生産設備への投資が不十分だったので、よりドライブをかけないといけないということなのか、との問いに)

    これまで生産設備の重点投資を怠ったということではなく、加工食品も含めた新しいカテゴリーまでマーケティング投資を行った結果やや分散してしまった。したがって、調味料、加工食品といったコアの分野に集中してやっていくという考え方である。重点製品へのマーケティング投資という観点では、17-19中計よりも高めていくという中身になっている。

    (設備投資自体は今年も去年より若干増えていて、過去数年増える傾向である。これは、ノンコア事業を下げているから、コア事業は結構重点的にかけられているという理解でいいか、との問いに)

    Yes。

  • 決算説明会の際、冷凍食品セグメントは、COVID-19および為替影響なかりせば、売上成長プラマイゼロという説明だった。欧州エリア全体で11%成長と聞いている。アメリカはマイナスで見ているということか。

    欧州エリア11%成長はヘルスケア等も含めた数字である。アメリカはもともと構造改革の年であったので、アメリカの冷凍食品だけで言うと、ほぼ0%でコントロールしようと考えている。欧州の冷凍食品だけで見ると5%程度であるが、アメリカの構成比からすると圧倒的に小さいので、そのようなことになる。

    (2020年度業績予想の建付けとして、当社はCOVID-19影響をかなり入れられたように見える。そもそものオーガニック成長率の出発点がやや高いのではないかと思うが、どうか、との問いに)

    重点事業へのマーケティング投資がこれまで十分でなかったことも含めて、COVID-19の前にここを強化するという観点で、計画と戦略を組み立てている。調味料はここまで強いのか、構造改革中の冷凍食品もフラットではないか、というところはあるだろう。中計のスタートということで、戦略強化部分もオーガニック成長に織り込んだと考えていただければと思う。

    (仮にネガティブリスクがあるとしたら、オーガニックの成長率に対して、東南アジアやブラジルの需要が弱くなるかもしれないという点か、との問いに)

    COVID-19のトンネルを抜けた後に、このような成長フィールドが残っているかどうかというところが、一番のネガティブリスクだと思う。生活者の方もかなり購買に対する考え方が変わってくるだろう。ただし決してネガティブなところだけではなく、健康リテラシーの高まりも期待できる。20-25中計発表時にもアナリストの皆さまから、日本やアメリカは分かるが、東南アジアやブラジルで本当に減塩や低栄養課題を解決する製品が浸透するのか、食育は本当に大丈夫かというご質問を頂いた。その時よりもCOVID-19影響で健康に関するリテラシーが一気に高まった。特別な薬を飲んで治すということではなく、免疫力を下げないための食生活にフォーカスされた情報が、たくさんSNS等を通じて出ている。われわれにとっては需要を作るチャンスになってきたと思う。

    (そういうことを対抗策としてこれからやっていくのか、との問いに)

    これはもちろん当社だけではなく、競合の動きも含めてである。例えばヨーロッパ等ではこれまで当社も含め食品メーカーを中心とし、パッケージの前面にニュートリスコアを、分かりやすい信号のような色で記載しようというロビイングを行ってきた。今までEUの委員会では、販売につながることについてはなかなか賛同されなかった状況であったが、COVID-19の環境の中で、一気にこれが法律で表示が認められるような動きが出てきている。こういうことは欧州だけでなく、ヨーロッパに関係の深い南米やアフリカの国々にも浸透すると思う。そういった観点では、われわれにとっても大きなチャンスが来ていると思う。

    (その法律はいつ施行されるのか、との問いに)

    第1四半期でも情報はアップデートさせていただくが、昨夜確認した情報だと、これまで当局が不賛成であったものが、一気に賛成のほうに動いているそうだ。いつから施行するか、まだ情報はつかまえていない。

    (当社に影響があるのは、欧州だと冷凍食品が中心か、との問いに)

    Yes。その他は即席麺事業である。

  • 海外食品について、今期のタイの落ち込みをどのようにして他の国で吸収して、オーガニック成長率5%を目指していく予定か。他国の状況も含め総括的にお考えをお聞かせいただきたい。

