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ASV経営を強化にしていくには、社会価値・経済価値どちらも強くしていく必要があるが、アナリスト説明会では経済価値にどれだけ拘りを持ってコミットしているのかあまり理解出来なかった。当日は社会価値の説明に時間を割いていた印象。過去の当社の中計は非常にきれいな計画を出すが、殆どKPI目標をやり切った事が無い。その中で、2017-2019中計(以下、本中計)では経済価値にどれ位の拘りを持っているのか。
中計資料のP.3にある2014-2016中計(以下、前中計)のレビューに込めたメッセージは、スペシャリティで稼げる構造を作ってきたという事。中計はFY13からスタートしているが、その前には単体の赤字を経験している。ここから900億円近くをスペシャリティで稼げる構造に変えてきた。残念ながらまだ課題が残っている為、前中計では目標に対して約100億円ショートした。これは動物栄養事業が影響しており、抜本的な構造改革を進めていく。本中計は手堅い計画にした。やらなければならない目標は非常に重いため、一部全てを計画に織り込めていないものもある。非財務目標については、全く例がない新しい目標だった事から説明にかなり時間を割いた。アナリスト説明会の内容をレビューする中で、財務・非財務を統合して計画を作っているが、ボリュームがかなり増加したので、今後は財務・非財務を分けて説明をしていくか、非財務のスモールミーティングを設定し別途発信していく事が必要だと考える。財務目標と共に、非財務も出来る限り定量化して方向性を示し取り組んでいく事は日本の会社の中では画期的だと思う。但し大きく胸を張れないのは、グローバルトップ10に名を連ねる企業は、この取り組みを最低10年以上取り組んでいる。従って、海外事業でグローバルトップ10に入る食品企業と戦うと、当社の取り組みが非常に遅れている事を痛感する。これは企業価値や時価総額のポジショニング以上に感じる。謙虚な気持ちでスタートしたい。
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事業利益を毎年100億ずつ増やすという計画に見えるが、設備投資は先行投資として早い時期に行うのか。ヘルスケアセグメントは60億円の大幅増益計画となっているが、毎年20億円ずつ増益していくイメージなのか、或いは最終年度に纏めて利益が出てくるイメージなのか。
本中計の前提為替が毎年一定であると仮定した場合、毎年100億円ずつ事業利益が増加していく計画と考えている。FY17は設備投資など先行投資があるので増益幅は若干小さいが、100億円の増益から大きくずれることはないと思う。詳しくは本年5月に説明する。
ヘルスケアセグメントの内、医薬用・食品用アミノ酸は安定的にオーガニック成長をする前提の計画であるが、中高分子医薬の受託事業は前半の伸長は小さいものの後半に向けて尻上がりに伸長していく計画。この事業は開発段階から医薬品会社と一緒にやっており、臨床試験の段階でドロップするリスクはあるものの、治験がうまくいけば上市の段階では他社に置き換わるリスクはない。アルテア社は高分子医薬の伸長の可能性を、ジーンデザイン社は中分子医薬(オリゴ核酸)の伸長の可能性を感じて買収した。
(製薬カスタム事業の売上約400億円の中に、中高分子事業の売上が入っているのか、との問いに)Yes。 -
現グローバル食品企業トップ10クラスと比較すると、利益率の低さが当社の課題であるが、その要因と今後の改善策を教えて欲しい。
事業別に整理すると、日本食品はVCの各段階での更なる効率化を行う。海外食品はトップライン成長とGP率改善。特に苦戦の続くタイの回復に早急に取り組む。動物栄養は先般よりご説明の通り抜本的に構造を変える。ヘルスケアは前中計で先行投資してきた医薬用・食品用アミノ酸や先端バイオ、培地等が利益の刈り取り時期になる。
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キャッシュの創出力について伺いたい。本中計説明会において、営業キャッシュフローの伸長は事業利益の伸長に比べ保守的に見ているとの説明があったが、現時点でトップライン伸長に合わせた運転資金増加という保守的前提にしている理由は何か。また、計画通り目標利益が達成できた場合、どれだけ営業キャッシュフローのアップサイドがあると考えられるか。
