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現在社長の頭を悩ませている事を3つ挙げて欲しい。
1つ目はESGの中でも地球環境への取組みは進んでいるが、社会的責任の分野が弱い事。そもそものポリシーと目標の設定に課題があると認識している。2つ目は収益構造が弱い事。為替はマイナス影響ばかりではないが、動物栄養は当社の見通しと実態に乖離が出ている。これは17-19中計の3年間で解決したい問題。3つ目は中長期で見た場合に日本食品事業を低成長を前提とした中でどの様に成長させるかという事。これは中期的なタームで取り組む。Pillarが足りないという問題に対しては、Five Stars以外の成長ドライバーを明確にしていく新中計になる。2020年以降はヘルスケア領域の貢献が大きくなると見ており、再生医療用培地や高分子医薬等への先行投資を行っている。これが次のPillarとして立ってくるだろう。
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動物栄養のスペシャリティの代表格である「AjiPro®-L」の業績貢献が当社の見通しと実績で乖離しているが、今後どの様に修正していくのか。市場との認識のズレをどの様に認識しているか。
2016年度の業績予想修正で損益ゼロを発表した。期首時点の見込みと乖離が大きい順にリジンの価格、為替、スペシャリティの貢献の遅れである。スペシャリティについては確かにスピード面で乖離はあるものの、着実に成長しており課題も明確。方向性としては間違っていないと思う。
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動物栄養の中国競合が今後も生き残る構造は今後もしばらくは変わらないだろう。その様な中で、中国市場環境をどの様に捉えているか。
2015年度、リジンの中国国内マーケットが初めて縮小した。今までは中国市場の2桁成長がグローバルのリジン市場全体の成長を支えていたが、これが変わった。現政権下での環境問題への規制強化も多分に影響しているだろう。中国が国として環境問題に積極的に取り組み始め、小規模農家(養鶏業・養豚業)の淘汰が急速に進んでいる。需要そのものは引き続き強いので、業者が集約され、大規模畜産化が進めばリジン市場全体は成長軌道に戻るだろう。今は縮小している市場で余ったリジン等が中国から欧州・アジアに溢れている。
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海外調味料・加工食品に関し、FY16の通期では現地通貨ベースでどの程度の成長を見込んでいるか。
修正した業績予想では、通期で7%程度の現地通貨ベースの成長を見込んでいる。為替影響を除けば増収は間違いないが、期待値よりは低い。苦戦しているのはタイ国内の競争激化とミャンマー等の周辺国向けの売上げ。ミャンマー国内は為替と偽物製品との競争激化が主要因。上期にタイの現地通貨ベースの成長率が初めて前年を割り、全体の成長率も低く見えている。タイ以外のFive Starsやそれに続く国は基本的に2桁成長を継続している。タイの影響の大きさや課題が改めて顕在化した決算であった。タイ国内と周辺国の課題への取り組みを強化する事で、将来的には全体で2桁成長に戻せると思っている。
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ブラジルの経済環境が厳しい中で、当社商品への需要に変化はないか。
値上げが通るか否かはインフレ率次第。ブラジルはインフレ率6%、最低賃金上昇3%程度が安定的に続いており、一定の値上げをするのが普通の市場。2016年度上期の現地通貨ベースの成長率34%はセグメント変更の影響もあり、実態は15%弱。2015年度は厳しい環境だったが、その主要因はBRL安と政情不安。今は不景気ではあるものの政情自体は安定しており、当社ブランドは深く浸透している為心配無用。
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長谷川香料社と共同研究している発酵バニリンに関し、なぜ市場においてナチュラルフレーバー志向が高まっているのか。また、ビジネスモデルとして当社はフレーバーを売りたいのか、それとも自社製品への使用で付加価値を高めたいのか。