    アセアン諸国の中でも、タイは回復に時間がかかると見ている。これをどうやって底上げしていくかが、今期から来期にかけてのテーマ。ロードサイドのレストランや屋台など、外食用の落ち込みを、どのように戻していくかが一番のポイントだと思う。タイについては、まだまだ明るい情報は見えてきていない。一方、ベトナムはすでに感染拡大が止まり、日常に戻りつつあるし、インドネシアも感染そのものは拡大しているものの、既存のチャネルも含めて非常に消費は旺盛。健康志向の高まりも同様に起きているので、タイの落ち込みをカバーできる要素があると思う。フィリピンはまだ感染爆発中で、やや不透明。インドネシアとベトナムに期待している。

     タイの自律的な回復という観点では、日本同様デリバリーサービス、テイクアウトを積極的に取り込んでいるチャネルが伸長している。ここに対するビジネスをしっかり強化したい。また、「味の素®」や風味調味料「Ros Dee®」の大容量品種が落ち込んでいるが、例えば「Ros Dee@Menu」ような、家庭で使われるものは非常に伸長している。また、タイでも健康を訴求した商品カテゴリーは伸びてきている。減塩や低栄養の改善は、日常の食生活を通じて実現していきたいと考えており、マーケティング戦略も広告だけではなく、TT営業の基本活動まで浸透させていく。これが回復に最も重要なポイントと思っている。メインのうま味調味料、風味調味料の落ち込みを、メニュー用調味料と健康軸の製品でカバーしていくことに集中していきたいと思っている。 4月から5月にかけて、政府からの生活必需品の値下げ要請があったが、その後NB商品とPB商品の価格差が、大きく拡大した。生活者の低価格化志向もきちんと捉え、アフォーダブルなうま味調味料はシェアを落とさないようにしっかり取り組んでいきたい。風味調味料やメニュー用調味料は、高単価、プレミアム化に向けた取り組みを実行していく。

  • COVID-19の影響について、数か月前の話では当社の家庭用と業務用の比率は、家庭用の比率が高く、基本的には基礎調味料を取り扱っているため、COVID-19の影響は、ややポジティブに効くのではないかというお話をいただいていた。ただ、実際に2020年度の業績予想を見てみるとそうではなかった。当初の見通しとのギャップがどういうところにあったのか。

    COVID-19影響の見通しについては、3月25日のIR DAY以降に海外のロックダウンの影響や日本での感染拡大などの大きな変化が起きたということ。主要国においてIR DAYの後にロックダウンの影響や規制が各国の政府から方針を出されており、それ以降ビジネス環境が大きく変わってしまったことが最大の要因である。これは見通しができなかった。したがって決算発表の内容については、5月中旬ぐらいまでの状況を踏まえた業績見通しである。

    (必需品に近い基礎調味料など、家庭用比率が高い属性に入る製品群については、ロックダウン後も比較的需要は堅調というケースも多いと思う。当社製品の場合は、それには当たらなかったということか、との問いに)

    そういうことではない。日本においては、海外に比べるとロックダウンになっておらず、緩やかな規制であったので、業務用の外食用途で販売減になったものが、家庭内需要という形で取り込めており、当初の見通しからほとんど差はなかった。一方で海外、特に東南アジアやブラジルは完全なロックダウンに近い状態で市場の閉鎖や外出規制が行われたため、大きなマイナス要素になっている。バイク便を使った宅配サービスや衛生管理の整ったMTなどに買い場が限定され、生活者の足が止まったことが大きいと言わざるを得ない。また、3月下旬以降、それぞれの国と国の移動制限も一気に進んだことも影響している。加えて、感染の拡大が抑えられないことによって、アメリカやブラジル、ペルー等のわれわれの工場の従業員にも罹患者が続き、現在もまだ増えている。この度に生産を止めて、消毒をして、また数日後に再開するということが発生している。フィリピンやマレーシア等ではロックダウンによって、工場の稼働そのものは認められていたが、従業員が現地にたどり着けないという状況も発生している。そのような状況によって、利益が喪失しており、十分な製品供給ができない状況が発生していた。

