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2017年度業績において、為替・原燃料価格以外に下振・上振れ要因はあるか。また、本中計においてはどうか。
下振れ要素で一番大きい要素は原燃料価格および為替。それ以外はほぼないと考えている。為替・原燃料価格の見通しについて、保守的とのご意見を頂戴しているが、当社の海外比率は50%以上。まだ新興国および発酵原燃料をベースとした製品比率が高いので、投資に関してご承知頂かなければならない。それ以外にあるとすれば、Rising Starsのトルコ・アフリカにおける地政学リスクの顕在化。あとはヘルスケア領域の成長の柱である培地、中分子・高分子の取り組み。製薬業界におけるCDMO*は増えているが、最終製品の販売段階において製薬メーカー間の競争が激化している。これも当社の業績が左右される大きな要因。また低分子のCDMOも競争が激しい。依然として5%程度市場伸長しており、先進国からインドや中国へ市場が移った時期もあったが、トレーサビリティやレギュレーションの透明性の観点でより高いものが求められ、集約化する方向になっている。上振れは歓迎したい。一つ挙げるとすれば、海外食品で育成中のメニュー用調味料の市場拡大。対前年で売上高20%強伸長しているが、浸透や認知度が進めば更なる上振れはありえるだろう。その他、統合報告書に記載予定だが、やってみないとわからないのがASVの取り組み。これが功を奏し、想定以上に地域連携により新しいビジネスの可能性が拡がる場合でないか。現在、ベトナム学校給食の支援を行っており、これはCSRではない。当社は業務用ビジネスの市場を創っている。当社のESGの取り組みが認められ、必要とされてはじめて、行政との連携が可能になる。期待したい。
* CDMO = Contract Development & Manufacturing Organization(開発・製造受託会社)の略。
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他社は減益でも増配を掲げる中、当社は2017-2019中期経営計画ポリシーに沿った形ではあるも、配当横這い。考えをお聞かせ願いたい。
本中計も14-16中計と同じ考え方。3カ年で総還元係数50%をミニマムとしている。単年度では配当性向30%、これを少しずつ上げたい。保守的なご意見もあるが、本中計、年度計画には少し成長投資が必要で織り込んでいるため、ご理解頂きたい。業績が改善すれば、少しずつ上げていく。
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2017年度の事業利益予想は1ドル=108円を前提として1,020億円と対前年50億円の増益計画であるが、2019年度の事業利益計画は1,240億円なので、残り2年間で各年120億円ずつ増益していくようなイメージなのか。それとも最終年度に一気に投資効果が出てくるようなイメージなのか。
投資効果が徐々に出てきて、最終年度に向かって利益が増加していくイメージである。
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社長に就任して2年が経過。振り返ってみて、自身の強み弱みをどの様に認識しているか。
本中計はESGと財務のバランスをとり、統合目標を掲げることが出来た事は良かった。グループ会社のベクトルを合わせるのに時間を要したが、自分のイニシアチブを発揮でき、これが自分の考えている経営だと示し共有出来たと確信している。
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本中計は西井社長が中心となって作成する初めての中計であり、その大きな特徴として社会的価値に関する目標も策定したことが挙げられるだろう。中計発表後、社会的価値に関する情報発信が多く意気込みも感じるが、経済的価値を上げるための自身のミッションをどの様に考えているのか。
当然経済的価値を上げるために社長を務めている。当社事業のメインは日本と新興国であるが、これらの地域で目標としている高い成長を実現するには、社会への影響力を発揮することが必須である。社会への影響力が高まれば、行政や他社から色々な取り組みに声を掛けてもらえ、成長度合いを加速する事が出来る。アジアにおける10%成長で満足している人にはこの発想はないだろう。例えばタイにおいては現地の人が想起する日本企業として第2位になるまで浸透しているが、ビジネス以外のコミュニケーションがそこまで出来ていなかった。しかしバイオサイクルを通じてタイの環境に貢献し、キャッサバ農家の育成までしている事が伝われば、当社へのイメージがよくなり、その結果業績にもつながる。また、「Ros Dee®」を通じたタイにおける栄養摂取への貢献度合いを調査すると、現地の従業員が最も驚き、感動する。その結果、現地の栄養学の最高位の大学から声が掛かり、共同で同国の栄養課題解決プログラムに取り組み始めた。この様なやりかたはグローバル企業の常とう手段であり、当社も社会的価値と経済的価値を同時に高めていきたい。