本中計は、従来の中計とは全く違う設計にしたかった。33,000人のグループ従業員の求心力となるような計画にする為には財務数値目標だけでは不十分と考え、非財務目標も設定。また事業毎にROA目標を設定し、キャッシュコンバージョンサイクルの改善導入をした。ここまでに18カ月間を要した。3カ年の営業キャッシュフローの目標を3,500億円とし、トップライン伸長に合わせ平行的に運転資金を増加させたが、キャッシュコンバージョンサイクルによるキャッシュフローの改善まで計画に織り込む事が出来なかった。在庫削減など資産効率化の取組みを図れば、ざっと300億円ぐらいの改善は期待出来るのではないかと推測している。
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欧州では「味の素=MSG」となりイメージが悪い。その様なイメージ払拭を含めた、グローバルな広報活動をどの様に考えているか。
これは当社が創業以来向き合ってきた課題であり、小手先でごまかせるものではない。本中計においては当社およびMSGに対する誤解を払拭する為の取組みに注力する。世界的な和食ブームもあり、おいしさや出汁の有用性は伝わっていても、それがMSGとリンクしていない。社会学的にもなぜMSGのイメージが悪くなったのかを紐解き、米国から訴求活動を始める。コーポレート費用の増加要因としても見込んでおり、徹底的に取り組む。また、現在の当社ロゴは母音が5つで外国人には発音が難しいので、彼らでも発音し易く印象に残り易い新たなロゴを検討している。
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M&Aの考え方を確認したい。ウィンザー社の様な地域ポートフォリオ拡大が続いているが、過去の成功体験が必ずしも通じない状況で上手く現地をマネジメント出来るか。他社においてはM&Aで進出した地域が上手くいかず、撤退となった事例もある。
M&Aは100%成功するものではないと思っている。当社も過去失敗を重ね、そこから学んできた。M&Aの対象は絞っており、前中計中にアフリカ、トルコ、パキスタン、インド等の途上国で販売チャネルを手に入れた。事業拡大の足掛かりが出来たので、本中計中は基盤構築に注力する。一方Five Starsにおいては更なる成長の為に必要な事業や技術があればM&Aを行う可能性はある。欧州においては今でも足掛かりを探している。なんとしても販売チャネルを獲得したい。今は自前で冷凍食品を販売しているが、拡大の為には販路が必要。M&Aの対象としては、おいしさソリューションの領域もある。キーアカウント向けの商品設計力であり、今後は日本のモデルを海外展開していきたい。また、バイオ医療周辺領域も対象になる。これまでもアルテア社とジーンデザイン社を買収しており、先方は事業拡大資金を、当社はパイプラインを手に入れた。両社とも、高分子および中分子の領域では世界トップ3に入るレベルのパイプラインを有している。非常に環境変化が速い業界なので、更なるM&Aはあるかも知れない。
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本中計に、コーポレートブランド価値の向上をKPIに入れたのはとても面白い試みであると思っているが、これを向上させていくには具体的に何をやれば好いのかが解り辛いので説明願いたい。また、インターブランド社のブランド価値評価を見ると、海外企業のブランド価値は時価総額の30~40%もあり、また日系企業でも同10%以上あるが当社は5%に過ぎない。この要因をどのように捉えているのか。
先ずインターブランド社を選んだのはグローバルで評価しており、20年近くの価値算定経験があったからである。評価は3つぐらいのパートから構成されており、財務指標もその1つである。当社はFY16業績予想を対前年減益で公表したが、その後に発表された当社の2016年のブランド価値は前年から下がらず、逆に上がった。これは価値算定に当たり財務指標だけでなく、ステークホルダーの評価や海外で「味の素®」ブランドを介した事業が伸長した事などを考慮したからではないかと推察している。