  • 今回のCOVID-19の影響において、当社で顕在化したリスク管理上の問題点やBCP上の問題点があれば、教えていただきたい。

    リスクマネジメントという観点では、ほぼきちんと対応できたのではないかと考えている。ただ従業員の感染という観点においては、アメリカやブラジル、ペルー、エクアドルではかなり数の感染者が出ている。これは日々アップデートしている。工場や物流部門以外は基本的に在宅勤務をしており、罹患者のほとんどが生産部門であるが、ここで感染が発生することによってラインを止めて、洗浄や消毒をして、それからまた再開するということをまだ繰り返している。北米の冷凍食品工場やペルーの工場も同じような状況で、まだ完全にリスクのある状況からは抜け切れていないのが現実である。在宅勤務ができる従業員にはリスク対応ができたが、生産現場については日本を含め感染者が出ていない国も非常に緊張感を持った働き方を継続している状況である。これから秋から冬にかけて第2波の状況が発生する可能性を踏まえると、事業継続の中でどのように生産現場の安全を確保していくかが、目下の課題だと思っている。

  • 変化への対応力が当社の課題として挙げられると思う。コロナ禍において、過去の当社であればこういう対応ができていなかっただろうということが、もしあれば具体例で紹介して欲しい。

    当然ながら日々の業績に関わること、あるいは各地のマーケットの情報、顧客の情報は事業部を中心に縦で情報が入ってきているわけだが、横で情報を共有していくことが必ずしも積極的に行われてきたわけではない。しかしながら、コロナ禍において大きな変化が起きている。つまり、マクロ環境の変化は似ているところがあるわけだ。感染の状況や経済へのインパクトは国によって多少異なるが、例えば大きく家庭用にシフトし、業務用が厳しい、インバウンドが戻らない、サプライチェーンにリスクがある、そのマクロ環境を受けて各国・各地域に個別の変化が現れているということだろう。

     5月のゴールデンウィークから2週間に1回、ウィズコロナからアフターコロナにかけてのシナリオプランミーティングを行っている。日本の経営会議メンバー、事業部の責任者、加えて4つの地域本部長、主要な法人長がオンラインでつながり、われわれ本社のほうから基本的なマクロ環境の認識を常にアップデートしている。これからの感染拡大予測、経済へのインパクト、これも日々動いているため、状況を日々アップデートするとともに、現場の情報をそれぞれから報告してもらっている。共通事項については、例えば外食チャネルについての対策や打ち手については、外食を主に担うS&I事業部がリーダーシップを図り、横の連携により変化に適応しようとしている。このようなことは今まで全くやっていなかった。この環境下においてトップマネジメントがミーティングを設定し、現地の情報を共有し、同時に現場にその対応策を落とし込んでいる。このようなことが非常にスムーズにできるようになってきている。

  • 今回のCOVID-19の影響を受けて、現行のビジネスモデルで若干変更を迫られるようなものがあるのか、教えていただきたい。

    中計で発表した非重点事業のアセットライトを大前提として、期間の多少の遅れは出るかもしれないが、これはしっかりと実行していく。それ以外にピンチをチャンスに変えるという観点では、特にディストリビューション、生活者の方に商品をお届けする場面が非常に多様化し、一気に変わる可能性がある。COVID-19の発生前ではEコマースで食品を購入する比率は、恐らく日本が2%程度でアメリカが3%程度だったと思うが、米国はアフターコロナの段階で、10%近く増える可能性がある。日本はインフラの問題や物流の能力の問題でこれは緩やかであるが、現在の伸び率を見ると、生活雑貨の伸び率25%から30%と同様の伸び率で食品も伸び始めており、これが大きなチャネルになってくるだろう。 したがってEコマースチャネル、既存の生協の宅配チャネル、ネットスーパーの機能が非常に大きなチャネルになりシェアを伸ばし、他のチャネルのシェアが低下していく可能性がある。特に当社の営業体制や、それぞれ大きくなったチャネル向けに適合した製品などの開発力をフレキシブルにしていく必要がある。大きなビジネスの領域が変わるというよりは、販売チャネルに対応した製品開発のフレキシビリティを高めていかなければいけない。