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今までは社会的価値を高めなくても成長出来たが、環境が変わったという事か。
過去から、経済的価値だけを求めれば市場並みの成長が出来るという事に変わりはないだろうが、当社はそれ以上の成長を目指している。例えば、グローバル企業は各地の自社工場周辺において生産に使用するきれいな水を近隣住民に分け与えている。当社も近隣農家に発酵生産の副産物を提供しているが、まだまだ不十分。今後は余剰の電力を供給する等、更にその地域に不可欠な存在になりたい。そうなれば、レピュテーションリスクの発生した時にも近隣住民が味方になってくれる。SNSは新興国でも浸透しており、この様な意識の高まりは先進国に限った話ではない。
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非財務目標に興味を持ち注目している。非財務は定量評価、表現が難しい。故にマーケットが戸惑っているということはないか。同様に興味を持つ投資家側のプレッシャーが強すぎて、マーケットとの対話の難しさを感じるか。
本中計発表後、マーケットの戸惑いがあったのは事実。策定において、マテリアリティを有し、経営の重点課題を決めてきた。今年度の統合報告書はAjinomoto Shared Value(以下、ASV)を軸とし、メッセージがより明快になるだろう。アナリストや投資家とのギャップは埋めていける。オーソリティの北川先生他と対話したが、2-3年のうちに必ず、ESGについて環境も変わり、投資という観点でもESGの要素が入ってくるようになるとみている。同時に、投資家との関係をそういう方向にもっていきたい。当社機関投資家(金融機関、保険会社)は出資に対する明快なポリシーを出しているので、財務・非財務目標での達成を関連づけて対話していきたい。
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当社は積極的に残業時間削減に取り組んでいると思うが、生産性はどの様に向上させるのか。
生産性のKPIは色々ある。味の素㈱の2018年度の労働時間目標は1,800時間。2016年度は1,900時間を少し下回った。グループ会社では2,000時間ぐらい。労働時間短縮による残業代のインパクトは数億円。金額の大きさ云々ではない。新製品が生まれたり、改善型ではなくダイナミックな発想が出る等、より生産性を高めるといった循環型を目指したい。働き方改革と働きがい向上をESGの中の“S”ではなく、“G”の取り組みとしたのは、基盤を固め、競争を高めるため。グループ統括上、重要な意味を持つと考える。徐々に生産性が高まっていく。今後、進捗は共有していきたい。
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社会的価値の訴求を経済的価値に繋げ、コーポレートブランドを向上するには相当な専門人材が必要になろう。その様な人材をどの様に獲得していくのか。
2016年度から新たにグローバルコミュニケーション部(以下、GC部)とグローバル人事部を設置した。GC部については専属役員もアサインし、彼らが中心にコーポレートブランドをどの様に向上させるかの戦略と個別商品のブランド戦略を立てている。タイのCMは先行事例である。タイ以外のFive Starsも商品ブランドが浸透しており事業規模も大きいので、ベトナムの学校給食を通じた栄養改善プロジェクトや発酵生産に伴う副産物の最大エリアであるブラジルにおいて、栄養サイクルの取り組みを発信していく。
また、コーポレートブランドについては米国対応が鍵になる。アンチMSGの問題は日本でもFive Starsでもなく、米国がボトルネック。これからブランドビルディングに注力するが、その為のイベントとして2018年に初の「うま味フォーラム」をニューヨークにて開催予定。2部構成になっており、第1部はアカデミックなアプローチで生理機能の観点からうま味の有用性をアピールしたり、MSGに対するネガティブなイメージが浸透した歴史的な経緯を紐解いていく。第2部は世界各国のうま味を含んだソウルフードを集めて紹介し、うま味が世界中のおいしさに貢献していることをアピールする。最初は米国開催だが、2019年以降は国を変えて毎年開催したい。