当社は80%が食品、20%がアミノサイエンスで構成されているが、この2つの事業活動がブランド価値を生み出す事をもっと積極的に伝えていく必要がある。FY20の事業利益の目標である1,370億円をスペシャリティからの利益のみで達成できれば、1,500百万ドルのブランド価値の実現は可能であると思っている。 -
インターブランド社のブランド価値評価において、欧米地域の占めるウエイトが大きいと聞いている。当社のブランド価値が財務的価値に対して低い水準に留まっているのも、欧米展開の弱さに原因があるのではないか。欧米戦略をもっと明確な骨太のものにする必要があると考える。今後の欧米戦略の展開はどうか。
ご指摘の可能性はあると思う。まずは味の素ウィンザー社で商品コミュニケーションだけではなく、“AJINOMOTO“ブランドを冠した活動を強化していく。「UMAMIプロジェクト」をアメリカでキックオフする。アメリカを発信源にしないとブランド価値が上がらないと考えている。
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「UMAMIプロジェクト」の具体的な内容を押して欲しい。
生命科学と社会人類学の2つのアプローチで進める。アカデミックな活動は粘り強く継続しており、活動内容は「味の素」の安全性から有用性へと進化している。これではMSGに対するネガティブな考えは払拭できない。MSGに対する誤解を生んだ歴史を紐解き、アメリカの著名な社会人類学者と生命科学の先生と一緒にアメリカでフォーラムを立ち上げる予定。ロビイングに繋げていく。また、これらをサポートするものとして、うま味を知り、日本食および各地のソウルフードを通じたうま味を体感する活動を考えている。北米をきっかけに主要な国々で展開していく。
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ブランド価値向上が想定通りの20位内、もしくは想定以上の10位以内になった場合、当社は社内外でどういう変化を上げるのか。非財務価値向上が相乗的に財務価値向上を促進することになるが、どういう効果が出ると考えるか。
コーポレートブランドをさらに高める広告に集中することで事業が効率化していく。各グローバル企業がやっている。商品広告より企業広告をすることで、社会になくてはならない存在だと示 している。今後を考える時、永続的に事業を続けていく中で、世代交代がおき、価値観も変わってくる。一般的にミレニアル世代(35歳以下)は売上・利益規模といった財務指標だけではモチベーションが上がらない。自分がどれだけ社会課題解決に貢献しているかを大事にしている人が増えている。アメリカもフランスも同様。FY20以降、彼らが会社の担い手になるまでにブランド価値が上がっていれば、いい人財も引き込める。財務基盤強化にもつながっていく。サステナビリティの観点で、社内外で意味がある。
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代表取締役3人体制にする意図は何か。
人事異動的な意味に加え、ガバナンスをより強化し、取締役会をコンパクトにしたいと思っている。事業本部長にも事業の責任者として代表権を与える。社内はトロイカ体制を実行していく。
(事業本部長が代表権を持つ事で、具体的にどの様な変化があるのか、との問いに)元々事業本部長として一定の決裁権を持っていた。代表権の有無で決裁権自体は変わらない。しかし社内外への 責任は明確になる。また、海外においては代表権の有無は大きな意味を持つ為、スピード感が早まるだろう。
(利益を出す事へのコミットメントが高まるのか、との問いに)元々事業の責任者であり低くはないが、少なくとも意識はより強化されるだろう。 -
当社は積極的に働き方改革を進めているが、従業員の働きがい向上に繋がるシステムはあるのか。また、人材育成の仕組みを本中計中に改めるのか。
従業員の働きがいを図る為の調査をグローバルで展開する。味の素(株)単体では過去10年間隔年で行っており、前回の調査では働きがいがあると回答したのは78%。グローバルに全従業員約33,000人に展開すると、恐らく大きく下がるのではないか。まずはグループ全体の目標を単体並みの80%に設定した。
