■冒頭:取締役社長 西井よりコメント
中間決算発表から1カ月近く経ち、その後の状況を少しアップデートさせていただく。当社はトランスフォーメーションのさなかにあるが、進捗したことについて、3点お伝えしたい。
1点目は、食と健康の課題解決に向けて、減塩や低栄養という課題に対し、グループ全体で戦略を統合していく動きがかなり具体的になってきた。グローバル本社を中心としたコンセプトに各法人が戦略を統合し進めてくれるようになってきたと思っている。
2点目は、DXを中心にやっていたSCM、調達といった分野について、かなり現状の棚卸しができてきた。まだ数字上の効果は確認しているところだが、2021年度の計画に反映する準備が進んできた。同時に、成長という観点での種まきについては、新事業創造の取り組みとして、コーポレートベンチャーキャピタルの準備が進むと同時に、いわゆる新たなフードテックエリアのベンチャー企業への具体的な出資も進んでいることを報告する。
3点目はアセットライト化についてである。中間決算説明会の際には、コロナ禍で中断していたものを再開しているという話をしたが、ここに来て急速にその展開が進んできている。近いうちに皆さまにも良い報告ができるのではないかという段階になっている。
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改革について、DXによる調達やSCMのところが来期に向けては計画ができる準備が整っているということであるが、アクセンチュア社等との協業によるコーポレート部分の効率化はどういう形で進捗しているのか。一部アセットライト化の急展開という説明もあったが、来期の業績を見通す中でドライバーになってくるものは何か。
まず、アクセンチュア社との合弁事業の進捗については、2020年4月に立ち上げ、味の素(株)単体のコーポレート部門の仕事をJVに出したということである。これは間接部門の仕事の効率化にかなり寄与してきている。その部分を今期は業績に少し反映している。これから各工場や営業支社の間接業務、さらには味の素冷凍食品社や味の素AGF社等のグループ会社のコーポレートサービス機能を2022年度までに段階的に取り込んでいくことを進めている。2022年度には全社共通費を売上高対比で2.5%とした目標の実現に向け順調に進んでいる。
次に2021年度の業績について。2020年度第1四半期は、家庭内需要において非常に大きな変動があったが、いわゆるベースラインセールスは、家庭用、業務用とも第2四半期頃からのトレンドが2021年度も続くのではないかとみている中で、どのように付加価値型の製品の売上を拡大できるかが大きな課題である。この課題に対しては、健康栄養訴求で単価の高いものにシフトしていくことや、製品ミックスの観点でより単価の高いメニュー用調味料のようなものにシフトしていくということが計画のアップサイドに貢献する。
ただ、ここはCOVID-19の感染状況によって多少変動するところがあるため、それだけを期待せずSCMや調達などの取組みについて具体的にどのぐらいまで目標を持ってやっていくかという検討を進めており、これがコストダウンという形で2021年度の業績に上積みされることを期待している。
(付加価値戦略を遂行することは戦略に沿っていると思う。ただ、グローバルに景気減速の影響から所得水準が上がらない環境になり、地域によっては節約志向というものも強く出てくるのではないかと思う。特に新興国はそういった懸念があるのではないか。所得低下に対する戦略として、付加価値戦略と値頃感、ボリュームを確保していくところのバランスをどのように取っていこうとしているのか、との問いに)
消費全般の節約志向というのは、今、海外でも日本でも表れてきていると思う。これは家計簿調査等も踏まえた上でそう見ている。ただ、全体で我慢しているのだから、家庭では少し良いものを食べようという傾向が出てきている。
従って、基礎調味料や風味調味料よりもメニュー用調味料を使いメニューバラエティーを広げていこうという傾向が当社の売上でも顕著に表れている。
今後どのような変化が起きてくるか分からないが、基礎調味料、風味調味料、メニュー用調味料という展開があり、低所得層から中間所得層の少し上の層まで対象となっており、かなり広い層の方々に価値を供給できるのは当社の強み。
かつ単品の単価ではなく、家庭あるいは外食店で作られるメニューのコストをコントロールするということについて、当社の品揃えは非常に大きく貢献できているのではないかと思う。ベースラインが見えてきたと申し上げたのは、このような背景に基づいている。
(外食をするよりは、当然ながら内食のほうがコストパフォーマンスは良い。その中で当社のような調味料カテゴリーは、付加価値志向のものであっても、トータルでいうと節約につながるので、あまり影響は受けないのではないかという理解でよいか、との問いに)
おっしゃるとおりだ。完成された食品で比較すると分かりやすい。外食でギョーザを食べると、1人前400~450円すると思うが、手作りすると250円ぐらいになる。さらに、冷凍食品のギョーザは180円前後で購入されており、ここは冷凍食品が非常に強い背景ではないか。同様に調味料という観点でも、外食と家庭での食事はメニューの単価差があるので、ここが強いところだと思う。
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冒頭で、食と健康の課題解決における戦略の統合ができてきたという話があった。売上のベースラインをしっかりと上げていける手応えを感じているということだと思うが、そのあたりをもう少し説明いただきたい。
グローバルな健康栄養に関するコミュニケーション戦略を一本打ち立てて、これと各国のマーケティング戦略を連動させ、その中で単価向上につなげていく。このような枠組みがきちんとリンクするようになってきた。その意味では、2月に発表した中期経営計画の時点よりもかなり具体性を持ったプランになってきた。一つは減塩等の製品開発。もう一つは、マーケティング戦略上の減塩プロモーション。これらが2021年度には本格的に実行されていく。
当初は減塩や低栄養といういわゆるフィジカルな健康に効く施策だけで、現場もかなり困惑があった。それを踏まえてnutrition without compromise(妥協なき栄養)という考え方を軸に、3つのコンセプトを打ち出した。何を妥協しないのかということについて、1点目は、ベーシックなおいしさ。2点目は、地域の食生活。3点目は、幅広い層の食、食へのアクセス。この3点をコンセプトにし、共感がかなり得られてきていると思う。中計で目標にしている単価向上をこれで実現していきたいし、できるだろうと思っている。つまり当社が非常に大事にしている、低所得層から中間所得層の上の層までの方々に価値を提供できるようなマーケティング戦略と製品戦略を展開する。これがコンセプトとして出来上がったということである。
(例えば旧Five Starsではどのようなエリアが先行して動いてきているのか、との問いに)
基本的に旧Five Starsは全部含まれている。加えてそれに準ずる国々、例えばマレーシアやタイの周辺国など、調味料と加工食品を中心とした国ではかなり歩調が取れてきたと思う。冷凍食品については、単なる栄養ということではない。ここは今、非常に大きなトレンドになっていて、アジアン冷凍食品に集中をしている。
(トップラインを作る力、組織体制もうまくワークしてきているということで、中期的に向けてしっかり売上を作っていけるという手応えを感じ出しているということか、との問いに)
そのとおりだ。COVID-19の中で外食の苦戦があり、さまざまな手を打つものの、この影響はしばらく続くだろう。売上については、今年度第3、第4四半期ともに非常に厳しい予想を出したが、家庭内需要を中心として取り戻していかなければならない。ここはしっかり集中して取り組んでいる。
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東南アジアは言語なども違う中、その周辺国でマーケティング戦略を連携させることの重要性を教えてほしい。また、その戦略が目に見える形で、例えば下期に製品戦略が非常に活発化し顕在化するという理解でよいのか。
早いものは2020年度中に、減塩タイプの製品開発につながってくる。これが2021年度に向かっては、各国に展開されると考えていただければと思う。それから、コミュニケーション戦略が変わっていく。われわれはこの取り組みを岩手県モデルのような形、つまり地域行政やメディア、現地のアカデミア等の幅広いステークホルダーと連携した中で、普及を進めていくという考えである。その中でメニュー開発、マーケティング、実際の売り場作り、マーケットへの製品供給などを通じ、貢献しようということ。このような地域のエコシステム構築も今進めている。具体的にはもともとベトナムで実施していたものだが、タイやマレーシアでも同様の活動が始まってきている。