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2016年度のブランド価値は711USD mill.と対前年で+9%だった。財務面の成長は鈍化した中、何故ブランド価値は向上したのか。
インターブランド社の評価軸は、中長期的な財務成長が大きな因子だと推定している。従って、大きな構造改革への着手や成長投資を決断した、といった要素が明確になると、株価は瞬間的に下がったとしても、インターブランド社の評価は上がる事があるだろう。株価予想と比較すると、インターブランド社の評価の方がより中期的な目線が入っているのかもしれない。当社は財務指標の開示に加えて昨年、統合報告書を発表した。また、本中計より非財務指標を併記する事も宣言していた。この部分のシンパシーも非常に強いのではないかと考える。
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本中計でコーポレートブランドとして本格的に海外で展開していくと掲げたが、何を消費者や社会にアピールしていくのか。
バランスの良い食事で健康な生活を実現していくというEat Well, Live Well.について、率先して取り組んでいる会社或いはブランドであると発信していきたい。一方で、欧米を中心としたMSGのネガティブな印象を払拭し、オピニオンを形成していきたい。毎日の食事を美味しくする「味の素®」や、健康な生活に結びついている、というブランドイメージを作り上げていく。
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アフリカにおいて社会的価値が経済的価値に繋がる時間軸イメージを教えて欲しい。
グローバルトップ10に入る食品企業でも現地と信頼関係を築き経済的な価値まで繋げるのに17年程要していると捉えている。しかし今後はSNSの浸透もあり、このスピードは早まろう。本中計のタイミングで当社が非財務にも注力した理由の1つとして、2015年の国連のSDGsが効いている。それまでのグローバルな栄養課題については新興国中心だったが、SDGsでは初めて過剰栄養と不足栄養の2つの軸で課題設定し、先進国にも解決が求められている。栄養面での貢献は国連以外にも支援団体も多いので、社外とのコミュニケーションやオピニオン形成がしやすい。その観点で日本人は現地での調整役を担う事が多く現地でも親しまれており、当社も一定の評価を頂いている。
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今後のM&Aについては欧州が対象となるのか。
かねてより、欧州での冷凍食品の販売拠点の確保に向けたM&A、Five Starsにおける商品ポートフォリオの拡充およびおいしさソリューション拡充の為のM&Aの可能性に言及している。またヘルスケア事業についても、パイプラインの進捗によっては自前でやる事だけではなく、他社との提携も含めて検討したいと考えている。
(欧州のM&A案件は、かなり大きなEV/EBITDAマルチプルになる可能性はないのか、との問いに)我々の目的は欧州のメインチャネルへのアクセス権の獲得であり、そこまで大きなバリュエーションは想定していない。
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2016年度はオルゲン社、プロマシドール社、ジーンデザイン社のM&Aがあったが、統合する上で上手くいっている点と課題は何か。今後のM&Aの領域は海外食品、おいしさソリューション。海外食品は欧州とのことだがどうか。
プロマシドール社については33.33%の株式取得。プロマシドール社の大拠点のひとつであり、かつ当社も展開しているナイジェリアの統合を2016年11月より一年かけてやっていく予定。非常に上手くいっている印象。両社ともに新興国においてスクラッチからのビジネス展開の経験があり、企業文化が近い。地域の所得が低い方へベーシックな調味料等の製品を提供し、生活向上に貢献しようとしているため、価値観が共有できる。ストレスフルなことも乗り越えられる。
トルコについてオルゲン社を買収したが、50%株式取得のキュクレ社との統合までがPMI。新しいCEOを招聘したが、統合後のトルコビジネスを担って頂く。PMIは順調に進んでいる。
買収したジーンデザイン社はスタートアップ企業。パイプラインがPhase1~3と進む中で、東海事業所、ベルギーの味の素オム二ケム社、アルテア社の機能を活かしながらのPMI。ガバナンスを揃える、生産の再編といった事よりも、彼らの持つインフラを実現していく事が最重要。