  • チャネルの変化について。決算説明会資料にEC比率や自社通販への試みというのがキーワードとしてある。一方で当社のようなNBメーカーで、単価が必ずしも高くない製品を取り扱っている中で、ECチャネルあるいは自社通販に対してどのような形で当社がメーカーとして成長に結び付けられるのかを具体的に教えてほしい。以前もスモールマスへの対応等が課題だという話があったが、この辺を含めて教えてほしい。

    現在、自社通販やEコマースがどういう状況になっているか、まずチャネルの変化をつかむことである。当社グループ全体では、Eコマースや自社通販のチャネルでの販売総額が年間230億円程度になっている。これは食品が中心であり、われわれの構成比の5%程度まで上がってきている。特にこの中で、Eコマースは、国内のモール、越境のEC、これに加えて生協の宅配ルート、残りはわれわれの自社通販ということになる。特にモール型のEC、生協の宅配チャネル、自社通販の食品が非常に大きな伸びを示してきている。これまでスモールマスや自社通販のチャネルを強化してきたことが、具体的に成果に表れてきていると思う。海外では、当社グループ全体の230億円の中ではまだ構成比が非常に小さいが、タイ、インドネシア、ベトナム、フィリピン、ブラジルの5カ国では、同様にそれぞれの国のECモールでわれわれの商品を販売開始している。いろいろな情報を横で共有しながら、戦略を強化している。

    (当社製品の中で、ECモール経由で販売されている製品はどういった製品か、との問いに)

    本格的にECモールや越境ECを開始したのは1年半ぐらい前からなので、まだ全てということではない。特徴的なのは、味の素AGF社のスティックタイプのコーヒー、あるいはパーソナル用途のレギュラータイプコーヒー、食品ではクノール関係のスープ類、即食性の高い加工食品のお味噌汁。いずれも減塩やたんぱくリッチの商品であるが、このようなものが非常に売れている。越境ECでは、これに加えて「アミノバイタル®」のようなアミノ酸系のサプリメントや「クノール®贅沢野菜®北海道スイートコーン」という日本の原料を使った特別品種を販売しており、これも非常に荷動きが良くなってきた。残りは自社通販で、「アミノエール®」や「グリナ®」を販売しており、今の環境の中で非常に好調である。

    (自社サイトを除くと、これらは基本的に各ECモールや生協への卸販売になっており、販売自体はECモールや生協が行っているのか、との問いに)

    生協はご承知の通りである。ECモールは当社のマーケットプレイスとして、ショップを出して販売している。今申し上げた230億円の中には、通常の卸店チャネル等からEコマースに流れていく分は含まれていない。

    (従来の販売ルートよりも収益性は高いのか、との問いに)

     Eコマースのモールの場合、販売価格は地域やエリアで一番安い値段が付けられることになっている。それが当社の販売促進費用や納入価格の値下げという形で反映してきているかというと、そうではない。越境ECについては、日本よりも販売価格が高い。そのようなことで一定のマージンは確保できていると思う。ただ、まだ全体の構成比が5%程度であり、業績へのインパクトは大きくない。

    (伸び率は高いという話だが、大体どのぐらいの成長率で、今後3年から5年のタームで、どのぐらいの規模感になってくるイメージを持てば良いか、との問いに)。

    現在はまだ日本が中心であり、COVID-19の影響の中での要素もあるが、Eコマースや自社通販のチャネル全体で2桁前半ぐらいの伸びになっている。

    (12~13%ぐらいの伸長率か、との問いに)。

    国内の生協の宅配は1.5倍近く伸びている。日本の場合は物流にボトルネックがあるため、このぐらいのペースが続いていくだろう。生活者の需要自体は、他のパーソナルケアや日常生活雑貨等の例にあるように25%~30%の伸長余地はあると思う。食品の場合はさまざまな物流の限界があるため、それによって制限されるものと思う。おそらくCOVID-19の影響の中で、若干人手不足が解消されてくると思うので、このチャネルについては伸びると思う。