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中間決算説明会のスライド19ページ目に記載のアンケート結果で、「栄養を意識した食事をする回数と意向」という設問に「変わらない」や「現状でよい」と答えている人がかなり多いことに驚いた。これらの回答をした層に当社の戦略を訴求していくには、どのようにしたら良いと考えているのか。加えて、マーケティングへのDX活用について現状でどのようなことを考えているのか可能な範囲でご紹介いただきたい。
「栄養を意識した食事をする回数」で「変わらない」と答えた層については、「元々普段から心掛けている」ということなのか、あるいは「栄養というところまでは意識していない」ということなのかまでは深掘りができていない。一方、「増えた」という方は約3割いて、今後「増やしたい」という方も同程度いた。手料理の回数についてもご報告しているが、やはり「増えた」方が約半数いらっしゃることに注目しながらも、手料理の捉え方については少し幅があろうかと思う。肉や野菜など、ゼロから調理をすることではなく、中食や冷凍食品などの簡便な調理も組み合わせた賢い料理をされていると思う。このような生活者の変化を機会にしていきたいと考えている。
マーケティングにおけるDX活用について。1つ目は、データ解析の部分。新しい生活スタイルをできる限り細分化して見ていく中で、その細分化したものがどのようにミドルマスやマスに区分していけるのかというような分析が進んでいる。2つ目は、多岐にわたるコミュニケーションチャネルに対して、費用対効果をさらに上げていくための取り組みが進んでいる。3点目は、新事業創造の部分。さまざまな分野のフードテックベンチャーが立ち上がってきており、アライアンスや場合によっては出資を検討していく。企業間の関係を構築しながら、当社の既存事業の強化や、新しい事業を立ち上げるための取り組みが始まっている。
(マーケティングについて、単純に既存の媒体からデジタルシフトをするということではなく、もっと深い意味で単価向上につなげる、トップラインが伸びる方法をきちんと考えているという理解でよいか、との問いに)
単価向上につなげていく観点では、栄養戦略を軸にして取り組む。また今回のアンケートでも明らかになったように、手料理を減らしたいという方も2割弱いる。これは半分以上の世帯で手料理の機会が「増えた」という中で、調理疲れのようなことが生じているのだろう。この状況を解析し、生活者を飽きさせないための施策がマーケティング上の非常に重要なポイントとなる。
また、スモールマスが非常に明確に見えるようになりチャネルも多様化している中で、当社の調味料や栄養・加工食品事業のさらなる効率化を進めていくには、主要な製品群と、ロングテール型のバラエティ品種のチャネルを使い分けなければいけないのではないかと考えている。2021年度以降発売を検討しているロングテール型の新製品については、まずEコマースでテスト販売をし、6カ月程度消費者の反応を見た上で、マスへと拡大するか、ロングテール型で続けるか、あるいはやめてしまうかという判断をしていく計画である。
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コロナワクチンが開発され、世の中からコロナウイルスの感染が無くなったとき、当社の業績にどのような変化が出るのか教えてほしい。
さまざまな所で議論されているが、アフターコロナになってもビフォアコロナの状態には戻らないことを大前提に考えている。2つの大きなトレンドがあると思う。1つ目のトレンドは、「人と人の結び付き」という考え方が非常に重要視される世の中になるだろう。その中に食をどう組み込んでいくかというところが大きなテーマ。その中の一つの切り口が栄養や健康であり、これは自分だけではなく家族の健康を気遣う、栄養を大事にするという価値観ができあがるだろう。2つ目の大きなトレンドは、世代を超えた多くの方々がオンラインで情報を得るという体験をして、しかもこれが長く続いているということ。買い物、コミュニケーション、情報の取り方が非常に大きく変化してきているので、食の領域の中でも、単なるおいしさやメニューだけではなく、それに付随する情報、例えば、どういう作り方をしているのか、どこの食文化なのか、どういう原材料が使われているのか、栄養価はどうなのかといったさまざまな情報が付加されたものがコト消費に形を変え、消費者の購買行動につながっていくと思う。一方、人のリアルな交流はビフォアコロナの状態まで戻らないだろう。従って、それぞれの国と地域で「食べるという体験」に繋げるマーケティング活動が非常に重要になると思っている。
(そのような変化に対応することは、当社の中計戦略と合致しているか、との問いに)
かなり合致しているのではないかと思う。1つ目のトレンドである、人々の健康や栄養に関するリテラシーが高まるところは合致している。具体的な購買行動に移るときに、幅広い価格帯の製品とメニューの幅でソリューションを提供できる。われわれのチャレンジは、デジタルを介在した生活者の購買行動の部分。Eコマースや宅配、あるいはD to C等の新しいチャネルは売上構成比もまだそれほど大きくなく、着手したというレベル。ウィズコロナの間にできる限りトライアルを行い、新しいチャネルを開拓し、お客さまとのタッチポイントを創造していかないといけない。
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世の中が変化する中、当社のコア事業である調味料の位置付けはどのように変化するか。
あらためて調味料が持つ価値を見直している。これまでは、主力の製品とロングテール型のバラエティで稼いできた。ところが、COVID-19の環境下で生活者がEコマースなどを通じてダイレクトに注文するようになっている。Eコマースはロングテール型製品に向くが、リアル店舗はロングテール型の製品には向かない業態になってきていると思う。従って、リアルな店舗では効率性を求めてコア製品のメニュー提案(例.「ほんだしⓇ」で、和風だけではなく、幅広いメニューが作れることを提案する等)を進め、それを生活者に認めてもらうような世界をつくることが求められる。一方、バラエティを求める生活者のニーズには、EコマースなどD to Cを使ってロングテール型製品を提供していく。そういうモデルに変わっていくことが調味料には求められているのではないかと思う。当社は十分対応できると考えている。
(優秀なブランドで幅広い価格帯の調味料を持てば、リアル店舗では消費者が買いやすい。ダイレクトになると、調味料ではなく、もっと付加価値の高い冷凍食品や最終製品に近いものの需要が増えると思う。その考えが間違っていなければ、当社の加工食品の位置付けをどう発展させていくのかということのほうがより大事になると考えるがどうか、との問いに)
調味料も加工食品もいずれも大事。日本における9月の調査では、手料理をする回数が増えたと回答した方が50%を超えた。さらに増やしたいという意向を持つ方が10%いる。これは非常に大きなことで、当社メニュー検索サイトへのアクセス数も飛躍的に増えている。何が起きているかというと、手作りは増えたが、今までのレパートリーでは満足しない方々が増えてきているのではないかと思う。従って、メニュー用調味料や既存の調味料を使った、今まで考えていなかったようなメニューの提案が価値を持ってきているということだろう。基礎調味料もメニュー用調味料も根強い需要に支えられており、今申し上げたようなことが起きているのだろうと考えている。海外の主要国においても、メニュー用調味料の販売が伸長している。日本のみならず海外でも同様のことが起きているのではないかと推定している。
(メニュー用調味料はどの程度伸長しているか、との問いに)
20%近い伸びになっている。
(当社のメニュー用調味料や新製品のコンセプトが、生活者に刺さってきていると解釈してよいか、との問いに)
これまで調味料も加工食品も調理時間を短縮する簡便性の訴求が多かったと思うが、在宅の時間が多くなるにつれアイドル時間が出てきている。エンターテインメントが少なくなっている中、調理をすること自体を楽しむ人が増えてきていると思う。従って、これまでのように、簡便性でトレンドをつくっていくということではなく、手作りの幅を広げていく製品やそれをサポートする情報が大きな需要を生んでくるのではないかと思う。