おいしさソリューションについてはM&Aは必要。いくつかテーマをもって動いている。提携している長谷川香料社とフレーバー開発が進んできた。年内にサンプルが出来るであろう。大がかりなものを買うというより、重要な拠点を築き、コク味等の素材をベースにそこから事業を拡大する戦略に変わりつつある。事業の立ち上げは本中計の中だが、収益貢献は2020年度以降になろう。
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社外取締役の名和氏は独自の目線で当社を見ており、グローバル食品企業トップ10クラス入りを目指すという観点で目的に沿った人選だと思う。名和氏からグローバル食品企業トップ10クラス入りを目指す上で、当社に足りないと指摘されている部分はあるか。
ICTソリューションという観点で遅れていると指摘を受けた。本中計のASV価値ストーリーのドメインを、食を通じた栄養改善と生活者貢献という領域に絞った事については高い評価を頂いている。本中計では3つのタスクとして、①国内バリューチェーンの再編、②グローバル規模でのサステナブルバリューチェーンの構築、③「おいしさソリューションプロジェクト」を掲げた。「おいしさソリューションプロジェクト」は、人間は食べるシチュエーションによって、美味しさの感じ方が異なる。この様に口だけでなく、脳へのアプローチをICTを使って見える化する事で、更に良い開発に繋がるのではないかと助言して頂いた。現在、外部からオーソリティを導入し設計をしている。
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株主総会の議案の中で取締役選任の件が記載されているが、今回のメンバーにCFOが含まれていないのは何故か。また、メンバーに外国人が含まれていない理由についても教えて欲しい。
コーポレート・ガバナンスの中で、取締役会の実効性を高める事について重点的に議論した。従来よりも議論が活発になる様、現在の12人から9人へコンパクトにしていく。CFOが居なくなったという訳で無い。取締役会の下には経営会議メンバーがいる。現在9人いるがそれよりも増やす予定。執行である経営会議メンバーをダイバーシティにしていく中で、CFO等の様々な役割を委譲していく。
また、これまで役員等指名諮問委員会と役員等報酬諮問委員会については任意の委員会であった。今後は、社外取締役を委員長にし、スタッフを増加させ、更に議論が出来る形にしていく。これらの議論を進めていく中で、コーポレート・ガバナンスそのものの基本設計が重要だという話になった。そこでコーポレート・ガバナンス委員会を設置し、私が議長となり、社内2名と社外取締役と社外監査役を合計4名入れ、将来のガバナンスをどの様に高めていくかを議論していく。その中でダイバーシティや人種について議論されていくだろう。
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IFRSベースになって、事業利益には持分法損益も入っているので、利益率の変動が上手くモニターするのが難しくなっている。当社が重要視しているのはROAとコア事業利益額という理解でよいか。
コア事業利益率も大事。事業利益の考え方はグローバル企業と比較する為に必要。これまで日本基準の営業利益とグローバル食品企業トップ10のIFRSベースのコア利益を比較してきたが、これからは持分法損益を織り込んだ事業利益で比較頂きたい。それだけでは不十分なので、ROAを公表区分ごとに分け、生産性の指標として取り組んでいく。
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2017年4月のPOSデータは冷凍食品が絶好調。個食化、共働きの増加傾向において、冷凍食品の成長は理解出来る。一方で加工食品はどういう位置づけなのか。中途半端な印象。今後どうなっていくとみているのか。
加工食品の定義は幅広い。日本は人口が減り、高齢化が進み、市場は縮小傾向。当社も加工食品領域の中で幅広く製品を持っており、その中でもドライセイボリーをベースとした領域が大きい。そしてカップスープのような即食性のある製品もある。調味料を使って一から手作りするのが難しいメニューが加工食品へとって変わってきた。中食も冷凍食品についても取り組み、総合的にいろんな食シーンに対応していく。
(加工食品の今後の成長について懸念点はあるか、という問いに)短期的に捉えない方がいい。簡便性のあるものは伸びていく。かつて「Cook Do®」は本格中華ができる3-4人用の調味料だった。最近は中華料理用だけではなく、炊飯器に具材と一緒にいれて炊き上げるアジアン風のチキンライスのようなものも出しており、進化している。細分化していくだろう。