香料に限らずナチュラル志向は欧米で強いが、顧客がそれを求めているという事だろう。グローバル大手の菓子メーカーや飲料メーカーも合成系フレーバーを使用しない方針を発表している。合成フレーバーがゼロになるとは思わないが、特に食品用途であればこのトレンドは強くなると見込んでいる。バニラフレーバー市場は2020年に3,400億円規模で全体の約20%を占めると見込まれる最大領域。現状はその90%以上が合成で生産されており、天然のバニラビーンズからの抽出は数%しかなく非常に高価。発酵で生産されたバニリンは市場にほとんどなく、ユーザーからも強い関心が寄せられるだろう。また、生産したものは当社のコンシューマー商品にも使用していく。新興国では既に数多くのフレーバーが使用されているが、現在は社外から高品質なものを購入している。自社生産が可能になればキャッシュアウトは防げる。更に、BtoB事業で天然系調味料や酵素製剤と組み合わせる事で、自社製品の強化に繋げる。美味しさソリューションに資する素材を増やす事が開発の基本方針である。
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タイ国内の飲料事業をどの様に立て直すのか。納得感のある説明をしてほしい。
飲料はタイの基盤事業の1つであり、心配をお掛けして申し訳ないが巻き返しは可能だと思っている。タイのコーヒー事業は缶コーヒーから始まりそこから粉末になった。主力の「Birdy®」はブランド力も強くトップシェアだが、ネスレ社等と激しく戦っている。今まではAGF社の技術を導入出来ず独自で生産技術を磨いてきた。コーヒーの抽出技術や、3in1タイプにおいてはミルク成分も大事になる。AGF社は「マリーム」の様な粉末ミルクに関する技術を持っており、その技術を活用して美味しさを強化していく。
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低成長の国内において、収益性を強化する上でのボトルネックは何か。また、その 解決の為にどの様な取組が必要になるのか。
日本の食品のコアは調味料。人口が減ればトップラインが伸び難いのが原則だが、収益性高いので大事な事業である。「鍋キューブ」の様なニーズに応える製品で対応している。当社はその調味料の構成比も多い為、日本の食品メーカーの中でも成長率が低く見えてしまう。冷食食品は順調に推移している。組み合わせなので一概には言えないが、トータルでの成長率が低いのは調味料が多いからであり、今後は冷凍食品や加工食品の強化で改善していく。外食、中食事業も調味料は伸ばし続けている。この市場は今後も成長が期待出来るので、注力している。意図的にポートフォリオを組み替えている訳ではないが、構成比は変わってくるだろう。(国内食品の成長率が低いのは事業構造の問題であり、市場全体は堅調か、との問いに)Yes。低成長の調味料が主力なので当社の成長率が小さく見える構造は変わらないが、収益性の強化についてはバリューチェーン全体で図っていく。(バリューチェーン全体の課題とは何か、との問いに)大きくは生産設備の老朽化、物流体制の非効率、バックオフィスの分散という3つの領域。
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過去数年間でM&Aが活発になっているが、その背景にあるのは現地への権限移譲の効果か。
M&Aの基本方針は本社で決済するが、そのアプローチは現地からも始めている。一定の権限を現地化する事で相手企業をよく見られる様になり、パートナーとして選定する相手の質が高まってきた。
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ASVという概念の社内外への浸透をこれから強化していくが、当初想定していなかった副次的な効果はあるか。
ASVという概念はマイケル・ポーター氏が提唱したCSVに基づくが、今は導入しただけと言う段階。ASVという概念を大きくしていくには、財務目標と非財務目標の両方が成長する様に様々な目標を設定して運営していく必要がある。現在は目標設定の仕方を変えていくという内部的な活動の段階で、対外的なコミュニケーション手段として活用するのは17-19中計以降になる。ビジョン実現の為の戦略として詳細を発表するのは17-19中計になる予定で、実際に価値を生むのも中計期間中になろう。
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動物栄養の構造改革について医薬や甘味料の事例を鑑みると、合弁という可能性もあると思う。その場合、当社の技術を合弁先にも出す必要があると思うが、その事へのリスクをどの様に考えているか。