(当社がメニュー提案の幅や、おいしさを作る技術を持っているとき、アフターコロナで他社からシェアを取れる可能性もあるのか、との問いに)
われわれが提供できていないメニューはまだ世の中にたくさんある。特にプロのシェフや外食産業が提供してきたメニューは、われわれの家庭向けのメニューバラエティーを超えている。新しいメニューを自分たちでも作れるようなサービス、あるいは製品の使い方を訴求するところにチャンスがあると思っている。
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事業環境の見方を、2021年度くらいまでのスパンで教えてほしい。業績予想上は、まだ米国、ブラジルでの第2波襲来が入っていると思う。東南アジアを含め、ワクチン接種の拡大がこの下期、来期ぐらいに当社にどういう影響が出てくるとみているか。
ワクチンが開発されたことは大変大きなニュース。奇跡的なスピードで開発されていて、当初予想していたより半年ぐらい早くなったと考えている。しかし、普及についてはさまざまな情報がある。欧米では50~60%の方々が接種したくないと言っていると聞く。ワクチンは必要な方々に優先的に接種されていくだろう。それは医療従事者、疾患がある人や高齢の方々ということだと思うが、正直に言うと、重篤な副作用が出てきたときにどういうことが起きるのかは想定できない。COVID-19はアメリカで感染が再拡大しているし、カリフォルニアもつい先日ロックダウンに入った。ブラジルもいったん落ち着きを見せていたが、地方で拡大の動きが報告されている。従って、まだ予断を許さない。当初のわれわれの予想どおり、COVID-19が落ち着いてくるまでには来年いっぱいかかり、通常の状態に戻るのは2022年度になるということを前提に、リーンな事業運営をしていこうと考えている。
(定番の調味料やメニュー用調味料、アジアン冷凍食品が堅調という事業環境は、少なくとも2021年度上期までは大きくは変わらないという見方で良いか、との問いに)
良い状況は続くとみている。ただし、われわれが懸念していることは、家庭内調理が増えている一方で、調理疲れも出てきていることだ。手料理を減らしたいという方も20%近くいる。ベースラインが上がった状態は続くと思うが、そういう方々に共感し、負担に感じない調理方法の提案が出来るかというマーケティングがポイントとなる。
(同じように見えても視点を変えると違うということだと思う。新しいチャンスがあるとみているということか、との問いに)
その通りである。一方、感染が広がっている米国は、もともと家庭で調理する機会が少ないので、冷凍食品の需要がまだ続くとみている。われわれの課題は、今年度第3四半期までの時点では製品を十分供給できていないことであり、第4四半期に解決していく。投資した分は来年度のプラスの要素として取り込んでいきたい。
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マーケティング費用について、費用対効果の面で、COVID-19流行前と今後で変化はあるのか。
販売促進費と広告費のかけ方について、コロナ禍では新製品が出せなかったり、コミュニケーション投資ができなかったりということがあった。その結果、2020年度上期はマーケティング費用が減少した。一方で、課題も生じた。具体的には、日本の一部の調味料や加工食品において低価格のプライベートブランド等にシェアを奪われており、手を打っているところである。
2021年度については、シェアを戻していくためにも販促強化が必要であり、前年にプロモーションが打てなかった第1四半期においては、マーケティング費用は当然ながら増えると思う。一方で、デジタル化を進めていく中で効率的な運用も見えてきており、しっかりコントロールしていきたい。
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直近の業績について。2020年度下期に国内のシェアダウンを取り戻すために、広告投資を行う話がある一方で、上期はコアブランドの製品に絞ったことでマージンが向上したという話もある。収益性とシェアアップのバランスについての考え方、費用対効果について確認させていただきたい。
第1四半期、第2四半期を通じて特売を自粛せざるを得なかった状況の中で、プライベートブランド等の競合品との価格差が拡大したことでシェアダウンがあった。下期は販売促進活動を元に戻し、シェアを回復していく活動をしていきたい。また、秋に発売予定だった新製品がほとんど出せなかったということで、2021年に向かって発売を準備している。これは1月に新製品を発表し、2月、3月と導入されるに従って、マーケティング投資が必要になる。主にはコミュニケーション費用や店頭でのセールスプロモーション費用。これらが2020年度第4四半期に大きく発生する見込みである。
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2020年度上期、コロナ禍の中で、何ができて、何ができていなかったのかを教えていただきたい。特にマーケティング費用は、使いたくても使えなかったという部分もあり、この厳しい環境下でしっかり利益が出ている。ポジティブ面、ネガティブ面について上半期はどのように総括をしているのか。
上半期を通じて、COVID-19の環境の中でもトランスフォーメーションを着実に進めることができた。懸念していたアセットライト化についても6カ月ほど停滞したが、それをキャッチアップする形で取り戻すことができている。
できなかったことは、安定的に供給責任を果たしていく考えの中で、品切れや品薄の状況が起こり、十分な供給を果たし切れなかった事業が出てきている。これについてはポートフォリオを重点化し、コア事業に関する供給能力をしっかり持ち、フレキシブルな需要予測を生産に反映する仕組みが、まだできていないところがあると思っている。
マーケティング費用の適正な使い方については、前年の経験に基づくマーケティング戦略を立てる発想がまだしみついている。上期の販管費の減少は、われわれが意図的にそれを見出していったというよりは、COVID-19によって気付かされたところである。ここはしっかりと洗い直しをし、事業の中に潜んでいる無駄を見える化し、適正に使用する管理体制にしていかなければいけないと思っている。これはまだ課題として残っている。
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2021年度上期を考えた場合、販促費は新しい付加価値提案により増えるが、単価上昇の継続等で業績好調は続くという見方で良いか。
2020年度は、特に第1四半期が非常に特殊な期となり、広告・販促費が進捗しなかった。よって来年の第1四半期は今年と同じということにはならないだろう。従って、ベースラインをしっかり取りながら、競争に勝つために、適切に経費を使用していく。しっかり業績予想に織り込んでいくが、それ以外のところについては、今年の状況をにらみながら、効率的に使用していく。
(販管費は、2021年度第2四半期からは前年比較で大きく増えるイメージは持っていないという理解でよいか、との問いに)
基本的にそういうことだ。ただ、特に競争が激しい領域では、その限りではない。
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コーポレート費用の削減について。全社共通費2.5%という既存目標があるが、動物栄養事業の撤退・縮小等により売上高が伸びていかない前提において、2021年度以降も事業利益にはポジティブに効くのだろうと思っている。コーポレート費用削減額のイメージがあればお伺いしたい。
2020年度中間決算発表のプレゼンテーション資料に記載されているように、2020年度の見込みは既存費用で330億円。これにDX等の成長投資が乗っているので、全体では367億円である。2022年度は既存費用分を棒グラフで示しているので、ここからインサイトを取っていただきたい。
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今期は2回上方修正し株価も上がっている。下期の予想も保守的と思う。来期、コストダウンの効果がどの程度事業利益にヒットするのかよく分からないため、大まかな範囲で教えていただきたい。