働き方改革は日本全体のテーマ。残業時間削減等で生まれた原資は人財への再投資に使うというポリシーを掲げている。単に報酬だけでなく教育、働き方改革を一層進める為のインフラ整備に投資する。また並行して組織の改革も進める。FY16にはグローバルヘッドクウォーターを整理したが、今後は戦略遂行機能とグループ全体のサポート機能をより明確にする。戦略遂行組織は徹底的にダイバーシティを進める。社内公用語を英語にし、グローバル成長を加速させる。その際に従業員をモチベートするのは財務数値の達成だけではない。コーポレート部門には社会価値への取組みを行っている従業員も多く、彼ら自身の取組みとその進捗が分かる形にしたい。これからの味の素グループを支えていくミレニアル世代は、会社の財務数値や報酬等だけではモチベートされない。この様な価値観を持つ人財に活躍してもらうには、社会から認められ、彼らが自信を持てる会社にならなければならない。 -
働きがいについての考え方を聞きたい。米国においては所得水準で市民が2つに分断され、一部暴動まで起こっており、欧州も似たような火種を抱えている。日本は暴動までは至っていないが、各社が進めている働き方改革を間違った場合、残業時間と共に所得も減ってしまえば、いよいよ暴動が起こるリスクもあるのではないか。企業は従業員を経済的にも時間的にも豊かにして余暇を経済に回せる環境を作らなければ危険であると感じている。現在当社は働き方改革の先頭を走っているが、この取組みを4-5年進めた時に本当に従業員を幸せに出来るか。
働き方改革に取組むにあたり、残業時間の削減等で生まれた原資の還元ポリシーを明確にしており、人財への還元に使う。具体的には報酬、より好い働き方へのインフラ投資、教育に資金を投じる。働き方改革は味の素単体のみの課題ではなく日本全体の課題なので、この取り組みを国内関係会社に広げていく。会社によって報酬や労働条件等は異なるが、ポリシーを共有する事で好い循環にしていく。
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本中計をどのように従業員一人一人のレベルまで落としていくのか。
本中計の発表前から計画的に進めている。18ヵ月前から、経営メンバーおよび執行役員合宿等を通じ、財務・非財務目標の関連付けを明確にすべく議論してきた。この目標はトップダウンだけではなく、ビルドアップでもある。全ての紐づけができているわけではないが、概念は共有できている。昨年7月、全組織に方針説明を行っている。2月21日アナリスト説明会の前に、記者向け説明会を実施したが、同時中継で従業員とも共有をしている。来週から各法人長から個別の3ヵ年計画の説明を受け審議する事になっている。今後は1年毎にレビューしていく。ASVアウォード制度を設置し、社外取締役も含めて審議の上、社長から賞を授与する予定。
(対象は法人なのか、といの問いに)法人かもしれないし、事業単位かもしれない。従業員の動機づけになるようにしたい。 -
本中計は内容が盛り沢山で、株式市場が十分咀嚼出来ていないと感じる。これまでの利益、時価総額等の財務数値主義への問題提起とも感じる。ESG目標をKPIに位置付けた意図を教えて欲しい。
個人的な体験も踏まえてお話する。ブラジルではグローバル大手が事業規模で当社の10倍以上もある。彼らの活動を見ると、社会との接点を作るのが上手。当社は食品、動物栄養、環境と取り組みの1つ1つが分断されており、グループ全体として社会との接点を構築しているとは言い難く、コーポレートブランドの浸透がなかなか進まない。アジアでは偶然商品ブランドとコーポレートブランドが一緒なので事業拡大と共にコーポレートブランドも浸透してきた。しかしBtoB事業中心の欧米ではアジアと同じ様には育たない。その結果十分な社会的な影響力を持てずにいる。
また、FY05頃から様々な立場のキーオピニオンリーダーから当社の経営および解決すべき社会課題についての意見をもらい続け、累計で80人くらいになっている。その結果、事業を通じた健康課題解決への要望が最も多い。
この様な経験を踏まえ、現在の様に個々の事業が分断していて好いのかと言う疑問を持ち続けていた。そこで今回、彼らが中期的に当社に求める声とビジネスを通じて当社が向かうべきベクトルを合わせる事にした。