  • Eコマースについて。どういう形で消費者にアピールできるのか。

    日本を中心に展開しており、海外でも取り組みを始めたところである。2020年度の目標は当社グループで売上規模は約230億円、食品でいうと約5%。Eコマースは伸びているが、国内のモールや越境EC、日本ではネットスーパーや生協の宅配ルートも伸びている。Eコマースだけが伸びているのではなく、届けてくれるチャネルを生活者が選択しているということである。当社は通常のチャネルと同じように「勝ち飯®」や栄養訴求、健康訴求を実施してきている。

    海外のEコマースについては、規模は大きくないが、タイ、インドネシア、ベトナム、フィリピン、ブラジルといった主要国ではEコマースの取り組みを開始している。マーケットプレイスに出店し、「勝ち飯®」の訴求やメニュー用調味料等を販売している。いずれの国も売上規模は小さいが、2倍とか国によっては8倍といった勢いで伸びている状況。

  • 冷凍食品について、グローバルの管理体制ができたことにより、これまでできなかったことで、できるようになったことは何か。

    2019年4月にグローバル冷凍食品戦略部を作り、2020年4月からは冷凍食品事業部と改称し、国内事業と海外事業で別れていたアセットオーナーを統合した。一番大きな変化は、設備投資や重点領域の選定について、一人のアセットオーナーがリーダーシップを発揮できる体制になったこと。投資を決める際、重点領域に集中することが明解になった。冷凍食品は国内外合わせると売上高2,000億円程度の大きな事業であり、成長するマーケットであることから、これまで拡大志向で来たところがある。北米事業の再編をきっかけにして、日本のビジネスも資本効率性という観点で見直しが図れるようになった。各国が個別最適に陥らないよう、経営陣と事業部長、生産を担う責任者はタスクに入り、ROICを高めていくために改革を進める。

    (中長期的に、冷凍食品事業の収益性を調味料の水準に近づけるために、一番鍵になることは何か、との問いに)

    冷凍食品事業の収益性を調味料事業並みまで高めるのは、簡単ではない。ただ、北米の冷凍食品会社で、ROICが9%程度ある会社をベンチマークしており、2030年にはその会社を追い抜くことを目標に掲げている。外部の専門家も入れて構造改革とアジアン領域での成長を急いでいるところ。2020年度予想では、業務用の外食チェーン向け製品の売上減が響いている。

    ただし、COVID-19は外食チェーンが再編されるきっかけになると考えており、アフターコロナに向けた外食の再編の動きをどのようにつかまえるか、外部の専門家にも入ってもらい検討している。構造改革だけではなく、同時に次の成長のための手段を講じている。

  • ポストコロナで考えたとき、当社製品の需要動向にどのような変化があるか。現時点の見通しはあるか。

    COVID-19により、本来は生活者が徐々に体験していくような変化が、急激に起こったと思う。一つは健康への認識。20-25中計発表時、新興国で減塩製品や低栄養の解決に貢献する製品が本当に売れるのか、食育を伴うものなので時間がかかるのではないか、生活者の方にどのように伝えていくのか、という点について見通しが甘いのではというご指摘をいただいた。それが今回のCOVID-19の経験を通じ、グローバルで、日々の栄養バランスの重要性や、塩分の過剰摂取による問題などがSNS等を通じて広がっている。その面ではわれわれにとって、むしろチャンスが来たと思う。この傾向はポストコロナでもおそらく変わらないだろう。

     もう一つはチャネルの変化。単にEコマースだけではなく、様々なチャネルがデリバリーやテイクアウトに参入している。例えば東南アジアでは、TTでも、生活者がアプリを使って注文したものをバイク便が取りに来て、自宅に届けるということが盛んに行われている。インドネシアのジャカルタ周辺ではバイク便で届けるチャネルを介した販売が、8倍ぐらいに拡大しているという情報もある。これからは既存の流通チャネルと、新しい買い場の間で競争が起こってくると思う。その面では、ダイレクトセールスを持っている当社の強みをしっかり発揮していきたいと思う。