(冷凍食品と比べた場合の強みは何か、といの問いに)自分で素材を選び、素材の味を楽しみたい方は冷凍食品にはいかない。冷凍食品はまだ余地あるということだが、一年間の購入経験率をみると餃子でも40%。60%の方は冷凍食品を買わず、手作りかチルドや総菜の購入ということになる。食のマーケットを大きく捉え、いろんなところで強みを持っておく戦略が大事。
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今後、国内の冷凍食品はCVSの冷凍食品売り場拡大に伴い、総菜の市場規模が拡大するのではと考えている。その中で当社は、収益の刈り取り期に入るのではないかと期待している。生活スタイルが大きく変わる局面の中、競合各社と格差を広げ成長していくことを期待したい。
国内冷凍食品は非常に成長領域。個食用の冷凍食品がCVSで購入できるようになった事が、市場活性化の重要な要素であろう。当社が総菜領域全てをカバー出来るとは思っておらず、各社で棲み分けが出来上がってくるだろう。一方で、一部領域では競争するといった局面もあるだろう。当社はCVSと共同開発の段階から携わっていきたい。レジカウンターにあるファストフードの開発についてもかなり踏み込んで提案している。便利な買い場として消費者に認知されており、ビジネス拡大に繋がっている。
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2017年度は国内冷凍食品市場が想定よりも拡大する可能性がある。その場合、期初計画以上に投資していく可能性はあるか。
CVSの個食品種の構成比は冷凍食品全体で見た場合、あまり大きくない。当社の市主力品種のギョーザは12個入りだが、CVSの商品は5個入りで既に焼き上げられているのが特徴。ボトルネックとなるのは、市場拡大と共に作り続ける事が出来るかという事。一つのアカウントとしては非常に大きな構成比を持っている。更に商品も特殊である事から、適合していく投資をしていかなければならない。当社はギョーザ、シューマイ、米飯、唐揚げ等の領域に戦略的に特化し、CVS向け商品が作れるような生産、開発体制で臨んでいる。
(現時点では、市場が急加速しても耐えうる生産体制になっているのか、との問いに)Yes。共同開発の中で生産と開発の整備を同時に行う。CVSはフランチャイズで全店舗にオーナーがいる事から、供給責任が確約できなければ取り組まない。一部のエリアでテストマーケティングを行い、確証を得てから投資するという特性がある。
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料理の簡便化の風潮によって冷凍食品の需要が強まっており、SKUの削減などコストダウン努力も勘案すると、日本食品の利益率改善は計画の1%よりも更に高まるのではないか。
1%改善は最低限の達成目標と考えて頂いて好い。国内を見ると経済状況は徐々に好くなってきているものの、消費は必ずしも強くなっていない。将来の漠然とした不安感からか全般的に財布の口は固い印象があり、消費状況について楽観視し切れない面はある。
(SKU削減はもう一段加速するのか、との問いに)自らそういう指示は出していないが、各事業責任者が状況に応じて実施していくだろう。
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国内冷凍食品の2016年度事業利益率は8%。今後二桁台を狙う事は出来るか。海外冷凍食品についても、どの段階で二桁台に到達する事が出来るか。
海外は本中計期間内に200億円を投資する。構造改革で早期に事業利益率10%にするためである。ウィンザー社買収時は2019年度に営業利益率9%と設定していたが、本中計では2019年度時点で10%達成する計画にした。構造改革により目標は達成可能と考えている。
国内は2016年度の事業利益率は8%だったが、原材料の影響を受けると年度によっては8%を下回る時もある。もう一段生産性を高める取り組みが必要であり、それに取り組めば10%に出来るだろう。但し、本中計では調味料・加工食品の生産性改善に着手する。国内冷凍食品については、11-13中計および14-16中計の中で生産性を高める為の工場集約に取り組んできた。8%以上とするための変革については、本中計には織り込まれていない。2020年以降の計画に織り込んでいく。
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本中計では、国内で4年間かけてリストラクチャアリングを実施していく計画があるとの事であったが、現在の進捗はどうか。
着々と準備を進めている。国内の調味料・加工食品の工場は点在しているが、数多くある生産ラインを合理化して生産性の高いラインに変えていく事などを検討していく。この取り組みの第一段階のスタートについては早晩、皆様方にお伝えする事が出来ると思う。