今、精査をしているところである。というのは、これまでのような低資源利用発酵に関する主原料・副原料という要素とは違い、サプライチェーンや調達というのはオペレーションが非常に複雑になっていて、かなり多くの従業員がこの事業に携わっている。重複している部分があり、SCMあるいは調達だけ切り離して整理できない。もうしばらく時間を頂き、来年度の計画時にはしっかり発表していけるようにしていきたい。ただ、どこにどの程度の改善余地がありそうかというのは大分見えてきた段階だ。
(冒頭でアセットライト化について目途がつきそうという話があり、来期については利益の見通しが高くなりコストシナジーが出るが、販促費は出るということである。今期の事業利益は1,100億円ぐらいまでいくかもしれず、以前、2022年度におおよそ1,200億円というイメージだという話があったが、そこまでは来年度は難しいと捉えて良いか、との問いに)
数字は大変申し訳ないが、今の段階では申し上げることはできない。あらためてコミュニケーションさせていただきたい。
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2020年度上期は売上が厳しい中、事業利益が出ている状況。当社の事業利益ベースの実力値についてご解説いただきたい。
事業利益の実力値については、今回の上方修正で、当初FY20-25中期経営計画を組み立てた時の事業利益のラインに、まだ完全には届いていないが近づいてきた。したがって、今期予想の1,000億円程度というのは、今のわれわれの実力に近いものになっていると思う。ただ、中計で組み立てた時よりは、ポジティブな面、ネガティブな面もあり、この最大の要素はCOVID-19の影響である。COVID-19という非常に厳しい環境の中で、本当にわれわれの稼ぐ力の源泉になっているものは重点6事業であるが、ここの力が示されてきていると思っている。
(今の実力値で事業利益1,000億円がターゲットになったということだが、2021年度以降を考えた時に、この1,000億円に対してどれだけ積み上げられるのか、という見方をしてよいか、との問いに)
具体的な数字については申し上げることはできないが、積み上げていけるようにやっていきたい。COVID-19の影響の中で、直接的な感染の広がりについての影響度は、良いものも、あまり良くないものも、一定程度予測ができる状態になってきていると思う。今後懸念される複合的な要素、つまり地政学的なリスクや、COVID-19と災害が結び付いたような事象、あるいは新興国の経済動向などについては、一定のリスクがまだそれなりの確率で残っていると思う。そういったところについては、しっかりと注視していく。いずれにしても、COVID-19の影響が完全にない社会になっていくのは、2022年度だという見通しは変わっていない。さらなるコストダウン要素をしっかりと見つけていき、どのような状況に振れてもベースラインを確保し、できればこれを上回るような経営をしていきたいと思っている。
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当社でDXとくくられているものは、クロスボーダーEコマースや、SCM、調達など、非常に多岐にわたる。改めて、当社のDXにはどのような内容が含まれているのか、今年度取り組んでいるSCM・調達の他に、来年、再来年とさらに取り組んでいく項目が何なのかということについて整理していただきたい。
DXというのはデジタルに意味があるのではなく、トランスフォームに意味がある。基本的には全部門で仕事を見える化し、それによって非効率的なところをやめ、より効率的なものにするときにデジタル技術を導入していくということであり、デジタルを使って全部門にわたったトランスフォームをやっていくという考え方だ。
主なテーマとしては次のものがある。1つ目はSCM。2つ目は調達を含めた、いわゆる間接部門の業務革新。特に調達については、業務革新だけでなく在庫の圧縮というテーマが含まれている。3つ目はマーケティングで、いわゆるマーケティングROIを高めるために見える化し、より効率的な活動に変えていく。4つ目はR&Dで、開発のスピードを2倍にできないかということで、アナログになっていた開発プロセスを全てデジタルに置き換えて見える化し、全組織で共有しながらより効率化を図れる取り組みを開始しているところだ。5つ目は、非常に大事なところで、人財の働きがい、エンゲージメントを高めるために、エンゲージメントサーベイをグローバルに導入し、この結果を分析する。毎年実施するようになってから今年で2年目になるが、特にASVの向上、顧客のために貢献できているという実感を持つ従業員を増やしていくことが、間違いなく業績に貢献すると思っている。これを見える化するところをデジタルの仕組みを使って取り組んでいる。
最後はまだトライアルの段階だが、新しい事業モデルを作っていくということである。ここは主に外部のDtoC、アグリテック、フードテック、そしてヘルスケア周辺のところで先進的なデジタル技術を導入された方々と協働していく。あるいは場合によっては出資していく。
(マーケティング、R&D、人財、新しい事業モデルは、来年度以降に加速して取り組まれるということか、との問いに)
マーケティングROIの改善とR&Dの2倍速というのはまだトライアルの段階。これが本当に成果を生んでくるのは2022年以降ということになるだろう。
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DXを進める中でSCMと調達の部分で進展があったとのことだが、具体的にどのようなことか。
まずDXは、デジタル化ということの前に業務の見える化が大前提となるため、その観点でSCMと調達についても見える化を進めてきた。するとコスト削減、そのためのオペレーションの最適化、ガバナンスの徹底という関係性の中で、一部トレードオフのような状態があることが分かってきた。
オペレーションについては、生産、営業、事業部、調達といった部署が、それぞれの判断で需要予測や発注を行うという現象が起きている。ガバナンスの観点では、調達もSCMもコンプライアンスを守るためにトレーサビリティの追及や、複数企業でのコンペティションなどが求められている。上述の通りオペレーションが分断されている中では、全体の効率性を追求するところまでは至っていない。それが見える化をすることで、どこに改善できるポイントがあるか分かってきた状態である。今この部分を精査し、来年度以降のコストダウンの目標に置き換えられるよう動いている。
(DXでコスト改善が見えてきたというのは、具体的にどのような領域か、との問いに)
SCMと調達のところに大きなフルーツがあると思っている。DXは、これ以外にもマーケティング、R&D、社員のエンゲージメント向上などさまざまな分野で進んでいるが、コストダウンという観点ではここが大きいだろう。
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DXの事業に対する効果は、基本的にマーケティングの部分で最も顕在化すると思うが、具体的な成果として見えるタイミングを教えてほしい。 質問の背景だが、2020年度に家庭内で当社調味料を使う世帯が増えた。これをベースとして、2021年度に仮に市場で家庭用の需要が反落しそうな時に、当社の実績はそれに対してマーケットをアウトパフォームできる力があるのかどうかを確認したい。またR&Dの製品イノベーション、減塩、低栄養アプローチに対して、既存技術で対応していくのか、それとも当社のR&Dのパイプラインの中に、イノベーションが今後あるのか。
DXについては、デジタルというところに意味があるわけではなく、トランスフォームする、業務を革新するところに意味があると思っている。特にマーケティングの分野については、ROIの向上ということになってくると思う。
大事なのは、単なる製品だけではなくて情報を具備したマーケティング活動を、的確に消費者をセグメントに分けて展開していくことだと思う。その中に製品戦略やコミュニケーションも含まれる。したがって、数字で具体的にお示しするまでには至らないかもしれないが、ベストプラクティスを見出すことができるようになっている。今後、事例をご紹介しながら共有していきたい。
2021年度の家庭用需要の反落については、あまり懸念していない。コロナ禍の中で定着してきている価値観や行動様式は、ひと言で言うと家庭内需要の高まりである。外食から、中食も含めた内食需要へのトレンドが非常に力強く残るのではないかと思っている。