最後に、今後の味の素グループのサステナブルな成長を現場で担うのは、35歳以下のミレニアル世代である。彼らのモチベーションが会社を支える事になるが、彼らは経済合理性だけでは動かない。優秀な人材を獲得する為にも、より一層社会から認められる集団にならなければならない。
これらを踏まえて本中計ではESG目標を作成し、自分たちの活動を財務的な観点以外で評価出来る仕組みを作らないといけないとの思いに至った。合わせてそれを内外に示して進捗を社内外に共有する事までしないと、当社が目指すグローバル食品企業トップ10クラスにはなれない。この考え方の社内コンセンサスを作る事だけでも1年かかった。まだ不十分な点もあり、2017年7月末発行予定の統合報告書でより具体的にブラッシュアップしていきたい。 -
非財務目標の考え方。
KPIにする為、対象を明確に定義している。肉と野菜の消費量目標については、あくまで当社グループの製品を用いての消費量であり、設定したキー商品とキーメニューから逆算する。日本における「Cook Do®」の主要製品や冷凍ギョーザ、Five Starsの風味調味料等が対象である。商品毎に使用する肉・野菜の目安量が決まっているので、対象商品の売上高と肉・野菜の消費量はリンクする。
社会に対しては、当社の製品が各国のお肉、野菜の消費量アップに繋がったことをエビデンスを持って伝えられる。各国の厚労省が栄養目標を設定しており、そこへの貢献もアピール出来る。政府と連携して当社グループのPR活動にも使う事が出来る。それによりビジネスチャンスやイメージアップに繋がり、結果的に業績にも寄与する。全社の非財務目標は日本とFive Starsに限られてしまうが、この取り組みは各国で行っており、例えば米国は味の素ウィンザー社が指標を検討しており、他の国においても各現地法人がやっていく。この詳細を統合報告書に織り込んでいく。 -
非財務目標に対する進捗はどの様に把握、グループ内に共有するのか。
FY16より、新たにグローバルコミュニケーション部を立ち上げた。各国における社会とのコミュニケーションを強化、整理する組織である。この組織が主導して各国のコーポレートブランド価値を高めていく。本中計においては、PRを相当強化する。これまでは、米国でのアンチMSGへのアプローチも殆ど行っていなかった。学者等を介したアカデミックなアプローチだけでなく、歴史的なアプローチも含めたPRによって誤解の払拭を行う。コーポレートブランド価値を高める投資を積極的に行う。
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国内のバリューチェーン(以下、VC)の効率化の具体的な中身を教えて欲しい。また、本中計の説明会において本取り組みの業績貢献はFY20以降というコメントがあったが、コスト削減の金額と時間軸のイメージがあれば教えて欲しい。
効率化はVCのパートごとに改善余地がある。生産についてはグループ会社も含めて段階的に設備投資を行って集約化を進め、省人化の進んだ最新の設備を導入する。具体的にどこの工場でどの程度という事はコメント出来ない。物流は発表済みであるが、他社と共同でF-LINEという会社の立ち上げに合意し、北海道から始まりFY19までに段階的に共同配送エリアを拡大していく。FY19には本州まで拡大されるので、大事な年になる。営業ではキーアカウント営業チーム体制を発足させ、CVS等の伸長する顧客へのソリューション提案力を強化する。バックオフィスについては、共通しているコーポレート機能を集約してアウトソースしたり、グループ内でまとめる事で省人化を図る。
本中計の日本食品の増益計画には、これらの取組み効果も一部織り込んでいる。しかし、生産系の設備投資は段階的に進む為、総合的に業績上の効果が出るのはFY20以降になろう。
また、物流もFY19に共同配送体制を全国で整備する為、その効果が業績に寄与するのはFY20以降になる。よって、本中計には織り込んでいない。全社共通費用は現状売上高の2.8%程度でコントロールしている。上記対応の為のインフラ投資で瞬間的に3%程度になるがその後は元の水準に戻す。 -
日本食品および動物栄養事業で見込む特別損失の金額および計上時期イメージを教えて欲しい。
国内VCの最新設備への転換で約40億円、動物栄養のスペシャリティ化で約40億円を見込む。
戦略上の問題もあり、計上時期はコメント出来ない。 -