(この取り組みは4年間も掛からずに、もう少し前倒しが可能と考えてよいか、との問いに)現在進行形である。具体的なコメントは控えたい。
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海外はFive Starsを中心に展開しているが、どの地域にどれだけの時間を費やしマネジメントしているのか。
グループ全体の方針を決めていく事に多くの時間を費やしている。従って、本中計策定も私のイニシアチブで多大な時間を費やした。約2年を費やしたが、考え方を各地域に落とし込み、作り上げる事に時間を費やした。成長を加速させるべく、ガバナンスの整備にも取り組んだ。また、働き方がい向上の指標をESGの“S”ではなく“G”の項目に入れた事には意味がある。エンゲージメントサーベイを導入した目的を従業員と共有する為、Webを通じてダイレクトに私の考えを伝える場を設定。ボトムからも賛同してもらえる様に工夫をした。実際に海外出張は約70日/年。パートナーに優先的に会いに行く。これは現在パートナーも将来のパートナーも含まれる。
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アセアン、Five Starsの競合環境、当社の立ち位置はどうか。
アセアンとRising Starsの戦略はドライセイボリー(「味の素®」、風味調味料、キューブ型の汎用調味料)において、No.1になるのがポリシー。Five Starsではトップシェア。ここが牽引しグローバルでのシェアを引き上げている。2016年度のシェアは22%。僅か1%だが、グローバル競合2社を引き離している。Rising Starsでも同じ構造を作りたい。展開国数ではグローバル競合には敵わないが、当社は強い国で引き上げて、ドライセイボリーで2019年度のシェア24%を目指す。競合との差別化については、グローバル競合は多少のアレンジはあるも、共通ブランド、共通レシピで、恐らく効率性が高い。一方、当社は徹底的な現地適合、ローカルブランドで展開してきた。これによりトップシェアを目指すのが基本的な考え方。
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タイとミャンマーのアップデートと今後の競争環境について教えて欲しい。
タイの2017年度は、対前年売上高7%伸長、実質物品税の影響を除くと2%増を見込む。物品税はまだ施行されていないが、発令前提で計画している。2016年度第4四半期に業績が上向いてきたが、2016年11月の「Birdy®」3in1の全面改訂が功を奏している。ミャンマーは2017年9月に「味の素®」包装工場が稼働予定。行政と連携し偽物排除がより可能となる。現地に工場があるのとないのでは違う。今後、V字回復が見込めると考える。
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「AJI-NO-MOTO®」の工場稼働による雇用も創出するので、行政との協力も強化出来るのか。
間違いない。工場稼働が9月になったのも、政府との交渉に時間を要した為である。これまで越境貿易という形ではあるが、市場が拡大しており政府も大きな市場可能性を分かっていた為に、当初は包装ではなく発酵からの一貫生産工場の設立を求められた。当初は14-16中計期間中に工場稼働したかったが、その調整に時間を要した。ミャンマーに法人や工場を設立するという事は雇用を創出し、国の発展にも貢献する事になる為、行政や警察との連携は間違いなく強化出来る。「AJI-NO-MOTO®」の包装工場に加え、「Birdy®」3in1生産工場も2018年2月に稼働する予定。これにより、タイの業績のV字回復を期待している。
(そのV字回復が、2018年度以降の利益率改善のドライバーになると理解してよいか、との問いに)Yes。
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2016年度第4四半期のタイの調味料・加工食品の売上は前年を上回ったが、この基調は今後も継続すると考えて好いか。
「AJI-NO-MOTO®」および「Ros Dee®」を中心としたドライセイボリーの売上は盤石と考えてもらって好い。これらは家庭内での調理で使われるだけでなく、外食産業の従事者も市場やスーパーで購入し調理に使っている。このフードサービス需要はかなり裾野が広い為、需要を掘り起こす活動に力を入れている。特に「AJI-NO-MOTO®」に核酸を添加した「AJI-NO-MOTO PLUS®」という呈味力の強い商品がよく売れている。