R&Dのイノベーションについては、例えばうま味に続く、コク味物質というものを同定し、それを製剤化し、アプリケーションという形で製品に応用することが近年できている(例:「ギョーザ」をおいしくする、市販用の調味料をおいしくする、S&Iの事業で乳製品のこく味を増す、など)。コク味物質によって調味料のビジネスの幅、われわれの加工食品の製品強化ができるようになっている。
コク味物質は開発に15年かかったが、ここに問題があると思っている。エンドユーザーの課題を解決するための素材の探索から、最終的な製剤を作り上げ、アプリケーションを開発するまでを、半分ぐらいの時間でできないか、DXの中で詰めているところである。この部分がR&Dにおけるイノベーションの可能性だと思っている。コク味物質については、当社オリジナルのものであるので、ここが成長の原動力になり、コロナ禍で非常に力になると思っている。
(日本で家庭用の調理自体が定着すると思う一方、アジア諸国においてマーケティングのトランスフォーメーションが、従来と比べ当社の優位性を担保できるものなのか、競争環境という観点から教えていただきたい、との問いに)
海外調味料の約10%程度を占めているメニュー用調味料のカテゴリーは、当社が競合に先駆けて開発した製品であり、かつブランドが強いので、非常に認知率が高い。調味料は基本的に先行優位のカテゴリーなので、コロナ禍で家庭の中に浸透し、使われたという経験は非常に大きな足場になるだろうと思っている。メニュー用調味料は20%近い売上高成長となっており、ここの勢いを活かしていきたい。
一方で外食が非常に厳しい状況であり、この影響を受けて「味の素®」や風味調味料「RosDee®」や「Masako®」等の大容量品が苦戦をしている。しかし小容量のカテゴリーは10%以上伸びており、メニュー開発でしっかり需要を取っていきたい。
競争の観点では、国によって基礎調味料、風味調味料の競合のシェアポジションと、当社のポジションが違うため、全て安心できるというわけではない。当社と近い市場シェアを持っているベトナムの競合や、インドネシアの競合への対応については、しっかりと手を打っていく必要があると思う。隙を作らずに、勝ち切っていきたいと思っている。
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アセットライト化の施策による構造改革費用を期初の計画から増額されているが、コロナ禍の状況において、アセットライト化施策が進捗した背景を教えて欲しい。
動物栄養のアセットライト化施策が急速に進捗した背景には幾つかの要素がある。1つ目は、動物栄養事業は、その地域の農業という国策に関連する事業だということではないかと思う。したがって、業界全体の資金繰りが非常に厳しいことは間違いないと思うが、地域や政府の支援が得られるということがあると思う。2つ目は、実体経済と金融マーケットのギャップが広がっており、一般的にこのような時に資金の動きが活性化する部分もあるだろうと思う。ただ、われわれも進捗が6カ月程度遅れていたが、これを取り戻す勢いで進んできていることは、共有させていただきたい。
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構造改革後の業績貢献について、当社の狙いをもう一度確認させてほしい。
構造改革の対象となる事業は、減収、減益の大きな要因になっており、これが縮小される。また、売却等になれば資本効率を高めることができ、かつコストセービングもできるだろう。トップラインは当然ながら下がるが、構造的に強くなるということは期待していただきたい。
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アセットライト化が順調に進んでいるということで、とても喜ばしい。アセットライト化が完了して従来よりもスリムな組織体になった後に、次の成長に向けた投資を検討することになると思う。20年後、30年後の当社は、どのような会社になりたいのか。また、食と健康の課題解決企業となるために、どのような技術を磨くのか、あるいはサプライチェーンを強化するのか。今の当社に何が足りなくて、どのような投資をするのかについて教えていただきたい。
アセットライト化の後、食と健康の課題解決という観点では、ヘルスケア分野において様々な疾病の早期発見や予防のソリューションとして、アミノ酸の機能性を活かした活動に集中していきたい。具体的にはメニュー提案やサプリメントなどになる。デジタルマーケティングによりソリューションをパーソナライズ化し、最適なメニューと栄養価を提示し、それを補足するためのサプリメントを提供していく。現在、当社にはデジタルリテラシーを持った人財、開発力、デザイン力が不足している。その部分はベンチャー企業やアカデミアのようなところと共同のプロジェクトを通じて人材育成も行い、次のビジネスモデルをつくっていく。
2020年10月下旬より「アミノインデックス®リスクスクリーニング(AIRS®)」に新サービスを追加し提供を開始している。今までのメタボリックシンドロームを予防するための食生活の改善と、認知機能を落とさないための食生活の改善は、フィールドがかなり近いことが分かってきた。因果関係を明確にすることで、疾病を発症しないようなソリューションの開発に力を入れて、新しい事業にしていきたい。
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海外調味料について。東南アジア等の直販スタイルの営業体制は、コロナ禍においては活動が制限されネガティブな影響があるだろうと思っていた。もともとEコマースの台頭などで今後厳しい側面があるのではと見ていたが、2020年度上期は非常に強い成長率であった。これは競合他社と比較しても、ディストリビューションの強みが発揮できているという理解でよいのか。
ディストリビューションの形は国によって異なる。トラディショナルトレード(以下、TT)だけでなく、モダントレード(以下、MT)に対しても活動しているし、卸店を起用する地域もあれば直販の地域もある。いわゆる最適なディストリビューションの形を直接自社セールスが構築しているという点が我々の特徴であると考えている。競合他社は、一部のスーパーバイザーだけが卸店をフォローしたり、MTの専任チームを持っていたりと状況はかなり違う。当社はTTの市場が閉鎖されればMTを強化し、CVSが成長していれば、そこに対しても要員をシフトし専任部隊を柔軟に作っていくというやり方をしている。その点では地上戦に強いということだろう。
Eコマースは東南アジアやブラジル等でも盛んであり、当社もしっかりと製品を供給していく取り組みを進めている。現時点において、Eコマースでは主力製品を中心に売れていく傾向にあり、シェアを一定量確保するために必要なチャネルとなっている。一方課題は配送料。旧Five Starsの国々でも、店舗や消費者が配送料を負担しながら使っていくことについては一定の限界があるだろうと見ている。従って、フレキシビリティーが当社の強みだとご理解いただきたい。
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家庭内需要が非常に強く2021年度も家庭用はおそらく問題ないとのことだが、タイは外食のマイナス影響が大きく、回復するか懸念している。何かご説明があればお願いしたい。
タイについてはわれわれも大変心配をしている。当初の予想どおり、タイの回復が一番遅れるのではないかと思う。主要産業が観光産業でありそれが外食需要につながっているため、調味料の中で大きな割合を占める「Ros Dee®」の大容量が現在でも戻ってきていない。小容量タイプの需要は旺盛であるが、全体の売上高が前年を上回るのは2021年度以降になるだろうと思っている。
今後は段階的に観光客の戻りが出てくると思うが、反対に起こりつつある政治的な動きやデモ等の抗議活動が懸念される。2021年度に悪い影響で残らないことを願っている。
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国内外の調味料と加工食品の競争環境について。国内では、2020年度第2四半期から競合の価格戦略は変化しつつあると思うが、カテゴリー別の影響を伺いたい。同様に旧Five Starsの状況についてもお願いしたい。
国内の調味料では、「ほんだし®」や「Cook Do®」等が代表製品。ここについては特に第1四半期に安定した製品供給が難しく、特売のプロモーションが打てなかったりしたことによりプライベートブランド等との価格差が発生し、若干シェアを落とした状況にある。ただ徐々に価格差は縮まっており、需要も戻ってきている。海外は国によって競争環境も違うが、家庭用製品の価格差により当社シェアが奪われているという報告は今のところ受けていないし、その傾向もないと思う。調味料の家庭用については、海外主要法人計で現地通貨ベースでは10%程度の伸びとなっている。競争激化の環境にあるのは、主に日本のマーケットだと捉えている。