本中計期間内に日本食品の利益率は1%の改善を見込んでいるが、これはVCの効率化によって実現するものか。
VCの効率化影響は一部しか入っていない。本格的に業績寄与するのはFY20以降。生産設備の統廃合や合理化を同時には出来ない。バックオフィスについても、基幹システムへのインフラ投資が必要で、3年間の設備投資額増に繋がっている。基幹システムを刷新するにあたり、仕事の仕方や社内のレポート形式等の様々な整理が必要。1%の改善の大半は調達の効率化等の通常のコスト削減活動によって実現する。
(プロダクトミックス改善や値上げも織り込んでいるのか、との問いに。)日本においては単純値 上げは難しいので、品質改訂を伴った値上げ等は一部織り込んでいる。
(GP率1%改善の内訳を教えて欲しい、との問いに)GP率改善が全て事業利益に落ちる訳ではない。新たな事業を柱として育成するおいしさソリューションへのマーケティング投資もある。また、都道府県別の栄養課題解決施策も検討している。それらの費用増を加味しての事業利益率1%改善なので、GP率改善だけではもっと貢献する。 -
今後のコーヒー事業の戦略を教えてもらいたい。
コーヒー事業のリスクとしては2つあり、ボトルコーヒー事業は、売上は大きいものの利益は小さい。これは価格競争が激しい事が要因で、本中計ではかなり保守的な計画を組んでいる。もう1つのリスクは原料であるグリーンビーンズの価格。本中計では足許価格+αの前提を置いている。仮に、それ以上の価格になればマイナス要因となる。
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冷凍食品の競争環境はどうか。店頭では高単価の商品が売れている印象。今後もプレミアム品が売れていくのか。
昨年11月8日の中間決算発表時、国内家庭用市場は活性化し、業務用市場は堅調であるとお伝えした。現状もこの傾向は続いている。家庭用市場は、弁当用は低迷も、食卓向けギョーザ、チャーハンは伸長。生活者ニーズは質の高いもの、および簡便化。背景にあるのは、特にコンビニでの冷凍食品の取り扱い率が高いこと。2005年以降の10年間の大きな変化。ドラッグストアでも力を入れており、住居に近いところで溶けるリスクがなく購入できる。この傾向は続くとみている。品質の高いもの、おいしいものというニーズに当社はリードできるポジションで応えることができている。次期中計でも大きく伸ばす計画になっている。
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本質的な成長ドライバーは海外食品だと理解している。本中計では調味料・加工食品事業の現地通貨ベース成長率を2桁と掲げている。過去と比較して今回の中計で異なるのはRising Starsや味の素ウィンザー社が登場した事。一方でそれ以外の部分で何が変わったのかが未だよく分からない。タイの年平均成長率目標は+4%だが、海外事業構成比の多くを占め、未だ依存度が高く見える。今後の海外食品事業は従来の取り組みと何が変わり、売上高を2桁成長させる事が出来るのか。。
タイの課題が顕在化したが、前中計の中でFive Starsの現地通貨ベース売上高は年平均9.3%成長した。タイに加えてフィリピンも多少足を引っ張り、期待までには届かなかった。一方で、そのマイナス要素全てをカバーする事は出来なかったが、Rising Starsの中には想定を上回る成長をした国々も出て来た。これらを踏まえ、再度2桁成長の目標を設定した。タイの足元業績はほぼ前年並み。特に「Birdy®」3in1と缶コーヒーの「Birdy®」については抜本的に手を入れていく。おいしさ設計技術をタイの「Birdy®」に注ぎ込んでいく体制は整った。また、AGF社とのシナジーについてもFY17から取り入れる体制が整っている。本格的に嵩上げをしていく。タイの売上高成長率1%減は海外食品事業の中で非常にウエイトが大きいが、落ち込みの原因はミャンマーの苦戦。ここについては、今秋よりミャンマーでMSG工場を立ち上げる。ミャンマーは軍政から民主化へ変わった事でより国内産業振興が優先となり、国内生産品でないと優遇を受ける事が難しくなっている。国内生産品の消費が高まっている。よってタイからの輸出は非常に難しい状況。僅か3年程でミャンマーにおける粉末飲料のマーケットシェアが急速に縮小した。今秋から「味の素®」の包装工場が建ち上がり、来年には「Birdy®3in1」も続く。現地生産が始まるという事は、非常に大きな意味を持っている。