方針としては、コモディティの価格変動への対策として、合弁や提携も可能性として排除せずに検討するという事。但し合弁や提携は、技術の漏えいリスクを徹底して排除出来る場合しか行わない。その基本ポリシーは変わっていない。
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ミャンマーにおける打ち手として商品パッケージの変更を挙げているが、それで根本的な解決になるのか。改定後のパッケージも偽物が登場してしまうのではないか。
ミャンマーにおける「味の素®」ブランドの浸透率は極めて高いが、市場に流通しているうま味調味料の半分以上が偽物の「味の素®」。それを正していく為にはパッケージ変更だけでは根本的な解決にはならない。2017年9月には現地工場が稼働する予定だが、それによって実際に進出する事で行政や監督機関との協力体制が強化出来る。現状の様に輸出だけして現地のディストリビューターにお願いしているだけでは弱い。この点は進出によって大きく変える事が出来る。
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当社は海外食品事業では独自に販路を築き事業拡大も実現してきた。しかしアミノサイエンスの領域では画期的な技術開発をして華々しく発表しても、結局その後競合との価格競争に負けてきた印象がある。コモディティの開発まででなく、マーケティングまで考えると、まだまだ課題があるのではないか。過去の反省なく動物栄養の構造改革を実行した場合、今後も同様な事が起こってしまうのではないか。これから香料の世界に入ろうとしている中、この事業は同じ結果にならないと言えるか。
BtoBのマーケティングはソリューション力だと思うが、今思えば過去シェアを追いかけた戦略が現在では通用しない。今はその反省を活かし、マーケティング力をソリューション力と置き換え、例えばアミノ酸のBtoB事業では製薬会社の創薬段階から入り込んでいく形に変えている。今後の大きな出口になる可能性があるのが高分子医薬品。もう1つは培地。例えばiPS細胞用培地は京都大学のラボ段階から参画させて頂き、他社が入り込む隙間を作らない。また、香料はスペシャリティ素材としておいしさライブラリーを拡大する目的と、香料メーカーが得意なソリューション力のノウハウを得ると言う2つの目的がある。現状はMSGの顧客や過去からの関係性でグローバル食品企業のキーアカウントとはコンタクトが取れる為、当社がソリューション力を強化出来れば大きな成果に繋がる可能性がある。素材そのものの生産量が多ければ多い程あっという間にコモディティ化するという事を反省材料にし、そうでないビジネスモデルを構築している。香料についてはもう1つ、自社の原料として使用する事で商品の付加価値を高める事も出来る。香料と言ってもフレグランスは全く考えておらず、あくまで食品用途のナチュラルフレーバーを目指しており、既に選択と集中を行っている。
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グローバル食品メーカーTOP10クラス入りを掲げているが、他社の成長や新興勢力の台頭も想定され、相対的なポジションは目標として分かり難い。より絶対的で分かり易い目標を掲げた方が好いのではないか。
グローバル食品メーカーTOP10クラスが分かり易く象徴的に示しているが、17-19中計においても現状同様定量目標は設定する。例えば利益の額、率やROE、成長率等である。また、数値化出来るESG目標の設定についてはグローバル大手と比べて当社は目標設定が出来ていない。唯一環境面は高い目標掲げており進捗も上回っているが、それだけに留まっている。財務、非財務の両方の目標を掲げ、それを追いかけていく。当社のクライテリアも明確にする必要があり、その意味でトップはネスレ社だと思っている。アルコールや飲料、穀物メジャーやエリア限定の巨大企業は含まない。ネスレ社、ユニリーバ社等が当社が目指す姿である。IFRSで考えると、事業利益で1,500億円あればTOP10に入ると思っている。
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今後の設備投資計画。海外の横展開を強化すると営業キャッシュフローを使用する事になるが、どの程度の投資をイメージしておけばよいか。