加工食品について、国内では「クノール®」スープが代表製品だが、プライベートブランドとの価格差はさほど発生していない。製品供給も安定し、売上も成長に転じている状況と認識している。海外では、タイの「Birdy®」の売上高構成比が大きいが、外出規制により非常に大きな影響を受けた。特にロードサイドのCVS等での需要が減少し、第2四半期まで苦しい状況が続いている。「Birdy®」の減糖タイプは非常に好調であり、幾分かマイナスをカバーしている状況。以前のように、競合が大幅な価格攻勢をかけてくるといった動きは今のところ見られていない。
(国内の冷凍食品についてはどうか、との問いに)
国内の冷凍食品に関しては、COVID-19の影響や競合の攻勢はあったものの、冷凍食品合計で言うとマーケットシェアはあまり動いていない。したがって、われわれも市場を上回る伸びではなかったということであり、競合もそうであったと理解している。
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海外調味料のシェアについて。家庭用でシェアダウンがあった地域はどこか。またカテゴリー別では、明確にモメンタムが上がってきたのはメニュー用調味料であるという理解でよいか。
海外については、旧Five Starsでも大きなシェア変動の傾向は出ていない。ただ、2019年度に競合の攻勢によりシェアを落としたベトナムについては、風味調味料の競争がまだ続いており、シェアが戻っていないと認識している。
(引き続きメニュー用調味料の成長は顕在だが、その中で当社のポジションが大きく変わったということではないということでよいか、との問いに)
そのようにご理解いただきたい。メニュー用調味料は非常に多岐にわたる分野であり、例えば醤油や伝統的な調味料なども含まれるので、一概に当社シェアを語るのは難しい。
当社が強いのは、例えば唐揚げ粉やオイスターソースを使ったメニュー用調味料などであり、これらはそのカテゴリーの中でトップの位置にある。当該カテゴリーは20%近い成長をしているので、トップブランドがマーケットを牽引しているということだと思う。
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調味料の海外の売り上げに占めるメニュー用調味料の構成比をアップデートしていただきたい。
10%程度。ただ、液体系調味料は汎用にもメニュー専用にも使えるものがあり、ここは区別できていない。液体系調味料を加えると15%程度となる。
(日本におけるメニュー用調味料の比率はどの程度か。また海外と同じように20%伸びているという理解で良いか。との問いに)
日本のメニュー用調味料は全体の30%程度である。伸び率については、日本はさすがにそこまで伸びていない。
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海外の調味料について、政府の給付金により消費が短期的に押し上げられているということはあるか。2020年度下期、タイ以外の国の成長率は高めに設定している印象がある。仮に給付金により足元の消費が伸びていた場合、それが剥落した際の成長率についてどのように考えているか。
当社が事業展開している国の中でいうと、サポートが大きいのは米国の失業補償とブラジルの給付金だと思う。米国については、補償が長期間に渡っても体力的に問題ないだろうと思っているが、ブラジルは一定の懸念があり、ここはしっかりと注視していく必要がある。
ただ、給付金により消費が押し上げられているカテゴリーと、生活必需品である当社の調味料というカテゴリーは少し違うだろう。調味料まで落ちていくということであれば、それは国の経済そのものや、別の観点での不安が増大する局面であろう。その意味では、あまりネガティブに捉える必要はないと思っている。
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海外コンシューマー事業の2021年度以降の見通しについて伺いたい。足元の業績は当社の内部的な要素というよりも外部要素が強いのではないかと考えているが、COVID-19前の状況に徐々に戻る中で、競争環境を注視していかなければならないと見るべきなのか。
海外では、今までは出来上がったものを買ってきて食べる、あるいは簡便な外食を中心としていた方々が、家庭で調理するという機会を新たに経験された。そして、手軽に調理をするための調味料や加工食品が存在するということに気付かれたことは、非常に大きい。
COVID-19が流行しはじめてから既に9カ月たっており、確かに東南アジアだけ見ると、日本や他の国々に比べると感染のリスクは低下していきているように映るかもしれない。しかし現実にはインドネシアなどにおいては、政府の発表以上の感染者がいる可能性もあり、まだ拡大が続いている。一旦感染者が出なくなったベトナムも、また増加傾向にあり政府が非常に厳しい外出規制を求める動きにある。加えて、タイではまだ外食に人が戻ってきていない状況である。従って、ワクチンが新興国にも普及して人の交流が戻ってくるまでは、一進一退の生活を長く続けざるを得ないだろう。
このような状況の下で、多くの生活者に新しい生活スタイルが定着するだろうと見ている。仮に外食に戻ったとしても、家庭での新しいメニューも経験されており、栄養と健康に気遣う減塩調理や低栄養にならないための料理というものに意識が向くものと思われる。その結果、海外コンシューマーのベースライン向上につながると考えており、当社の食と健康の課題解決に向けた戦略を浸透させる大きな機会が来ていると受け止めている。
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20-25中計では幾つかのKPIを示しているが、グローバル企業と比べてもユニークだと思うのは単価の成長率である。最終的には、海外コンシューマー食品で毎年3%程度の成長を目標としている。それに対し2019年度と2020年度上期については、少しでき過ぎだったのではという感じも受ける。2019年度は海外主要国で値上げの効果があり、2020年度上期は、コロナ禍で製品ミックスの影響も大きかっただろう。今後もこのペースで行くのか、あるいは少し違った方法で3%成長を目指すのか。
おっしゃるとおり2020年度上期は、コロナ禍で高単価のメニュー用調味料が伸びた部分が大きいと思う。一部、経済悪化の環境下でも主要製品の値上げを実施できた国もあり、その効果も含まれている。20-25中計策定時、メニュー用調味料の2桁成長で製品ミックスを改善していくという要素は計画に織り込んでいたが、コロナ禍ではそれを上回る消費が進んでいる。ここをどう定着させていくかということが重要なテーマになってきている。
一方、健康志向に対する付加価値の提供による単価向上については、まだ十分に展開できていない。旧Five Starsを中心として、減塩や低栄養に焦点を当てたマーケティング戦略がようやく腹落ちしてきているので、2021年度には具体的に展開され、減塩製品や低栄養に貢献する製品も発売していく。これにより、COVID-19の影響が落ち着いた時に懸念される単価成長の鈍化については打ち返していきたい。
(健康志向について、例えば旧Five Starsのインドネシアやベトナムなどでは、経済の成熟度からして実際に生活者のニーズがあるのか疑問。手ごたえはあると思ってよいのか、との問いに)
非常に手ごたえを感じてきている。これについては、20-25中計発表時に投資家の皆様からも確信が持てないというご意見をいただいたところ。これに対し、COVID-19の環境が追い風になっている。COVID-19対策で一番重要なのは免疫力を落とさないことと言われているが、これは食生活の面で言うと、メタボリックシンドロームにならない食事をするということと同義。特に旧Five Starsやその周辺国は塩分摂取量が非常に多い。これに対し手を打とうという動きが活発化している。ブラジルでは、塩分量が多く含まれた加工食品のパッケージには表示を促している。東南アジアにおいても、政府やWHOの関連機関を中心に同様の動きが醸成されようとしている。今年よりも来年はさらに大きなインパクトをもって受け止められると思う。