2016年度にタイ全体の売上伸長にネガティブな影響を与えたミャンマーにおける「Birdy®」3in1の偽物対策については、2017年9月に現地に「味の素®」の包装工場が稼働する事で偽物の取り締まりが一層強化される事になり、同国での売上のV字回復は可能と考える。一方、タイ国内における「Birdy®」3in1および缶コーヒー「Birdy®」の販売環境は引き続き厳しいが、競争に打ち勝っていかねばならない。本年度のタイの売上伸長目標は物品税導入影響を除くベースで2%であるが、上述の状況を踏まえても達成可能だと考える。
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海外調味料・加工食品事業のブラジルは、消費環境が厳しいにも関わらず2016年度は二桁成長、2017年度も二桁成長を計画している。業績が好調な理由について教えて欲しい。
2016年度は甘味料の海外リテール移管影響が含まれるが、それを除いても12%成長。2017年度もそれに近い成長を計画している。ブラジルの経済不況は2017年度で3年目に入るが、当社の基礎調味料カテゴリーについては、生活者も購入を我慢する状況では無くなったのだろう。市場が戻りつつある。風味調味料の「Sazón®」はトップブランドであり成長力が非常に強い。特異的なのは、メニュー用調味料寄りの調味料である事で約15SKUある。幅広い層をカバーする経済性の高い調味料である。
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アフリカにおいて当社が目指す姿。
プロマシドール社は持分法適用会社なので、当社としては生産技術や商品開発等の面で彼らの成長に貢献していく。具体的なプランを現在策定している。
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米国の冷凍食品市場の特徴を教えて欲しい。
冷凍食品市場全体は消費者の低価格志向もあり、また低品質な商品が多い事もあって微減傾向。アジアン市場はニッチだか微増傾向。冷凍食品業界では、一般的に1グラム当たり1円の販売価格が1つの基準になっており、この水準を超えるとGP率が高くなり、営業利益も10%程度確保出来る。品質の低いものは1グラム当たり0.2円等の水準である。この様な基準を満たす様な付加価値のある商品を増やしていきたい。
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北米冷凍食品のアジアンカテゴリーおける販売戦略上の差別化ポイントは何か。
味の素ウィンザー社(以下、AWI社)は3つの強い分野を持っている。冷凍食品は企業によって強い分野が違う。AWI社はアジアン、メキシカン、アペタイザー(業務用野菜チップス等)が強い。M&A後、強化出来たギョーザ、チャーハン、東洋水産社とJVで取り組む冷凍ラーメン、この3つがアジアンカテゴリーの柱。小売店における棚をどうやって取っていくかというより、カテゴリーが特化されており、ユニークであること。本中計では200億円を投じ、スクラップ&ビルドを行い、品質と生産性を高め、高付加価値型製品が造れるようにしていく。直近、アペタイザー工場を新設することを発表。古い工場は売却予定。チャーハンの工場は2016年度に投資をしたが今後集約化も予定している。これにより対前年売上高+7%伸長を目指す。
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SKU削減について、どの様なKPIを持って取り組んでいるのか。マネジメントの意思決定のプロセスを教えて欲しい。
※本質問については、スモールミーティング当日の回答を保留させて頂きました。
本ホームページ掲載内容にて回答とさせて頂きます。
採算性(GP率)を指標として、一定の数値基準を持って不採算SKUの終売候補を洗い出して検討を行っている。その際には、個別得意先との関係や工場全体としての生産効率も鑑みた総合的な観点での判断を行っている。
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北米の食品市場ではPBが市場を席捲しているとの調査結果が出ているが、北米の冷凍食品市場をどのように捉えているのか。
NBからPBへのシフトはアッパーミドルクラスに人気のあるホールフーズが代表であり、ここは100%PB化している。こういう市場はとても大事な市場なので、共同で単価の取れるPBを開発していきたい。PBでもNBでも1g当たり売上高が1円の壁を越えるとGPが改善する。一例として、北米ではアペタイザーを造るメーカーが寡占化されており味の素ウィンザー社(以下、AWI社)もトップ3に入っており、同社の利益を支える事業になっている。