現中計においては、毎年1,000億円のフリーキャッシュフローがあり、600億円を設備投資に振り分け、400億円を株主還元に使用してきた。17-19中計においても、同様の数値目標を設けるつもりである。営業キャッシュフローは毎年1,100~1,200億円程度で推移しているが、それをベースに設備投資に振り分けていく。足元はウィンザー社の工場再編等の投資が必要な為、単年度の設備投資が600億円を超える可能性があるが、基本は単年度当たり600億円程度をベースにしつつ、戦略的に必要な投資は行っていく。
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現状、社外取締役の機能は十分果たされているか。課題があるとすれば、どの様な解決策を考えているか。
コーポレートガバナンスコードの基本原則に則り、取締役会が機動的に動けるかという観点ではまだ課題がある。社外取締役は11名中3名で、比率については改善の余地がある。株主総会でも報告しているが、社外も含めた全取締役、監査役にアンケートを取ってコーポレートガバナンスコードの推進等観点で課題を挙げてもらった。それを第三者に評価頂き、取締役会の課題は整理出来たので現在取締役会改革として着手している。来年度すぐに委員会等設置会社への変更等はないかも知れないが、様々なガバナンス体制の変更に向けた機関設計を進めている。株主総会での決議事項なので17-19中計の発表時点では確定はしないだろうが、確実により好い体制の構築に努めている。
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今後の月次情報の開示について、12月初旬より飼料用アミノ酸3製品の当社推定単月平均販売価格をホームページ上に開示するとのことだが、コモディティの状況に海外投資家が過敏に反応し、株価が翻弄される展開にならないか心配。開示は素晴らし事だが、コモディティばかりを強調するのではなく、スペシャリティの取り組み状況も分かる様に創意工夫をして頂きたい。長期で株式を保有している投資家にとってはその方が親切なのではないか。
飼料用アミノ酸の販売価格変動による業績へのインパクトは大きく、投資家・アナリストの関心も高い為、公開する事となった。一方でスペシャリティの取り組みも重要と考えており、決算説明資料等での開示の仕方については検討していきたい。
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MSGは様々な捉えられ方をされている。例えば大手即席麺メーカーは米国で販売している即席麺をNon-MSGすると発表した。Non-MSGという事がマーケティングの切り口としてナチュラルで好い事だと捉える消費者もいる。国内の食品メーカーの中にも、国内ではMSGを使用し、海外では異なる切り口でマーケティングを展開しようとしている。この様な動きについて、当社はどの様に対応していくのか。
MSGの安全性については米国FDAや欧州からも問題が無い事が公表されている。但しこの情報が広がっていかない様々な障害がある。これに対して二つの側面から申し上げる。一つは、国際的なうま味に対するNGOの取り組みである。うま味調味料に関わるメーカー代表が参加し、アカデミアの先生達でKOL(Key Opinion Leader)を形成したグローバル組織(IGTC)がある。こういった第3者を通じてアプローチをしていく。もう一つは、当社が直接取り組んでいる事として、リオオリンピックや、年1回世界中のアカデミアが集まる栄養学会等の国際的な集まりを通じて、日本食・だし・うま味・MSGの情報発信を積極的に行っている。日本や欧米への一般消費者に対するPRについては、次期中計で強化していく。
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海外調味料・加工食品について頭を悩ませている。2016年度上期時点で現地通貨ベースの成長率は104%となっている。次期中計では再び10%成長を目指すと掲げると思うが、今の状態で10%を目指すと言われても現実味が無い。具体的に10%に戻す為に何が必要なのか。飲料は儲かってはいるが差別化された商品ではなく、ネスレ社と戦って差別化を図れるかはっきりと分かっていない。粉末飲料もトップシェアでない中で10%成長のシナリオをどう描いていくのか。