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Rising Starsについては持分化する事で成長するという説明だったが、Rising Starsの収益が増加する事について、もう少し具体的に教えて欲しい
本中計ではRising Starsの現地通貨ベース売上高成長率を20%と掲げているが、まだ食品における地域別事業利益構成比の2%しかない。FY15は追い風もあり隠れていたが、ナイジェリアは非常に厳しかった。ナイジェリアは「味の素®」を展開する高収益な国だが、FY15、FY16とカントリーリスクにより事業が厳しくなり、Rising Starsの中でかなり足を引っ張っていた。プロマシドール社の持分を取得し、ナイジェリア味の素社とJV化する事でシナジーが生まれ、リスクヘッジが出来ると考えている。加えて、ナイジェリアの消費そのものが戻りつつある。本中計の中でナイジェリアの成長を戻していく。トルコについては非連結子会社であったキュクレ社とFY16に買収したオルゲン社を一緒にする計画でいる。元々非連結子会社だった事、更にオルゲン社が新規で加わった事でこれまで業績に含まれていなかったものが入ってくる。従って本中計におけるRising Stars売上高成長率20%というのは堅い目標である。
(本中計の中で、ナイジェリアおよびトルコが収益に貢献する時期はいつになるのか、との問いに)ナイジェリアのプロマシドール社へは2016年11月に出資した。PMIには約1年掛かる為、FY18から業績に貢献してくるだろう。トルコは50%出資をし、非連結会社となっているキュクレ社をFY17からFY18の初めの頃までに100%化していく予定である。これによりキュクレ社とオルゲン社の2社が100%子会社となる。 -
本中計の海外食品事業利益率は控え目に見える。堅めの目標設定なのか。
味の素ウィンザー社については買収前よりも事業規模を拡大し、10%を下限とする事業利益率にしていきたい。このポーションが増加する事で、従来の調味料・加工食品を中心に展開していた頃のマージン約15%と比べると中期的には下がって見えるだろう。
(海外調味料・加工食品事業についても過去と比較して控え目に見える、との問いに)うま味調味料・風味調味料と加工食品とではマージンが異なる。製品ミックスの変化だと理解して欲しい。新しいカテゴリーへの投資も行う。過去、うま味調味料・風味調味料を展開してきた事でドライセイボリー世界シェアが21%となった。約10年前はここまでのシェアは無かった。風味調味料も最初は儲かっていなかったが、トップブランド化する事で利益を得られる様になってきた。よって新しいカテゴリーにもマーケティング投資を行っていく。 -
海外の風味調味料とメニュー用調味料のGP率について。トップラインを伸ばす上で、タイではミックス改善なのか。両者のGP率の差はあまりないとみており、売上増分の利益増しか見込めないと思う。GP率改善はあるのか。
外部マーケット情報におけるメニュー調味料はケチャップ、マヨネーズ、スパイスミックス等を含み、収益率が低く、当社のターゲットではない。当社のメニュー用調味料は風味調味料のGP率に近い。しかし、育成時期はSGAが必要なので、その分、利益貢献はあまりできない。
(高単価でミックス改善できれば、目に見えてよくなっていくのか、との問いに)一定の規模になってきているが、まだメニュー用調味料は売上の10%程。これを20%伸長/年を見込む。製品ごとにPLを持っているので、製品設計の時点からGP率を高くしている。その条件としてファーストランナーであることが大事。あとはマーケティング投資が必要なので時間がかかる。 -
今後、タイの様に過去の成長トレンドが大きく変わるリスクのある国はあるか。
その点はあまり心配していない。事業の構成比が高いのでタイに注目してしまうが、フィリピンも目標に対して未達となっている。フィリピンはFive Starsの事業規模だが、競争が非常に激しい。当社はGDP成長以外にも消費率等のデータも分析している。これらの指標から分析すると、本中計中に成長率が大きく崩れる国はないだろう。