2021年12月に東京で開催される「東京栄養サミット2021」でも、栄養の改善が大きなテーマになる。また国連も食料システムサミットを計画しており、減塩の問題が取り上げられるだろう。このムーブメントはかなり強くなってくると捉えている。
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家庭内調理機会の増加が今後も続くと見ているとのことだが、その中で、当社の製品ラインナップは現状で十分だと考えているか。あるいは何かチャンスがあれば、今後増やしていくような考えはあるか教えてほしい。
リアル店舗については、アイテムを主力製品に絞り込み、主力製品による提案メニュー数を増やしていく等、効率良く販売していくことを志向している。一方、EコマースやD to C等については、チャネル開拓をしながらロングテール型製品の展開で、トライしながら走るスタイルにしたいと思っている。その中で次の需要を拾い上げ、ミドルマス、マスと展開する戦略でやっていきたい。
製品ラインナップを増やすという観点では、減塩タイプの製品や低栄養を補完するような加工食品、ここは強化していくことになると思う。
(つまりカテゴリー自体を広げたいという考えではなく、当社のノウハウやR&Dがすでにある分野で、自前で増やしていくという考え方でよいか、との問いに)
基本的に今の段階では、自前でやろうという考えである。
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冷凍食品について、追い風が来ているアジアンに集中してやっていくということで、20-25中計のKPIに対して改善の進捗が少し早いという印象を得たが、業績面ではポジティブとみて良いか。
冷凍食品が前倒しできているのは、COVID-19の影響でアジアンカテゴリーの需要がここまで増えてくるということを、中計では予想していなかったためである。一方、コモディティ化しているカテゴリーにおける需要はあまり変わっていない。ヘルシー志向が高まりアジアンカテゴリーに需要がシフトしていく中で、アセットライト化も確実に進めていかなければならない。
また、日本においては業務用の構成比がかなり高く、業務用の落ち込み方は米国よりも深刻である。業務用の効率化については、元々FY20-22のフェーズ1の中で改革しなければならないとしていた課題であり解決できていないと思っている。COVID-19の状況が落ち着いた際に、この課題に手を打てていなければ収益性が影響を受け、ROICにも影響するため、2022年度までの改革が必要である。
(今見えているトップラインの改善の加速は、2022年度の計画ROIC1%程度という目標に対しては上振れてはいるものの、2025年度の目標である5%を満たすほどインパクトのあるものではないという理解で良いか。との問いに)
それぐらいのスピード感と捉えている。ただ2022年度の目標であるROIC1%については、COVID-19による追い風で利益が増えたから達成するというのではなく、日本向けのサプライチェーンにもつながる生産体制の見直しなどGP構造の改善などを通して、最低限のものとしてクリアできるだろうと捉えている。
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北米の冷凍食品について。市場がコロナ禍で伸長している中、当社はシェアがきちんと取れているのかどうか確認したい。自社生産比率を下げOEMと組み合わせていくという話があったかと思うが、改めて説明をお願いしたい。
北米の冷凍食品におけるアジアンリテール市場はコロナ禍で想定以上に伸長しており、2020年度は36%伸長の見込み。それに対し当社のアジアンカテゴリーは15%程度の伸長と予想しており、シェアポジションが落ちてきているという課題認識がある。これに対しては第4四半期に生産能力の増強ができるので、2021年度に向けて巻き返しをしていく。これは単なる増産ではなく、イタリアンやメキシカンの中で一部コモディティ化した部分を、アジアンに転換していくという取り組みの中でやっており、アセットライト化も計画どおりに進むということ。
またOEMへの切り替えについては日本の話である。日本の市場では、伸びしろの大きい分野からコモディティ化した分野まで、カテゴリーによりかなり競争環境が異なっている。コモディティ化した分野についてはより高付加価値で、参入障壁が築ける分野にシフトをしていくという考え方。結果として自社生産が縮小され、一部はOEM化するという組み合わせでやっていく。
(北米については、自社生産比率を下げるというような計画ではないということか、との問いに)
そのようにご理解いただきたい。
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COVID-19の影響により、バイオファーマ・サービスは厳しい一方、5Gの到来により化成品ビジネスは非常に好調に推移しているという理解。2020年度下期、2021年度に向けてこれらのビジネスにおけるリスクやチャンス、当社の見方の変化について定性的な面で確認させていただきたい。
まず、今回上方修正した電子材料について。5Gに関わるデータセンターの拡大という大きなトレンドについては、半導体メーカーに通じるユーザーサイドの拡張が発表されており、来年度以降も続くのではないだろうか。一方、COVID-19によってベースラインが上がったものはPCの需要であり、これは一定の普及が進めば、PCからモバイル端末へと需要が変わっていく、あるいはサーバーの需要が増えていくと考えられるため、注視していく必要がある。
バイオファーマ・サービスの開発受託について。現状、医薬品市場は非常に活性化しており、医薬用アミノ酸の好調にもつながっている。一方、COVID-19のワクチン開発に大手製薬メーカーがかなりシフトしており、通常の医薬品の開発は遅れが出てきている。これはメーカーの開発の遅れとともに、認可を与える行政当局が現場に審査に入れないということが影響している。ワクチン接種が普及すると想定される中、2021年度は2020年度より良い状況になるのではないだろうか。
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電子材料事業の位置付けについて教えていただきたい。食と健康とは少し離れた分野であるが、重点事業に含まれている。向こう数年は、パッケージ基盤の大型化や多層化により順調な成長が見込まれると思う一方、やはり波の大きい業界なので、数年たつと業績のボラティリティも大きくなっていくのではないか。この事業は、当社として続けていくべき事業なのか。どこかのタイミングで切り離してキャッシュ化し、当社の本業に投資する資金づくりに充てるという考え方もあり得るのではないかと思うが、どうか。
化成品事業については、コロナ禍においても5Gやデータセンター向けサーバー用途の需要拡大の恩恵を受けている。当然、恩恵を受けているだけではなく5年後、10年後に向けて顧客との共同開発が進んでいる。よって数年でまたボラタイルに戻るのではないか、というご懸念にはあたらない。
当社の電子材料事業は、「Eat Well, Live Well」で言うとLive Wellに大きく貢献するものと位置付けている。ビジネスモデルについても、他のBtoB事業でも取り入れたいほどの高速開発の適応力が身についている。間違いなく、投資家や株主の皆様のご期待に応える、成長を牽引する事業として、2030年に向けて機能していくと考えている。
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中間決算説明会のスライド32ページ目に、有形投資約2,100億円、無形投資約2,100億円との記載があるが、この内容について教えていただきたい。
有形資産への投資は主に設備投資になるが、17-19中計の3カ年に比べると300億円程度縮小している。これは重点事業に集中する形で有効活用していこうという狙いである。
無形資産への投資では、R&D投資が約870億円、マーケティング投資が約940億円とほぼ17-19中計時と変わらない。ここに新たに加えたのがDX・新事業モデル開発・人財への投資であり、約260億円である。
また中間決算を受けて、期首に見込んでいた3か年の営業キャッシュフロー4,000億円超は実現できると考えており、上回った分はフードテックやDXへの投資を少し前倒しする可能性もある。
(R&D投資とマーケティング投資の内容は、今までと変わってくるのか、との問いに)
これらも全体として、より重点事業にシフトしていく。またR&Dについては新事業創造の部分にも振り向け、マーケティングについてはDXを推進しマーケティングROIの向上を図れる中身に変えていこうということ。