前提として海外調味料・加工食品の2016年度通期見通しは現地通貨ベース成長率で約7%としている。タイは2016年度上期までは前年割れとなっているが、今期中に数%戻すと見ている。そこをスタートラインにして、次期中計を組み立てている。基本はうま味調味料や風味調味料であり、補完する形で伸長しているのがメニュー用調味料である。また、飲料等のローカルコア商品については強弱がある。中間所得層の増加により、右肩上がりに伸びている市場に対して、商品ポートフォリオをどれだけ加えられるかが重要となる。タイについては飲料が苦戦し、周辺国のミャンマーにも問題が出て来ているが、一つずつ潰していく。この方針に変更は無い。
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2016年度中間決算説明会時の社長資料P11はうま味調味料・風味調味料ともに市場は殆ど伸びていないように見える。頑張ってはいるが、うま味調味料、風味調味料の二つマーケティングだけでなく、伸びているメニュー調味料にもっとシフトしていくべきではないか。
資料には主要な商品だけサマライズしている。海外調味料・加工食品事業の中でタイは最も大きなポーションとなる。ブラジルはV字回復、インドネシアとベトナムは2015年度同様に15%近い成長、フィリピンは2015年度と比べ多少陰りを見せ一桁半ば成長となり、タイは課題があるという状況である。タイはラーメンや飲料等、他の地域には無い商品を揃えてこの規模になってきた。よってタイを再度浮上させる事が目下の課題となっている。インドネシアやベトナム、ブラジルはまだフルラインナップではない。従ってこれらについては商品ポートフォリオを広げて、現在の販売チャネルの強みをフルに使用していきたい。タイ周辺国のミャンマーについては現地通貨ベース成長率が対前年約13%減と落ち込んでいるが、2016年に設立したミャンマー味の素食品社でダイレクトに現地生産・販売を始めていく。これにより偽物も減少させていく。次期中計では味の素ウィンザー社(以下、AWI社)、トルコのキュクレ社およびオルジェン社、アフリカのプロマシドール社、更に100億円近い規模となりつつあるペルー、マレーシアの基盤等を含めた展開をしていく。14-16中計ではFive Starsを中心として皆さまと対話を重ねてきたが、17-19中計からは準コアとなる国についても情報開示を進め、補完関係が出来ている事を説明していきたい。
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長谷川香料社とは想定よりも早く2017年度に工業化をする印象。香料事業は過去から非常に関心が高かったと思うが、バニリン事業は将来的に面白いビジネスになると考えているか。
バニリンについては、現時点で90%以上が合成法でつくられ、値段も安い。一方で天然フレーバーは非常に高価でごく一部の企業でしか作れない為、各社その天然フレーバーを取り合っている状況。当社はまだ事業設計は出来ていないが、現在は工業化の段階であり、ラボで作ったものと同じ収率で生産できるかはこれからのテーマとなる。ナチュラル発酵フレーバー事業の展開に向け、長谷川香料社と提携したが、バニリン以外も2つ程、同じ様な方法で生産できるものが出来てきている。出来ればこの3つを事業化したい。長谷川香料社と一緒にモノづくりした事で想定よりも早く工業化段階に進めたのだろう。ここで見えてきた事を核にしながら、どの様にこの事業を広げていくのか戦略を立てている。これまでの様な大がかりなM&Aの一本攻めだけではなく、戦略の選択肢が広がったと思っている。決算発表時に公表したのは、進捗状況を公平に発信したかったからであるが、香料業界からも反応があった。
(ある企業より合成法で作るリグニンバニリンは余っており非常に安いと言っていたがどの様に捉えているか、との問いに)ネスレ社等のグローバルBIGは、合成法で作った香料を使用しないと米国で発表した。今後、変化が出てくると思う。 -
決算説明会時には2020年以降の姿を前倒しにしていきたい、2019年度では営業利益1,300-1,400億円程、さらにその上を2020年度に達成する事を目指していると言っていた。加えて営業利益率は10%と志高い目標を目指している様だが、この考え方は合っているか。
その考え方で17-19中計を作成している。もちろん、オーガニック成長に非オーガニック成長を加えないと達成は難しい。
(2020年度営業利益目標1,500億円はアグレッシブで楽しみだが、かなりM&Aも大がかりになるという理解で好いか、との問いに)Yes。 -
14-16中計の目標の中で大きく掲げているグローバル食品企業トップ10クラス入りについて、2019年度頃にはその状態になっていたいとイメージをしていると思うが、何故グローバル食品企業トップ10クラス入りをわざわざ目指すのか。