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AWI社のピードモンド工場売却決定まで3年掛かったが、どの様なプロセスで検討してきたのか。
ウィンザー社の買収時、ピードモンド工場は閉鎖対象になっていたが、幸い買い手が見つかり売却する事になった。他にも構造改革を進めている工場はある。3年を要したのは最初にFried Riceの増産工事と冷凍麺工場設立に着手した為。トップライン成長投資を優先的に行い、その後段階的に構造改革投資を行ってきた。
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動物栄養について、アップデート頂きたい。
動物栄養について、2016年度決算説明会でコモディティのOEM化の進捗について具体的に申し上げることはないと説明したのは、交渉が進んできているため。現時点も状況は変わらない。年度内に形に出来るようにしていきたい。スペシャリティ「AjiPro®-L」は2016年度の販売数量目標6,500トン未達も、月次目標は近づきつつある。欧州への展開も年内に生産許可がおりるとみている。
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スポーツサプリメントとダイレクトマーケティング事業について、市場のポテンシャルとして今後どれ位まで拡大するのか。また、日本では一過性のブームとなってしまうリスクはあるか。
スポーツサプリメントは20年以上前からミズノ社の販売ルートを使って「アミノバイタル®」というブランドで展開している。一過性のブームとは捉えておらず、徐々に裾野が広がってきた。当社は幾つかトライ&エラーをしながら、現在はJOCの強化選手やオリンピック選手等のトップアスリートに対するマーケティングや製品開発を行い、これを起点に徐々に事業を拡大している。オリンピックや大きなスポーツイベントがある年にブームとなる場合がある。そのため、2016年度は一時需要が高まり、供給が追いつかない時期もあった。ダイレクトマーケティング事業は当社の健康食品を通じて、会員を囲い込みながら双方向でコミュニケーションしている。高齢者の筋力維持をサポートする「アミノエール®」や、睡眠の質を高める「グリナ®」等、機能性表示商品を中心に展開。機能性表示制度が導入されて以降、「アミノエール®」、「グリナ®」、「毎朝ヒスチジン」の3商品を発売した。ヘルスクレームが表現出来るようになった事で、エビデンスベースで仕事をする当社にチャンスが広がった。2016年度決算説明会時に「ヘルスケアその他カテゴリーが伸長している理由」について質問があったが、ほぼダイレクトマーケティング事業の貢献である。事業規模は未だ小さいが20%以上伸長している。
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スポーツ栄養への取り組みついて、従来と変化した部分はあるか。
「アミノバイタル®」を構成しているBCAAという3つの分岐鎖アミノ酸の機能は、アメリカでは単品で販売され、ややコモディティ化している。一方で当社は「アミノバイタル®」のようにBCAAを核にしながらブランドをつけて展開している。ダイレクトマーケティング事業には、機能性表示商品の「グリナ®」という商品があり、睡眠の質を高めるアミノ酸機能を発見しブランド化した。その他にも「アミノエール®」や、「毎朝ヒスチジン」がある。ここの分野は先行していけるだろう。アミノ酸が医薬に使われる一例として、甘味料のアスパルテームは糖尿病の方々にとって有用な商品である。
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EAファーマ社向けの医薬受託製造について、2016年度に契約損失引当金を計上しているが、これ以外に負の遺産は残っていないか。昨年、このコストは縮小していく方向だと説明を受けた。オーガニック成長がある一方で、負の遺産があるとグロースが阻害されてしまうリスクがあり、投資家としては気になる点。考えを聞かせて欲しい。大きなものは、ほぼ出尽くしたのか。
2016年度は、特別損失を計上しながらEAファーマ社を設立し、さらには引当金も計上した。不安に思われていると思う。エーザイ社によるマネジメントの下、EAファーマ社設立時の今後10年間の価値評価を見直した。想定はしていたものの1年毎の薬価改定が明確になってきたので、両社のパイプラインへの影響をアップデートした。その中で将来的に見込まれる損失額を一括計上した。それ以外のもので減損が必要な場合は適時計上している。その他本中計では動物栄養事業について3年間で40億円の構造改革費用を計上している。