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株主還元について。当社の配当金は32円が続いており2020年度も同様との予想。今年、来年は構造改革費用等があることを考えると、増配は2022年度くらいまで待たなければならないか。あるいは今期かなり利益が出ると想定される中、それに合わせて増配も検討しているのか。
株主還元ポリシーは、中期経営計画でお約束したとおり。2020年度から2022年度までの3カ年の総還元性向50%超、単年度の配当性向40%については、死守していきたいと考えている。好決算の際には、配当にも反映していきたいと思う。
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グローバル食品企業の中には、気候変動との関連で植物性タンパク質をマテリアリティと置いている企業もある。当社は、植物性タンパク質についてどのような意識を持ち、取り組みもうとしているのか教えていただきたい。
気候変動の最大のテーマは、温暖化ガスではないかと認識している。たしかに肉類が大量生産・消費されることでCO2が大量に排出され、環境負荷を上げている。一方、植物性タンパク質を人間が食べることで、環境問題を全て解決できるわけではない。やはり原点である温暖化ガスを出さない、回収していくところに重きを置いて仕事をしていこうというのがわれわれの考え方である。
この部分において、TCFDのスコープ1、スコープ2については既に具体的な取り組みができている。工場で直接排出されるものは、できるだけ化石燃料からバイオマスのように再生できるものに変えていき、RE100につなげていく。スコープ3は、われわれが貢献できる重要な分野であると思っている。各国と地域によってサポートシステムが異なっており、エコシステムというような中に参画していくことでTCFDの目標をクリアしていきたいと思う。2021年度中には、具体的な活動と数値目標を開示する計画である。
(植物性タンパク質については、代替肉を含め成長ドライバーという位置付けで取り組みをされていくのか、との問いに)
植物性タンパク質は大きなマーケットになっている。当社は、代替肉等を扱う加工用のメーカーとBtoBのビジネスで関係性があり、現在、S&I事業で重要なビジネスになっている。植物性タンパク質の市場が拡大すれば、当社のBtoBビジネスにも大きな機会が到来するとご理解いただきたい。
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フードテックについて感じている大きな変化と、それをどのように業績に取り込んでいくかについて教えてほしい。
フードテックの展開については、2020年7月1日にチーフ・イノベーション・オフィサー(CIO)を任命し体制を整えた。以降、外部の方々との接点も持ちながら、ベンチャーキャピタルや、ベンチャー企業のトップとお会いしている。色々な情報交換をさせて頂く中で、食品産業の分野に非常に速いスピードでイノベーターが参入してきていることが分かった。統合型のアクセラレータープログラムについては、6月に募集を開始し148社からの応募があった。最終的には6社になり、今後は具体的な協業を模索するプロセスに入っていく。
大きく言うと3つの分野である。1つ目はアグリテック。例えば培養肉や植物肉のようなものが、大きな次のステージに移る。われわれのS&Iのようなビジネスとの接点を模索したい。2つ目はパーソナル栄養。普段の生活習慣の中で、疾病を未然に防ぐという分野に大きな余地が残っており、当社のアミノ酸技術と掛け合わせた時に非常に大きなソリューションを提供できると思っている。今アミノインデックスなどでパーソナルの状態は測れているが、誰にどのようなソリューションを提供すればよいのかが明確になっていない。ここがデジタル化によってよりクリアになっていくだろう。ビジネスをデザインする部分について、われわれのこれまでの知見では考えられないデジタルエンジニアリング、またデジタルデザイナーの活躍がある。フードテックのパートナーとしっかり組み、パーソナルな生活習慣改善という分野で大きな事業を作っていきたい。3つ目は製品やサービスをお届けするチャネルとコミュニケーションにおけるデジタル技術。この3つの分野については、接点を数多く模索していき、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)から少額の出資等も行いながら、一緒に開発を進めていきたい。
(パーソナル栄養は、当社がファーストムーバーとしてメリットを得られるとしたら、どのようなイメージか、との問いに)
われわれはアミノ酸の働きを食品に取り込み、製品とサービスで対価を得ていくことが得意分野であり、ここでしっかりと稼げる構造を作っていきたい。
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ガバナンス改革について。指名委員会等設置会社への移行およびサステナビリティ諮問会議の設置にあたり、社長が最も期待している変化は何か。
指名委員会等設置会社へ機関設計を変更するにあたっては、長期投資家やアセットオーナーの方々と2年ほど対話をし決断した。社外取締役が中心となった取締役会が、当社の成長についての見識を持ち方向性を示していくことで、最も力を発揮できるだろうというのが最大のポイント。執行は、その大きな方針に向かってしっかりと責任と権限を委譲され、CEOのもと一枚岩で実行していく。できなかった場合は責任を取る。取締役会では社内取締役よりも社外取締役の構成比が多くなるわけであり、それにより規律を持ち実行できるという点が良い点だと考える。
一方、社外取締役が社内のことをよく理解していない状態で進んでしまうと、執行との間に溝ができてしまうと思う。従って取締役会の中の信頼関係が非常に重要になるだろう。このような部分をしっかりと進め、取締役会の実効性を高めていきたい。
またサステナビリティ諮問会議では、当社が2030年以降もサステナビリティの観点でイニシアチブを取っていけるだろう領域を、社外のマルチステークホルダーの立場から取締役会に提言いただくことが非常に重要だと思っている。よって、取締役会に直結する形でこの会議体を設けた。
(機関設計の変更により、アセットライト化経営がより進むことも期待しているか、との問いに)
20-25中計は、2030年のあるべき姿からバックキャストして作っている。特にオーガニック成長とROIC向上を実行していくということが重要なプランになっている。従って今は、2022年度にグローバル食品セクターの平均値であるROIC8%を必ず実行するという強い意志で経営を進めている。これが新たな取締役会によりさらに加速が必要だという判断がなされた場合には、それに向かって執行がしっかりと責任を果たしていくことになるだろう。
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事業をグローバルで管理すべくセグメント変更を行うなど、当社は直近で色々なことを変えており、その中で会社の風通しが良くなっているように思う。おそらく過去から苦労してきた部分だと思うが、なぜ急に今良くなっているのか、コメントをお願いしたい。
風通しが良くなってきたかについてはこれからも見ていかなければならないと思うが、間違いなくポジティブな要素となっているのは、会社に対するエンゲージメントが高まっていることである。特にASVの自分ごと化のスコアが、昨年までは55%だったが、今年の調査ではこれが9%改善した。一方で、まだ36%の従業員が自分ごと化できていないという状態であり、ここには組織マネジメントの課題があるのだろうと捉えている。
ただ、改善に向けて動き出したのは間違いない。今年はASVエンゲージメントを高めるマネジメントサイクルとして、経営計画に対するCEOとの対話(計53回、従業員約3,000人を対象)、本部長との対話、組織目標の設定、個人目標の共有会を全組織で実施している。エンゲージメントの向上は間違いなく売上、利益、ROAの改善と高い相関関係にあるということは外部との共同研究で確認できているので、今後プラスの方向に作用すると考えている。
(従業員のエンゲージメントが高まってきて動き出したという印象なのか、あるいは経営層の動きが良くなってきたという印象なのか、との問いに)
一番大きいのは、全社員が個人目標のプレゼンテーションをしながらそれを経営陣も把握しているということ、つまりコミュニケーションが良くなってきたことだと思う。