営業利益1,500億円というのは利益額だけでなく、利益構造や株主還元をする上で必要な水準だと考えている。また、事業の継続性としての再投資の観点では、食品とアミノサイエンスの中のヘルスケア、例えば先行投資をしているアルテア社や培地関係の事業はM&Aだけでなくオーガニックな投資もしていく必要がある。そうしなければ2020年度にM&Aによってギリギリ目標利益に到達しても、その後の安定的な伸長は見込めない。食品への成長投資と、2019年あるいは2020年に必要となってくるであろう培地やCDMO*事業への投資を賄っていく事を考えると、1,500億円の利益水準に到達しておきたいという想いがある。社内で同様の質問があった際は、食品とアミノサイエンスというユニークな分野で、両方持ちながら持続的に成長していく為には、この利益水準が必要と説明している。
* CDMO = Contract Development & Manufacturing Organization(開発・製造受託会社)の略。 -
AGF社との海外を中心としたシナジー効果について教えて欲しい。
課題である「Birdy®」3in1については、技術交流がスタートしている。これにより原材料コストを抑えマーケティング原資を生み出していく。例えば、AGF社のクリーミングパウダー技術を加える事。乳は食品としては高い原料となるが、この技術による大幅なコストダウンや、香りを良くすることで美味しさを向上する事で、粉末飲料を強化し、両社のシナジー効果を発揮できるのではと考えている。
(タイでの生産シナジーはこれからなのか、との問いに)タイで「Birdy®」3in1を展開しているが、現在AGF社の技術は一切入っていない。
(AGF社の技術を入れる事で、美味しさや生産コストを改善し、そこで生まれた原資を投入し、製品アピールを高めていくといった良い循環が出来ると理解して好いか、との問いに)Yes。また長谷川香料社とフレーバー技術の開発を行っているが、海外は日本と異なりフレーバーをアレンジして使用している。これは調合の技術となるが、当社はこれまで持っていなかった技術。今後長谷川香料社との取り組みで導入していく事ができるだろう。今は欧米のフレーバーハウスから調達しているが、将来的には自前に置き換えていきたい。美味しさの基本五味と香り等のテクスチャーを含めて美味しさのライブラリーと呼んでいるが、これを日本でどんどん強化して、コストダウンと商品強化に繋げていきたい。 -
海外冷凍食品については、2016年度はAWI社でSKUの見直しを実施している。2017年以降に非常に期待しているが、現状あまり見えてこない。本事業の取り組みについてアップデートして欲しい。
AWI社は全体の約17%のSKU削減を行い、2016年度上期末時点で総SKU数が約1,100となっている。不採算商品の整理と同時に、冷凍米飯や冷凍ラーメン等の商品強化に取り組んでいる。それにより2016年度通期は現地通貨ベースで4%増収、営業利益二桁以上の成長を見込んでいる。味の素冷凍食品社のノウハウを導入したKAIZEN活動の推進が効いている。また、日本食・アジア食カテゴリーに含まれる「TAIPEI」ブランドは、味の素冷凍食品社のモノづくりの技術で、品質改良し価格を上げる仕事をしている。
(SKUの削減を除けばもっと伸長していたのか、との問いに)Yes。但し皆さんが期待しているスピードで収益を二桁位の成長をしていくためには、約17%のSKU削減では不十分である。老朽化した工場で生産している商品もあり、新しい工場に寄せていく構造改革が必要である。これらについては、計画通り着手している。ただし、業績成長が見込めるのは2018年度からとなるだろう。
(売上高、営業利益共に2018年度以降伸長するのか、との問いに)営業利益はKAIZEN活動やアイテム整理、「TAIPEI」ブランドの様な改定をしっかりやっていき、冷凍米飯は2016年6月、冷凍ラーメンは10月から販売している。これらによって2017年度は丸々増収に効いてくる事から、営業利益も二桁成長を維持したいと考えている。構造改革が全て終わると増収率4%ではなく、もっと上がってくるだろう。
(力を入れている日本食・アジア食カテゴリーの伸長率は引き続き強いのか、との問いに)日本食はこれまでポートランドにある旧味の素ノースアメリカ社でしか生産していなかった。そのため日本食を全米に配荷する力がなかった。冷凍米飯については漸く2016年6月から全米へ配荷できる生産能力を持った。