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Five Starsにおける新カテゴリーの立ち上げとは具体的に何を指すのか。
メニュー調味料を差し、毎年20%強の伸長を織り込んでいる。例えば唐揚げ用の調味料。また昨今、東南アジアの大都市ではCVSが増加しているが、そのカウンターで販売しているホットデリ向けに冷凍食品を販売したい。タイが1つの試金石になるだろう。
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動物栄養のコモディティの自社生産量をどの程度まで縮小するのか。当社が目指す事業構造は、いつ頃から盤石な体制になるのか。
自社生産量は大幅に削減するが、戦略上数値では回答出来ない。構造を抜本的に変えようと思っているので、小規模ではないと言う事でご理解頂きたい。
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コモディティの委託生産が動物栄養事業の最終形と考えてよいか。
コモディティはご指摘の通り。スペシャリティ化に切り替えていく。コモディティを持たなくとも、ソリューション型ビジネスモデルに変えていきたい。
(スペリャリティでフルラインナップ持つという理解でよいか、との問いに)Yes。FY16営業利益予想はコモディティ▲11億円、スペシャリティ11億円。まだスペシャリティの構成比が低い。今のまま、スペシャリティだけだとマーケットインができなくなる。FY20以降、スペシャリィが50億円の事業利益になった時に、この構造のままコモディティを持っている必要があるかどうか考えていきたい。コモディティとスペシャリティ双方で外部連携する計画。それぞれ、別の連携。ビジネスモデルを変えていく。スペシャリティは「AjiPro®-L」の第二弾、第三弾となる高機能配合品の継続展開なので、ビジネスモデルが変わったという印象は無いであろう。もう一つのICTを活用した診断型ソリューションビジネスはFY20以降にトライするために準備を進めている。これは完全にビジネスモデルを変えるものになるであろう。 -
リジンのOEM化はどの様な時間軸で進めていくのか。
ゆっくりと進める気はないが相手のある事である。また原燃料等は中長期で調達する事が多い為、急に調達を打ち切ると契約違反に伴う違約金等のロスを生んでしまう。そのロスは出来るだけ小さくしたいと思っている。このような一時費用が許容できる範囲であれば、早急に実行したい。
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アミノサイエンスも今後の当社を支える重要な事業である。受託事業における当社の強みは何か。味の素社とアルテア社があり、そこに新たにジーンデザイン社が加わった事で、当社の体制がどの様に変化し、どの様に成長していくのか。
アミノサイエンス事業については近々スモールミーティングを開催し、説明していく。これまでの当社の受託事業は殆ど低分子だった。東海工場での生産の一部を除いては、殆どベルギーにある味の素オムニケム社がつくる低分子事業で売上高の大半を占めている。低分子はコモディティではないが競争が激しい。今は良いが、今後競合と競争する中で低収益化するリスクがある。当社の先端バイオ技術は中分子を効率的に大スケールで生産できる技術を既に開発していたが、この技術を使って受託生産する場所が無かった為、受託設備を保有するアルテア社を買収した。アルテア社はスタートアップ企業であったが、当社からの資本出資を設備投資に回し、規模をスケールアップできる資金を手に入れた。よって本中計では収益を刈り取れる時期に入って来る。ジーンデザイン社は中分子であるオリゴ核酸医薬開発支援事業を行っているスタートアップ企業である。テーマを沢山持っている。ここを手に入れた事で、当社が東海工場に保有していた大量生産できる技術に、ジーンデザイン社が持っている複数のテーマを繋ぐ事が可能となる。当社はジーンデザイン社を買収した事でパイプラインを手に入れた。ジーンデザイン社は中分子、アルテア社は高分子分野においてグローバルでトップ3に入る可能性を持つ。FY20以降は当社の柱にしていきたい。
(この事業はFY19以降に花が咲くという理解で好いか、との問いに)Yes。