  • 「アミノ酸の働きで世界の健康寿命を延ばすことに貢献する」ことを目指すにあたり、改めてどのような製品戦略とイベント戦略、あるいはムーブメントを展開していくのか聞かせてほしい。

    おいしく減塩生活を続けられるということと、高齢期の低栄養による弊害を若い頃から改善するという観点で、アミノ酸の機能を使った食品を増やしていくことが戦略の大きな骨子になっている。いままでアミノ酸の働きを主力の食品事業であまり使いきれていなかったが、これを応用していくことになる。 具体的に申し上げると、当社の食品を中心とする製品で、2020年度の1年間で78,000トンの減塩を進める。2019年度が9,500トン程度なので、約8倍の減塩を実行するということになる。この中にはアミノ酸の機能を使い、少ない塩でもよりおいしく感じられる効果のある技術や素材が使われている。このようなことを2020年度はスタートしたとお考えいただきたい。  

     イベント戦略とムーブメントについて、これまで日本を中心に減塩製品や低栄養に関わるプロモーションは展開してきたが、海外の主要法人では実施してきていない。これをFive Starsでも全面的に展開するというマーケティング戦略としている。具体的なムーブメントの例としては、日本で行っている「勝ち飯®」を主要国で「Kachimeshi®」と表現して栄養価値訴求を開始しており、それに即したコミュニケーション戦略やマーケティング戦略を展開していくということである。

  • アセットライト化戦略により、バランスシートが軽くなり収益性も上がることで、ROICも改善できるというお考えだと思う。仮にそれが達成されたとして、その後キャピタルアロケーションはどのように変化していくのか。残された重点事業への投資と、当社事業全体への投資、つまり自株買いのバランスは、どのように考えればよいか。

    まずアセットライト化を実行することによって、真水のオーガニック成長が全社のトップラインを引き上げていくことになる。2019年度の業績も残念ながら全社では減収になったが、重点事業だけを取ると+3%のオーガニック成長を実現している。20-25中計では、フェーズ1の終了時点で、前年に比べ+4%程度のオーガニック成長を実現するプランであり、営業キャッシュフローがまず増えてくる。COVID-19の影響で少し沈むところがあるかとは思うが、フェーズ1の3年間で4,000億+αのキャッシュインを計画している。それを前提とし、フェーズ2にかけてもさらに500億円程度のアセットライト化を実行する。

     23-25年度のキャッシュバランスについてはまだ公表していないが、当然ながらキャッシュインが増加するということは株主還元も増えるということ。フェーズ1では単年度の配当性向40%を目途ということで、17-19中計よりも10%引き上げている。今回の配当予想についても、残念ながら増やすことはできなかったが、横ばいということで意思を示したつもりである。またキャッシュアウトに係る設備投資の部分については、今は年間700億円程度だが、アセットライト化により、非重点事業に関する維持投資はより少なくできると思っている。その分については、キャッシュの状態が改善されるとお考えいただきたい。 総還元性向については、20-22年度の3カ年で50%というポリシーを変えていない。23-25年度においても同様の考え方で実行できると思う。単年度40%との差分については自社株買いに回ってくると思う。

    (例えばフリーキャッシュフローの使い方として、設備投資の中でも維持投資と成長投資の先には事業ごとに違うROICがある。一方、自社株買いは全社のROICへ投資することになる。全社への投資と重点事業への投資の優先順位について、どのような指標で判断していくか、との問いに)

    まず資産を重点事業に絞ることができるので、ここについてはしっかり成長投資を続けていかなければいけないと考えている。重点事業の中でも、主に海外食品やアジアン冷凍食品、ヘルスケアの分野については必要になるだろう。現状の有形固定資産への投資額が大きく変わるということではなく、最低限この程度は必要だと思っていただきたい。それ以外は株主還元等に回していく。20-22年度の3か年では、重点事業を絞り込む中で、設備投資の金額は17-19中計に比べ200億円程度縮小している。その差分を有形固定資産ではない人財やDXという無形資産に新たに振り向けており、今後も重要になってくると思う。