(「TAIPEI」ブランドの品質改良を行ったということだが、味付けを改良したのか、それとも調理法自体を改良したのか。競合する他社が当面キャッチアップできない品質向上なのか、との問いに)「TAIPEI」ブランドの改良はこれからを予定している。米国市場にも米を加工した商品が沢山流通している。AWI工場の様に、工場内で米を炊き上げてフライパンの上で炒飯にする製造法で作る企業は1社もない。他社は米だけを作る専用の企業から冷凍の米を調達し、具材を混ぜるだけで、炒める工程は入っていない。従って、美味しさの差は歴然だといえる。いつまでも競合が参入してこないという訳ではないが、当社はブランドを付けて、ファーストランナーとしてブランドとセットで市場に定着させていく。これらの製造方法は日本の冷凍食品会社の差別化ポイントとなっている。 -
国内の冷凍食品の市場が非常に強い。当社は一桁半ばであるが、中には二桁成長している企業も出て来ている。この市場の変化についてどの様に考えているか。
弁当品市場は縮小傾向、一方で食卓品市場は伸長している。これにより家庭用は堅調に推移している。食卓品市場が好調な要因の一つは、単身世帯・二人世帯等が冷凍食品を購入する機会が増えているからである。また、ディストリビューションが広がっており、CVSやドラッグストアでも展開している。10年前冷凍食品の家庭用責任者をしていた頃は、圧倒的にSMの4割、5割の値引きウェイトが大きかった。丁度そのタイミングでセブンイレブン社が初めて冷凍食品を開始。現在はCVSの冷凍食品の売り場は定番化している。それにより、単身者や夜遅くまで働いているお客様が4割、5割値引きではない商品を購入する機会が増加した。CVSやドラックストアは住居が沢山ある半径2km商圏や地方都市に出店し、今まで車がなければ買い物に行けない方々の購入機会も生んでいる。更に単身向けの商品開発が後押ししている。
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アフリカのプロマシドール社を今後、連結子会社化していきたいと言っていたが、実際に話しは進んでいるのか。また、プロマシドール社と既存の当社のアフリカ事業とのシナジー効果について、特にトップラインがどの様に効いてくるのか教えて欲しい。
連結子会社化について、話は進んでいない。契約の中で謳われているという事でもない。検討していきたいという事。彼らの強みは粉ミルク、粉末ジュース、キューブタイプの風味調味料である。これらの商品には当社の技術ノウハウを活かす事ができる。また、当社のナイジェリア事業は一部風味調味料を展開しているものの、大半は「味の素®」である。よって、先方の事業とは喰い合いにならない。ナイジェリアの事業は二つの会社を一年間程かけて統合しようと考えている。実際にどの程度の価値になるかはこれから試算していく。ナイジェリアは現在厳しい外部環境となっているため、よりコンパクトにして、シナジーを創出したいと考えている。
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決算説明会の中で、次期中計は営業利益率10%を目標に掲げ、それを目指す上で国内の生産や物流等の改善をしていきたいと言っていたが、具体的な取り組みについて教えて欲しい。また、現在取り組んでいる働き方改革は、今後当社の利益にどの様に寄与していくのか。
国内再構築の考え方としては、かつて大量生産のために作られた古い生産設備がまだ沢山残っている。それを集約し、より効率的でオートマチックな人手の掛からないラインに切り替えていく事で、GP率を上げていく。物流に関しては当社と5つの食品メーカーが集まり、共同配送・共同保管を北海道で2016年4月から取り組んでいる。これを段階的に強化していく。物流は、お客様へ商品を届ける際、長時間待つといった非効率が何割かあるので、6社が組む事で是正をしていこうとしている。次期中計より数字に反映出来るようにしていきたい。働き方改革については、時間短縮した分、残業手当が浮くといった考え方は計画に織り込んでいない。これを条件にすると働き方改革に繋がらないと考える。効率的な働きが出来る様、先ずは整理をしている。そして働き方が変更出来る様な仕組み作りに着手している。有休取得が高くなることで従業員の健康状態がよくなり、パフォーマンスに反映していくだろう。定量的には現在約2,100時間-2,050時間程働いているが、2020年度頃には1,800時間を目指していく。